異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
「――不死の竜姫に任せるべきだ」
「……でも、ここまで来て全部お師匠様任せだなんて」
「…………」
三人の意見は割れた。
潔く私に丸投げしようとするダグラスくん。
自分たちにできることを模索したいアルマちゃん。
そして、結論を出せないでいるリリーシャちゃん。
三者三様って感じだ。
「……ミっちゃん様は、いかがお考えですか?」
「私のことを、頑なに名前で呼ばない子がいるなー、と思っています」
「た、確かにそのとおりだわ!」
「自分の考えを語るつもりはねぇって言ってるだけだ! 脱線してんじゃねえ!」
そんな私の名前を呼ばない子の発言で、話を軌道修正しつつ。
「俺達の手に負えねぇんなら、どっちみちこいつがいなくても、それを判断して撤退してるだけだ。それができたかは、やってみなきゃわかんねぇが……最終的な結論は変わらねぇ」
「だとしても、自分たちにできることを模索したはずよ! そして現に今、模索してる!」
「なら、なにかいい考えはあるのか? アルマ、下手すりゃ俺達の命があぶねぇんだぞ。そのリスクをお前は冒すか?」
ダグラスくんの意見は尤もだ。
非常に堅実で、そして何より理にかなっている。
「冒険者として上を目指すなら、困難から逃げるわけにはいかないわ! 仮に本当に撤退以外の選択肢がなかったとしても、検討せずに帰るのは私たちの冒険者としての未来にかかわるのよ!」
「……だとしても、俺にこれ以外の選択肢はねぇと思うがな」
「情報が足りなさすぎるわ。まずは情報を集めるの。リスクの判断は、それからよ」
アルマちゃんの意見は急進的だ。
一見すると強引で無茶な判断に思えるが、冒険者は冒険をする職業である以上、それを全うしているとも言える。
「……リリーシャちゃんは、どう思う?」
「え、あ……えっと。……申し訳ありません、ミっちゃん様。私は……二人と比べて、経験が足りていないようです」
「そりゃ、これが実質的に初めての冒険だからね」
考えてみれば、リリーシャちゃんは冒険者になってまだ数日しか経っていない。
いくら実力の近い新人同士と言っても、アルマちゃん達とは経験が違う。
ところで、緊張からか取り繕う余裕がなくなって私の胸に視線が行ってるのがバレてるぞ。
二人が気づく前に真面目さを取り戻すんだよ。
あと、デカパイを見て安心してちゃだめだよ!
いや、結果としてリリーシャちゃんは覚悟を決めたみたいだけど。
「……ふぅ、あの! お二人とも!」
「なにかしら?」
「あん?」
「……事態は逼迫しています。でしたら、
その言葉に、二人の視線が――私へと向けられた。
……なるほどね。
「お師匠様は、こういった統率されたゴブリンを討伐した経験があるのよね? それなら、よければアタシ達にその情報を教えてくれないかしら。お礼は……あまりできないけれど」
「そうだねぇ」
別に、教えることは問題ない。
お礼だって必要ないと思う。
ただ、私はこの子達を導く立場だ。
お師匠様だ。
だからこそ、言わなくてはいけないことは色々あって――どこから話したものかなぁ、と考える。
しかし――
「……それに」
私が何かを言う前に、アルマちゃんは続けた。
「ええと……自分でも、なんて言えばいいのかわからないのだけど。お師匠様だって、
「……」
「違う。えっと、違うの。そういうのがいいたいんじゃなくて、アタシは――」
やがて、アルマちゃんは言葉を選びながら、ぽつりとこぼした。
「一緒に……いてほしいの、お師匠様に」
ちょっとびっくりしちゃったね。
まさか、そんなふうに言われるとは思わなかったから。
私は部外者だ。
この三人を見守る立場で、三人が困っているなら助けなくちゃ。
今回だって――そうなんだ。
だけど……
「……そうだね、まず……こういう統率されたゴブリンの巣には親玉がいるんだ。その親玉を倒すのに、三人は決定打がない」
「でしたら……他のゴブリンはどうなのでしょう。ゴブリンと言ってもいくらか種類は存在しますが、大抵のゴブリンなら私たちだけで対応可能なはずです」
「
「……おい、そりゃあ」
「――今は気にしてもしょうがない。さて、状況はわかったかな?」
私は、素直に三人の質問へ答えることとした。
こうやって必要な情報を与えてしまうと、ほとんど答えを誘導するようなものだけど、仕方がない。
アルマちゃんが、私のやりたいようにやれ、と言ったんだから。
「なら、取りうる作戦は決まっているわ。アタシ達が巣を攻略できない理由が、ボスに決定打がないのだとしたら……その決定打を持つ人に力を借りればいい」
「……それ以外の対処なら、私たちだけでも可能、です」
「しょうがねぇな」
――三人が、私を見た。
「力を貸して、お師匠様。――貴方も、アタシたちのパーティに加わったメンバーの一人よ。だからお師匠様にも、力を振るってほしいの」
「……わかったよ。確かに言ったもんね、私もパーティに参加する……って」
そう言われたら、否定はできない。
私は苦笑しながら、アルマちゃんの要請を受け入れた。
■
――作戦は、非常に単純なものだ。
まず、リリーシャちゃんが魔術で遠くから攻撃を仕掛け、ゴブリンを釣り出す。
おびき寄せられたゴブリンはリリーシャちゃんの魔術とアルマちゃんの剣で対応。
アルマちゃんは、リリーシャちゃんの護衛も兼ねる。
その間に、ダグラスくんと私が巣に侵入。
ダグラスくんが斥候して親玉を探し、私が親玉を倒す。
つまり、アルマちゃんたちは陽動。
これが今回、三人の提案した作戦だった。
ぶっちゃけ、私一人でも同じことは容易に可能だ。
でも、それだとただ私が仕事をしただけになってしまう。
ああやって三人に依頼の達成は不可能だと告げた時から……私は三人の”行動”に期待をしていたんだ。
それらが役に立つ必要はない。
ただ、三人が今回の冒険で経験を積めるように、考えて行動を起こしてほしかった。
我ながら、意地悪な考えだよね。
――決行は、巣に到着して最低限の偵察を済ませた後、すぐに行われた。
リリーシャちゃんの魔術が巣に叩き込まれ、作戦開始。
私とダグラスくんは、巣にこそっと潜入する。
「……よし、いくら統率されているといっても所詮はゴブリンだな、こっちに気付いちゃいねぇ」
「まぁそうだねぇ」
侵入自体は比較的用意だ。
ゴブリンの多くは迎撃に出ていて、残ったゴブリンもこちらに気付く様子はない。
「それにしても……びっくりしたよ、アルマちゃんにあんなこと言われるなんて」
「あいつ、相当アンタのこと気にしてたからな」
「私もまた、そうであるように……ね」
「似た者同士だ……つってたな」
私の言葉に、ダグラスくんはそう返す。
そういう話はやっぱり聞いてるわけね。
アルマちゃんの秘密はどこまで知ってるんだろう。
あまり本気で隠しているわけではないから……ある程度察してるとか、そんなところかな。
貴族であることは知っていても帝国貴族であるとは思っていないとかそんな感じ。
「アルマちゃん自身……どうしてそういったのか解ってないんだろうね」
「だろうな。あいつ自身が、自分がどうしたいかって悩みに答えを持ってないんだから」
「だね。……ダグラスくんも、そういうのに理解があるタイプ?」
「俺はアンタ等みたいに、青春とやらをどこかに置いてきたつもりはないが……」
話をしながら、慎重に進む。
敵の警戒が薄いのもあって、話をする余裕はあるが、ダグラスくんはもともと慎重なタイプだ。
その状況でも、油断はない。
私? 私はまぁ……うん。
ともかく。
「……俺に、青春を謳歌する権利があるとは思ってない」
「なるほど、ちょっと似てるんだ……私に」
「かもな」
魔力の気配を感じる。
もうすぐボスのところまで到着するだろう。
外では派手に魔術の炸裂する音がして、アルマちゃんとリリーシャちゃんの活躍をこちらまで届かせている。
今のところは、問題なさそうだ。
「よし、それじゃあボスを討伐してくる。ダグラスくんは、ここで待機」
「解ってるよ……頼んだぞ、不死の竜姫」
「次に名前を呼ぶ時は、ちゃんとミツキって呼ぶんだぞー」
というわけで、私はボスのゴブリンと戦うべく、天翼を広げて飛び出すのだった。
次回で今回のゴブリン退治がおしまいです。