異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
その日、私は珍しいものを見つけたとかでマグナの宿を訪れていた。
ちなみに部屋には入らない、宿に併設されてる食堂で会うことになっている。
部屋に入るとかしたら本格的にマグナが死んじゃうよ。
「おまたー」
「よく来たな」
マグナの宿は、営業時間外の食堂は宿泊者向けの休憩所になっている。
宿泊者同士で話をしたり、外から人を呼んで話をしたりするのだ。
他にも人がいたら私の家に呼んだほうがいいんだけどねぇ、男女が一対一ってのは流石に外聞が悪い。
今回は誰も予定が合わなかったのだ。
「それで、見つけた珍しいものって?」
「うむ、遠征中に見つけていたのを、アイテムボックスを整理していたら見つけてな」
「もう帰ってきて一ヶ月くらい経つのに、まだ整理してなかったのか」
「どうしても数が多いからな。少しずつ進めているのだが」
「で、――どんなものなん? その魔道具」
マグナは魔道具マニアだ。
もともとは私に決闘で勝つため、色々と魔道具を漁っていたらハマっていたらしい。
で、マグナの知り合いで魔道具趣味があるのは私だけである。
他の人も呼べば来るんだけどねぇ。
「うむ、これだ。――聖王国銀貨」
「聖王国銀貨ぁ!?」
「――の、レプリカだ」
「それはそれでレア物じゃーん」
聖王国。
めちゃくちゃざっくりいうとアトランティス。
かつて一夜にして滅んだという、まぁ歴史上の神話みたいな国。
その遺物は未だに魔道具のオーパーツであり、凄まじく高値でやり取りされることもある。
特に硬貨は、レプリカですら超超高値がつく。
「うおー、すごい魔力の塊……」
「やはりどうかしているな、
「これ一つで熱線何発連射できるかなぁ」
「……君には必要なくないか? 君はやろうと思えば作れるだろう、聖王国硬貨」
聖王国の硬貨は、なぜか魔力でできている。
魔力を放出して固めると、物質としてさわれるようになるのだ。
それを硬貨にするというよくわからないことをしていたのが、聖王国。
そんな硬貨を容易に作れるくらい、聖王国の国民の魔力量がとんでもない量だったというのが定説である。
ただ魔力は放っておけば勝手に漏れてどっかに行ってしまう。
ずっとずっと昔の聖王国で作られた硬貨である以上、現存するくらい魔力が残っている硬貨は非常に希少なのだ。
そして更に時間が経てば完全に世界から消失するとされているため、コレクターならば一度は所有したという事実を欲しがる、そんなアイテムである。
「まあできるっちゃできるけどさぁ。でも意味ないでしょ」
「本物にしろレプリカにしろ、当時のものでないと価値は認められないからな」
んで、私の魔力量なら実際に聖王国の硬貨と同じものを作ることができる。
でも鑑定すれば一発で当時作られた硬貨ではないとバレてしまう。
レプリカに関しても、聖王国が滅びたあとに後継を自称する国が権威付けのために作ったもので、それはそれで価値があるという理由で高値がつくのだ。
ちなみにレプリカは器の中に魔力を込めるという方法で作られてるから、霧散しないし結構数があるぞ。
「……ん、でも鑑定しなければバレないんだよな」
「何を思いついた?」
「ああいや、こっちの話。悪いことに使おうってわけじゃないよ。むしろ逆かなぁ」
「ならいいが、だとしても気をつけるのだぞ」
「はいはい」
思いつきはしたものの、実際に実行するかは私の決めることじゃない。
後で男爵に、伝えるだけ伝えておこう。
――ドノファン伯爵に「聖王国の硬貨を所有している」といえば釣れるのではないか、と。
「さて、それでは次の魔道具なのだが」
「お、なにかなー?」
まぁ、そんな真面目な話は今はおいておこう。
今日はあくまで、マグナのコレクションを鑑賞するのが目的。
それ以外の話を持ち込む必要はないだろう。
というわけで、いくつかの魔道具を拝見していく。
普通にレア物の――私が普段着てるコートの土属性バージョン――とか、どう考えてもネタでしかない物――刀身が秋刀魚になってる魔剣――とか色々あった。
「いやあ、やっぱ魔道具って面白いね」
「だな」
私もマグナも、魔道具ってやつが好きだ。
普通じゃありえない変な効果を持っているものが多く、中にはとんでもなく馬鹿らしいものもある。
そして何より、有用な魔道具は本当に有用。
例のギガンティックゴーレムとか、特定条件下なら私を凌駕しうるのだから。
こういう魔道具を使って、決闘という土俵の上で私に勝つ、というのがマグナの生涯の目標だそうな。
「で、どうだ。この中に君を倒せそうな魔道具はあるか?」
「私に聞いちゃうんだ」
「いつものことだろう」
「それはそうなんだけどさぁ」
んで、その方法を私に聞く。
なんでかって言えば、自分じゃ活用する手段を思いつかなかったから。
もし仮にギガンティックゴーレムのように方法を思いついていれば、そもそもマグナはそれを私に見せない。
決闘の時まで、大事に取っておくだろう。
「そうだなぁ。じゃあ今回はシンプルにいこっか」
「というと?」
「聖王国硬貨のレプリカを魔力タンクにする」
「先ほどもそうだが、この高級品を消耗品として使おうとするな」
「まぁまぁ聞いてよ」
聖王国の硬貨は、中の魔力を魔力タンクにすることが可能だ。
特にレプリカの方は濃密な魔力が器の中を常に満たしている。
これを使えば、普通なら使えない魔術も行使が可能。
ただし、一度少しでも中の魔力が消費されれば、その硬貨は価値を失う。
レプリカですら一般人が十年くらい遊んで暮らせるお金になるのに、それはあまりにもったいなさすぎる。
ただそれでも、やる価値はあるだろう。
「決闘魔術ってさ、特性上一定以上の威力の攻撃を受けると破壊されるじゃん?」
「そうだな」
「限界ギリギリまで魔力を結界内部に充満させておくと、その中で魔術を使った瞬間に魔力が結界を圧迫して結界が崩壊するんだ」
「つまり……実質的に魔術が使えなくなるということか?」
「理論上はねぇ。といっても、硬貨から溢れた魔力が結界内を覆うまでに時間があるから、その間に使った魔術はそのままになるけど」
要するに、もし仮に硬貨の魔力を解き放っても、それ以前に灼緋の天翼を使っておけばそれだけは魔力が溢れても維持が可能。
天翼は私の戦闘における重要な要となる魔術、それさえ使えればこの限界ギリギリの状況でもワンチャンは残る。
「ううむ……その方法は考えても見なかったな。魔力さえたらふくあればいいわけだから、貴重な硬貨を使う必要はないか」
「実際にやってもいいんだよぉ? 私は硬貨以外に決闘魔術の結界を満たせる魔力を持った魔道具なんて知らないけど」
「……いやまて、その方法は君なら魔道具なんてまどろっこしいものは必要ない、先に自分の魔力で結界を満たしてしまうこともできるな」
「バレたか」
もしそうなったら、硬貨から漏れる魔力で結界が崩壊する判定になるので、私が勝つことになる。
この方法を思いついた時点で対策法までバッチリ思いついたので、こうして話をしたのだ。
「マグナなら最悪硬貨を使ってでも試しかねない方法だからね、ちゃんと対策まで思いついてから発言してるよ」
「君も大概だな」
「もう何年マグナと決闘してると思ってるのさ」
マグナを始めとして、フォッサルのメンバーとも、もうずいぶんと長い付き合いになる。
お互いに相手のことはだいたい知り尽くしてるからなぁ。
多分、これからもこういう関係は続いていくんだろう。
ああでも、マグナが結婚したら魔道具での散財趣味は奥さんに咎められそうだなぁ。
あの人、そういうところは厳しいから。
なんていうと、またマグナが停止しそうなので黙っておきつつ。
どうかこんな日々がこれからも続きますように、と私は願うのだった。
そういえばマグナが結婚してないのはまだ十代だからです
20になったら結婚して冒険者活動は頻度を減らすと話し合って決めています。