異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
あの後、アルマちゃんは鼻血をぶー、としながら気絶した。
不死鳥の再誕で鼻血の方はどうにかしたけど、意識はすぐに戻らず。
しばらくうなされた後、ゆっくりと目を覚ます。
「ん……ここ、は……」
「あ、起きた?」
「し、始祖様……?」
「しそのは……?」
美味しいよね。
赤しそをつけてしそジュースが飲みたくなってきたなぁ!
「ああ、始祖アンジェリカ様……その霊峰のごとく気高き慈悲を、私にお与えくださいませ……」
「霊峰て」
なんだ、私の霊峰を拝みたいのか。
ダメだぞダメだぞ。
……というか、始祖アンジェリカ?
「このアルマリリア・セレスティスを……お導きくださいませ……」
「って、何ぶっちゃけてるんだー! 正気にもどれー!」
「はうっ」
油断してたら、アルマちゃんの本名とか家名とか、がっつり聞いちゃったじゃん!
特に踏み込むつもりなかったのに!
始祖アンジェリカ、セレスティス……聞いたことあるぞ、たしか帝国の貴族だ。
そりゃまぁ、女の子が一人で武者修行となると、帝国人である可能性は高いと思ってたけど。
まさかこんなところで正体を知ることになるとは……
「あうう……あれ、お師匠様? お師匠様が始祖様で、始祖様がお師匠様……?」
「おしそうさま……なんつって」
「あ、これはお師匠様ね」
ダジャレを理由に判別された!?
でもしょうがないじゃん、すっと浮かんできちゃったんだからさ!
「…………あの、お師匠様?」
「ん、なんだい?」
「…………き、聞いてしまったのかしら」
「んー、なんのことかなー?」
恐る恐るといった様子で、問いかけてくるアルマちゃん。
この様子から察するに――
「ご、ごまかさないでほしいわ!」
「ところでアルマちゃんは、どうして自分がここで倒れてたか、覚えてる?」
「お、覚えてないけれど……何かとんでもなく素晴らしい物をみて、その興奮で倒れてしまったとしか……」
……っし、セーフ!
覚えてねぇ! 私の南半球に関しては記憶から飛んでる!
セーフセーフ!
「とりあえず、私としてはアルマちゃんがどこの出身でも、別に気にしないよ。もともと貴族だろうってことはみんな解ってるし」
「え、ええ……それはそうなのだけど……私だって隠しているわけではないのだし」
ただ喋っていないだけだ。
それはある意味で、私と同じである。
まぁ、喋るつもりのない私が貴族であるということを知っている人間は、本当に少ないんだけど。
というか、言っても信じてくれないだろうしね。
「ま、細かいことは気にせずに行こう。ちなみに、どうしてアルマちゃんはここへ?」
「……今度、遠出をしようとおもっているの。それで、野宿の練習をしようと思ってきたのよ。私、ここに来るまでずっと寄り合いの馬車で来たから」
「主体的に野宿をした経験がないんだね」
寄り合いの馬車は、複数のパーティやグループが一緒の馬車で移動するサービスだ。
この世界においては非常にポピュラーな移動手段で、これを利用する旅行者は多い。
当然ながら、移動の最中には野宿が発生する可能性はある。
しかしそういう時は、馬車に乗っている者の中から、一番野宿の経験があるグループが他のグループを指揮することとなっているのもポイント。
そのグループの指示に従っていれば、野宿の経験がない一般人も安全に旅が可能だ。
野盗や魔物対策? ちゃんと護衛の冒険者がいるよ。
馬車が通過するルートも、魔物があまり出ないルートだから安心だ。
護衛の冒険者が裏切ったり、馬車を運営してるグループそのものが悪徳だったら……?
それは流石に、この世界だと自衛できないのが悪いってことになるかな……
ともかく。
「じゃ、そういうことなら私が見守っててあげよー」
「ありがとうお師匠様! 久しぶりにお師匠様らしいことをしてもらっている気がするわ!」
「まぁ、基本放任してるからなぁ……」
この間の特訓も、アルマちゃんは教える側だったしなぁ。
そもそも私はアルマちゃんを弟子にした覚えもないんだよ。
というと、またよってたかってギルドでボコボコにされそうなので、黙っておくけど。
何にしても、普段はダグラスくんが保護者として優秀だし、教えることも特にないのでこういう機会は貴重だ。
「じゃあ早速。アルマちゃんは、野宿に関してどのくらい経験がある?」
「そうですわねぇ……」
――それから、私はアルマちゃんにヒアリングを実行。
今のアルマちゃんの段階を聞き出してから、それに合わせて色々と教えていく。
幸い、基本的な準備はできているし、知識も仕入れてきているようだ。
後はこれを、実際にやってみて間違っている部分を指摘すればいい。
というわけで、色々と面倒を見ることしばらく。
「で、できたわ……! きのこカレー!」
「おー」
アルマちゃんがカレーの材料を持ってきたので、私がきのこを幾つか提供してきのこカレーを作った。
これにキノコの天ぷらが今日の夕飯だ。
おいしそー!
「じゃ、いただこうかぁ」
「ええ! ふふふ、初めてのお手製カレーよ……!」
「いいねぇー」
というわけで、早速いただく。
お味のほどは一言で言うと――
「かっらぁ!? 辛くないこれ!?」
「え、これくらいが普通ではないかしら?」
「辛党だーー!」
めちゃくちゃ辛かった。
いや、美味しいんですけどね。
初めて作ったとは思えないくらい、いい感じのカレーである。
ただ滅茶苦茶辛いということを除けば。
やばいぞ、ちょっと油断してた。
慌てて水を取り出して飲む。
私が作った、お手製のあまあまジュースだ。
砂糖をたっぷりつかっている、この世界だとそこそこお値打ちな飲み物である。
「――ん」
と、その時、ふとあることを思いつく。
ここには現在揚げ物に使った油と、私がとりだしたあまあまジュースが存在する。
他にも、色々と材料を確認すると――うん、行けるな。
「よし、やるか」
「……何をなさるつもりかしら、お師匠様?」
「ふふ……」
どことなく、警戒した様子でアルマちゃんがこちらに視線を向けてくる。
対する私はニヤリと笑みを浮かべて、それを口にした。
「アルマちゃんに、背徳の味をおしえちゃおうかなぁ、って」
――さて、用意するのはじゃがいもである。
アイテムボックスに眠ってたものを取り出して、準備していく。
水で洗って皮を剥いて、その次はすたたたたーっと、
んで、それを油に投入。
それと同時に、塩とノリを軽く混ぜて味付け部分を完成させる。
「な、何ができるのかしら!?」
「背徳……だよ、ふふふ」
「さっきからそればっかりよ、お師匠様!」
いやだって、うまく何を作ってるのか説明するのが面倒だから……
とりあえず、完成するまで背徳をこすっていくぞ。
「次に取り出しますは、しゅわしゅわスライムゼリー!」
「あら、お師匠様は炭酸の飲み物を作るつもりかしら?」
「そういうこと! でもただの炭酸じゃないよ! ド級の炭酸……ドサ○ダーだ!」
「なんかダサいみたいな言い方みたいになってるわ!」
しゅわしゅわスライムゼリーは、しゅわしゅわスライムを倒すことでドロップするアイテム。
これを水の中に入れると溶けて、かき回すと炭酸飲料になるのだ。
お手軽にサのつく飲み物や、コのつく飲み物を作りたい時に便利。
これを専門に扱った屋台なんてものもある、だから炭酸飲料そのものは珍しくない。
というか、ぶっちゃけお酒にしたいところをアルマちゃんに飲ませられないから、炭酸にしているだけである。
「で、揚がったじゃがいもとこの”のりしお”を一緒の袋にいれてシャカシャカすれば……完成!」
「お師匠様、塩分と脂分が多いわ!」
「――だからこそ、背徳なんだよ」
「……っ!」
というわけで、出来上がったポテトがチップ状になってるお菓子と炭酸飲料をアルマちゃんに手渡す。
私の分も確保して、先んじていただくことにした。
「――――カーッ!」
「ひあっ!」
ふぅ、効いたぜ……背徳の味だ!
そんな私の様子を見て、アルマちゃんもポテトを食べてから炭酸飲料に手を付けると――
「は、は、背徳だわあああっ!」
すでに時刻はおそらく二十時を過ぎていて、こんな時間にポテチと炭酸は背徳としか表現できない味がする。
ふふふ、もっともっと食べようねぇ、おかわりはいくらでもあるからねぇ。
ふふふふ、はははは、げーっはっはっはっはー!
前回のオチからこのタイトルで背徳がそっちなことってあるんだ……回。
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