もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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18話 デート!

終盤、エ駄死注意。

 


 

  *1

 

 訓練を終えて、夕食。

 先生(岸辺さん)に傷を付けた事をデンジさんに報告した。

 

「マジ?2人とも凄えな」

「ワ(・)シ(・)ら(・)は最強じゃからな!いずれぶっ殺してやるわ!」

 

 威勢よく言い放つパワーちゃん。

 でもあの手はもう二度と通用しないだろうからなあ……また別の戦術を考えないと。

 

「ご褒美になんか欲しいモンとかあるか?」

「欲しいもの……デッ……少し待ってください」

 

 バカ正直に「デンジさんが欲しいです」なんて言えない。

 あまりにも直接的すぎる。

 他のお願い事……どうしようかな。

 

「ワシは血じゃ! 生きた人間の血をたらふく飲ませろ!」

「え〜、生きてる人間は無理だぜ? 牛で我慢しろよ」

「ちっ、しけてるのぉ」

 

 不死身の私ならパワーちゃんが満足するまで血を飲ませてあげられるけど、無駄に苦しむのは嫌だから言わない。

 

「マキマも決まったら教えてくれよ。別に急ぎじゃねえから、のんびり考えててくれ」

「はい、ありがとうございます」

 

 

 

 ご褒美は何にしてもらおうか。

 寝る時間になってもずっと考えていた。

 ベッドの上で寝返りをうって、丸まった姿勢になる。

 昔はこうしてポチタを抱きながら眠ってたっけ。

 

「……あっ」

 

 思いだした。

 ヤクザに飼われていた頃、ボロ小屋の中でポチタと話した妄想。

 

『朝ごはんは食パンにジャムを塗って食べて、ちょっぴりお洒落な服を着て買い物したい。

 夜になったら大きなベッドで、ポチタと私と、できれば格好いい男の人も一緒に眠りたい』

 

 『夜になったら〜』の部分はともかく、前半のデートは叶うかもしれない。

 

(明日デンジさんに伝えよう……)

 

 内容が決まって安心した私は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 デートはあっさり決まった。

 少し緊張してたのに、拍子抜けするくらい簡単に。

「行きたい場所があります」と伝えると、デンジさんは迷うことなく「いいぜ」と言ってくれた。

 

 そうして私たちはショッピングモールへやって来た。

 照明がやたら明るい。人が多すぎて少し窮屈で騒がしい。

 でも隣にデンジさんがいるから全然平気だ。

 

 

 

「これとかどうだ? 似合いそうじゃね?」

 

 デンジさんが紫色のロングスカートを手に取り、私の腰に軽く当てた。

 鏡を見ると、やっぱり見慣れた公安の制服(スーツ)とは全然違う。

 別人のようで新鮮だった。

 

「……いいですね」

「だろ? じゃあこれ買おうぜ」

 

 即決だった。

 デンジさんは他にもいくつかの服を私に合わせて、その全てをカゴに入れていく。

 しかも一度も値札を見ずにレジへ向かった。

 

「お会計、───円になります」

 

 高い。なのにデンジさんは顔色1つ変えずに支払いを済ませてしまった。凄い。

 罪悪感もちょっぴりあるけど、デビルハンターは給料高いらしいし、大丈夫なはず……だよね?

 

 

 

 ゲームセンターは……なんというか、正直言うとうるさかった。

 光と音がガチャガチャしている。

 だけどデンジさんは楽しそうだ。

 

「これやろうぜ!」

 

 デンジさんが1つの筐体を指差した。

 音楽に合わせて足元のパネルを踏むゲームらしい。

 

 いざ遊んでみると、単純ながら面白い。

 しかもデンジさんが「美味いじゃん」と褒めてくれるから、2曲目はつい調子に乗って難しい曲を選んでしまった。

 

「なっ、なにこれ〜!?」

「アハハハ! この曲はまだマキマにゃ早かったかもな〜」

 

 矢印(ノーツ)の流れる速度が異常に早いし、量も多すぎる。

 必死に足を動かしても追いつけない。

 私はクリアすらできなかったのに、隣のデンジさんはフルコンボ。

 悔しい。………でも楽しい。

 ゲームセンターの騒音にも、いつの間にか慣れていた。

 

「またやりたいです」

「な、やっぱ楽しいよなこれ。岸辺も昔ハマってたんだぜ?」

「へぇ〜…!」

 

 先生もゲームセンターに来るんだ。意外だった。

 

 

 

 フードコートで遅めの昼ご飯を食べることにした。

 かなり混んでいたけどなんとか席は取れた。

 

「「いただきます」」

 

 デンジさんはカレーライス、私はナポリタン。

 少しだけ食べ進めてから、向かいに座るデンジさんへフォークを持ち上げた。

 

「……あーん」

 

 サービスエリアの時の再現だ。

 ただし今度は私の方から。

 

「お、おう……」

 

 デンジさんは一瞬だけ驚いて、だけど素直に口を開けてくれた。

 少し多めにフォークに巻き付けたナポリタンを頬張る。

 

「美味しいですか?」

「ん…美味え」

 

 デンジさんの顔が少しだけ赤くなった……ような気がする。

 

「じゃあ次、マキマな。あーん」

「はい…あーん」

 

 味はちゃんと美味しいはずなのに、それよりもデンジさんの表情の方が気になった。

 

 

 

 ご飯の後も少しだけ買い物を続けた。

 気付けば、もうそろそろ帰る時間だった。

 

「最後に映画見ねえ?」

「でも、時間……」

「あ〜…少し遅くなってもたまにはいいだろ」

 

 ───マキマはもう帰りてえか?

 デンジさんの寂しげな視線が、そう言ってるような気がした。

 …うん、断れる気がしない。

 

 

 

 映画館の中は暗くて静かだった。

 同じ建物なのに、外の賑やかさがまるで嘘みたいだ。

 

 スクリーンが光り、予告映像が流れた後に目当ての映画が始まった。

 私たちが選んだのはテレビCMで流れていた、アメリカのアクション映画だ。

 

 普段は学校のマドンナにアプローチを掛けて、その度にあしらわれるちょっぴり冴えない青年。

 しかしその正体はアメリカ中で有名なヒーロー。

 

 ヴィランとの戦い。

 攫われるヒロイン。

 そして最終決戦。

 主人公は宿敵を見事に打ち倒し、ヒロインを華麗に救出して───濃厚なベロキスをかました。

 

(えっっっ…………!?)

 

 飲み会で見た先輩たちのキスとはまた違う。

 今思えばあれは姫野先輩が一方的にしていただけだ。

 だけどスクリーンの2人は、互いが互いを貪りあうようにして、溢れんばかりの愛情を共有している。

 

 なんだか恥ずかしくなって、隣のデンジさんの横顔に目を向ける。

 特別に驚くでもなく、照れるでもなく、真顔だった。

 

 暗闇の中だから? 映画を見ているから? 好きな人だから、自分がこうなる事を意識した?

 もしかしたらそれら全部かもしれない。

 とにかく……今のデンジさんはどうしようもなく格好良く見える。

 いやいつも格好良いけど、それ以上に凛々しいというか……“男性らしい”というか。

 

(〜〜〜〜〜っ!!!)

 

 じゅん、とお腹の下の方が疼く。

 声を出さないよう、少し顔を伏せて情動を必死に抑える。

 

 しばらく耐えていると、知らない英語の曲と共にエンドロールが流れ、それが終わると照明が一斉に点いた。

 

(よ、ようやく終わった………)

 

 もう帰ろう。早く帰って自分を慰めないと、頭がおかしくなりそうだ。

 

「今日は楽しかったか?」

「はい、とっても」

 

 本当に、今日は凄い体験ができた。

 でも次に映画を見るときは、パワーちゃんと一緒のほうがいいかもしれない。

 

 


 

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』大好き!

 

 

 

*1:
マキマside

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