異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
出発から数日、アルマちゃん達御一行は順調に旅を進め、予定通りに村へ到着した。
そこは山奥の静かな村で、村民たちはいい人だ。
よそ者のアルマちゃんたちを、親切に受け入れてくれてくれた。
んで、早速村長の家に通されるアルマちゃん達、私は別に同行しなくてもいいんだけど、せっかくなので一緒に話を聞くことに。
これで雰囲気がよそよそしかったら、念のため情報をあつめようかな、ともなるんだけど。
その心配はいらなそうだしね。
「今回は、依頼を受けてくださり本当に感謝しますじゃ、冒険者の方々」
「いえ、私たちはするべきことをしたまでよ。改めて自己紹介するわね、私はアルマ」
「リリーシャと申します」
「……ダグラスだ」
三人とも、実に素直な感じだ。
ダグラスくんは口こそ悪いものの面倒見はいいし空気も読める。
こういう時も、決して自己紹介を怠ったりしない。
「……ええと、そちらの方は」
「ああ、私は気にしないで。この子たちが心配でついてきちゃっただけだから。まぁ、何かあったらその時は期待してて」
――で、私は名乗りません。
一人だけ失礼な人だ。
でもまぁ、不死の竜姫の名前を村の人が知っていたら、間違いなく私に話を振ってくるだろう。
それだと今回の討伐依頼をアルマちゃんパーティが受けた意味、ないからね。
「で、では早速ですが……」
さて、話をまとめるとこうだ。
村の近くに、ゴブリンが住み着いて巣を作ってしまったらしい。
まぁ、よくあるといえばよくある話。
依頼内容でもそれは知らされていたし、そこから特別逸脱する内容もない。
ぶっちゃけ、これだけならそもそも話を聞く必要すらなかったくらいだ。
でも、一点だけ気になることが。
それはゴブリンを村人が発見した経緯である。
ただ、そのことをアルマちゃん達は問いかけなかった。
「ちょっと質問、二匹でゴブリンがウロウロしているところを発見して、後を追ったら巣を見つけたんだよね?」
「え、ああはい、そうですじゃ」
「りょーかい」
「……?」
その様子に、不思議そうなアルマちゃん。
私は先を促した。
このことは、村人たちの前でする話じゃない。
ただ面倒なことになったなー、と考えつつアルマちゃん達のやり取りを眺めるのだった。
■
「それにしても、なんだかちょっと因縁を感じるわ。初めての遠征でゴブリン退治なんて」
「因縁ですか? まさかゴブリンに厭らしいことを……」
「されてないわよ! というか、ゴブリンはそういうことしないらしいわよ!?」
「で、ですがシェリブロで……」
ごめんゴブリン、ごめん……とシェリブロの風評被害がこんなところでもゴブリンを苛むことに頭を痛めつつ。
私とアルマちゃんパーティは森の中を進んでいた。
一番前は斥候のダグラスくん、その後ろにアルマちゃんとリリーシャちゃん、一番うしろを私……という構成だ。
「私、初めて戦った魔物がゴブリンだったのよ。お師匠様と、ダグラスに助けられたわ」
「へぇ、奇遇ですね。私もフェニハナへ来る途中、ゴブリンの群れと出くわしました。それが初戦闘でしたが、まとめて焼き払ってあげましたよ」
「ぐ……群れを焼き払うなんて、私よりやるじゃない」
「ふふん」
へー、フェニハナに来る前にもゴブリンの群れとリリーシャちゃんが戦ってるのかぁ。
多分、馬車での移動中に遭遇したんだろうな。
うーん、そっかぁ。
「……こっちだな。ゴブリンの足跡が二つ分ある、話にあった通りだ」
「了解したわ。このまま巣まで追えそう?」
「八割型追えるな。見失ってもまた見つけることはそう難しくもないだろう」
「だったらそうね……ここで一旦休憩にしつつ、作戦会議はどうかしら」
「任せます」
「了解」
それにしても、アルマちゃんはリーダーが似合うなぁ。
ぶっちゃけて言うと、リリーシャちゃんも結構前に出るタイプだ。
従者に憧れてるといっても、本質的に従者として後ろに控えるよう教育されてきたわけではない。
だけど今回は、アルマちゃんたちがリリーシャちゃんをパーティに誘っている。
だから基本方針を誘った側に委ねると、リリーシャちゃんが判断してくれているため、いい感じに回っているみたいだな。
まぁ、少しでも気になるところがアレば噛みつくだろうけど。
隙を晒したくない……という考えもあるかもしれない。
どっちにしろ、まだまだ馴染めてはいないなぁ。
「まず、アタシはこのまま今日中にゴブリンの巣をどうにかしたいと考えてるわ」
「異論はねぇよ」
「今ここでそれを決めるのは早計ではないですか? 巣の全容を確認してからでもいいはずです」
「もちろん確認はするわよ! あくまで現状の方針って話!」
そこから、ちょっとやり取りはぎくしゃくしながらも、作戦自体は無難にまとまる。
偵察して、倒せそうなら倒す。
基本はリリーシャの魔術に頼りつつ、アルマちゃんがそれを護衛。
ダグラスくんは周囲の警戒。
まぁ、これ以上に無難な戦術はない。
「じゃ、決まりね! 早速行動を再開するわよ!」
「わかりました」
「……ちょっと待て」
で、話がまとまったと思ったら……ダグラスくんがこっちを向いた。
「そこのドラ娘が、わざわざゴブリンが二体いたことを村長に確認した理由が気になる」
「なんでかしら?」
「そんなに大事なことなのですか?」
「ここまで、一度も俺達の依頼に言葉を挟まなかったのに、そこだけ言葉を挟んだのが不思議でならねぇんだよ。何より――」
ダグラスくんは私を指さして、いう。
「そのニヤケ面で、何もねぇってことはねぇだろ!」
「ちっ、バレたか!」
「隠すつもりはないわよね」
「ないですね」
ええい、まさかダグラスくんが目ざとかったことに嬉しくなってたらバレてしまうとは。
まぁアルマちゃん達の言う通り、隠すつもりはなかったけどさ。
なんなら指摘されなかったら、私から話すつもりだったけどね。
なにせ、ここが分岐点だから。
でも二人とも、ダグラスくんが指摘するまで気付かなかったじゃーん!
こほん。
「どうして不思議に思うのかな? 私が気にしてる以外の理由で、教えて?」
「……ゴブリンが二体で行動するって話を、俺はあまり聞いたことがねぇ」
「そもそもゴブリンは群れない魔物だからね」
「そうなの? 巣を作ってるのに?」
「それは
これ、結構知られてないんだけどね。
今度ゴブリンの風評被害払拭のためにも、ゴブリン退治の話をシェリブロに入れるべきやもしれないな。
シェリブロでの啓蒙が、馬鹿にならない時代がやってきてしまうのか……?
「ゴブリンが外に出るのも、基本的には気まぐれが理由。食料を探しに行ったり、外に興味を持ったからそうしてるだけ」
「……じゃあ、何が理由なんだよ」
「ここまで情報が出てて、ダグラスくんの知識があれば答えは出てるんじゃない?」
なんだったら、アルマちゃんとリリーシャちゃんも頭はいい。
優等生の集まりだから、こうして少しヒントを出すだけでも答えにはたどり着く。
「このゴブリン達には、何かあるということでしょうか」
「自分の意志で二人一組を組まないなら、誰かの指示が必要なはずよ」
「……ゴブリンが、
さて、冒険者をしていたら、こういうことは時折起こりうることだ。
今回は村人たちが優しい人ばかりだったからよかったけど、場合によっては村人が騙してくるなんてこともある。
そしてそうでなくとも、今回は村人が勘違いをしていた。
「はっきりいうと、今の君たちじゃ今回の依頼は達成できない。どうする?」
アルマちゃん達に不手際があったわけではない。
村人たちに責任があるわけでもない。
しかし、結果としてアルマちゃんたちはババを引かされてしまった。
果たしてそれに、三人はどういう結論を出すのか。
頑張れ若者。
これもまた、
今回の話の終盤にはいっていくので真面目な感じは続きます。
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