異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた   作:暁刀魚

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34 お師匠様の、ちょっといいとこ見せてみたい

「あーあーいるねぇ、めっちゃいる」

「ゴブリンが……こんなにいっぱい……」

 

 私たちの眼の前に、結構とんでもない光景が広がっていた。

 一言でそれを表現するなら、ゴブリン帝国とでもいうのが正しいだろうか。

 ダンジョンの一角、開けたフロアの中にかなりの数のゴブリンがひしめいているのだ。

 臭いもきついし、絵面も最悪。

 いきなりこの光景を見つけたら、ちょっと声が出てしまいそうなほどホラーな感じである。

 

「ど、どうしてこんなことになってしまったのかしら……」

「これは一般的には魔物溜まりといって、魔力が変な形で凝り固まったことで魔物が一部の場所に大量発生しちゃう現象だねぇ」

「あ……そ、それなら聞いたことがあるわ!」

「でも、ダンジョン上層はそもそも魔力が薄いから魔物溜まりなんてそうそう発生しないんだよねぇ」

 

 今回のこれは、相当レアなケースだ。

 何せ、この魔物溜まりが発生したのが、通常なら入れない隠しエリアだったのだから。

 活性期になるとダンジョンの形が変化するのだけど、その時にできた隠しエリアの魔物溜まりが、今日までずっと放置されてきたんだろう。

 私たちが現在覗き込んでいるエリアは、存在しない壁に覆われていた。

 こう、見た目上は壁として存在するんだけど、触れるとすり抜ける感じの。

 ゲームでたまに見かけるやつ。

 これが中層以降だったら、冒険者がどこかしらのタイミングで見つけていただろう。

 でもここは上層、新人かそれに毛の生えた人間しか立ち寄らない場所だ。

 普段ならそれでもいいんだけど、こうやって隠しエリアに魔物溜まりが発生するなんて状況になると、問題が発生してしまう。

 

「まぁ何にしても、こいつはちょっとなんとかしないといけないな」

「だ、大丈夫なんですの!?」

「まー問題ないよ。なんだったらアルマちゃんだってどうにかできるよ? ここにいるゴブリンは、アルマちゃんの装備をどうにかできないから」

「えっちなことされてしまうかもしれないわ!」

「されません!」

 

 ほんとにね、ゴブリンがそういうことするっていうのは俗説だからね!

 いやほんと、一体どうしてこんな話が広まってしまったんだ。

 お姉さんどうかと思うよ、そういう倫理観のない迷信を広めるだなんて。

 一体だれだ、そんなひどいことをしたやつは!

 

「で、でもシェリブロでもゴブリンはいやらしい魔物だって……!」

 

 ――――さ、さっさとゴブリン退治をしましょうかぁ。

 いやでもたしか、あのシーンって「ゴブリンはいやらしい」と叫ぶ同級生をシェリィがたしなめるシーンだったような……

 いやらしいって部分が独り歩きしちゃったのかも……

 確かに「そんなわけないでしょ」とは否定したけど、どうしてそんなわけないかは説明しなかった気がする。

 やっちまったぁ!

 

「ま、ままま、まぁ見ててよ。私は不死の竜姫。この街一番の冒険者なんだよ?」

「なんでそんなに動揺してるのかしら」

「ききき、気のせいじゃないかなぁ」

 

 シェリブロの話で思わず動揺してしまったけど、ゴブリン退治に支障はない。

 アルマちゃんをオートエスケープで返すべきかとも思うけど、そもそもアルマちゃんを傷つけられるゴブリンがいないんだから、必要ないだろう。

 というか、()()()のことがあっても、なんとかなるっぽいし。

 ここは冒険者の憧れとして、ちょっと良いところ見せちゃいましょう。

 

「さて、じゃあ行こうか――」

 

 私は、それまで使っていた隠密用の魔道具をアルマちゃんに預ける。

 すでにアルマちゃんもそれを使っているけれど、二重で使ったほうが効果があがるからだ。

 アルマちゃんが二重で隠密したことを確認すると、私は壁をすり抜けてゴブリン達の前に躍り出た。

 

「やぁやぁ、ずいぶんと楽しそうだね、君たち」

『ぐぎゃ!?』

 

 ゴブリンが一斉にこちらを向く。

 この数だと、結構圧があるなぁ。

 まぁでも、私ならなんてことのない数だ。

 

「――あんまり、おいたはだめだよ?」

 

 ニッと力強く笑みを浮かべて、私は手をかざす。

 そして背中に、光が生まれた。

 

「”灼緋の天翼”!」

 

 それが、炎の翼を形作る。

 私の代名詞、天翼は今日も煌々と輝いていた。

 

「さあて、どこからでもかかっておいで」

 

 ふわりと浮かび上がった私は一瞬にして加速。

 そのままゴブリンの一匹を蹴り飛ばす。

 続け様に炎の弾を生み出していくつかのゴブリンにぶつけ、その後さらに体術で追撃。

 やろうと思えば遠くから火龍の熱線で一撃必殺! とかもできるんだけど、今回は体術をメインに動くこととした。

 これらの体術は、貴族令嬢だった頃に身につけたものを自分なりにアレンジして使用している。

 アルマにとっては、なんとなく動きがイメージしやすいのではないだろうか。

 何せ源流と目指すところが一緒だ。

 使う得物や戦闘スタイルは違えど、根底にある考え方はほぼ同一と言っていい。

 参考になるはずだ。

 

「それっ!」

 

 やがて、十分動きを見せたと判断したところで飛び上がる。

 エリアは百体以上のゴブリンがひしめけるほど広いことからも明らかなように、天井も高い。

 ゴブリンたちの手が届かない高度まで上と、一気に私は魔力を高める。

 最初のうちは使わないと言ったけど、やはり最後は私の代名詞で〆るべきだろう。

 手を翳し、そこから魔力を解放!

 

「”火龍の熱線”!!」

 

 勢いよく放たれた炎は、一撃で残ったゴブリンを吹き飛ばした。

 

 

 +

 

 

 戦闘終了、隠しエリアに静寂が満ちる。

 

「すごい! すごいわお師匠様!」

 

 するとアルマちゃんがぴょんぴょんと飛び跳ねながら近づいてきた。

 そうやって派手に動くものだから、隠密用魔道具が効果を発揮していない。

 まずいと思った時には、後ろにそいつが現れていた。

 

『ギャギャッ!』

「え……?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 先ほど私たちが出会したゴブリンがそうであるように、こいつも外を偵察だか何だかを目的に歩き回っていたのだろう。

 アルマちゃんは私に集中しすぎていて、気づかなかった。

 とは言え、私は気づいていたからそれに対応するべく手をかざすんだけど、

 

 

「あぶねえ!!」

 

 

 それよりも早く、さらに後ろから現れた少年によってゴブリンが切り飛ばされて、アルマちゃんは危機を逃れた。

 

「ひゃっ!?」

「ダンジョンでよそみしてんじゃねえよ、死にてえのか!?」

 

 それは、以前アルマちゃんに声をかけてきたチンピラ少年だった。

 先日は露骨にアルマちゃんを心配した様子だったが、今は必死そうにアルマちゃんへ叫んでいる。

 ……先日っていつだっけ?

 なんか記憶が曖昧だけど、彼がアルマちゃんに突っかかっている光景だけが脳裏に浮かんだ。

 まあいいか。

 

「あ、え、えっと……」

「なんか言えよ」

「はいそこまで、ありがとうね。初めてのダンジョンアタックで浮ついてたんだ。それに保護者がいて気が抜けてたのもある。私は一応周りに気を遣ってたんだけど、まさか先に割って入ってくれるとは思わなかったよ」

「あ、ふ、不死の竜姫!」

 

 先ほど、私たちに視線を向ける気配を感じていた。

 その気配はこちらを心配する様子だったからスルーしていたけれど、まさかこの子が助けてくれるとは。

 

「い、いや……あんたがちゃんと見てんならいいけどよ……」

「……え、えっと」

「……な、なんだよ」

「…………ありがとう、助かったわ。それと、心配かけてごめんなさい」

 

 そうして二人は、なんだか照れくさそうに言葉を交わしていた。

 うんうん、アオハルですなあ。

 ここから青春が始まっちゃったりして?

 なんて考えつつ、私は二人の肩を抱いて抱き寄せながら、笑みを浮かべて声をかける。

 

「ちょっ!!」

「ひやあっ!」

「よきかな、よきかな! せっかく出しさ、二人で自己紹介しようよ! 私も少年の名前が知りたいし!」

「はぁ!?」

 

 チンピラ少年が狼狽えた様子で視線を彷徨わせる。

 逃さんぞ、君がチンピラじゃなくてツンデレぶっきらぼう少年なのはもうわかってるんだからな!

 やがて観念したのか、少年は視線を逸らしながら答えた。

 

「……ダグラス」

「ダグラスくんか、うんうん、いい名前。それでこっちは……」

「ア、アルマよ。……よろしく」

「…………あァ」

 

 こうして、二人の新人と私は知り合った。

 これが、どんな未来につながるかは、正直わからない。

 でも、感じちゃうんだよね、アオハルを。

 私は燃え尽きちゃって、そういうの全然だからさ。

 羨ましいって思ってるのかも。

 ……なんてね。




だいたい三話ごとに1エピソードが終わっていく感じです。
のんびりよろしくお願いします。
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