異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた   作:暁刀魚

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というわけで再開していきます、ゆっくりペースで。


燃え尽き少女のアオハル
32 新人さんいらっしゃい


 私、ミツキが冒険者になったのは、もう十年近く前のことだ。

 父が亡くなり、家が没落し、使用人たちの面倒を見て。

 色々やっているうちに一年が経過し、そうこうしているうちにすっかり失せていたやる気も――まぁ、戻らなかったけど。

 “生きなくちゃ”とは思えるようになった。

 多分、私が抜け殻みたいになっている間も面倒を見てくれたシャロネのおかげだ。

 この頃からちょっと手つきが怪しくなってたけど。

 お風呂まで入れてもらってたから、まぁ文句は言うまい。

 

 初めて冒険者ギルドの扉をくぐった時、私たちはすごく周囲を警戒していた。

 仮にも元貴族の令嬢で、幼い少女が二人。

 チンピラが食い物にしようとしてきてもおかしくない。

 でも、実際は驚くほどすんなり冒険者となることができた。

 冒険者の証明となるギルドカードを受けとって、そこに自分の名前が刻まれたのである。

 

 ――ミツキ。

 

 再出発のために考えた名前。

 それ以来、私は冒険者を続けていた。

 燃え尽きて、やる気なんてほとんどない。

 だけど――確かに私は冒険者として生きてきた。

 十代の多感な時期を、冒険者として。

 まぁ、私自身は二回目の人生で、更にはすでに燃え尽きていたけれど。

 

 

 たしかにそれは――私にとっての青春(アオハル)だったんだ。

 

 

 ■

 

 

「――むあ」

 

 どうやら眠っていたらしい。

 たしか私は、ギルドでちびちび酒を飲みながらのんびり時間を浪費していた気がする。

 少しだけ気分が高揚しているから、酔いが冷めたわけではないらしい。

 何にしても、私が目を覚ましたのはギルドの喧騒が変質したからだ。

 普段ののどかなギルドの雰囲気は、ゆりかごにちょうどいいくらい、今の私に馴染んでいるんだけど。

 今はどうやら、少し様子が違うようだ。

 

「おいおい、そんな舐めたカッコで冒険者になろうって、あんま冒険者をバカにするもんじゃねぇぞ」

「な、何よ……ば、バカになんてしてないわよ!」

 

 見れば、見知らぬ十代半ばのガラの悪い少年が、それより年下の少女に絡んでいるところだった。

 これがもっと年食ってたら色々とアレだけど、これくらいの年ならまだなんてことはない。

 微笑ましい限りだ。

 とはいえ、うちのギルドだと中々珍しい光景である。

 時たま外からやってきたおっさんが、イキって面倒事を起こす事はあるけど、このくらいの年齢だとそういうことはほとんどない。

 いや、昔はあったんだけどね。

 最近はすっかりみんな、地に足つけるようになってしまった。

 なんでだろね、って言うと周りからすごい目で見られるけど、なんでだろね。

 

「だいたいよぉ、冒険者ってのは命の危険が伴うってのに、そんな大層な格好でこられてもよぉ。パーティ組んで服に傷がついた、弁償しろなんて言われたらその場で置き去りにしてやりたくなるぜ?」

「そんなことしないわよ! この栄誉あるアウ……んぐっ! アタシがそんなことするわけない!」

 

 見れば、少女はさらさら金髪に、ふわりとしたドレス。

 その上に明らかに金のかかってそうなデザインの軽鎧を身にまとっていた。

 そして背中に彼女の背丈よりでかそうな大剣を背負っている。

 思わず振り回せるの? と思ってしまいそうなでかさだ。

 この茶髪チンピラ少年は、そのあまりにも場違いな光景に思わず難癖をつけてしまったのだろう。

 ところで少女はなんといいかけたのだろう、酔っているから聞き取れなかった。

 

「あー…………アオハルだねぇ」

 

 そして酔っているので、なんかそうとしか受け取れなかった。

 けど、周囲の視線がずいぶんとこっちに向いている。

 暇ならなんとかしてくれ、と言わんばかりの。

 ルクスラちゃんもこっち見るんじゃありません、私は酔ってて眠いんです!

 でもまぁ、期待されたからには応えなきゃ。

 しょうがないなー、ミツキちゃん行っちゃいまーす、ういー。

 

「はっ、どうだかね」

「何よ……文句あるなら、直接(これ)で聞きましょうか?」

「――――はぁい、そこまでぇ」

 

 なんか出した声がいつもより甘ったるかった気がする。

 気のせいか?

 あとルクスラちゃんが顔を青ざめさせてるけど、なんだなんだ。

 しまった……あの人酔ってる……? え、誰が酔ってるんだぁい。

 わたしゃよってないよぉ! ひっく!

 まぁいいや、だーいじょうぶ、だいじょーぶ。

 お姉さんがなんとかしちゃるけんねぇ。

 

「二人とも、あんまりかっかしちゃだめだよぉ?」

「え、あ、う……」

「な、何だよアンタ……急に割って入ってきて」

「あはは、お姉さんのこと知らないかぁ。んとねー、まぁちょっと二人のことが気になっちゃって」

 

 やはり、チンピラ少年は私のことを知らなかったらしい。

 外からやってきて問題を起こす人は、大抵私の存在を知らないのだ。

 フェニハナの街では高い知名度を誇る私だけど、大きな冒険をあまりしないから外部への知名度は低いのである。

 地域密着型といってほしい。

 

「少年、君はこの子が心配なんだよねぇ? だから思わず声をかけちゃった」

「は? 心配とか……そんなんじゃねぇけど?」

「うんうん、でもちょっと素直じゃないねぇ。もっと普通に声をかけてくれれば、この子も話を聞いてくれたと思うんだけど」

 

 私は、柔らかな笑みを浮かべて少年に顔を近づける。

 あやべ、酒の匂いで引かれるかな?

 まぁ何にしても、まずはこっちの少年からどうにかしないと。

 一番いいのは灼緋(あかひ)の天翼を展開することなんだけど、ここは室内だ。

 何より以前ラスルくんの話をしたら、なぜかシャロネからもう二度とやるなって怒られたので、それはできない。

 とすると、ここはちょっと驚かせて話を聞いてもらうほうがいい。

 

「それともぉ……この子が可愛すぎて照れちゃったのかな?」

「は、はぁ!?」

 

 私はさらに顔を近づけて、耳打ちするように言った。

 ちょっと少年の身長が高いせいで、下から見上げる感じになる。

 すると目に見えて、少年は顔を真っ赤にすると後ろに引いた。

 

「図星だなぁ? でもだめでーす」

「あ、ちょっ」

「ひゃうっ!?」

「この子は私が貰っちゃいまーす。どうだぁ、羨ましいだろぉ!」

 

 言いながら、さっきから話についていけない様子で私と少年の間で視線を彷徨わせていた少女に抱きつく。

 そのままぎゅーっと力を込めたら、今度は女の子が真っ赤になってしまった。

 ちょっと力強かったかな? ごめんごめん。

 

「い、いや、というか……お前は誰なんだよ!? いきなり割って入ってきて!?」

「えー? 私ぃ?」

 

 少女をむぎゅむぎゅしながら、指を刺されて私は顔を赤らめる。

 何だかちょっと恥ずかしいなあ。

 こんなふうにカッコつけて(※この時の私は本当にカッコつけているつもりです)自己紹介するなんて、普段あんまりしないからなぁ。

 でもまぁ、聞かれたからにはやって差し上げましょう!

 

 

「私はミツキ。不死の竜姫、ミツキだよ!」

 

 

 ばばぁーんと、勢いよく自己紹介をする。

 

「なっ……不死の竜姫!? お前が!? ドラ娘の間違いだろ!」

「不死の……竜姫……」

 

 驚いた様子の少年。

 同時に、腕の中でポツリとこぼす少女。

 周囲の空気も、ちょっとだけ変わった気がした。

 

「……くっ、お、覚えてろよ!?」

「おーおー、若いなぁ。これもまたアオハルか……」

 

 少年は、捨て台詞を言って去っていった。

 今時こんなこってこての捨て台詞、なかなか聞けるもんじゃない。

 ええもん見せてもらいました!

 まぁそれはともかく。

 

「それで君、大丈夫だったぁ?」

「え、あ、う……」

 

 うへへうへへ、この子めっちゃいい匂いするなぁ、やわっこいなあ。

 おーよしよしもう怖いことなんてないですからねこれ。

 おっと、こんなシャロネみたいなところ見せられない。

 だから私は精一杯顔をキリッとさせて少女の瞳を正面から覗き込んだ。

 わあ、綺麗な瞳だなぁ。

 ところでこの子どーっかで見たことあるんだよなぁ。

 それはそれとして。

 

「君の、名前は?」

「ひぁ、えぅ……ア、……アルマ」

「アルマちゃんか、いい名前だね」

 

 私はニコリと微笑む。

 この子は見た感じ、今日今まさに冒険者になったばかりなんだろう。

 ちょうど、かつての自分が初めて冒険者になった日の夢を見ていた。

 何だかちょっと、これには運命を感じちゃうな。

 だから私は、精一杯優しげな笑みを浮かべて、

 

 

「ようこそ、アルマちゃん。冒険者ギルドへ」

 

 

 そう告げる。

 さぁ、君のアオハルは、きっとここから始まるんだよ。

 なんて思いながら。

 

 

 私は……寝た。

 

 

 酔いで色々限界だったんですぅ。

 ごめんねアルマちゃんちょっと抱きついたままだけど……すやぁ。




こ、こいつ!!
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