異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた   作:暁刀魚

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37 まっすぐな勇気をもらって

 ジョセフとアンヌには不思議な力がある。

 それは純粋な実力だとか、何かを手に入れる力とかじゃない。

 単純にもっと、まっすぐできらきらしていて、そして形のないものだ。

 二人ならきっと、その真っ直ぐさはおとなになっても失うことはないと思う。

 ……そうなったらなったで、まぁとんでもねーことになるんじゃないかという気もするが、そこはそれ。

 何にしても、その不思議な力が私にはないものだというのが重要だ。

 

 私に、二人のような引き寄せる力はない。

 そんな物があれば、私は燃え尽きていないし父だって亡くなっていないのだから。

 だから二人のことを少しだけ羨ましく思うことがある。

 嫉妬とかそういうんじゃなくて、尊敬とか憧れとかそういう感じ。

 

 でも、二人にはできないことだってある。

 二人は優秀な魔術師だけど、流石に私ほどではない。

 純粋な実力という点において、今のところ私は私より強いやつに出くわしたことがないわけで。

 そういう意味で、二人のできない部分を私が補うと、なんというか私たちって結構ちょうどいい組み合わせになるんじゃないだろうか。

 

 

 ■

 

 

「”鉄槌の水砲”!」

「”束縛の楔”!」

 

 遺跡の中を、二人の魔術師が暴れまわる。

 片や水を弾丸のように飛ばして盗賊を吹き飛ばし、制圧。

 片や鎖を生み出す魔術で盗賊を捕まえ、制圧。

 それぞれ、自分の得意とする分野で制圧を行いながら遺跡の中を進んでいく。

 

「クソ! 後ろの魔術師だってやっかいだってのに、なんで前衛が不死の竜姫なんだよ!」

「魔術師が前衛やってんじゃねぇ!」

 

 で、そんな二人を止めるべく山賊たちが襲いかかるわけだけど、それを止めるのが私の役目。

 いつも通り天翼を起動して身体強化を行うと、徒手空拳で山賊をぶちのめす。

 迫りくる盗賊の剣を体を横に振って回避しつつ、その勢いで回し蹴り。

 続けざまに迫る盗賊の懐に潜り込むと、みぞおちへ拳を叩き込みふっとばす。

 更には近くにいた盗賊には肘打ち、更には別の盗賊の顎を蹴り抜いて意識を刈り取る。

 後ろから弓を使ってくる盗賊もいるけれど、それらは飛来する最中に突然発火してこちらにたどり着くことなく撃ち落とされる。

 言うまでもなくそれは私の魔術で、盗賊たちの動きは完全に封じ込めていると言えた。

 ここから更に、制圧のための魔術が無数に後ろから飛んでくるんだから、彼らにしてみればたまったものじゃないだろう。

 

「クソ……”あいつ”を出せ! 今すぐにだ!」

「さーて、何がでてくるかな?」

 

 正直に言うと、現状この遺跡の山賊が「違うけど違わない」レベルの相手だとは思えない。

 普通にジョセフとアンヌの二人だけでも制圧が可能だ。

 そもそもフォッサルは以前ここを訪れた時、二人の言葉で撤退を選択している。

 それはすなわち、フォッサルですら倒せない何かがここにいるということ。

 今まさに、それが姿を表そうとしているのだろう。

 警戒を強めながら、その場に残った盗賊をボコしていく。

 本命が来る前に掃除しておかないと、邪魔されるのも面倒だ。

 

「これで……最後!」

「やったー! ミツキちゃんかっこいー!」

「俺達もバッチリ決まってたぜアンヌー!」

「やったー!」

 

 最後の盗賊を蹴っ飛ばして制圧すると、何やらジョセフとアンヌが万歳を始めた。

 とはいえ、まだすべてが終わったわけではない。

 でも、今この瞬間は呼吸を整えるのに最適というわけだ。

 私は大きく深呼吸をしてから、二人に声をかけようとして――

 

 

 突如として、私の背中の天翼が消失した。

 

 

「うわっと」

 

 私は二人の射線を邪魔しないよう、パンチ・キックを放つ時以外は空に浮かんでいた。

 しかしその要である天翼がなくなったところで落下を開始。

 ふらっとしながらも、なんとか着地した。

 うーんこれ、前世だったら大怪我してたかも。

 それにしても、体に違和感を感じる。

 

「なんだこれ……体が……重い?」

「おもおも……だよー」

 

 違和感はジョセフとアンヌの方が顕著なようだ。

 二人は膝をついて、頭を抑えている。

 そして直後――ずしん、と地響きのような音が近くから聞こえてきた。

 

「なにか来るな……」

 

 私は状況を確かめながら、”それ”がやってくるのを待つ。

 現れたのは石のゴーレムだった。

 ところどころ苔むしていて、作られてから年月が経ったことが想像できる。

 

「遺跡を守るといえば……まぁ、ゴーレムか」

「ふはは……やれ! サンクチュアリ・ゴーレム! 魔術の使えなくなった雑魚どもを片付けろ!」

 

 ゴーレムのそばには、山賊の頭らしき男が立っている。

 それにしても、やっぱり魔術が使えなくなっているのか。

 天翼が消滅していたことといい、さっき確かめたときに魔術が発動しなかったことといい。

 わかってたけど、厄介だな。

 

「大方、偶然この遺跡に迷い込んだ山賊が、このゴーレムと遺跡へ侵入できないようにする魔道具を見つけて、ここを拠点にした……ってところかな」

「ははは! 今頃わかったところで何ができる、不死の竜姫! 魔術師だけでここへやってきたのが運の尽きだ! そもそもなぜここがわかったのかまでは知らんが、死んでもらうぞ!」

 

 ゴーレムが威圧感のある様子で迫ってくる。

 こいつを前にした魔術師は、もはや絶望以外の選択肢を失ってしまうだろう。

 なんだよ魔術を封じるゴーレムって。

 聖王国の技術力は化物か!

 

「ど、どうするどうする!?」

「どーしよどーしよ!?」

「はいはい! 私がなんとかするから、ちょっと失礼するよ!」

 

 そういいながら、私は二人を俵の持ち方で担いでゴーレムから離れる。

 身体強化はできるのだ。

 二人は身体強化に関してはそこそこだけど、私はそっち方面でも結構実力がある。

 ジョセフとアンヌを抱えながらゴーレムから逃げるなんてことも、できるくらいには。

 

「はははは! 逃げたところで何になる! お前達もおしまいだあ!」

「さて、どうかなぁ。……そのゴーレムさあ、()()()()()()()んじゃないでしょ」

「――何?」

 

 ゴーレムは拳を振り下ろしながら追いかけてくるが、速度自体はそこまでじゃない。

 ここに山賊たちがいたら厄介極まりないが、不意打ちによって先んじてそれを制圧できたことで、余裕ができている。

 このまま逃走することも可能だろう。

 だが、必要ない。

 

「特殊な魔力を噴出させて、強引に周囲へ蓋をしてるんだ。魔力が周囲に満ちすぎてて、外へ魔力を放出できないのが原因。だから身体強化は使えるし、普通の人だと噴出した魔力の圧で身動きが取れなくなる」

 

 多分、聖王国の金貨みたいに魔力を圧縮してるんだろうな。

 そう考えるとミスティック・ゴーレムとやらの魔力は無限ではないと思うけど、こいつらわかってるんだろうか。

 まぁ――関係ないか。

 

「つまり、逆に言えば――――」

 

 私は、ジョセフとアンヌを少し遠い安全なところに退避させてから、ゴーレムに突っ込む。

 狙いは足元。

 拳をかいくぐって、股下に飛び込んだ。

 別にここへ飛び込む必要はないんだけど、()()()を着弾する形で使うわけにはいかない。

 空に向かって放たないと、遺跡そのものを破壊してしまう。

 

「その蓋をする魔力以上の魔力をぶっぱなせば――――ゴーレムはそれを防げない!」

「なっ!」

 

 手をかざし、そして逃げ回っている間に詠唱していた魔術を解放する!

 

 

「”破滅の熱線”!」

 

 

 先日の破滅龍との戦いで開発した魔術。

 すべてを薙ぎ払う破滅の一閃は、ゴーレムを一撃で真っ二つにしてみせた。

 

 

 ■

 

 

 それから、捕えた山賊達は近くの街へ引き渡し、ミツキ達の探索は終わった。

 残念ながら木の枝は見つからなかったものの、ジョセフとアンヌは大満足だ。

 ついでに言えば、それをギルドで報告したらめでたいから宴会だという話になった。

 まぁ、実際には理由をつけて呑みたいだけだろうが、ジョセフとアンヌも飲み会は大好きなので一向に構わない。

 あと単純に、ジョセフとアンヌはめでたい場所での人気が高いらしい。

 明るく人懐っこいから、呑みの席をそれはもう盛り上げてくれるからだそうだ。

 周りの連中が、酒のせいでジョセフとアンヌ並みに馬鹿になってるだけともいう。

 そんなこんなでどんちゃん騒いでいると、ふとジョセフとアンヌはギルドの隅で呑んでいるミツキとマグナを見かけた。

 ミツキの方はなにやらシャロネから禁酒令が出ているらしく、もっているのはぶどうジュースである。

 声をかけようかと思って二人は視線を合わせると、そこでミツキの話し声が聞こえて来た。

 

「二人には、なんというか不思議な力があるよねぇ」

 

 言っていることは、正直よくわからない。

 二人は単純に、楽しいことが好きなだけだ。

 楽しいことをして生きていきたいと、本気で考えているだけである。

 ただ、一つだけ二人にも言えることがあった。

 それは――

 

「私はそういうことできないからさぁ、ちょっとうらやましいなぁ……って思っちゃうんだよね」

 

 というミツキの言葉に、こいつは何を言っているんだ――――?

 と、そう返せることだった。

 普段周りをあんだけ振り回してるのに何を言ってるんだと、さすがのジョセフとアンヌですら理解できるのである。

 自分たちはバカだと自覚している二人だが、時折ミツキが自分たち以上にバカなんじゃないだろうかと、本気で二人は心配になっているのだった。




三馬鹿の話はここまで。

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