終盤、えっち注意。
訓練を終えて、夕食。
「マジ?2人とも凄えな」
「
威勢よく言い放つパワーちゃん。
でもあの手はもう二度と通用しないだろうからなあ……また別の戦術を考えないと。
「ご褒美になんか欲しいモンとかあるか?」
「欲しいもの……デッ……少し待ってください」
バカ正直に「デンジさんが欲しいです」なんて言えない。
あまりにも直接的すぎる。
他のお願い事……どうしようかな。
「ワシは血じゃ! 生きた人間の血をたらふく飲ませろ!」
「え〜、生きてる人間は無理だぜ? 牛で我慢しろよ」
「ちっ、しけてるのぉ」
不死身の私ならパワーちゃんが満足するまで血を飲ませてあげられるけど、無駄に苦しむのは嫌だから言わない。
「マキマも決まったら教えてくれよ。別に急ぎじゃねえから、のんびり考えててくれ」
「はい、ありがとうございます」
ご褒美は何にしてもらおうか。
寝る時間になってもずっと考えていた。
ベッドの上で寝返りをうって、丸まった姿勢になる。
昔はこうしてポチタを抱きながら眠ってたっけ。
「……あっ」
思いだした。
ヤクザに飼われていた頃、ボロ小屋の中でポチタと話した妄想。
『朝ごはんは食パンにジャムを塗って食べて、ちょっぴりお洒落な服を着て買い物したい。
夜になったら大きなベッドで、ポチタと私と、できれば格好いい男の人も一緒に眠りたい。』
『夜になったら〜』の部分はともかく、前半のデートは叶うかもしれない。
(明日デンジさんに伝えよう……)
内容が決まって安心した私は目を閉じた。
デートはあっさり決まった。
少し緊張してたのに、拍子抜けするくらい簡単に。
「行きたい場所があります」と伝えると、デンジさんは迷うことなく「いいぜ」と言ってくれた。
そうして私たちはショッピングモールへやって来た。
照明がやたら明るい。人が多すぎて少し窮屈で騒がしい。
でも隣にデンジさんがいるから全然平気だ。
「これとかどうだ? 似合いそうじゃね?」
デンジさんが紫色のロングスカートを手に取り、私の腰に軽く当てた。
鏡を見ると、やっぱり見慣れた公安の
別人のようで新鮮だった。
「……いいですね」
「だろ? じゃあこれ買おうぜ」
即決だった。
デンジさんは他にもいくつかの服を私に合わせて、その全てをカゴに入れていく。
しかも一度も値札を見ずにレジへ向かった。
「お会計、───円になります」
高い。なのにデンジさんは顔色1つ変えずに支払いを済ませてしまった。凄い。
罪悪感もちょっぴりあるけど、デビルハンターは給料高いらしいし、大丈夫なはず……だよね?
ゲームセンターは……なんというか、正直言うとうるさかった。
光と音がガチャガチャしている。
だけどデンジさんは楽しそうだ。
「これやろうぜ!」
デンジさんが1つの筐体を指差した。
音楽に合わせて足元のパネルを踏むゲームらしい。
いざ遊んでみると、単純ながら面白い。
しかもデンジさんが「美味いじゃん」と褒めてくれるから、2曲目はつい調子に乗って難しい曲を選んでしまった。
「なっ、なにこれ〜!?」
「アハハハ! この曲はまだマキマにゃ早かったかもな〜」
必死に足を動かしても追いつけない。
私はクリアすらできなかったのに、隣のデンジさんはフルコンボ。
悔しい。………でも楽しい。
ゲームセンターの騒音にも、いつの間にか慣れていた。
「またやりたいです」
「な、やっぱ楽しいよなこれ。岸辺も昔ハマってたんだぜ?」
「へぇ〜…!」
先生もゲームセンターに来るんだ。意外だった。
フードコートで遅めの昼ご飯を食べることにした。
かなり混んでいたけどなんとか席は取れた。
「「いただきます」」
デンジさんはカレーライス、私はナポリタン。
少しだけ食べ進めてから、向かいに座るデンジさんへフォークを持ち上げた。
「……あーん」
サービスエリアの時の再現だ。
ただし今度は私の方から。
「お、おう……」
デンジさんは一瞬だけ驚いて、だけど素直に口を開けてくれた。
少し多めにフォークに巻き付けたナポリタンを頬張る。
「美味しいですか?」
「ん…美味え」
デンジさんの顔が少しだけ赤くなった……ような気がする。
「じゃあ次、マキマな。あーん」
「はい…あーん」
味はちゃんと美味しいはずなのに、それよりもデンジさんの表情の方が気になった。
ご飯の後も少しだけ買い物を続けた。
気付けば、もうそろそろ帰る時間だった。
「最後に映画見ねえ?」
「でも、時間……」
「あ〜…少し遅くなってもたまにはいいだろ」
───マキマはもう帰りてえか?
デンジさんの寂しげな視線が、そう言ってるような気がした。
…うん、断れる気がしない。
映画館の中は暗くて静かだった。
同じ建物なのに、外の賑やかさがまるで嘘みたいだ。
スクリーンが光り、予告映像が流れた後に目当ての映画が始まった。
私たちが選んだのはテレビCMで流れていた、アメリカのアクション映画だ。
普段は学校のマドンナにアプローチを掛けて、その度にあしらわれるちょっぴり冴えない青年。
しかしその正体はアメリカ中で有名なヒーロー。
ヴィランとの戦い。
攫われるヒロイン。
そして最終決戦。
主人公は宿敵を見事に打ち倒し、ヒロインを華麗に救出して───濃厚なベロキスをかました。
(えっっっ…………!?)
飲み会で見た先輩たちのキスとはまた違う。
今思えばあれは姫野先輩が一方的にしていただけだ。
だけどスクリーンの2人は、互いが互いを貪りあうようにして、溢れんばかりの愛情を共有している。
なんだか恥ずかしくなって、隣のデンジさんの横顔に目を向ける。
特別に驚くでもなく、照れるでもなく、真顔だった。
暗闇の中だから? 映画を見ているから? 好きな人だから、自分がこうなる事を意識した?
もしかしたらそれら全部かもしれない。
とにかく……今のデンジさんはどうしようもなく格好良く見える。
いやいつも格好良いけど、それ以上に凛々しいというか……“男性らしい”というか。
(〜〜〜〜〜っ!!!)
じゅん、とお腹の下の方が疼く。
声を出さないよう、少し顔を伏せて情動を必死に抑える。
しばらく耐えていると、知らない英語の曲と共にエンドロールが流れ、それが終わると照明が一斉に点いた。
(よ、ようやく終わった………)
もう帰ろう。早く帰って自分を慰めないと、頭がおかしくなりそうだ。
「今日は楽しかったか?」
「はい、とっても」
本当に、今日は凄い体験ができた。
でも次に映画を見るときは、パワーちゃんと一緒のほうがいいかもしれない。
『ジュマンジ / ウェルカム・トゥ・ジャングル』 大好き!