異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
こそこそっと夜になってラスルくんの様子を見に行ったら、あら大変。
そこには疲労からぶっ倒れるラスルくんの姿が。
こりゃやべぇ、というわけでラスルくんを担いで家まで運んだ私は、そのままラスルくんのベッドに彼を寝かせた。
場所をどうやって割り出したかって言えば、魔力を感じ取ったからだよ。
んで、どうしたものかなぁと置いてあった椅子に腰掛けてラスルくんを見ていたら、比較的はやくラスルくんは目を覚ました。
どうやらちょっとした疲労程度のものだったようで、休めばなんてことはなさそうである。
不死鳥の再誕を使ってもいいんだけど、それをする前に起きてしまったからな。
面と向かって使おうか提案すると、きっと断られるはずだ。
本来なら、結構お金のかかる行為だからね。
「……ごめんなさい、ミツキさん」
「んー、別に私は謝られるようなことはしてないよ? 心配してるのはお父さんの方」
「父には……今度謝ります。でも父だけじゃなくって、ミツキさんにも謝りたかったんです」
そう言って、起き上がったラスルくんは正面から私を見た。
なんか、真剣な顔だな。
「僕、その……ミ、ミツキさんのことが……」
「私のことが……?」
「………………あ、憧れだったんです!」
ほほう!
憧れ、憧れねぇ。
私ってそんなにラスルくんが憧れるようなことってしたっけな?
まぁ、したのかもしれないけど、何にしてもラスルくんはそんな憧れの私に負けないくらい強くなりたいらしい。
そりゃあずいぶんと高い目標だなぁ。
といっても、それはあくまで人生の最終目標だそうだ。
今は、ヒラソルで他の店員に負けないくらいの腕っぷしを手にれること。
その次が父を腕っぷしで超えること、とかなんとか。
それなら、確かに超えられそうな目標である。
「そういうことならー……ラスルくんなら、すぐに目標を叶えられるんじゃない?」
「そ、そうですか?」
「だって――ほら」
私は椅子から身を乗り出して、ツン、とラスルくんの二の腕をつつく。
すると、想像以上にごつっとした感触が帰ってきた。
「うひゃあ!!??!?!?」
「おっと、静かに。ご両親が起きちゃうよ」
私は更に身を乗り出して、しぃーと人差し指を口元に立てる。
ラスルくんはその状態で首をぶんぶん縦に振った。
「うんうん、偉いぞー」
というわけでラスルくんを解放。
なんか、さっき外で倒れてるときより疲れてる気がするのは気のせいか?
やっぱ不死鳥の再誕しとく? いっぱい(疲労が)びゅっと出てきもちーよ?
あ、だめ? そう……
「と、とにかくですよ! ぼ、僕はまだまだ頑張らないと行けないんです!」
「頑張りすぎは良くないとおもうなぁ、お父さんに言ったら、鍛錬の時間を作ってくれるんじゃない?」
「そ、それはもっとだめです! 僕はあくまで料理人ですから! 料理が第一で、自分の肉体は二の次です!」
「それ、いくらでも体を酷使していいって思ってるでしょ。だめだよー、いくら回復魔術があるとはいっても、健康って水物なんだから」
今は良くても、将来絶対に大きな負債を残してしまうだろう。
絶対に無茶な鍛錬はやめようね、前世の私との約束だぞ!
「そうはいっても、料理はともかく体を鍛える才能って僕にはないですから……どうしても数をこなして経験を積まないと父さんやみんなに追いつけないんです」
「んー、才能がないってことはないと思うけどなぁ」
もともと店での仕事は体力仕事だから、最低限の体力はついているにしても、だ。
今のラスルくんは、最初に出会った時と比べてずいぶんと見違えるようである。
見た目的にはちょっと背が伸びたくらいだけど、明らかに筋肉のつき方と魔力の動き方が変化している。
運動をして、体を最適化している最中の人間の魔力って感じだ。
もうしばらくすれば、完全に魔力による身体強化が自分の体と”合致”して、ラスルくんは爆発的に伸びるんじゃなかろうか。
まぁでも、その伸びを実感するまでは、いまいち成長していると感じられないのもわかる。
そしてそれを自分のものにする速度は、やはり才能という言葉で表現される。
だとするとラスルくんの才能は……まぁ、平均少し上くらいかも。
「父は料理人をしているうちに、自然とそれができるようになったらしいです」
「そうだねぇ、アレが特別……天才ってやつだ。でも、あんまりお父さんと自分を比べちゃ行けないよ」
「そう……ですけど」
まぁ、こればかりは本人の納得の問題。
自分なりに答えを見つけるしかないだろう。
そんなことより、私はあることを思い出して声をかける。
「んー、あ、そうだそうだ、夜中に目一杯体動かして疲れてるでしょ。私がなにか作ってあげようか?」
「…………え?」
「ドルファンさんから許可はもらってるから。ま、お姉さんにまかせときなさーい」
「えっ、えっ……えっ!?」
おっと、騒いじゃだめだぞ? しー。
■
さて、夜食に重いものは厳禁だ。
どっちかというと冷たいものよりも、体を温めてぐっすり眠れるものがいいだろう。
となると、作るのは当然のごとくスープである。
取り出したるは異世界料理の強い味方、玉ねぎ。
「私って玉ねぎ使った料理しか作ってなくない?」
ってくらい玉ねぎはよく使う。
便利なんだもの……これ。
玉ねぎを加熱することでかさが減り、多くの量を食べることでより胃に優しい栄養を効率よく摂取できるとかなんとか。
「というわけで、加熱してー、鳥の出汁とタンパク質たっぷりの卵でぇーん」
できました、ホッカホカのオニオンスープ。
コンソメがなぁ、コンソメがあればなぁ!
やっぱ開発するべきかなぁ、コンソメ。
他の出汁で代用できなくもないから、未だに腰が重くてなぁ。
令嬢時代に頑張っておくべきだった……
というのはさておき、完成したスープをさっそくラスルくんの元へ持っていく。
「というわけで、私特製オニオンスープです。プロに食べてもらうには少し恥ずかしい出来だけどね」
「い、いえ……ぜ、全然そんなことないですよっ」
いいながら、渡されたスープを両手で持つラスルくん。
匂いを楽しんでから、ゆっくりとスープを口に含んだ。
「あちっ」
が、どうやら熱かったらしい。
うーん、もうちょっと冷ましてから行くべきだったかな?
あ、そうだ。
「ふー、ふー」
私は、魔力を込めて息を吹きかけた。
こうすることで、スープの中にある熱を吹き飛ばすのだ。
火属性魔術師は、熱をどうにかすることも得意だぞ。
と思っていたら、ラスルくんがなんか顔を反らしている。
「ん、どしたの?」
「いえ……な、なんでもないです……」
「そう? ならいいけど……ほら、スープだよ。あーんってしてあげようか?」
「絶対にやめてください!!」
「うおお!?」
すげー剣幕じゃん!?
流石に学習したのか大声は出してないけど、今度は私がびっくりして声を出しそうになってしまった。
「あ、い、いえ、ご、ごめんなさい。そのいやえっと、嫌というわけじゃないですけどごめんなさいっていうか、それをやると多分僕だけじゃなくてああいやそうじゃなくてえっと」
「お、お、おちつけ少年! なんかめちゃくちゃ混乱してるぞ」
「は、はいっ」
「深呼吸。深呼吸だ。いいね、すー、はー」
「すー、はー」
それからラスルくんは気持ちを落ち着けてから、ゆっくりとスープを呑んだ。
ちょうどいい温かさで、ほっこりしているのか優しげな吐息がこぼれる。
「これ……美味しいですね。玉ねぎがちょうどいい具合に加熱されてますし、出汁がすごく聞いてます。暖かくて……包み込むような味です」
「だ、大絶賛だなぁ……少し照れるよ、私が」
「え、あ、ご、ごめんなさい」
「いえいえ……」
プロにめちゃくちゃ評価されちったぁ。
いやでも、多分同じものを作ったらラスルくんの方が美味しいものを作るだろう。
精進、精進。
そして、精進といえば。
「まぁ、何にしてもだよ。お父さんも心配してるんだ。あんまり危険なことをしてはいけないよ」
「ご、ごめんなさい」
「そこで……だ。私、お父さんから依頼を受けてるんだよねぇ」
「い、依頼?」
私は、二イっと笑みを浮かべていう。
「しゅぎょー、しよっか」
ラスルくんはその言葉に、目を白黒させていた。
禁断の悪事二連発!
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