異世界でチート美少女になればやり直せると思ってたけど燃え尽きた 作:暁刀魚
フェニハナの主要冒険者は私の他に、フォッサルという冒険者パーティがいる。
二人の一級冒険者を含む、上位冒険者パーティ。
これがまぁ、なんというかクセが強いというか。
私としてはちょっと怖いときもあるくらい、変人の集まりなのだ。
「お姉様ーーーーーー!」
突如として私に公衆の面前で抱きつこうとしてくる一級冒険者のサブリーダーとか。
ヒョイッと避けると、つんのめった少女はそのままくるくるとその場で転がって、そのまま手をついて一回転。
更にバク転を挟んでから三回転くらいひねりをいれて、着地。
そのままポーズを取って、周囲から拍手を集めている。
「おかえりー、シャロネ」
「はい! このシャロネ、只今戻りました!」
くるりとカールするピンク髪。
サイドテールの快活な少女、ミニスカートの下にスパッツみたいなものを履いて、上はへそ出しでキャミみたいな服の上にしっかりしたデザインの胸当て。
可愛らしい少女だ。
どことなく小動物っぽさがある。
名をシャロネ、さっきから話をしている冒険者パーティフォッサルのサブリーダーだ。
「お姉様に会いたくて、会いたくて会いたくて会いたくてー! 会いたかったですー!」
「もうちょっと語彙なんとかならない?」
性格は見ての通り。
悪い子ではないんだけど、私に対する執着が強い。
「でもでも、あたしのこの思いは本物なんですよ!? ずっとお姉様に会うことをモチベーションにここまでやってきたんです!」
「あーまー、うん。頑張れたなら良かったんじゃないかな? 私としても、人のモチベにまでは口出ししないからさ」
「んー! お姉様! 塩い! 素敵でございます!」
シャロネは、昔から私を慕ってくれている。
色々と私が面倒を見てきたから、というのもあるんだけど。
なんかこう、私の適当な空気感が好きみたいだ。
これだけなら、普通に私を慕ってくれているちょっとそっち系の子って感じなんだけど。
シャロネの場合はそれだけじゃない。
「お姉様のふとももも、うなじも、おみ足も、指先も素敵でございますー!」
「女体を堪能しようとするんじゃない。他の人にも同じコトしようとしてるでしょ」
「そそそ、そんなことありませんわー、お姉様一筋です!」
もう一度私の方まで寄ってきて、それからシャロネは頬を太ももに擦り付けようとしてくる。
シャロネは女体が好きなのだ。
しかも私以外の女体でも、えっちなら誰でもいい節操なし。
今は場所が公衆の面前だから直接のセクハラはしてこないけど、風呂とかで胸ガン見してるの知ってるんだからな。
まぁ私も、大きな胸は嫌いじゃないけど……他人のなら。
それはそれとして、こんなにオープンな性の発露を晒したりはしない。
近づいてくるシャロネからはさっと距離を取って、私は歩き出す。
「ああん、待ってくださいお姉様!」
「ギルドに行くんでしょ。私も行くから、一緒に行くよ」
「はあい! ところでフェニガの女の子たちみかけませんでした?」
「シャロネを避けてるんじゃない? そろそろ帰ってくるのは向こうも解ってるだろうし」
「そんなぁ!」
実際はダンジョンに潜ってるだけだろうけど、シャロネの場合ガチでフェニガの子達のところまで突撃しかねないので、黙っておく。
セクハラの輪を広げようとするシャロネから、フェニガの子達を守りつつ私は続けた。
「フォッサルの他の人達はどうしたの?」
「アンヌとジョセフは自宅に帰っております。リーダーは先にギルドに向かっているかと」
「あの人も真面目だねぇ」
フォッサルは四人パーティだ。
この街で生まれ育った二人の冒険者と、街の近くから出稼ぎにきた青年。
それとシャロネの四人で構成されている。
シャロネは遠くの出身だから、シャロネだけはちょっと立ち位置が浮いているな。
まぁ原因は私なんだけど。
それから、しばらくシャロネと雑談をしつつギルドに向かう。
隣に立たれると露骨に胸を見てくるのでそれは避けつつ、私が少し前を歩く。
それはそれで尻太ももに視線が行くけど、そっちはコートで隠してるから大丈夫。
話の内容は、まぁシャロネ達が何をしてきたか、だ。
フォッサルは基本、遠征で各地を回って報酬を稼いでいる。
これには資金稼ぎの側面もあるけど、旅が好きだからという理由も大いにあるらしい。
なので、フォッサルが出かける先は色々と面白い場所が多いのだ。
「へぇー、東の大渓谷にねぇ。新しいダンジョンが見つかったんだっけ?」
「ええ、ええ。大渓谷には初めていきますし、ダンジョンは興味深いですし。それに新興ダンジョンということで各地から人も集まっておりまして、色々ありました」
「そりゃ楽しそうだ」
「お姉様も一緒に来てほしかったです」
「気が向いたらね」
なんて話をしていると、直ぐにギルドの前だ。
そこには、何やらちょっとした人だかりができていた。
「むむ、あれは……リーダーですね」
「相変わらず目立ってるなぁ」
そしてそんな人だかりを貫通し、一人の巨漢が立っていた。
それは、もはや山としか表現できない代物だ。
実に二メートルを優に超える巨体、そんなバカなと思ってしまうほどの大きさ。
でもこの世界だとたまにいるんです、そういう人。
多分、他種族の血を引いてるんだろう。
先日の武人冒険者さんも二メートルはあったからな。
そんな巨体が、フルプレートアーマーを身にまとっている。
アレ夏は熱くないのかなぁ、と常々思っているのだが、どうなんだろう。
彼こそはフォッサルのリーダー――
「マグナさん、おつかれ」
「む、ミツキか」
「きゃー! ミツキ様よー!」
「君たち普段そんなコト言わないよな?」
マグナに群がっていた女性冒険者が、私にも黄色い声を上げる。
彼女たちはマグナを推している冒険者達だ。
なにせあのフルプレートアーマーの中には、結構なイケメンが入ってるからな。
「申し訳ないが、私はこれからギルドで用事があるのだ。失礼しても構わないだろうか」
「そういうところが素敵ッ!」
「では、失礼させてもらう」
そうして、マグナは女性陣を華麗に躱すと、こっちに向かって歩いてくる。
一方シャロネは、マグナ推しの女性陣に粉をかけようとして逃げられていた。
「久しいな、ミツキ。壮健か」
「うん、こっちはいつもと変わらずのんびりやってるよ。強いて言うなら活性期がちょっと前にあったくらいかな」
「む、それは……フォッサルとして、街の窮地に立ち会えなかったことを不覚に思う」
「いいっていいって、私も何もしてないし」
マグナは本当に真面目だな。
まぁマグナが真面目になるのは仕方のないところがある。
彼には故郷に将来を誓った恋人がいるのだ。
ギルドでの報告が終わったら、早速会いに行くことだろう。
そんな彼女に操を立てるため、彼はどんどん真面目かつ色ごとに動じなくなっていったのである。
最初のうちは、ちょっとえっちな感じになるだけで顔を真っ赤にしている純朴青年だったのに。
一体誰が原因なんだろうなぁ。
「今です!」
「おおっと」
その時、襲いかかるシャロネ。
回避する私(ひらりと動いて、ローブの下からノースリーブの肩がこんにちは)。
今度は地面に激突するシャロネ(スカートがめくれる)。
私もちょっとバランスを崩してよっとっと、と後ろに退く(後ろ=マグナの方)。
「あ、ゴメン。マグナ」
「――――」
と、振り返るとそこには結構近い距離にマグナがいた。
そして――凍りついていた。
こ、これは――助平を感知した時に意識を停止させて不埒から身を守るマグナの必殺技!
どうしてこんなところで急に!?
まぁ、凍りついてしまったマグナは仕方ない。
私は起き上がってきたシャロネの方に視線を向ける。
シャロネはぽんぽんと土埃を払うと私の方に寄ってきて耳打ちした。
「ところで
その一言は、私の心に燻っている火に、少しだけ薪をくべる言葉だった。
お姉様に対すると女体に対する興奮が同時に存在するタイプの厄介な人です。
でも善し悪しで言うと婚約者持ち純情イケメンを無自覚悩殺し続けたお姉様の方が悪いと思います。