異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた   作:暁刀魚

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4 チート転生者っぽいこともちょっとしてます

 冒険者としての私の仕事は、ぶっちゃけあんまりやることがない。

 活性期もそうだったけど、私が本気で冒険者活動すると他の人の仕事を奪ってしまうのだ。

 フェニハナの街は、街にダンジョンを有する典型的な冒険者街だけどそこまで規模は大きくない。

 その割に平和で居心地がいいから、私はここを拠点としているわけ。

 稼ごうと思ったら、もっと大きな街に遠征するのが普通だ。

 この街は私以外にも、一級の冒険者を含む強豪パーティが拠点にしているけれど、彼らは他所で稼いでいる。

 フェニハナにはたまに帰ってきて羽を休めたり、後進の育成をしたりする感じ。

 ちなみに私も冒険者の等級は一級だよ、上に特級があるけど断固として昇級したくないので昇級の話から逃げ回っているぞ。

 

 じゃあ普段私が何をしているのかというと、あまり手間のかからない雑用を請け負っている事が多い。

 アイテムボックスに荷物を突っ込んでの輸送とか、ゴミの焼却とか。

 量が多いからそれだけでも私一人が生きていくには十分の稼ぎになるし、私にとっては仕事っていうほどでもない楽な作業だからね。

 ただ、一番多いのは図書館の司書だ。

 フェニハナに限らず、この世界は活版印刷の技術が魔術のお陰で発展してるので、大きな街には必ず図書館がある。

 その司書をしながら、暇な時間は読書をして過ごす。

 なんていうのが、私にとっては一番気楽な時間だったりするのだ。

 

 ただまぁ困ったことがあって、私目当てに厄介な客がやってくることがあるんだよね。

 司書をしていることが多いから、司書をしている時に来ることが多いのである。

 具体的に言うと――決闘を申し込みに来る人だ。

 

 

 ■

 

 

 その日は、図書館の司書という名の店番業務を、私は依頼として請け負っていた。

 本の整理みたいな専門性の高い仕事はする必要なし、カウンターに本を持ってきたお客さんに本の貸し借りをするだけの作業。

 人が居ない時は、本を読みながら時間を潰すことも許されている楽な仕事だ。

 そんな楽でいいのか、と思うけど私がいると利用者が来るから、一種の招き猫みたいな扱いらしい。

 これあれだ、駅長猫だ。

 なんてことを思いながら本を読んでいると、不意に声をかけられる。

 

「失礼、少しいいかな」

「はい、なんでしょう」

「この街に、”不死の竜姫”がいるというのは本当だろうか」

 

 ――うおっ。

 内心が思わず顔へ出そうになった。

 危ない危ない。

 不死の竜姫、仰々しい呼び名だけど、要するに(ミツキ)のことを探しているらしい。

 こういう手合は大抵、私にあることを持ちかけようとしてくる。

 

「そうですねぇ、確かにここを拠点にしてますけど」

「――かの竜姫との()()を俺は望んでいるのだ」

 

 そこで、私は視線をあげて男を見る。

 司書をしている時にかける伊達メガネ越しに、如何にも武人って感じの鎧を纏った大男が立っていた。

 やっぱり決闘かぁ、と愛想笑いを浮かべながら考える。

 

 決闘。

 まぁ概ね言葉通りだ。

 この世界には決闘用の特殊な魔術が存在していて、それを使用したフィールド内で力を競う事になっている。

 決闘自体は、割とありふれた文化だ。

 命の危機なく研鑽ができたり、昇級試験の内容が決闘だったり。

 冒険者の中には、ダンジョンに潜ってお金を稼ぐより強い冒険者と決闘で覇を競う方が好きって冒険者もいる。

 私も一時期この決闘に凝っていた時期があって、そのせいか遠くからこうやって私との手合わせを求めてやってくる冒険者がそこそこいるんだよなぁ。

 

()()()()の竜姫殿と手合わせできれば、それだけ俺も高みに登れるというものだ」

「あはは……頑張ってください」

 

 理由はこれだ。

 私、決闘で負けたことないんです。

 なにせ、冒険者になった当初からそこらの一級並の実力があって、今では特級の怪物冒険者(イカレポンチ)どもと殴り合える腕が有る。

 加えて世界は広いので、なかなか特級同士でかち合うこともない。

 結果、フェニハナ周辺で決闘を繰り返した私は、一度も負けることなく決闘で無双し――飽きた。

 

 いやね、今でもやると楽しいんですよ。

 でもやるまでのハードルが高くなってしまったのである。

 アレだけ好きだったゲームの起動に、カロリー消費が必要になってしまったのと同じように。

 決して無双しすぎてつまらなくなったわけではないです。

 今でも知り合いに頼まれたら普通に決闘するし、決闘したら楽しいからね。

 何にしても、私はそういう決闘を自分からしかけることはなくなった。

 

「ここ最近の竜姫殿は、あまり決闘に積極的ではないとのことだが、こちらから頼めば受けてくれるそうだ」

「みたいですねぇ」

 

 なので、向こうから挑まれたら受けるという形に落ち着いた。

 だからこの武人冒険者さんが私に決闘を申し込んできたら、別に断ったりはしないんだけど。

 ……なんか、全然勝負をしかけてこないな?

 

()()()、竜姫殿を探しているのだが、心当たりないだろうか」

「えっ」

「む?」

「あ、いえ、なんでもないです」

 

 気付いてない!? あ、いや私は普段から魔力を垂れ流しにしてるわけではないから、前衛系の冒険者なら気付けないこともあるんだろうけど。

 わざわざ私に声をかけておいて!?

 というか、なんでもないじゃないよ! 自分から言い出せなくなっちゃったぞ!?

 こっから私です……って言ったら恥ずかしいなんてもんじゃない!

 

「そ、そうですねぇ……」

「竜姫殿は、とにかく決闘において無類の強さを誇るそうなのだ! 可憐な少女のような容姿をしているものの、その戦い方はまるで竜そのもののような苛烈さを誇るという!」

「うぇ!?」

「俺は無骨な前衛だが、魔術を操り大群を相手する強大な魔術師というのには随分とあこがれを覚えたものだ。特に竜姫殿の召喚術師百人抜きの決闘は、聞いただけでも震えが禁じ得ない!」

「うぇうぇうぇ!」

 

 ま、まずい! この人完全に私のファンだ!

 ファンなら推しの顔くらい把握してくれという感情もなくはないけど、この世界に写真はあんまり流通してない。

 特殊な魔道具で撮ることができなくもない、くらいだ。

 この人が知らないのは仕方のないこと。

 でもそれはそれとして、その熱い思いを私を私と気付かずにぶつけられるとこっちとしても大変困るのだが!?

 

「何と言っても、噂に聞く”灼緋の天翼”を、俺はこの目に焼き付けたいのだ。雄々しく広げられる竜翼を纏い、自由自在に空を飛ぶ。なんと浪漫に満ちた光景か!」

「解ります」

 

 即答した。

 超早口で即答した。

 あの魔術は私のお気に入りなんだよ。

 頑張って私が作ったんだ。

 だってかっこいいじゃん翼生やして空飛ぶなんて。

 火属性魔術でやることじゃない上に、あまりに処理が面倒すぎて私以外に扱える魔術師がいないせいで、実質私の専用魔術と化してるけど。

 それはそれで、ちょっと自尊心が満たされるのでいいと思います。

 

 って違う!

 今はそんなことはいいんだよ!

 この状況をどう誤魔化すか考えないと行けないんだよ。

 とりあえず、向こうが私に気付いてないってことは、誤魔化して顔を隠せば向こうは気付かないってことだ。

 声もちょっと声色変えれば大丈夫のはず。

 問題は、どうやってこの人を私のもとに誘導するか、という話。

 ひとまずここは一度話を打ち切って、ギルドの方に案内するか……それから急いでギルドに行って顔を隠して決闘を受ける。

 これだ!

 

 

「――――ミツキさーん、今日はもう上がって大丈夫ですよー」

 

 

 そんな私の野望は、正規の職員である司書さんの声がけで、あえなく潰えた。

 流石に私の名前を武人冒険者さんも知らないってことはないだろう。

 

「…………」

「…………」

 

 司書さんの言葉に返事もできず、私と武人冒険者さんは向かい合う。

 気まずい沈黙。

 気恥ずかしさと、小っ恥ずかしさと、ド級の恥ずかしさで頭を抱えたくなる。

 武人冒険者さんも、なんかちょっと顔を赤くしたまま停止している。

 

 ……はい、ミツキです。

 同姓同名の別人かもしれませんよ。

 だからこう、聞かなかったことにしませんか?

 

「……灼緋の天翼……よい魔術ですな」

「いやぁそれほどでもぉ…………はっ!」

 

 謀ったな――――!

 それから、私と武人冒険者さんは司書さんに挨拶をして仕事を切り上げると、二人でなんとも言えない空気のままギルドに向かい――

 

 ――お互いに全く全力を出せず、泥仕合の末私が勝った。




無双しても、し過ぎると飽きるみたいなお話。
若気の至りでもあります。
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