もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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13話 死亡フラグ

独自設定注意!

 


 

ビルの一室、黒革のソファに2人の男が座っている。

 

「どうして()()()()()()()()公安が乗り込んできたんだ?」

 

1人は背もたれに身体を預け、葉巻を吸いながら虚空を見つめる、モミアゲが特徴的な初老の組長。

 

「計画実行の前日に殴り込まれる……そんな偶然があるわきゃねえ。お前らもそう思うだろ?」

 

誰が裏切り、公安に情報を漏らした?──言外に圧を滲ませ、立ち並ぶ組員を睨みつける。

しかし()()()()()()()()()()()()

組員は戸惑いながら互いを見合うばかりだ。

 

「丁度良いじゃねえか、親父。爺ちゃんの弔い合戦だ……糞マキマの心臓をもぎ取ってやる……!」

 

もう1人は前かがみで膝に肘を乗せている、老け顔だがまだ年若い若頭。

父親譲りのモミアゲがチャームポイントだ。

 

「できるだけ公安を殺して、マキマの心臓を奪う。心臓をソ連に流せばアンタたちの組は安泰だ」

 

やや大きめの赤いパーカーを着た金髪の女──沢渡アカネが、壁にもたれかかりながら淡々と言う。

 

「女の言うことを聞くのは癪だが、こうなりゃ仕方ねえ。公安連中がゾンビに気を取られてる内にマキマを仕留め──」

 

話を遮るように扉が乱暴に開かれ、組員が慌てた様子で駆け込んできた。

 

「大変です!バケモンがっ、目が4つのバケモンが凄え早さでこっちに来てます!」

 

 

◆◆

 

 

時間は少し前に遡る。

荒井とコベニは、デンジから無茶苦茶な要求をされていた。

尖兵として突っ込み、銃で武装したヤクザがうろつくビル内の、一階から最上階までを荒らし回れ──およそ新人に対する指令とは思えぬ内容。

 

しかしデンジは、今の2人ならできると確信していた。

 

「お前達の力はさっき試した通りだ。生かしたまま捕縛しようとか、んな(こた)ぁ考えなくていい。最悪殺したって正当防衛にするから、存分に暴れてこい」

 

2人は頷き、正面入口から堂々とビル内部へ乗り込んだ。

 

 

 

その頃、2階の組員たちは公安が突入してくるのを手ぐすね引いて待っていた。

エレベーターを停止させ、階段にはバリケードを設けた。

急拵えだが取り除くにはそれなりの手間がかかる。

障害物に気を取られた間抜け共を、上から蜂の巣にしてやろう……そういう算段()()()

 

入ってきたのは変な仮面(ペストマスク)を付けた2人の男女。

 

「2人だけかよ、余裕だな」

「階段の下まで来たら撃つぞ──今だ!」

 

階段に築かれたバリケードの前に立つ2人目掛けて、組員が引き金を引こうと一斉に立ち上がった瞬間。

 

「え」

 

仮面の2人は階段を使わずに跳躍し、2階へ到達。

そのまま近くにいた組員たちを蹴り飛ばした。

骨の砕ける音が響く。

 

「撃て撃て撃て撃て!!」

 

狙いも付けず散発的に放たれる銃弾はかすりもしない。

瞬く間に懐に潜り込まれ、1人、また1人と床に転がっていく。

そうして全滅したら次の階へ。

 

3階、4階、5階まできたところで、恐慌状態に陥ったヤクザの1人が機関銃を乱射する。

 

「うおおおおおおお!!」

 

弾丸の雨が空間を満たし、仮面の2人は咄嗟に壁の陰へと身を滑り込ませた。

 

「は、はは……! なんだ、やっぱり人間じゃねえか……! 弾ばら撒きゃ近寄れねえ……!」

 

息を切らしながら、僅かに安堵する男。

 

「荒井さん、仮面……」

「ああ、もう外そうか」

「この顔見られるの、ちょっと恥ずかしいんですけど……」

 

仮面を外して懐に仕舞う。

その顔には目が4つあった。

しかも左半分は普通だが、右半分の目には瞳孔も虹彩も無い──つまり白目だった。

 

「ここは俺が行く」

 

言うが早いか、荒井は死角から飛び出した。

身体を極端なまでに前へ倒し──ほとんど倒れ込むような勢いで、一直線に駆ける。

 

「なっ───」

 

機関銃を構えた男が目を見開く。

慌てて引き金を引き、再び弾丸が吐き出されるが──荒井の身体は既に銃架の真横にあった。

振り抜かれた蹴りが側頭部を打ち抜き、男はあっけなく気絶した。

 

 

◆◆

 

 

「組長! 早く逃げましょう!」

「バカ息子と女はともかく、俺達に逃げ道はねえ。このまま迎え撃つ」

 

銃すら効かない何者かが迫っているというのに、組長は落ち着いていた。

 

「俺も戦うぞ」

「お前らはチェンソーの心臓を取りに行け。その後はデンジの手が届かない場所まで逃げろ」

 

女子供を躊躇いなく殺すような連中にも、身内に対する情はあったらしい。

息子を生かしたい父親と、血縁と恋人のどちらを取るか決めきれない息子。

 

「……さっさと行け」

「クソっ……死ぬなよ親父!」

 

刀の武器人間(サムライソード)に変身した男は、沢渡を横抱きにして窓から飛び降りた。

それを見届けた男たちは、何も言わずに金属バットを手に取る。

 

全く勝ち目が無いわけじゃない。

組長含め、このフロアにいる人間は全員が“金属バットの悪魔”と契約している。

バットを振るう度に骨が罅割れるため乱発はできないが、当たれば凄まじい威力を発揮する。

少なくとも時間稼ぎには十分だ。

 

彼らが失念していたのは、“4つ目のバケモン”以外の敵戦力だった。

 

 

 

「ヘビ、受け止めて」

 

指の爪1枚を代償にして、地上に蛇の悪魔を召喚。

大量の人の腕が絡み合ったような口が開き、サムライソードと沢渡を受け止めた。

 

(とりあえず、ビルの包囲網からは出られた。これからどうする…?)

 

現在の沢渡アカネは、ソ連と繋がりがある反政府団体のエージェントである。

チェンソーの心臓を手土産にすれば、それなりの待遇で匿われるだろう。

しかし何の成果も得られず、日本公安にマークされるだけの結果に終わってしまえば……最悪、口封じもあり得る。

 

このまま2人きりで逃げる?

否、日本公安とソ連の両方から逃げ切る事は不可能だ。

 

「行くぞ、沢渡」

「………ああ、分かってる」

 

チェンソーの心臓を奪う。

確実に生き残る方法はこれしかない。

 

「何処に行くんだ?」

 

しかし、ほんの僅かな希望すら摘み取るように。

2人の前にデンジ(悪魔)が現れた。

 

 


 

なんかヤクザが主人公っぽく見える不思議

 

 

暴力のコベニ  *1

 

素顔

【挿絵表示】

 

戦闘時

【挿絵表示】

 

暴走

【挿絵表示】

 

 

 

*1
あくまでもイメージです

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