異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
シャロネは変態だ。
女体が大好き変態だ。
リリーシャちゃんも、言うまでもなくとびきりの美少女だ。
やべぇぞ、少女の夢が壊れてしまう!
慌てて私は、リリーシャに聞こえないよう男爵にひそひそと話しかける。
「どうしよ男爵……どうしよどうしよ……」
「そもそもの原因は君だろう、責任を取れ、責任を」
「ええ、私ぃ?」
そんな……私は何もしてないぞ!
無実だ! 昨日も酔ってシャロネに抱きついてシャロネを困らせたりしたけど、無実だ!
シャロネも何もしてこなかったし!
「というか、シャロネの奴はどうしているのだ」
「ええと……昨日二人で呑んで、酔っ払った私を家まで運んでもらって……以降見てない……」
「奴め……死んだか……」
「死んだ!?」
し、死んではいないでしょ……
時折私の家のシャロネが宿泊する部屋で干からびてたり、町中で地面に顔を埋めてるところを発見されたりすることはあるけど……
あれ、そのパターンで言うと、もしかして今日はずっとシャロネの部屋で干からびてたりするのか……?
「と、とにかく。先にシャロネと合流しよう。リリーシャちゃんと出会う前にシャロネに話ができれば、一応配慮はしてくれるはずだ……!」
「うむ……何としてでも先に見つけよう」
「多分私の家で寝てると思うんだけど……」
「いたのか? ぜんぜん気付かなかったぞ?」
「きっと干からびてると思うから……」
「貴様、昨日は何をやったのだ……」
さぁ……私と二人で呑んだ日は毎回干からびて「たえ……たえ……」とうめいているけど。
どうしてそうなるのかは、よくわからない。
という話をしたら、男爵が天を仰いでいた。
なんや。
「ええと……お二人は何をはなしていらっしゃるのですか?」
「え、ああうん。まぁちょっとこう……本日はお日柄もよく……てきな?」
「それは絶対二人でひそひそ話をすることではないだろう……」
いかんいかん、長話が過ぎた。
この場はリリーシャちゃんが主役なのに、置いてけぼりにしてしまっている。
「と、とりあえずアレだぁ……なんか食べる? ここまで長旅だったんでしょ。奢るよぉ?」
「よ、よろしいのですか? いえその……あまり面倒をおかけするわけには……」
「まぁまぁ、積もる話もあるだろうしさ。聞きたいこともあると思うんだ。ここは折角だし、私とお話しながら……っていうのは」
「ええと……」
どうやら困った様子のリリーシャちゃん。
目上の人が親切にしてくる、という状況に慣れていないのだろう。
冒険者になるまでは、男爵のところで侍従見習いをしていたそうだから。
流石に、貴族が平民に食事を奢るのはそうそうあることじゃない。
で、こっちとしてはその間に男爵を外に逃がす作戦だ。
私がリリーシャちゃんと話をしている間に、男爵がシャロネを探してくる感じで。
「う、うむ……ではここからは、若い二人に任せるとしようか……」
「あ、いけません! いくらお忍びとは言え、男爵様が一人になるのは危険すぎます」
「むぅ!」
しまった、正論!
くそ、かといって男爵がこの場に残るのはおかしいし、三人で食事をしてちゃ意味がない。
いや、ここはルクスラちゃんを抱き込んで、彼女に探してきてもらうか。
最悪他に誰か、冒険者の知り合いにお金を渡して探してきてもらうのでも問題ない。
マグナがギルドにいるのが一番いいんだけどなぁ。
さて、そうなると一旦ルクスラちゃんを呼んで、食事の注文をしつつ――
「た、大変ですミツキさん! シャロネさんが食堂で酔っ払ってて!」
と思ったら、ルクスラちゃんがすごい勢いで飛び込んできた。
終わった――――
■
「ういー! もっと太もももってきてくださいましー!」
終わった――――
シャロネは酔っ払っていた。
女子に見境なく襲いかかっていた。
それ自体はまぁ、いい。
よくあることだ。
シャロネがやらかすという意味でも、誰かしら暴れてる奴がいるって意味でも。
それはそれとして、タイミングが最悪。
せめてルクスラちゃんに、事の次第を報告できていれば……と思うが後の祭り。
とりあえず最低限のリカバリを効かせるため、男爵とリリーシャちゃんを残して食堂へゴー。
「シャロネー!」
「うわあああお姉様が三人も襲いかかってきますわああああああ!」
めっちゃ酔っ払ってる!
とにもかくにも、この状況をなんとかしてシャロネを正気にしないと!
そして状況を説明し、リリーシャちゃんに取り繕ってもらう!
こう言う時は……こうだ!
「不死鳥の……再誕!」
「酔いを覚ますのに不死鳥の再誕を使うんですのー!」
体調悪い時に連打しまくってるのよりは、マシな使い方だぁ!
というわけでシャロネを正気に戻した。
追いかけられていたフェニガの女の子に、今度女子会参加するから、と謝りつつ。
私はシャロネに呼びかける。
「なんでこんなことをしたー!」
「その場のノリですわー!」
「ならしょうがないな!」
私もノリでしか生きてないからな!
その場のノリでやりたくなったなら、それを咎める資格は……ない!
「で、とりあえずだな! 大変なんだよ、大変なんだよ!」
「まぁ、お姉様が大変とおっしゃるのは珍しいですわね。何があったんですの?」
「シャロネに憧れてる子が! うちで! 今日! 冒険者になった!」
「まぁ……!」
おお、シャロネが珍しく普通に嬉しそうだ。
なんかこう、私といる時はたいてい嬉しそうにしてると邪念が交じるからな。
フォッサルだとこんな感じなんだろうか。
だが、甘い。
「――そんな子に、今の痴態が聞かれちゃったわけですが」
「まぁ……」
しゅん……
シャロネのテンションが下がった。
そうだよ、ノリで行動した結果がこれだよ。
お互い気をつけようね。
「ち、ちなみにその方は……どなたですの? 私に憧れるというのは……なかなか稀有に思えますが……」
「自分から言っていくのか……」
「一級冒険者ではありますけれど、お姉様のように二つ名で呼ばれるほどの実績はございませんの」
まぁ、そうだけど……でもどこかには、フォッサルパーティが大好きで仕方がない子がいるかもしれないじゃん。
少なくとも、ジョセフとアンヌはフェニハナの子供達に人気だぞ!
こほん。
「ええと……ナラーシャさんの……」
「――ああ、リリーシャさんですのね」
「知ってるの!?」
知ってた!?
「知ってるも何も、友人ですわ」
「えっ」
「時折男爵領にお邪魔した際、お会いしておりますの」
「えっえっ」
思わぬところで……思わぬ繋がり!?
「って、それは余計にまずくない!? 直接面識があるのに憧れられてるってことは、ちゃんと隠してるんだよね? 女体好き!」
「人を何だと思ってるんですの! ちゃんとリリーシャさんは存じております!」
「ええ、うっそだぁ……」
「くっ……」
「私の発言に、あまり否定できない……みたいな反応をする!」
自覚あるじゃないか!
でもそれはそれとして、ちゃんとリリーシャちゃんはシャロネの本性を知っているらしい。
なんてことだ。
「どうやってあんなうら若き乙女をたぶらかしたんだ!」
「お姉様には絶対言われたくないですわ! ……別に、大したことはしておりませんの」
いいながら、シャロネはどこか懐かしむように、言う。
「リリーシャさんに、家事などの手ほどきをしたのです。昔の私に似ていて……なんだか懐かしくなってしまって」
「ははぁ……ちゃんと真面目にたぶらかしたんだ」
「たぶらかしてませんわ! ……まぁその、結果として――」
「結果として?」
――そしてそこでシャロネは、視線を反らした。
「…………大きな胸に興奮するようになってしまいましたが」
――――――――――――――――うん。
「待てやゴラァ」
「ち、違うんですの! ちょっと褒めている時にぎゅっと抱きしめてしまったり、男爵様の魅力を懇切丁寧に語っていただけですわ!」
「そんなことしたら、性癖おかしくなるに決まってるだろー!?」
「お姉様だけには言われたくないですわ!!」
「なんだとぉ!?」
えんやこら、えんやこら。
言い争いに発展する私とシャロネ。
どーりでリリーシャちゃんが私と男爵の目をじーっと見てくるわけだ。
アレは目を見てると思わせて、こっちの胸を視界に入れていたんだ!
ナラーシャさんをシャロネが避けるわけだよ!
リリーシャちゃんが従者じゃなくて冒険者になったのも、男爵の従者になるのを避けるべくナラーシャさんが尽力した結果だろ!
「っていうか、まずい! 今リリーシャちゃん、男爵と二人っきりだ!」
「は!? まずいですわよ!? ナラーシャ様に殺されますわよ!?」
「それは普通にいっぺん殺されろ!」
というわけで、急ぎ男爵達のもとへ向かう私たち。
幸いにも、人前で羽目を外すのを避ける理性はあったのか、リリーシャがやらかすことはなかった。
それはそれとして……これから大丈夫かなぁ、リリーシャちゃん!
犯罪者しかいない話。
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