もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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6話 血の魔人

ここすき感謝。

 


 

公安本部を出てデンジさんの家へ向かう途中、女の子の同居人もいると知らされた私のテンションは少し下がっていた。

と言っても人間じゃなくて魔人らしい。

 

「嘘つきで見栄っ張りで面倒くせえけど、魔人にしちゃ理性は高えし根も悪い奴じゃない。まあ仲良くしてやってくれ」

「……分かりました」

 

 

 

しばらく歩くと石造りの大きな建物に着いた。

立派すぎて家らしくない家だと思ったら、どうやら旧本部庁舎を改装して造った寮らしい。

 

「ここの3階が俺ん家な」

 

「(本当に一緒に住むんだ…!)」という実感が急に湧いてきた。

緊張でガチガチになりつつ、広々とした通路を抜け、突き当たりのエレベーターで3階へ上がる。

そして玄関ドアを開けると、部屋の奥の方で頭から角を生やした女の子が猫とじゃれていた。

 

「おお、帰ったかデンジ。…で、後ろの女…ウヌは何者じゃ」

「私はマキマ。今日からここで暮らすことになったから、よろしくね」

「ワシの名はパワー!この家の中で一番偉大な悪魔じゃ、ひれ伏せ人間!」

 

「(本当ですか?)」と視線で問いかけると、デンジさんは苦笑しながら首を横に振った。

 

「パワーは飼い猫をコウモリの悪魔に攫われて、それを俺が助けて公安に引き入れたんだ」

「何を言ってんのじゃ。コウモリはワシが殺したし、ニャーコを救けたのもワシじゃ。ワシの手柄を盗むな!盗っ人!」

 

“嘘つきで見栄っ張り”ってこういう意味か…。

 

 

 

パワーちゃんの飼い猫──ニャーコと軽く遊び、本日2度目のシャワーを浴び終えたタイミングで、キッチンにいるデンジさんから声が掛かった。

 

「飯出来たぞー」

「はーい」「飯じゃ!」

 

夕ご飯のメニューはカレーライス。

つやつやと光る白ご飯に、じゃが芋・人参・挽き肉の入ったルウがたっぷりかけられている。

 

「あれ、パワーちゃんのカレーには野菜が入ってませんね」

「野菜は嫌いじゃ!」

「パワーは超野菜嫌いなんだよ。一昨日なんか皿ごとぶん投げたからな」

 

「野菜を食わすのはもう諦めた」と死んだ目で笑うデンジさん。

こんな美味しいのに勿体ないと思いながら食べ進め、あっという間に1杯目を完食。

いくらでもお代わりしていいと言われたので、米とルウを器から溢れるギリギリまでよそった。

 

「そういや言い忘れてたけどよ、明日からマキマとパワーでバディを組んでもらう」

「バディ?」

 

カレーを食べながらデンジさんの説明を聞く。

まず公安では安全のために2人組で動く事が基本*1で、パワーちゃんと組む理由は同じ家に住んでいる相手同士なら行動を共にしやすいからだそう。

明日以降の見回りもパワーちゃんと一緒に行うらしいけど……

 

「デンジさんとの見回りは…」

「悪ぃ、明日も無理だな。こないだぶっ倒した悪魔たちに関わる書類を始末しないといけねえ。…でも明後日は行けるぜ!」

 

さらに明後日以外でも空いている日は一緒に行くと約束してくれた。

デンジさんは忙しい人だから暇な時なんてほとんど無いだろうけど、それでも嬉しい。

……と、内心ウキウキだったのも束の間。

 

「ぬぉぉ離せ!風呂はたまにしか入らん派じゃ!」

「こら暴れんな!いいから入るぞ!」

 

お風呂に入るのを嫌がるパワーちゃんが、デンジさんにお姫様だっこされて風呂場に連れて行かれるのを目撃し、私のテンションは氷点下まで冷え込んだ。

 

「ずっる〜…」

 

私だって一緒にお風呂入りたいのに…。

ニャーコは可愛いけど、パワーちゃんとは仲良くできないかもしれない。

 

 

 

 

 

客室を私の部屋にしてもらい、清潔なベッド・掛け布団・枕が全て揃っている、最高の環境で快眠した翌朝。

今日はパワーちゃんと見回りに行く予定だった。

しかし魔人が発生したとの通報があり、まずはそちらを優先することに。

 

公安に入って初めての戦闘だから意気込んでいたけど、パワーちゃんが“血”の斧で即殺した結果、私は何もせずに終わった。

ちなみに魔人のいた部屋には数冊のエロ本が置かれていて、表紙のモデルさんは全員が私の胸と同じかそれ以上に大きかった。

まあこれはどうでもいい。

 

 

 

……気を取り直して見回りを始める。

 

『パワーの頭の角が目立つからパトロールするのは人通りの少ない場所だけ』

『民間のデビルハンターや警察に出くわしたら手帳を見せて所属を言う』

『民間が手を付けた悪魔に許可無く攻撃してはいけない』

 

時々2人で道端の猫とじゃれながら、デンジさんの指示に従って途中までは順調にこなせていた。

だけどビルの屋上を歩いていた時に、パワーちゃんが悪魔の匂いを嗅ぎつけてしまった。

しかもその悪魔の周りはトラテープで囲まれていて、明らかに民間のお手つき!

 

「パワーちゃん落ち着いて!」

「だぁぁああ離せっ!離せえぇぇ!!」

「あの悪魔に手を出したら営業妨害!逮捕されちゃうから!」

 

羽交い締めにして動きを止めようとしたけど、パワーちゃんの(パワー)が強すぎて尻もちをついてしまう。

そしてパワーちゃんは私を振り切った勢いのまま走り出し、ビルから飛び降りて能力を発動。

手首から吹き出す“血”で生み出した大鎚を振りかぶって───

 

 

ゴシャッ!

 

 

…………悪魔をぶっ潰した。

 

『ミスしたら相手に謝罪。それからトランシーバーでデンジさんに連絡』……このアドバイスは役立って欲しくなかった。

 

 

 

到着したデンジさんが民間の人に頭を下げ、話をつけてくれた後。

私たち2人はベンチに座り、しゃがみ込むデンジさんからのお叱りを受けていた。

……いや叱られてるのはパワーちゃんだけか。

 

「パワー、とうとうやりやがったな」

「……マキマが殺れって言ったんじゃ」

「はぁ、よくんな嘘が言えたもんだな?」

「嘘じゃないわい!マキマが殺せと言ったんじゃあ!」

 

一言も言ってない。むしろ止めようとした。

 

「言ってません」

「ほら言ってないってよ」

「はあ!?デンジはワシよりもマキマの言葉を信じるのか!?」

「あたりめーだろ!返り血もべっとり付けて説得力ゼロなんだよ!」

 

それにしても…ヤイヤイと言い合うデンジさんとパワーちゃんは、単なる同居人の関係には見えない。かといって恋人とも違う。

一番しっくりくるのは…兄妹?

ライバルにはなりそうもないけど、仲が良いのは羨ましいな。

 

 


 

次の話からは永遠の悪魔戦に入ります。

コウモリの出番は今後あります。ちょっぴり。

ヒルは知らん。

 

 

*1
なお、デンジはいつも単独行動している模様。理由は戦闘に付いていける人がほとんどいないから

姫野に名前付けるのはアリ?

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