異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
私とシャロネが冒険者になってすぐ、二人の少年少女から声をかけられた。
名をジョセフとアンヌ。
後の冒険者パーティフォッサルのメンバーだ。
このときの二人は私と同じ新人で、というかなんなら全く同じ日に冒険者になっていた。
というのもこの世界にも入学シーズンみたいなものはあって、特定の時期になると各地で多くの新人冒険者が誕生する。
その中に、私たちも紛れたというわけ。
別にその時期じゃなくても冒険者にはなれるけど、目立ってしまうからね。
アルマちゃんみたいに。
ジョセフは茶髪を短く刈り上げたいかにも元気そうな少年で、アンヌはオレンジに近い栗色のロングボブのちょっとふわっとした雰囲気の少女。
二人とも、フェニハナで生まれ育った地元の子だ。
そんな二人が、どうして私たちに声をかけてきたかといえば――
『ダンジョンもぐろーぜ!』
『ろーぜ!』
というものだった。
全部言い切ったのがジョセフで、後に追随したのがアンヌ。
アンヌは見た目こそふわっとしているけれど、口元に浮かべられた笑みは実に快活という感じだ。
二人がそう呼びかけてきたのは、アルマにも語ったけど新人がダンジョンに潜る場合、一定以上の実力と人数が必要だから。
まぁ二人はよくわかってなかったみたいだけど、受付の人に私たちへ相談してみるよう言ったらしい。
最初は少し警戒したけど、二人の雰囲気を見れば警戒もいらないことはすぐに分かる。
だって二人は――どうみてもアホだったから。
いやね、うん。
見た目の雰囲気もなんかポケポケしてる二人なんだけど――その行動はなんというか、アホの一言では片付けられないものだったのだ。
まぁそこら辺は一旦置いといて。
この二人に話しかけられた直後、私たちはどうみても新人には見えない背丈の少年――マグナに話しかけられた。
そして私たちは五人でダンジョンへ潜ることとなったのだ。
これが、私の冒険者としての最初の始まり。
まぁ、最初のアオハルだったのである。
■
「おーーーーい! ミツキ! 聞いてくれー!」
「くれー!」
その日、冒険者ギルドでのんびりしていた私のもとに、二人の男女がやってきた。
それはもうギルド中に響き渡る元気印の声で、ニッコニコの笑顔である。
ある意味で、異様な光景がそこにはあった。
しかし、誰もそれを気にするものはいない。
この街では、もはやこれが日常的な光景であるからだ。
「んー、どうしたの? ジョセフ、アンヌ」
声をかけてきたのは、かつての印象をそのまま大きくしたような雰囲気のジョセフとアンヌ。
強いて言えば違うのは、ジョセフは体が非常にガッシリして、もう誰が見てもイケメンと一言で断言できる顔立ちをしていること。
マグナにだって負けては……いや流石にマグナはちょっと別格だな。
そしてアンヌは……でけぇ。
流石にルルイエ級の超デカパイをお持ちの男爵ほどじゃないけど、アンヌもそれはもうでけぇ。
そして顔もバチクソにいい。
二人並ぶと、もう完全に何かの演劇の役者かなってレベル。
ただし――その頭には麦わら帽子が、手には虫取り網があるんだけど。
「それがねそれがね! アタシたち二人でカブトムシ捕まえに森に入ってたの!」
「入ってたんだよ!」
「ほーん」
「でね!?」
「でな!?」
はい。
見た目はすごいのに、見ての通り二人は私が出会ったころからずっとこんな感じだった。
なんかもーね、ずっとこんな感じなの!
道端に落ちてるアレを木の枝でツンツンするし、常に秘密基地を作ろうと画策してるし、階段はいつだって一段飛ばしだ。
とはいえこれでも、ほぼ一級といっていい実力の二級冒険者。
フォッサルのメンバーにふさわしい、優秀な冒険者なのである。
……マグナとシャロネがいい感じに手綱を握ってる時は。
私? 私は――
「すっげーちょーどいい形の木の棒を見つけたんだよ!」
「だよー!」
「え? マジ? すっご!」
――二人に乗っかります。
はい。
いやね、だって普通に二人を見てるのって楽しいんだもの。
私は燃え尽き女で、自分から行動を起こすことは稀だ。
だからこそ、行動的でまっすぐで眩しいくらい一直線なジョセフとアンヌが好きなんだよ。
二人をみていると、自分までまっすぐでいられる気がするのだ。
――ので、乗っかる。
「じゃじゃーん! みてみてー! 伝説の聖剣チョーイーカンジソード!」
「ふん! ずあっ!」
「うわー! ほんとにいい感じの木の棒だぁ! 私にも振らせて!」
うわなにこれ、枝が柄みたいになってる!
これ木剣じゃないの!? 大自然の神秘なの!?
うわー、こんなことあるんだ! すげー!
「また始まっちまったか……”フェニハナの三馬鹿”が……」
「お、お師匠様……? どうしたのですかお師匠様……?」
「チッ、見るんじゃねぇ。馬鹿が感染る」
「今すぐ
周りがなんか言っているが、もはや私の耳には届かない。
だってめちゃくちゃ二人に乗っかってるから。
本気でバカやるって、楽しいから!
燃え尽きた私に、こんなバカなテンションを抱かせてくれるのはこの二人くらいなものだ。
「じゃきーん!」
「ミツキちゃんかっこいー!」
「いいぞー!」
――フェニハナの三馬鹿。
言うまでもないバカ二人に、私という放蕩娘が加わると、そんなふうに呼ばれることがある。
これはいつもノリで生きてるジョセフとアンヌの爆走を、私が止めないことで発生する現象だ。
だって止めませんよ、二人が楽しそうですし。
何より、私自身さっきから何度も言っているけれど、二人のこのテンションはありがたいのだ。
もう私には、何かを積極的にやろうって気力はほとんどない。
でもこうやって、他人に手を引いてもらえればちょっとくらいはやる気をだすことだってできる。
そういう意味で、ジョセフとアンヌは私にとって何者にも代えがたい友人なのだ。
「そうだ、いいこと思いついた!」
「お、なんだなんだ!?」
「なにかななにかな!?」
私はふとあることを思いついて、木の枝を構えて意識を集中させる。
ジョセフとアンヌが、「ごくり」と声を出してつばを飲み込んだ。
「――
私が魔術を起動させる。
なお、火属性付与は正確な魔術の呪文ではない。
先に無詠唱で魔術を行使してから、それっぽいことを言っているだけだ。
でも、何事も雰囲気というのが大事なのである。
で、何が起こるかといえば――
「――――どうよ、炎をまといし聖なる木の枝」
「かっ……」
「……かっこ……いい!」
木の枝が炎を纏ったのだ。
ジョセフとアンヌは、まさに圧倒されたと表現するのが正しい表情で、あんぐりと口を開いている。
アホヅラと言ってはいけない、暴力的な顔面偏差値で、無理やりシリアスな表情になっているぞ。
いやぁ、我ながら最高の発想だったな。
自画自賛しながら、木の枝をみると――
枝が燃え尽きて、ボロっと崩れた。
「あっ」
「あっ」
「あっ」
あっ。
「木の枝ー!」
「……あ、アンソニー!」
「フ、フランソワ―!」
しまった、名前をつけておくべきだった。
後悔してももう遅い、私たちは燃え尽きた木の枝を前に、三人で崩れ落ちた。
OTLって感じで崩れ落ちたのだ。
「ごめんよぉ……二人ともごめんよぉ……」
「なくなミツキ……ルーカスだってきっとかっこよくしてもらえて、本望だったはずさ」
「そうだよミツキちゃん! ミハイルはミツキちゃんを責めてない!」
「ありがとう……二人とも……ひしっ」
「ひしっ」
「ひしっ」
そうして、抱き合う三人。
友情は……不滅だ。
でも、だからこそ私は、自分の罪を償わないと行けない……!
「決めたよ二人とも……私……もっとすごい……最高の木の棒を見つけて見せる……!」
「おお……!」
「アタシたちもついてくよ……ミツキちゃん!」
かくして私たちは、伝説の木の棒を求めて、旅に出ることを決めるのだった。
だいたいバッカーノのバカップル。