もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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29話 ウェポンズ

  *1

 

都民の避難が粛々と行われていた頃。

ある会議室で、対刺客部隊のメンバーがマキマ(護衛対象)に向けて自己紹介を行っていた。

 

「宮城公安退魔2課、日下部です。よろしくお願いします」

「日下部のバディの玉置だ。よろしく」

「オレ吉田な。仲良くしようぜ」

「東京公安退魔2課の野茂だ。ウチ(東京2課)は遊撃に回るから、話す機会はそう多くないだろうが……ま、よろしく頼む」

「特異1課所属、サムライソードです。よろしくお願いします」

「同じく特異1課、沢渡アカネ。よろしく」

「先週から正式に特異4課に配属された、レゼです! 改めてよろしくね!」

「あっはい」

 

マキマは内心で「(護衛、多すぎない?)」と思った。

しかもこの場にいるのは各課の代表者だけで、実際には100を超えるデビルハンターが投入されるという。

悪魔は神出鬼没であり、日本全土をカバーするなら戦力は分散配置するのが基本だ。

他所に頼らず、自分の場所は自分で守れ───そんな風潮がある中で組まれたのが、この特別チームである。

つまり、一部隊の戦力では対処できないと見込まれるほどの激戦が待ち受けているわけで。

気安い会話の裏にも、仄かな緊張が滲んでいた。

 

「では早速ですが、作戦を共有します」

 

日下部が立ち上がり、説明を始めた。

 

「まず、君たち2人には囮になってもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

ビルの屋上から、4人の男女が無骨な通信機器を介して会話している。

 

「いいですか、お子様諸君。狙うのはターゲットだけにしろという指示です。くれぐれも戦果を欲張らないこと」

「はいはい、分かってるよ」

 

灰色の髪にメガネを掛けた男が淡々と釘を刺し、黒髪の学生風の美青年が気だるそうに返す。

 

「オイ、私をお子様って言ったか? 私は今年で80歳だっつったろ!」

「ん〜ババアだなあ」

 

毛先が跳ねた茶髪の女が噛みつき、黒い長髪の胡散臭い男がからかうように言った。

 

「ババアじゃない! 私はババアから遥か遠い存在だ。老いず強靭で死なない……まさに人間の上位種。そんな私が家畜のように扱われるなんざ───」

「とにかく」

 

メガネの男が強引にババア談義を打ち切る。

 

「人権が欲しいのは皆同じ。この仕事が終わったらちょっとしたパーティーでも───お、ターゲットが出てきましたね」

 

メガネの男が双眼鏡を覗き込みながら言う。

その視線の先、公安本部からマキマとレゼが出てきた。

 

「……2人だけ? 公安は何を考えてやがんだ?」

「離れたところにも戦力がいるのでしょうね。もたつけば救援が来てゲームオーバーです」

 

茶髪の女が眉をひそめ、メガネの男は冷静に分析する。

 

「……へっ、おもしれーじゃんかよ!」

「俺が焼き殺すから、その隙に心臓取ってくれ」

 

学生風の男は不敵に笑ったが、その顔には敵陣に突っ込む緊張が滲んでいる。

対照的に、長髪の男は気軽な調子だ。

 

「分かりました。ターゲットがあの角を曲がったら始めますよ」

「じゃあそろそろだな。───っし、“ウェポンズ”作戦開始!」

 

剣、槍、鞭、火炎放射器。

それぞれのトリガーを操作し、4人の男女は変身した。

彼らもまたマキマと同じ、悪魔の心臓を持つ武器人間だったのだ。

 

建物から建物へ跳躍を繰り返し、まずは槍の武器人間が真っ先に2人のもとへ辿り着いた。

そしてビルの上から地上のターゲットに向けて、叩きつけるように槍を投擲。

激突までは0.2〜0.3秒。

常人の反射神経を優に上回る速度で放たれた一撃は、しかし後ろに飛んで躱された。

 

「(死角から攻撃したのに避けられた?)」

 

槍の武器人間は疑問符を浮かべたが、理由を考えている暇はない。

今の攻撃でこちらの存在が完全にバレた。

敵2人も変身を終えた。

今度は向かいのビルの上から火炎放射器の武器人間が現れ、地面へ両腕を突きだした。

彼の能力は下から上に向かって使うのが一番強いのだが、位置へつく前に逃げられては意味がない。

 

「焼け死んでくれ〜」

 

2つの噴射口から灼熱が放たれた。

放射された熱は乱反射を繰り返し、路地全体の温度を数百℃にまで跳ね上げた。

窓ガラスは急激な熱膨張によって粉砕され、コンクリートも表層が爆ぜた。

 

が、今度はレゼによって回避された。

ボムガールの能力は“身体の一部を爆弾にすること”であり、足裏や手のひらの表皮を爆発させれば曲芸飛行も可能となる。

レゼがマキマを抱いて地面スレスレを這うように飛び、熱風に焼かれる前に路地を脱出してみせたのだ。

 

ジジイ(サンタクロース)の出番は無いぜ!」

 

一難去ってまた一難。

脱出した先には剣と鞭の武器人間が待ち受けている。

レゼは上空への方向転換を試みるも、その前に両足首を切り捨てられた。

このままでは墜落する───レゼはマキマから右腕を離し、首のピンを引き抜こうとした。

 

「きゃはは!」

 

レゼがピンに指をかける直前、大きく飛び上がった鞭の女が腕を振るう。

バラ鞭がレゼの右腕を捉え、体勢を崩した。

再生失敗。

さらに剣の男がマキマを掴んでいた左腕も斬り落とし、鞭の女がレゼを叩き飛ばす。

 

分断された2人。

マキマは振り返らなかった。

四肢を切断されたレゼを置き去りに駆け出し、通り沿いのデパートへ逃げ込み……追いついた剣の男に首を刎ねられた。

 

その後間もなく、残る3人も追いついた。

 

「殺ったのか?」

「ああ、楽勝」

 

火炎放射器の男が尋ね、剣の男は首のない死体を一瞥してVサインを作った。

しかし3人の反応は薄い。

不意を突いたとはいえ、聞いていた情報よりもかなり弱かったためだ。

そのくせ死角からの攻撃を躱したり、どうもちぐはぐな印象を受ける。

 

そして何より……

 

「……なんだよ、その切り口」

 

鞭の女が呟いた通り、死体の断面をよくよく見ると、どこか無機質だった。

血こそ流れているが、まるで精巧に作られた人体模型のような───

 

「うっ!?」「なっ!?」

 

突如としてエスカレーターの影からペストマスクを被った男女が飛び出し、火炎放射器の男と鞭の女が痛烈に蹴り飛ばされた。

2人の身体は破砕音とともに店舗のガラスを突き破り、マスクの男女もそれを追いかける。

剣の男が振り返ると、さらに通路の奥から2つの人影が迫っていた。

それはダルマにして捨て置いたはずのボムガールと、殺したはずのチェンソーマンだった。

 

 


 

ウェポンズ

西側諸国が合同で飼ってる武器人間たち。*2

原作では画面外でマキマさんに支配され、VSポチタ戦でようやく本誌に登場したと思ったら、秒で蹴散らされた可哀想な奴ら。

サンタ(サンタじゃない)とも面識がある。

 

マネキンの悪魔

小説『バディ・ストーリーズ』に登場。

マネキンを操り、触れた者の容姿・能力・記憶をコピーする能力を持つ。

今回は予め血を仕込んだりして、可能な限り人間に近づけた、映画撮影に使うような特注の人体模型を素体にした。

コピーできる能力や記憶には限界があり、例えばクァンシのようなフィジギフの完全再現は無理。

複数のマネキンへの同時コピーも可能だが、数には強度に応じた限度がある。*3

今作のマキマとレゼも、数を2体に絞った上で性能も落とすことでなんとかコピーできた。

 

 

 

*1
三人称視点

*2
捏造設定

*3
数の制限は捏造設定。劣化であっても、無制限にコピーできたら強すぎる。

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