異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
不死の竜姫といえば、フェニハナの街のトップ冒険者だ。
顔よし、強さよし、やる気は死ぬほどなし。
そんなフェニハナの
一般的に、高位の冒険者とは常に挑戦を続け、様々な逸話を残す英雄となる存在だ。
その立ち居振る舞いは時に高潔で、時に覇道を征く。
要するに人々の模範となるような振る舞いが求められる。
対してミツキは、その正反対。
普段からギルドで酒を片手に管を巻いていることもあれば、ギャンブル場で大金を溶かして人に見せては行けない顔を晒していたという話もある。
無論そういう高位の冒険者も居ないことはない。
しかしたいてい、そういう冒険者は覇道に突き進むものだ。
ミツキが突き進むのは布団の中である。
そんな、どう考えても模範的とは言えない冒険者であるから、人によっては「あんなのが」みたいな感情を抱くこともあるのだ。
それでも、フェニハナの多くの冒険者は彼女を慕っていた。
■
――その日、八等級の新人冒険者たちは、浮かれた気分でギルドの片隅に座っていた。
活性期と呼ばれるダンジョンの書き入れ時。
冒険者の花形の一つだと、先輩からは聞かされていた。
一応の覚悟は決めながらも、どこか浮ついた空気のまま迎えた当日。
そこは戦場と化していた。
ダンジョンの活性期は数日前から予兆として、魔物の出現が増加する。
そしてある特定の日に一日だけ、普段の数倍もの魔物が出現するのだ。
厄介な特性として、普段は魔物が外に出ようとはしないのに、活性期の時だけ外に出ようとする魔物が出現するという特性がある。
これはそもそもダンジョンとは魔力が固まって空間を歪め発生した異空間であり。
活性期にはその魔力が魔物として形を持って外に出ようとするからだという。
何にしても、活性期はかき入れ時であると同時に、冒険者にとっては普段世話になっている街の住人を護るための戦いでもある。
そんな中で新人冒険者は、どこか無力感に苛まれていた。
何もできなかった――
新人というのは、大抵その街の出身者がなるものだ。
中には近くの村から出稼ぎに来るものもいるけれど、それでもこのあたりでも特に大きな街であるフェニハナは、出稼ぎに来ているものにとっても憧れの都会という印象が強い。
要するに、思い入れがあるのだ。
新人冒険者にとって、そんな思い入れある街を守るため、自分も何か出来るのではないか。
そう考えていたが――実際は甘かった。
全十五階層もあるダンジョンのうち、第一階層を先輩の七級冒険者と一緒に見て回った。
第一階層はもともとそこまで強い魔物は多くなく、さらには活性期でも魔物の発生は少ない。
それでも、普段見たことのない数の魔物を前に、多くの新人は右往左往することしかできなかった。
大抵は、七級の――自分より少し年上程度の冒険者がそれを処理していたのだ。
普段は一応先輩後輩の立場ながらも、どちらもひよっことして扱われる七級の冒険者。
正直、そう違いはないだろうと思っていた。
なのに、彼らは的確に動けて、自分たちは何もできない。
その違いは、あまりにも大きな違いに思えてならなかった。
結局、八級の新人は半日でやることがなくなり、途方に暮れてしまう。
これじゃあ自分たちが足手まといだと言われているようで、新人たちは立ち尽くすことしかできない。
そんな時だった。
「いやー、皆大変そうだねぇ」
一人の少女が、声をかけてきた。
――ミツキである。
椅子に気だるげに寄りかかって、紅茶を飲みながら。
ちょうど今さっき、すごい怪我を負ってやってきた冒険者を治療して送り出したところで、新人たちもミツキのそんな様子は見ていた。
普段ギルドの隅でサボって寝てるあの人、本当にすごい冒険者だったんだ――というのが実際の感想。
どちらにしてもミツキはフェニハナの最高位冒険者。
自分たちとは住んでいる世界が違うと思っていた。
「ちょっとこっち来てゆっくりしなよ。仕事終わったんでしょ、君たち」
新人たちは、そんな言葉に困惑しながら歩み寄る。
「紅茶淹れたげる。私が用意したんだよ、これ」
皆忙しいから、流石に頼むわけにも行かないしさぁ。
この後緊急要請が入るかもだから、お酒も入れられないし。
なんて苦笑しながら、ミツキは全員に紅茶を用意してくれた。
――まるで、最初からそうなると解っていたかのように、アイテムボックスからカップを取り出して。
「どうだった、初めての活性期は」
返答はない。
どう返事をすればいいのか、誰もわからなかった。
それをミツキも解っているからか、何気ない様子でそのまま自分のことを話し始める。
「皆すごいよね、真剣にダンジョンを攻略してて。誰もが稼ぎのため、街を守るため頑張ってるんだ。私は見ての通り、外からのんびり眺めてるだけだけど」
いいながら、治療班の紙をミツキはひらひらと揺らす。
「こうやって外から眺めてるとさ、楽しいんだよね。私はもうあんな風に頑張れないから、ああやって頑張ってる同業を見るのが楽しいんだ。そこに彼らの人生が感じられて」
ミツキのやる気のなさは、燃え尽き症候群だと先輩の誰かが言っていた。
対する自分達は、今まさに燃え始めているところ。
ついた火が燻って、それが悔しさとして顔に出ていた。
だからミツキは声をかけたのだろう。
「君たちに、その輪の中に入っていく勇気と覚悟があるのなら、見ていくといいよ。それがやる気のあるうちにできるのは、今だけなんだから」
今だけ、そんな言葉がざっくりと心に突き刺さる。
前に進みたいのだ、自分たちは。
そしてそのことを、燃え尽きたからこそきっと誰よりもミツキは知っている。
「あ、あの! 今から俺たちに、何かできることはないですか!?」
不意に誰かが聞いていた。
ミツキは少し考えるそぶりを見せて。
「この後、活性期の打ち上げがあるんだ。それに参加しよう。そして先輩たちの話を聞くの。ちゃんとすごいとかかっこいいとか相槌入れるんだよ。そうすれば先輩、気をよくしてなんでも話してくれるから」
そんな簡単なことで、と思うかもしれない。
でも、それだけじゃないとミツキは語った。
「それを聞けば、自分がこれから何をすればいいかわかるでしょ?」
と。
ああそうだ、ミツキは多くのフェニハナの冒険者に慕われている。
それは
新人の頃から、こんなふうに声をかけてくれて。
しかも先ほど治療されていた冒険者は、名前まで覚えられていた。
もしかしたら自分もそうやってミツキに覚えてもらえるのではないだろうか。
そんな考えを、新人たちは覚えてしまう。
それから、新人は冒険者たちの打ち上げに参加する。
驚いたことに、先輩たちは新人をよくやったと褒めてくれた。
ほとんど役にも立ってなかっただろうに。
他の街なら、きっとそんなふうに新人を褒める先輩はいないだろう。
でもフェニハナは違う。
ミツキがそうだったから、彼らもそうするのだ。
この街のギルドは空気がいい、とよく言われる。
その理由を新人たちはその日、いやというほど理解させられていた。
ああ、だからこそミツキはカリスマ的な人気があるのだろう。
そう思っていると、
「おーい、差し入れだぞー」
と言ってギルドに入ってくるショーパンノースリエプロンお姉さんがいた。
ショーパンとノースリの上からエプロンを着ると、こう。
いい感じに服が隠れる。
結果として露出された手足に目が入ってしまう。
後ミツキは背丈が小柄なのに一部がすごいから、エプロンへの圧迫もやばい。
しかもただ凄いというわけではなく、バランスよくすごいのだ。
細身でありながらも出るところは出ていて、華奢でありながら太い。
結論としては、全体的に男のロマンだけでできているかのような人がそこにいた。
ああうん、ミツキが人気な理由は多分これだと、新人たちは腰を屈めながら理解した。
なおミツキは新人にも分け隔てなく肉を分けてくれたし、肉はソースがよく利いていて死ぬほど美味しかった。
神か?
というわけでこんな感じのお姉さんでやっていきます。