今回も短いです。
…というより、最初の話が長かっただけかも。
ご飯をたらふく食べて、心地良い車の揺れと共に眠ることしばらく。
「おーい起きろ、着いたぜ」
「んぅ……」
デンジさんに揺り起こされた時には、もうデビルハンター東京本部に着いていた。
建物に入るとまず女の人にシャワー室へ案内されたので、念入りに血と垢を洗い流し、用意された制服に袖を通す。
温かい風呂と綺麗な服なんて何時ぶりだろう。
「さっぱりしたか?」
「最高にさっぱりしました」
「そんじゃ次はマキマの同僚と顔合わせだ」
デンジさんに連れられた部屋に入ると、若い男の人が立って待っていた。
長めの黒髪を後ろで一つにまとめた珍しい髪型で、身長はデンジさんと同じくらい。
そして、デンジさんと系統は違うけどかなりのイケメン。
「こいつの名前は早川アキ、マキマの3年先輩だ。今日はアキに着いてって見回りしてくれ」
「私、デンジさんと一緒に仕事するんじゃないんですか?」
「そんなわけないだろ。デンジさんは特異4課の隊長だ、新人とは格が違う。早く見回り行くぞ」
「……はい」
「今日は仕事詰まってっから無理だけど、暇んなったら一緒に行こうぜ」
「はい!」
デンジさんと一緒に働けるなんて夢みたいだ。
浮かれながら人混みの中を歩いていると、前を歩く先輩に「ちょっと来い」と声をかけられ路地裏に連れてこられた。
先輩からのありがたい“ご指導”だろうか。
デンジさんが特別優しいだけなのかな。
「お前、なんで公安に来た。デンジさん目当てか?」
「はい」
「それなら仕事辞めろ」
殴られるかもとは予想してたけど、まさか初手で「仕事辞めろ」と言われるとは。
「どうして」
「俺の優しさがわかんないかな…」
先輩が続けて言うには、軽い気持ちでデビルハンターになった奴は全員死んだ。
生き残っているのは信念がある人間だけで、男目当てに仕事するようじゃそのうち死ぬから辞めろ、ということだった。
そうは言っても他に行く先なんて無い。
「私はずっとクソみたいな生活をしてました。そこから抜け出すためなら死んでもいいです」
「……お前はどんな人生送ってきたんだ?」
私の事情を簡単に説明した。
小さい頃に両親が死んで、残された借金を返すためにずっとヤクザにこき使われていたこと。
ポチタという悪魔と一緒に非正規デビルハンターとしても働いていたけど、欲張りなヤクザに裏切られて一度殺されたこと。
そして、そんな場所からデンジさんが私を助けてくれたこと。
「会ったばかりだけど、本当にデンジさんが好きなんです」
「そこまで言うなら勝手にしろ。ただし、きっちり仕事もしろよ」
私の信念を少しは認めてくれたようだ。
先輩と話した後は普通に見回りをしたが、特にこれといったトラブルは何も起きず。
数時間歩き回って公安本部へ戻った。
「2人ともお疲れ。マキマ、初めての見回りはどうだった?」
「先輩に付いて歩くだけで終わりました」
「そっか。で、この先輩とは仲良く出来そうか?」
「はい」
「そりゃ良かったな。…アキは?」
「想定よりはまともでした。色々と思う所はありますし、仲良くするかは別ですが」
デンジさんは満足気に頷き「じゃあ大丈夫そうだな」と呟いた。
「マキマはアキの部隊に入ってもらう」
「それは構いませんが、ウチには面倒くさい奴らが多いですよ?新人向きの部隊ではないかと」
「そこは問題ねえ。マキマは特別だからな」
「…こいつ何者なんですか?」
「チェンソーの武器人間だ」
デンジさん曰く、今の私は武器人間──悪魔の心臓を持つ人間で、人間・悪魔・魔人のどれとも違う特殊な存在らしい。
世界でも数えるほどしかいないとか。
「…あの、魔人って何ですか?」
「はぁ?お前義務教育………受けてねえのか」
「受けてません」
そう答えると、先輩は溜め息をつきながら教えてくれた。
人の死体を乗っ取った悪魔を魔人と呼ぶらしい。
そして魔人の人格は悪魔にあり、頭部に悪魔だった頃の特徴が現れる──これが武器人間との違いだそうだ。
「正直、武器人間については俺も詳しくは知らない。この説明もデンジさんの受け売りだ」
「とにかく、マキマは普通の人間とは違うってこと。だから特別な対応で扱う」
「…というと?」
「もし万が一、武器人間が暴れたらデケえ被害が発生する。それを食い止めるには強え奴がずっと監視してなきゃダメだ」
「つーわけで、マキマは俺の家に住まわせる」
「えっ」「はああああ!?」
Q.何でアキの家に住まわせないの?
A.アキの同棲相手がブチギレるから。
Q.フッた相手と同居して、デンジは気まずくないの?
A.現時点ではマキマのことを“チェンソーマンと契約した可愛い女の子”として認識しており、恋愛対象として見ていない。
だからそこまで気まずくない。
……というか、今作のデンマキは年の差かなりあるからなあ……。
半ば娘か弟子のように扱っているかも…?