タイトルに「○話」表記を追加しました。
レゼの過去です。少し閲覧注意。
「Папа! мама!」
私はいつどこで生まれたのか。
その記憶はない。
記憶の始まりは刺すような冷たさ。痛み。極寒の川の中。
悪魔か、それとも両親か……とにかく何かから逃げていたのだと思う。
本来ならそのまま凍死していたはずだ。
だけど私は死ななかった。
拾い上げたのは神様なんかじゃない。
クソみたいな祖国だ。
かつてソ連には「秘密の部屋」と呼ばれる場所があった。
そこでは親のいない子どもたちが集められ、国家に尽くすための戦士へと作り変えられる。
少年少女に人権はない。
モルモットとして身体を弄られ、実験データを取るために何百人も犠牲になった。
私も住人の1人だった。
地獄のような環境の中にも善い人はいる。
私と同室の女の子──ミラがそうだった。
少し年上で、底抜けに優しい人だった。
「秘密の部屋」に入れられてから毎晩泣きじゃくる私を、嫌な顔ひとつせず慰めてくれた。
「いつかきっと、自由になれるよ」
今思えば、あの言葉はほんの気休め。
だけど何度も救われてきた。
「秘密の部屋」の目的は、悪魔の力を軍事に転用することだった。
死にかけの
「適性アリ」
検査の結果、私の体は
私は実験
希少だからと、教官たちから多少の優遇を受けられるようにもなった。
だけどミラは選ばれなかった。
ある時、1人の教官がミラを共同収容室から連れ出したことがあった。
しばらくして戻ってきたミラは、目を赤くしていた。
泣いていたの?
どうして?
大丈夫?
いくら聞いても、ミラは影のある微笑みのまま「大丈夫だよ」と言うだけだった。
そんなことが何回もあった。
何度目か、ミラが教官に連れ出されていたある時、別の教官が収容室に来た。
「ミラはいないのか?」
彼もミラを目当てに来たらしい。
何の用事ですか、と尋ねた。
……尋ねてしまった。
「アイツは───」
聞くことすら耐え難い内容だった。
ミラは教官たちの慰み者にされていた。
「運が良かったな、お前」
私はボムの“適合者”。
来週には手術を控えていて、決して傷付けるなと厳命されている。
だから私だけは無事なのだと、教官は下卑た笑みを浮かべながら言った。
動揺した私は、帰ってきたミラに問い詰めた。
どうして言ってくれなかったの
辛くないの
私は、私は───
ミラは首を横に振って微笑んだ。
「
あの行為に愛は無かった。
だから私はまだ純潔を散らしていない──気丈な彼女らしい“言い訳”だった。
本当は辛くて苦しくてたまらないだろうに、私の前ではおくびにも出さなかった。
それが悲しかった。
手術を終えた私が収容室に戻ると、ミラはいなかった。
彼女は適合者じゃなかった。
実力はあるのに、優しすぎて兵士としての価値も低いと判断されていた。
だから落ちこぼれとして魔人化の実験で使い潰され、失敗し、殺されていた。
ああ、この場所ではありふれた死だ。
それでも私は受け入れられなかった。
どうしてミラは殺されて、私だけが生きている。
姉のように、母のように慕っていた。
実力は私より優れていた。
私はたまたま適性があっただけだ。
ミラを守れなかった。
力を手に入れても、護りたい人がいないのでは意味がない。
あの時ミラを問い詰めたことだって、まだ謝っていないのに。
どうして、こうなったの───
ミラを喪い、私に残されたのは2つ。
新しく与えられた“レゼ”というコードネームと、殺戮兵器としての肉体だけだった。
秘密の部屋閉鎖後も、少しの期間を置いてから連れ戻され、結局自由にはなれなかった。
抜け殻のように任務をこなす日々。
考えることをやめて、命令に従うだけの毎日が何年も続いた。
そんなある日、チェンソーなる悪魔の心臓を奪取せよとの命令が下った。
上官に手渡されたターゲットの顔写真を見る。
思わず目を見開いた。
(ミラ……!?)
生き写しかと思うほどによく似ていた。
「……戦力として使えそうなら、連れ帰っても良いでしょうか」
なぜそんなことを口にしたのか、自分でも分からなかった。
この女の子はミラと似ているだけの別人なのに。
「好きにすればいい。ただし、チェンソーの心臓が最優先だ。そこを履き違えるな」
低く、冷たい声だった。
だけどあっさり許可されたのは意外だった。
心臓移植すら確約してくれた。
私の実績が多少なりとも評価された結果なのか、それともチェンソーの心臓にはそれほどの価値があるのか。
ただし監視役として、1人の教官がついた。
元日本公安のデビルハンターの男。
老いた今でも優秀だという。
「よろしくね」
教官にしては温厚そうな人物だった。
どうせ腹の中は真っ黒なのだろうけど……そんな事に興味はない。
私は与えられた任務をこなすだけだ。
Q.レゼの実年齢って?
A.不明。
原作52話で岸辺がアキに、レゼの正体を説明していた→アキは秘密の部屋を知らない?→レゼがモルモットだったのは結構昔の話?
てな感じで結構