もしガルパンに航空機があったら()   作:田舎の異音

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今回で黒森峰女学園編編は終結いたします。
いつも通りの朝を迎え、黒森峰を去らんとするユキオ。
もうエンジンは温まっています....



『あと少し、高性能であったなら...』

自分の1日は、非常にシンプルであると思っている。

 

朝起きて優しい麦茶を飲んで朝飯食って優しい麦茶を飲む。

それから登校して昼飯食って優しい麦茶飲んで飛行訓練に抜け出して、夕飯食って優しい麦茶飲んで飛行訓練して風呂に入って寝る。

 

これの繰り返しの、何と身体に良いことか!

...しかし今日ばかりはそうはいかない。何を隠そう、俺の門出の日だからである。

 

普段クララが乗っている座席には、荷物がドッサリ詰め込まる。教科書に衣服、優しい麦茶(ダンボール)やマフラーと、その殆どが黒森峰で与えられた。

 

エ「....ほんとあっという間だったわね。」

 

エリカさんがぽつりと呟く。少し寂しそうだったから、「出会いは別れの前兆ですよ」と返す。今回はうまく決まった!

 

エ「別に悲しくないわよ!むしろサイレンが鳴り止んで静かになるわッ!」

 

うーむ、相変わらずブレのない人だ。この芯の強さが、来年の黒森峰をよりよい方向へ引っ張っていく事を期待して止まない。

何度でも言う。逸見エリカを次期隊長にすべきだ!

 

 

小「もう行っちゃうんですね...」

 

「元々短期転校の身ですから。でも、色々とありがとうございました。小梅さんのお陰ですぐここに馴染めました!」

 

小「いいよいいよ!私はそんな大した事してないから...」

 

小梅さんが自分にしてくれた事を、これまであまり文章では書かなかった。

寝坊しかけて点呼に遅れそうになった時は、毎回起こしてくれた。

 

俺が大口叩いたあの教官にも、悪い生徒ではないからと説明してくれていた。

 

優しい麦茶(2L)を投げ下ろし、危ないだろと怒った戦車部隊達へ、俺の代わりに気持ちを伝えてくれた。

 

....俺は何をしたか?地上部隊支援、見回り...特に何もしていない事に気がついた。しかしもう別れの時である。せめて最後にこれを詫びなければならない。

 

小「うんうん、井波さんは色々な事を私にも教えてくれたよ...!あの時だって、制空権も無いのに来てくれて....本当に嬉しかった.....!」

 

小「あの先生にも意見を言った時だってそう!みんな、凄くあなたが頼もしかった....」

 

最後の最期にして、小梅さんを泣かせてしまった!ポロポロと流れる涙に、戸惑いをどう隠せというのか!

 

「だ、大丈夫ですよ!小梅さん!」

 

小「...えっ?」

 

「俺がもっと強くなったら、すぐに黒森峰航空隊を指導しにきます!小梅さん達の空は、卒業まで俺が護りますから!!」

 

両肩に手を乗せ、息荒く話す俺の姿は、第三者からすれば異性への告白に見えるだろう。しかしそれが、本当はそれ以上の意味を持つ...つまるところ親孝行を誓っているという事は、俺と小梅さん以外知らなくてもよいはずだ。

 

「それじゃぁ、そろそろ帰ります。どうかお元気で!....」

 

小「またね....ユキオ」

 

小「(最後まで井波さんらしかったなぁ...もっと他の方法もあったと思うけど...)」フフッ

 

我が母親は別れ際、吹っ切れたように笑顔を取り戻した。何と愛おしい....航空機教導隊の創設を急がなければ!

 

 

 

 

 

 

 

【飛行場】

 

スツーカに乗り込み、倉庫から微速で滑走路へと導く。

 

「...ん?滑走路わきに並んでいる人がいる。危ないから注意しなければ....」

 

コックピットから降りて、彼らに危険を教えに行く。

すると、いきなり管弦楽による演奏が始まった。まもなくして、歌を歌いながら戦車部隊・航空隊・整備隊の人たちが姿を現した。迫力のある演奏と歌声は、俺の内臓を容易に響かせた。

 

Sie lassen jäh sich fallen(黒鳥達は真っ逆様に自らを急降下させる)

Vom Himmel tiefbodenwärts.(空から深い大地の望楼へ)

Sie schlagen die ehernen Krallen.(黒鳥は真鍮のかぎづめを打ち付ける)

Dem Gegner mitten ins Herz.(敵の心臓の真ん中に)

Wir sind die schwarzen Husaren der Luft,(我らは黒き空の騎兵 )

 

Die Stukas, die Stukas, die Stukas!!(スツーカ、スツーカ、スツーカ!)

 

これは我がJu87と、我らが急降下爆撃隊を称えに称えた歌、『Stuka lied』である。

 

ま「短い間だったが、充実していたか?ユキオ」

 

「ええ、黒森峰は俺の急降下爆撃道の基盤となりました。ここに来なければ、俺は戦車道に見切りをつけていたかもしれません」

 

ま「そうか、それはよかった...我々も、ユキオから学ぶことは多かった。それだけに別れを悲しむ者も多い...小梅とは会ったか?」

 

「悲しいですが、感謝と別れを告げてきました」

 

ま「ならいい。因みにここの皆も、先日からこの計画を立てていたそうだ。クララの発案でな。.......忘れないでくれ、我々は君をいつでも待っているし、何か悩み事があったら相談してほしがっている。」

 

「ありがとうございます。は、早くいかせてください、このままだと涙が零れてしまいそうです...」

 

ク「隊長さん!それは秘密の約束ですよー!」

 

「クララ!ドイツには、いつかえるんだ?」

 

ク「はは.....えーとね、私も今日で最後なんだ」

 

「なんだって?!どうして早くいってくれなかったんだよ...」

 

クララは涙を浮かべ、それに気づくと下を向いてしまった。

 

ク「言えるわけない!だって...!すきなんだもん....

 

「演奏で聞こえなかったけど、言いたいことくらいは分かるぞ」

 

ク「えっ...?」

 

「そんな事言っちゃうと、いよいよ休む間もなく付き合わされちゃうもんな!笑」

 

ク「.......」ペチン

 

「あいてっ」

 

ク「ばか!すき!ばいばい!!」

 

顔を真っ赤にしてクララは走り去ってしまった。生徒たちにヨシヨシされなら、向こうで座り込んで大号泣している。

俺は隊長さんにハンカチを渡してもらうように頼み、操縦席へもどった。

 

遊ぶことなく、つるべ落としのように過ぎ去ってしまったこの一か月間は、あまりにも刺激的であった。

そろそろ無線の範囲外にでる。いつも混線してやかましかった無線も、すっかりおとなしい。

誰も聞いていないと分かっていながら、言わずにはいられなかった。

 

「短い間でしたが皆様に、急降下の大好きなスツーカパイロットがいた、という記憶が少しでも残っていれば、それだけで俺は幸せです。ありがとう、ありがとう、ありがとう....」

 

『...だ...きだよ........ユキオ!......』

 

「!?」

 

今確かに無線が入った。通信範囲ギリギリの為、聞こえずらかったが、恐らく小梅さんの声だ。

無線機にすかさず手を伸ばし、こう叫ぶ。

 

「感度不良により聞き取れない!もう一度頼む!」

 

....返事はないのだから、恐らくもう範囲外になってしまったか。もっと他の事を言うべきだっただろうか?残念だが引き返していては、いよいよ決心が揺らいでしまう。

 

四国上空を飛び、我が故郷を拝む。山しかないが、逆にそれが住宅街を目立たせる要因となっている。

新型のJu87D-5

【挿絵表示】

の操縦性は向上しており、後々輸送されてくるJu87B-2より遥かに扱いやすい。

さぁ、この新機体で踏みしめるは、懐かしき大洗女学園艦....ではないが、大洗である。

 

「先輩方、着きましたよ」

 

すぅっと肩が軽くなるのを確かに感じとった。彼女らは今、帰ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙「おそいね~井波くん...」

 

み「もしかして、途中で故障しちゃったのかな?」

 

梓「みほさんったらやめてくださいよ!」

 

み「ご、ごめんなさいっ!」

 

華「あら?何か聞こえてきませんか?」

 

一斉に耳を空の遥か彼方へ傾ける。そして確信した。

 

み「間違いない、井波くんだ!」

 

飛行場はないため、ただっぴろい運動場を対角線上に利用して、着陸を行った。

 

すでに向こう側から、大洗の先輩方が駆け寄ってくるのが分かる。

 

「おまたせしました。井波ユキオ、短期転校の全日程を終了しました!」

 

梓「ひ、久しぶりだね...覚えてる?私の事....」

 

「もちろん、俺に初めて声をかけてくれたクラスメートの澤梓さんだよな!ただいま!」

 

梓「えへへ...///」

 

 

本日を以て大洗航空隊を開設した。もちろんパイロットは俺一人である!

 

 




それじゃ一体、だれがJu87B-2に乗るっていうんだ?
...という訳で、今回から大洗ルートになりました。
今後の課題は、航空隊の兵員補強となりそうです。

ご感想等まっております!

次回も乞うご期待!
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