もしもマキマがチェンソーマンだったら   作:訥々

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7話 森野ホテル

  *1

 

 水際に浸かる悪魔の死骸の上で、2人の男女───早川アキと姫野が会話している。

 鋭い牙と伽藍洞の瞳。

 人間を丸呑みできるほどの巨躯と、魚類には似つかわしくない6本の細い脚。

 斬り裂かれた腹と尾から、臓物と魚卵のようなものが大量に溢れ出ている。

 かなりグロテスクだが2人は気にする素振りも見せない。

 

「肉片、見つけました」

「やっぱり銃野郎の肉片食べてたか。雑魚悪魔にしちゃあ強かったからなあ〜……食べたのか、食べさせたのか」

「どっちでもやる事は同じです。敵対する悪魔を全て殺せば、その先に奴がいる…」

 

 早川アキは家族全員を銃の悪魔に殺され、復讐のために公安デビルハンターの職に就いた。

 公安への志望動機としては平凡ながら、その執念は他の人間とは一線を画している。

 大抵の人間は1年もすれば死ぬか民間へ移籍する中、3年間も公安に所属し、地道に銃の肉片を集めてきた。

 

「最近は武器人間も加入しましたし、もっと肉片集めが捗ると良いんですが」

「アキくんと一緒にパトロールした子だよね?しかもデンジさんの家に居候してるっていう。会って話してみたいな〜」

「大規模任務があれば組んで仕事するかもしれませんね」

 

 

 

 

 

  *2

 

 昨日のデンジさんとの見回りは最高だった。

 パワーちゃんと違って暴れないし、一緒に歩いているだけで楽しい。

 帰りはスーパーに寄って買い物ついでにお菓子を買ってくれた。

 また一緒にパトロールしたいな……次を期待しながら朝ご飯のトーストをかじる。

 

「大規模任務、ですか」

「森野ホテルっつーとこに強え悪魔が出たんだと。民間のデビルハンターも数人やられてて、銃の肉片にも反応があった」

「銃の肉片?」

 

 話を聞くと、13年前に銃の悪魔という超強い悪魔が全世界で暴れ回り、移動する時に焦げ落ちた自らの肉片を残したまま、現在まで姿を消しているらしい。

 

「銃の悪魔に限った話じゃねーけど、強え悪魔の肉片を食った悪魔は力が増す。だから民間じゃ手に負えなくて公安に出番が回ってくるんだ」

「なるほど…」

「今日の任務は6人体制だ。マキマが初めて一緒に見回りした先輩、覚えてるか?アイツも参加するぜ」

「……デンジさんは?」

「俺は他の仕事がある。……むくれんなよ。パワーたちと一緒に頑張ってくれ」

 

 強い悪魔が相手ならデンジさんも来て欲しい、そう言ってゴネようとしたけど、頭を撫でながら頼まれては断れない。

 

 

 

 2人で森野ホテルのそばまで向かい、今回一緒に戦う人たちと合流した。

 

「キミが噂のマキマちゃん?私は姫野。姫野先輩って呼んでね」

「はい、姫野先輩」

「おーよしよし、いい子だね〜」

 

 随分と幼く見られているのか、褒めながら頭をわしゃわしゃと撫でてくる姫野先輩。

 悪い気はしないけど私16歳なんだよね。

 ………あれ、ひょっとしたらデンジさんも私を子供扱いしてるから撫でてくれた…?

 

「そっちの魔人ちゃんも姫野先輩って呼んでくれたら嬉しいな」

「だ〜れが知らん女に敬語なんて使うか。人間は愚かで傲慢じゃ」

 

 本当に手のかかる魔人ちゃんである。

 せっかく仲良くできそうなのに、引っ掻き回されちゃ堪らない。

 

「パワーちゃん、大人しくしてたらガムあげる」

 

 パワーちゃんは私の持つガムと姫野先輩を見比べ、少しの間を置いて「……姫野せんぱぁい」と気の抜けた声で返事した。

 

「はいどうぞ」

「わー」

 

 パワーちゃんに渡したのは、予めデンジさんから「パワーがぐずったら食わせてくれ」と受け取っていた板ガム(レモン味)だ。

 ガムは噛んでも無くならないから効果が続きやすいだろう、とのこと。

 姫野先輩は私に「随分手慣れてるね」と言ったけど、デンジさんの入れ知恵のお陰だ。

 

 

 

 ホテルに入り周囲を警戒しながら進む。

 私とパワーちゃんが先頭を歩き、その後ろに新人さん2人、一番後ろに先輩2人。

 8階まで上ると客室から悪魔が出てきたが、不自然に浮き上がって、直ぐにパワーちゃんが倒した。

 

「悪魔め、ワシにビビって浮きおったわ!」

「違う違う私の力!」

 

 姫野先輩は右目を対価に“幽霊”の悪魔と契約して、ゴーストの右腕を自由に使えるのだそう。

 透明かつ怪力……重い代償に見合った強さだ。

 パワーちゃんがちょっかいを掛けようとしたけど、手も足も出なくて悔しがっている。

 

「いつかそのうち食ってやる…!」

「そんなこと言ってたらホントに絞め殺されちゃうよ?」

 

 呑気なやり取りをしながら階段を上る。

 すると男の新人さんが驚いた表情で壁を見上げた。

 何だろうと思い、目を向けた先には“8階”の文字が刻まれたプレート。………え?

 

「俺達、今…“8階”から“9階”へ行く階段を上りましたよね?」

 

 気づいてからは皆で必死になって探索したけど、8階から出られないことがほぼ確定。

 階段・窓・天井…全てが8階に通じている。

 時間すら止まっていて救援も絶望的。

 私たちは悪魔を殺すどころか、罠に嵌って閉じ込められてしまった………。

 

 


 

・「むっす〜」してるマキマのAIイラスト

原作よりもやや幼く、髪を三つ編みにせず下ろしています。髪色が濃すぎるのは私のミスです。

 

【挿絵表示】

 

 

*1:
アキside

*2:
マキマside

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