異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
私は、女性的なあれやこれやを一通り叩き込まれている。
礼儀作法、ダンス、他習い事的なあれこれ、あと私がやりたかったので料理。
しかし一つだけ、何もかもわからないことがある。
ファッション――わからぬ。
だって、服は全部使用人が用意してくれたから!
貴族の服だから! いま着てる平民の服との違いなんて……わかりません!
しかし世の中は無情である。
万年ノースリショーパン女に、何故かファッションの巧拙を求めてくる層がいるのだ。
冒険者ガールズである。
「あ、ミツキちゃん、ちょうどいいところに」
「げぇっ! 女子会!」
「げぇ、じゃないでしょ。ミツキちゃんも女子でしょ!」
ギルドにやってきたら、知り合いの女性冒険者が複数人寄り集まっていた。
彼女たちの手には、多種多様な衣服が並んでいる。
ギルドではこうして、時折女子会が開かれることがあるのだ。
男子入るべからず、というかあまりに姦しすぎて近寄りがたい空間がギルドの一画に出来上がる。
当然私にとっても近寄りがたいが、私は彼女たちに見つかると強制連行される立場にあった。
「ミツキちゃんも見てほしいのよー。最近流行ってそうな服を色々用意したんだけど、どれがいいかなーって」
「私に聞く? ファッションだけは欠片もわからない私にそれを聞く!?」
「そうはいっても、ミツキちゃんってうちのトップ冒険者なわけよ。その言動一つがフェニハナの街の方向性を決める影響力があるって、解ってちょうだい?」
「いやだあ!」
実力的にはトップなのはわかるけど、そこはフォッサルの人たちでいいじゃん。
私よりずっと、この街の代表にふさわしい振る舞いをしているよ。
欠点はあんまり街に居ないこと。
現在も遠征中だし。
「その点ミツキちゃんはいっつも街にいるし、街をウロウロしてることが多いから、人目につくし。ミツキちゃんの選んだファッションが、この街ではトレンドになるの」
「人をサボってぶらぶらしてばっかみたいの昼行灯みたいって言ってる?」
「……なんでそこで自慢げなの?」
そういう人生を目指してますから……
ぷーたろーは褒め言葉だぜ……
「言っておくけど、私たちミツキちゃんのことは本当にすごい冒険者だって思ってるからね? ミツキちゃんがいるおかげで、街の男たちもおとなしいし、何よりその強さは本当に憧れなんだから!」
「い、いやぁ……そういうのはちょっと遠慮しておこうかなって……」
「なんで普通に褒めたら遠慮するのよ……」
そういうのが胃もたれする年齢になってしまったから……
前世含めるとね……
「何にしても、ミツキちゃんの判断なら納得するから!」
「そ、そんな事言われても……」
とはいえ。
ここまで渋っても、お姉様方(割と年下もいる)が引いてくれないことは経験上解っている。
言ってしまえばここまでのやり取りは、私が暇であることを確認するための儀式だ。
彼女たちが引いてくれる要件は、私がちゃんと確固たる目的を持って仕事をしようとギルドにやってきた場合。
後はガチで体調が悪い時だ。
後者はそもそもギルドに来ないことが殆どなんだけどね。
「とりあえずこれを見て!」
「み、見るだけだよぉ」
というわけで私、女子会に捕獲確定です。
おいこら後ろの女性陣、ガッツポーズしてるの見えてるんだからな。
「まずはこれ、影縫のローブ。隠密魔術の”消沈の歩先”が付与されたローブなの。主に魔術を使わない斥候向けの服ね」
「おー、”消沈の歩先”って結構難易度高い魔術じゃん」
「こないだの活性期で見つかったんですって。それと見て、これデザインもすっごくいいの。たとえば――」
まぁ、実際のところ。
ただファッションを見るだけなら、私のセンスなんてカス以下である。
いいんじゃない? しか言えない陽キャ彼氏と同じくらいのセンスだ。
しかしここは冒険者の女子会。
彼女たちが見ているファッションは、どれも
要するに彼女たちはデザインが似合うかどうかの他に、性能がいいかどうかという観点からも、ファッションの良し悪しを判断している。
「――って感じなの。どうかしら」
「うーん、個人的に思ったんだけど、むしろこのローブは魔術師向けなんじゃないかと思うよ。デザイン的にも魔術師向けのアクセサリと合わせやすいと思うし……」
「思うし……?」
「裾が長いから、身軽に動きたい斥候にとっては、ちょっと不安が残るかと……」
「ああ……」
なんて観点から、色々とアドバイスを送っていく。
女子は一にデザイン、二に性能なので、それ以外に問題が有っても目を逸らしがちだ。
それを指摘するのが、上位の冒険者である私の役目……なのかなぁ。
「うーん、じゃあこれ誰が着る?」
「あ、はいはい、私ちょっといいなって思ってたんですけど、斥候向けだと思ってたから言い出せなくて……」
なんにせよ、活性期に限らず、ダンジョンでは有用な装備が色々と出てくることが多い。
それらを彼女たちは色々買い取って、その中から欲しい装備を欲しい人が持っていくのだ。
なんでそんな事をするかと言えば、彼女たちは一つの大きなパーティなのである。
パーティ名はフェニハナガールズ。
一般的にはフェニガと呼ばれている、そっちのほうが威厳が感じられるからね。
命名者は私なんだけど、なんでそうなったかはまたそのうち……
「で、次が”火輪の衣”……」
「おお、火輪の衣じゃん。なつかしいなぁ! これ、私が昔使ってたんだよね。いい装備だよ」
「!?」
と、その時女子会の空気が変わった。
ざわ……とお互いに牽制を始めるような空気になる。
うおお……威圧感やばい。
なんでそうなったかと言えば、これが私のお古とおそろいだから。
「……リーダー、前回の活性期では私が一番頑張ったって、言ってくれましたよね?」
「あらそうだったかしら……でもやっぱり、リーダーは装備を善いもので固めて、威厳を保つべきじゃない?」
「リーダーリーダー、私からも言いたいことがあるよ! ミツキちゃんとおそろとかギルティだよ! もし持ってったら吊るすよ!」
リーダー――私に声をかけて、さっきまで女子会を進行していた子――の言葉はウソじゃない。
私に対する憧れは、フェニハナの女性冒険者なら誰しも持っているものだそうな。
そんな私がいいと言った装備は、女子の中でトレンドになり。
私が身につけていたことのある装備ともなれば、もはや殺してでも奪い取るという雰囲気――
「これ、火属性魔術以外の魔術を使う時にとんでもなく負荷がかかるから、君たち誰も火属性魔術師じゃないし、意味ないよ」
「ぐえー!」
――を、私は一発で鎮火させた。
いやまぁうん、私がこういう反応をすればこうなるって解ってたし、触れないのもそれはそれで後々波乱になるから、ここで解体しておくのが一番いいのだ。
全員残念そうに頭を抱える。
それでもいいから着たい、っていい出す人がいない程度には、真面目な冒険者パーティなのだ。
「じゃ、じゃあ気を取り直して次は――」
リーダーが話を元の方向性に戻す。
その後も和気あいあいと女子会は続き、私はなんとか専門外のファッションに関する話題を何とか乗り切った。
性能込だと、そっちで話を合わせていいから本当に助かる。
しかし実はこの女子会、問題はこの後にも残されていた。
というのも――
「それじゃあミツキちゃん、この装備の中で、どれが一番可愛いと思うかしら!」
――これだ。
全員が、自分のものになった洋服を手にして、私にアピールを送ってくる。
これこそ地獄、誰が一番似合ってるでSHOW!
日和ればイジられ、選んでも後々に響きそうなやつだ。
普段は性能とか自分との相性で何とか誤魔化すことにしているけど、胃は痛い。
とはいえ今日ばかりは私も、いい感じの解答を用意していた。
それは先程から女子会のテーブルの端に置かれ、誰も触れてこなかったアイテム。
「……この、
そう言って、猫の被り物を手に取った私に、全員から「えっ?」という視線が向けられた。
「今度、図書館で本の読み聞かせをするんだけど、その時に着てったら子どもに受けると思って……」
「ああ……」
全員が納得の視線を私に向けて、それからちょっと微笑ましいものを見る目をした。
子ども受けって言ったら……ごまかせますからね!
決して、可愛らしい理由で変なものを選んだ私を微笑ましく思っているわけではない……はず!
――なお、翌日からフェニガのメンバーは猫のカチューシャを揃って身につけ始めた。
折衷案!?
ガールという年齢かは不詳です。
スヤリス姫くらいの年齢不詳感。