異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
なお、これは意外かもしれないが、ジョセフもアンヌも魔術師である。
ジョセフが攻撃系の魔術を中心とした魔術師で、アンヌが回復とサポートを務めるヒーラータイプ。
ただ、別にどちらかがどちらかしかできないわけではなく、ジョセフも一通り回復とかサポート系の魔術を修めているし、アンヌが戦場に破壊をもたらすこともできる。
何が言いたいかというと、私たちは三人とも飛べるのだ。
飛行魔術はその移動における利便性から、優秀な魔術師であることを測る一種の指標となっていた。
――ので、冒険に出かけるといっても私たち三人でどこかに行くだけなら、日帰りでの移動が可能なのだった。
あの後、特に準備もせずに飛行魔法でフェニハナを飛び立った私たち。
気の向くままに西へ進路を取り、でかめの森を探索の場所に選んだ。
ここってなんて名前だったかな、確か何かしら名前がついていたと思うんだけど。
「とうちゃーく!」
「ちゃーく!」
「く!」
ちくしょー! 普段二人でやってるやり取りだから、私の分が「く」しか残ってねぇ!
まぁそれはいいんだ。
かくして私たちは、森のド真ん中に降り立ったのである。
「ここに伝説の木の枝が眠ってるのか……」
「アレ? 木の枝じゃなくて、でっかい遺跡じゃなかったー?」
「どっちでもいいぜー!」
「いっかー!」
なんて、二人は楽しげに話をしている。
えーっと、クソでっかい森の中に、でっかい遺跡があるっていうと……
ああ、ここはもしかしてアルフレドの森か。
かつてこのあたりには聖王国――かつて一夜にして滅んだアトランティス系伝説の国――の一都市アルフレドの遺跡があるという。
そこには超高値で取引される聖王国の魔道具が眠っているというが、遺跡を目指して森に挑戦した冒険者は誰一人として帰ってこなかったそうだ。
「ん、意外だね。二人なら……っていうかフォッサルならここも探索してると思ったんだけど」
「えー? あ、前に来たことある気がする!」
「でもなんか、ちょっと違う気がするってマグナに言ったら、探索せずに帰ることになった……んだっけ?」
「私に言われてもわっかんないなー」
フォッサルというパーティは、まぁ色んな場所をじっくりこってり探索する本格派パーティだ。
世界のどこかにある、まだ誰も踏破したことのない場所を踏破するべく挑戦し、踏破には失敗して帰ってくる事が多い。
踏破に失敗するのは致し方ないことだ。
一般的に、そういう場所を本気で踏破しようと思ったら特級クラスの実力が必要で、フォッサルに特級のメンバーはいない。
ただ何よりもフォッサルが偉大なのは、これまで幾度となくそういう挑戦を行いながら、誰一人として欠けることなくいままで活動を続けられていること。
その原動力こそ、この二人の存在だ。
虫の知らせ、というやつだろうか。
二人はとにかく鋭い直感をもっていた。
「今日は違わないの?」
「んー、違うけど違わない!」
「だな! 言ってみようぜ! きっとすげー木の棒があるぞ!」
「おー」
そんな二人が「違う気がする」と揃って言い出した時は要注意。
今ここにいるメンバーでは、生きて帰れない可能性が高い。
どっちか片方なら、生きて帰れない可能性はあるけど、挑戦する価値はある。
「違うけど違わない」……は、まぁちょっと特殊なアレだ。
「らーたったったーらたったったー」
「るんらーらー、るんららららー」
意気揚々と森の中を進む二人。
それぞれ、とりあえず目についた木の棒を手にして、それを振り回しながら進む。
迷いのない、堂々たる足取りだ。
二人の直感が、語りかけているのだろう。
ついて行ってみよう。
「――迷ったな!」
「迷ったね!」
「迷っちゃった!」
――それから1時間後、私たちは迷っていた。
ここは……ここはどこだ!
一旦引き返そうってことになったのに……全然戻れてる気がしない!
「アタシ達……三人で探索に出かけるといつも迷ってる気がするわ!」
「なんでだろうな……!? 絶対何かの不可思議な力が働いてるぜ!?」
「まぁ……三人とも方向音痴だからねぇ」
言うまでもなく、ジョセフとアンヌに方向感覚なんてものはない。
そして私も、面倒になったら飛んだり壁を壊したりして進めばいいと思ってるので方向感覚を養ったことがないのだ。
令嬢時代は多分頑張ればできたんだろうけど、その頃に頑張らなかったから今はできない。
「まぁ、最悪空飛んで帰ればいいから」
「ミツキちゃん天才!?」
「で、でもそれだとロマンがよぉ……」
「このやりとり何回目だろ……」
迷ったら毎回やってるじゃんね。
まぁ、何にしても迷ってしまったからには仕方ない。
そもそも私たちの目的はかっこいい木の棒を探すことであって、遺跡の探索とかではないんだから。
とか思っていると、ジョセフが何かを見つけたらしい。
「ん? あれ……なんだコレ。おーい、アンヌ、ミツキ。これなんだと思う?」
「えーどれどれ? ……足跡?」
「あーしーあーとー?」
足跡だった。
人の足跡、大きさからして複数あるな。
ここに訪れる人間なんて、冒険者くらいなものだし、数だって当然少ない。
もっと言うと、ここに来るまで遭遇した魔物は植物とか木に擬態してるタイプがほとんどでゴブリンとかの人型は見かけなかった。
だっていうのにその足跡は、明らかに何度もこの場所を行き来していることを示唆していた。
なにか、ある。
「……これを辿ったら外に出れるんじゃね―か?」
「ジョセフ天才!?」
「まぁ……二択で当たりを引けばそうかもね」
盛り上がっている二人を他所に、私の意識はそこそこ真面目モードに入っていた。
明らかに不自然だ。
何かある。
そんな警告が、何度も何度も脳裏をよぎる。
でも、構わない。
こちとら、楽しかった三馬鹿探索に水を刺されたんだ。
ちょっとくらい、暴れたって許されるんじゃないかなぁ?
「二人は、どっちが出口だと思う?」
「んー、あっち」
「だな」
「おっけー、じゃあそっちを目指そうか」
真面目モードに入ったことで、なんとなく方向感覚も少しだけ真面目になった。
だから多分、そっちは森の奥に入っていく方向だと思うんだけど、二人の直感がそちらを指し示すなら、そちらに向かうべきだ。
今度は、一応近接戦闘も可能な私が前衛になって、後衛に二人を配置する陣形で進んでいく。
なんというか、真面目モードに入ったのは私だけではない。
ジョセフとアンヌも、本人たちが感覚的にそうした方がいいと察したら、自然と合理的な選択を取るようになる。
この前衛後衛の入れ替えとか、その典型例だ。
――結論から言うと、この森はある盗賊達のアジトになっているようだった。
なんでも外で見張りをしていた盗賊をとっ捕まえてちょっと
私ですら、足跡を見つけた上で”何かある”と意識しないと入り込めなかったのだ。
ある意味で、拠点とするには最高の場所である。
しかし、それをジョセフとアンヌはその直感だけで探し当てて見せた。
これこそ、二人が特別であることの証左。
だけど、二人は決して何でもできる万能な存在というわけではない。
二人にどうしようもないことだってあるのは、彼らが「違う気がする」という言葉を使うことからもわかる。
じゃあ、「違うけど違わない」っていうのは、どういう意味だろう。
それはとても簡単。
二人にはどうしようもないけど、私がいればなんとかできるということだ。
そう、二人は私をここまで導いてくれた。
だから後は――私の仕事だ。
二人が頑張ってくれた分、ここの盗賊をきちっとかたして見せようじゃないか。
カッコつけたアホは……カッコつけたアホだぜ!