異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
アルマちゃんと二人でお話をした翌日。
あるいは、リリーシャちゃんが冒険者ギルドに加入してから数日。
私はとある相談を受けていた。
ギルドの食堂スペースにて、ダグラスくんと二人でちゃーをしばきながら向かい合っている。
ちゅーじゃないよ、ちゃーだよ。
話を持ちかけてきたダグラスくんは、なんだか少し視線をそらしながら気まずそうだ。
私と二人でいるから……というわけではなく、多分隣の”二人”が原因なのだろう。
「うんうん、つまり依頼を受けて遠征に出かけたいってわけだね。いいじゃない、冒険者らしくなってきた」
「今までは、活動範囲が全部街とその周辺だったからな……っすね」
「あはは、似合わない敬語」
「ちっ……」
で、聞いた話を纏めると、遠征だ。
アルマちゃんから、聞いていた通り。
しかしそうなった時、ダグラスくんとアルマちゃんのパーティには”あるもの”が足りない。
「そこで、パーティに魔術師を加えたいってわけだ。まぁ遠征に行くなら当然だね」
「……あぁ」
魔術師は、非常に便利な存在だ。
火と水を生み出すことができ、治癒魔術も使えて、後方からの支援もしてくれる。
さらに言うと、そもそも遠出をするならパーティ人数は多いほうがいい。
三人以上いれば、見張りを立てた上でもキチンを睡眠時間を確保できる。
「問題は、俺達についてこれる冒険者がいねぇってことだったんすけど……」
「二人とも、年齢の割に優秀だからねぇ、旅の仲間の実力と年齢は近いほうが話も合うし、諍いも起きにくい。かといって、アルマちゃんのことを考えるとあんまり年上の……特に男性はメンバーによろしくないわけだ」
「……っす。まぁ、本当に都合よく同年代で実力も近い魔術師が見つかったんすけど……」
そこで、私とダグラスくんの視線は、ある方向に向いた。
向けた先には、少しの人だかりと――
「だーかーら! アタシの方がお師匠様のことを慕っているのよ!」
「そんなことありません! 私の方がミっちゃん様をお慕いしております!」
二人の少女の、元気いっぱいな言い争いの声。
……って、何を言い争ってるんだぁ!?
「あの二人、さっきまでお互いの剣の腕と魔術の腕で言い争ってたはずなのに!」
「ははは!」
「笑うな、そこのダグラスくん!」
言い争っているのは、アルマちゃんと――
そう、ダグラスくんとアルマちゃんのパーティが見つけた、凄まじくちょうどいい人材。
それはリリーシャちゃんのことだ。
新人ながらも、魔術をいくつも習得していて年齢も近い。
というか、なんならアルマちゃんとは同い年。
こりゃあスカウトするしかねえ、と話を持ちかけたらこの始末。
「むきー! アタシ、品行方正を意識しているつもりだったけど、まさかこんなに”合わない”人がいるとは思わなかったわ!」
「私もです! なんなのですか、このちんちくりん! 生意気です!」
「ちんちくりんはそっちもじゃない!」
「ふん!」
「ふん!」
と、こんな具合に、さっきからずーっと言い争いをしているのだった。
結果、通りかかった私にダグラスくんが助けを求めてきたわけ。
そりゃあ気まずそうに視線をそらすわけだ。
「まさかあそこまで相性が最悪だとは思わなかったな……」
「そう? むしろ相性は最高にいいと思うけど。喧嘩するほど仲がいい、ってやつ」
「そうかぁ?」
「そこは、付き合いが長くなれば自然と打ち解けるよ。まぁ……表面上でいがみ合うのは変わらないと思うけど」
なんというかこう、雰囲気でわかるんだよね。
アレは、如何にも喧嘩しながら仲を深めるやつだ……と。
とはいえ、それだと困ってしまうこともある。
「つっても、遠征はすぐにでもしたい……わけっすから」
「そうだね。長々と仲良くなるのは待ってられない――そこで!」
「……なんか嫌な予感がしてきたぞ?」
ふふふ、私はいい予感しかしないよ。
というか、興が乗ったら即行動は燃え尽き少女の鉄則だ。
昨日アルマちゃんとああいう会話をした手前、その行く末を見届けたいという気持ちもある。
ちゅーわけで!
「私もパーティに参加して、みんなをサポートしてあげよう! 報酬はいらないからね!」
アルマちゃん達のチームに、私も助っ人として参加することとなった。
もちろん、あくまで何かあったときのバックアップと手伝いが主目的。
主体的に行動するのはアルマちゃん達で、私は後方からニヤニヤ見守っているだけだからねぇ。
なお、リリーシャちゃんは私が後方で見てると言ったらパーティ加入を承諾してくれた。
……ところで、アルマちゃん関係でリリーシャちゃんに対して気をつけなきゃいけないことがあったはずなんだけど、なんだっけ?
■
――で、そもそも遠征でアルマちゃん達は何をするつもりだったのか。
まぁ話としては単純で、遠くの村に厄介な魔物が出て討伐依頼が出たという、よくあるやつ。
出てくる魔物は四等級――現在のダグラスくんの等級――くらいの冒険者が倒すのが適正。
ダグラスくんはぶっちゃけ三人の中で一番弱いから、この三人なら問題はないだろう。
なお、弱いとはいってもスカウト能力はすでにほぼ一流と言っていい上に、三人のまとめ役として優秀だからダグラスくんはなくてはならない存在だぞ。
「でーすーかーら! 包丁を使う時はもっと丁寧に扱ってください、指を切っても知りませんよ!」
「あら、問題ないわ。だって指の耐久度だけを魔力で強化してるから、今の私が全力で包丁を振り下ろしても傷一つつかないもの!」
「くっ……普通に羨ましいですよ!」
「ふふーん!」
遠征日程は三日。
ぱぱっと行って討伐させて、それでおしまい。
道中近くにサンフラの街があり、ついでにラスルくんへ挨拶しようか、なんて話もある。
ラスルくんはあの特訓以降、時折手の空いてる時にフェニハナへやってきてダグラスくんと二人で訓練をしているそうだ。
まだまだ上級強化には届かないけど、頑張ってほしいね。
「よーしできたわ! スパイスたっぷり牛すじカレー! お肉の食感がいいのよ!」
「まさかアルマさんが料理を作れるなんて……」
「カレーしか作れねぇけどな。こないだからずっとカレー食わされてるぞ、俺。しかも死ぬほど辛い」
さてさて、今は夜。
今日の移動の日程を終え、夜営の準備も終えた三人は楽しく料理を作っていた。
作っているのはアルマちゃんお手製カレー。
私に教わって以来、カレー作りにドはまりしているらしく、それはもう楽しげに料理を作り上げたようだ。
んで、私は三人が料理をしているのを見守りつつ、あるものを準備してこれから作るところだ。
「あ、お師匠様は何を作るのかしら!?」
「ふっふーん、これはねぇ……コロッケだよ」
カレーに浸しても美味しく、単品で食べても美味しい。
そんな副菜を作ろうと思って色々考えた結果、これに行き着いた。
ハンバーグも考えたんだけどねぇ、牛と牛が被ってしまうため、今回は無しだ。
「あ、アタシお手伝いするわ! お師匠様の料理って本当に美味しいもの!」
「……お噂はかねがねお聞きしております。私は従者としてのスキルもシャロネ様やお母様から授けられていますから、お力になれるはずです。ぜひ、勉強させてください」
んで、結果として案の定二人がそうやって名乗り出る。
「アタシがやるわ!」
「私におまかせを、ミっちゃん様!」
「はいはい、二人で一緒にお願いね」
というわけで、三人で仲良くコロッケのタネをつくることに。
こーねこね、と捏ね上げていくが――
「ふふん、どうかしらこの形! とってもよくできていると思わない? やっぱり料理は見た目が映えるといいわよね!」
「ふん、何を言っているのですか。料理は質よりも数です。多くの人をいっぺんに満足できるよう、効率を最優先にするべきです」
ここでもやっぱり、二人は犬猿の仲なのだった。
しかしアレだね、こないだは青春について二人で思いを馳せたけど、アルマちゃんの青春は何ら問題なさそうだね。
「……ダグラスくんも手伝う?」
「……遠慮する。皿の配膳だの、やることはまだあるだろ」
なおダグラスくんをさそったら、ぶっきらぼうにそう断られてしまうのだった。
旅に……出ます!
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