もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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15話 飲み会

「飲み会しない?」

 

昼でも薄暗い路地裏。

黙々と悪魔の死骸を解体するアキに、煙草を咥えた姫野が唐突に提案した。

 

「飲み会?」

 

アキは手を動かしたまま問い返し、姫野は紫煙を吐き出しながら答える。

 

「そ。4課全員集まったことないしさ、新人歓迎会と送別会を兼ねて…ね?」

「……アンタが飲みたいだけだろ」

「に〜」

 

バレたか、と悪戯っ子のように笑う姫野。

その横でアキは、肉塊の中から銃の悪魔の肉片を(つま)み上げてケースに収めた。

 

「まあ、俺も飲み会には賛成です。デンジさんに聞きたいこともありますし」

「聞きたいことって、マキマちゃんのこと?」

 

アキは小さく頷き、煙草を咥えた。

その先端に姫野が火をつける。

 

「マキマは本当に、世界中から狙われるくらい重要な存在なんでしょうか」

 

アキと姫野を含め、特異4課に残留したメンバーは、“チェンソー”の心臓が狙われているとの説明を受けている。

 

武器人間──悪魔の心臓を持つ人間で、人間・悪魔・魔人のどれとも違う特殊な存在。

人格は人間のまま、トリガーを引けば復活するという不死性を備えている。

確かに強力だが……外交的なリスクを負ってまで奪う価値があるのか?

 

「確かに。……じゃあデンジさんを酔わせて聞いてみよっか?」

「アンタ飲みたいだけだろ」

「正解っ」

 

 

◆◆

 

  *1

 

ヤクザ襲撃の翌日、私は夜の居酒屋にいた。

 

「カンパーイ!!」

 

特異4課の人たちとジョッキをぶつけ合い、中のお茶を一気に半分くらい飲み干す。

成人している人たちは美味しそうにビールを流し込んでいるけど、その中にデンジさんはいない。

仕事が立て込んでいるから遅れるとのこと。

 

(お酒ってどんな味なんだろ)

 

大人たちを眺めながらギョーザをつまむ。

うん、美味しい。

 

「おら、若いんだからもっと頼め!食え!」

 

左隣に座る大柄な男の人が豪快に煽ってきた。

この人も民間に移るらしい。

言われずとも沢山食べたいから、メニュー表を見て注文しようとするけど……

 

「う〜ん……」

 

困った、読める漢字が少ない。

ひらがなとカタカナなら問題ないけど、それだけじゃ分からない料理が結構多い。

……あ、“生姜焼(しょうがや)き”。

これは読める。こないだ作ったから。

 

指でなぞりながら確認していると、ふと“キスの天ぷら”という料理名が目に入った。

右隣に座る姫野先輩に聞くと、どうやらキスは魚の名前らしい。

 

「何を想像したのかな〜?」

「デンジさんとキスするとこです」

「あっうん……全部言っちゃうんだね」

 

残念、姫野先輩に対する恥じらいはもう無い。

デンジさん本人に聞かれなきゃ平気だ……そう思った瞬間、入口の引き戸が開いた。

 

「ワリぃ、遅れた」

 

黒いコートを脱いで壁に掛け、デンジさんがこちらへ向かってくる。

……さっきまでキスの妄想をしてたから、まともにデンジさんの顔見れないな。

 

「姫野、少し席詰めてくれ」

「は〜い」

 

しかも私の隣に座ってきた。

顔熱い……うわ、姫野先輩めっちゃニヤニヤしてる。腹立つ……。

 

「マキマ、なんか顔赤くね?」

「ちょっと店の中が暑いだけです」

 

 

 

しばらくしたら顔の熱さは引いたので食事再開。

パワーちゃんと唐揚げを奪い合っていると、デンジさんと早川先輩が飲み比べを始めていた。

姫野先輩も一応参戦してるようだけど、もう酔っ払ってるんじゃ…?

 

 

 

私がお腹いっぱいになった頃、ちょうど早川先輩もダウンした。

テーブルの上には空になったジョッキが沢山。

でもデンジさんはまだまだ余裕そうな表情で飲み続けている。

 

姫野先輩はだいぶ前から気持ち良さそうに寝てしまっていたけど───

 

(あっ)

 

のそのそと起き上がって早川先輩の元へ向かい、覆いかぶさるようにキスをかました。

 

(えっちだ…!)

 

唇を重ね合わせるだけじゃなくて、舌をくちゅくちゅと絡ませる濃厚なキス。

ドキドキしながら見入っていると、姫野先輩の体がビクリと震えた。

 

(えっ!?)

 

まさかの嘔吐。

姫野先輩のゲロが早川先輩の口に流れ込む。

 

「ギャハハハハハハ!!」

爆笑するデンジさん。

 

「トラウマだなこりゃ……」

同情する男性職員。

 

「うっ」

もらいゲロしかけるコベニさん。

 

「何か拭けるものを貰ってきます!」

慌ててゲロの処理をしようとする荒井さんと、店員さん。

 

「ウボァ」

ゲロキスに耐えかね、自分も吐いてしまった早川先輩。

 

ほんの少し前まで平和だったのにまるで地獄だ。

結局、その後は慌ただしく後始末をしてお開きになった。

 

 

 

家に帰ると、デンジさんは靴を脱いだところで大きく欠伸をした。

 

「……ねみぃ」

 

帰り道を歩く時の足取りはしっかりしていたし、受け答えも普通だった。

でも目はとろんとしている。

いつもより少しだけ……子供っぽいというか。

 

「俺、もう寝るわ」

 

スタスタと寝室まで歩き、ベッドへ倒れ込んでからわずか数秒で寝息が聞こえてきた。

私が思っていたより、デンジさんも酔いが回っていたらしい。

 

……大丈夫なのかな。

先ほどの大惨事(ゲロキス)を思いだし、不安になったのでゴミ箱をベッドのそばに置いた。

穏やかな寝顔を見つめていると、ふと良くない考えが浮かぶ。

今ならキスできるんじゃ?

 

デンジさん、起きてますか

 

耳元で囁いても反応無し。

完全に眠っている、はず。

ゆっくりと顔を近づけて──唇が触れる寸前、なんとなく嫌な予感がした。

 

予感に従って顔を離した瞬間、ガラッと勢いよく扉が開いた。

 

「なんじゃ、もうデンジは寝とるのか」

「デンジさんもいっぱい飲んでたからね」

 

何事もなかったかのように答える。

 

「私はデンジさんが心配だからここで寝るね。パワーちゃんも、おやすみ」

「むぅ………」

 

少し不満そうにしながらも、パワーちゃんは部屋を出ていった。

扉が閉まり、また静かになったところで、私は大きなため息をついた。

 

(悪いことはできないなあ……)

 

キスは別の機会にとっておこう。

そう思いながら、ベッドにもたれて目を閉じた。

 

 

◆◆

 

  *2

 

しこたま飲んだ翌日の朝。

デンジは()()()()()目を開けた。

なんだか今日は目覚めが良い。

 

朝食を作ろうと上体を起こすと、ベッドに寄りかかってマキマが静かに寝ている。

その横にはゴミ箱もあった。

 

(ずっとここにいたのか……)

 

軽く頭を撫でる。

起きる気配が無いので、そっとベッドに寝かせてから寝室を出た。

 

 


 

《公安に残った理由》

アキ→銃の悪魔を諦めきれない

姫野→アキを死なせたくない

コベニ→金が欲しい

荒井→コベニを死なせたくない

 

荒コベの関係や、コベニの家庭環境も深堀りしてみたいですが、本編優先で進行します!

 

 

《投稿頻度》

4月以降はおそらく投稿頻度がカスになります。

月1〜2回くらい?

完結まで年単位で掛かりそうですが、ちまちま書くので応援よろしくお願いします!

 

 

*1
マキマside

*2
デンジside 三人称視点

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