さて、今回からいよいよ全国大会一回戦で奮戦する大洗女子学園のお話です。
不本意ながら地上勤務となってしまった井波は、初陣に何を思うのでしょうか?
第23話、動きます。
今日、俺は初めて戦車に乗って敵と戦う。
スツーカは倉庫で休ませてある。次に乗る際は、もしかすると性能が上がっているかもしれないな!
桃「整備終わったかー?」
「いっけね、徹甲弾積むの忘れてた。」
あ「それ一番大切じゃーん!」
あやさんのツッコミで場の雰囲気が和む。俺も肩の力が抜けていくのが感じられ、自然と笑顔になってしまった。
どうやら緊張を解すための運動は必要なさそうだ。
ア「呑気なものね。それでよくノコノコ全国大会に出てこられたわね?」
あれは確かサンダースの....忘れてしまった。しかし彼女の後ろにいるボーイッシュな人物とは面識がある。確か渡辺って苗字だっただろうか?それにしても再び肩に力が入ってしまったぞ!
「なにしにきたんだ?うちの学校に男子は他にいないぞ、残念無念また来年」
梓「ちょっと井波くん言い過ぎだって...」
ア「ちょっとアンタ!!私がたかしに振られたみたいな言い方じゃないの!!!」
ナ「あー、、試合前の交流もかねて食事でもどうかと思ってさ」
「あ、そういえば朝飯は麦茶だけだったな。いただこう」
今日は麦茶を飲んでからの朝飯を忘れてしまったからか、お腹が我が愛機に勝るとも劣らない音をずっと響かせている。
ア「麦茶は飲み物よ!ほんっと変わってないのね。ほら、こっちにあるからあんた達も早く付いてきなさい」
ケ「Hey! Big mouth boy!」
「生徒会長さん、呼ばれてますよ?」
杏「新聞の件だからどう考えても井波くんじゃん笑 ほら、いっておいで~」
我が生徒会長は俺を見放した!仕方ない。ここは潔く謝ってやり過ごそう。きっとかなり怒っているぞ!
...いや、ケイさんは俺を咎めなかった。何故怒らないのか?勝利を確信しているからであろうか。
ケ「この前学園長と言い合いになっちゃったんだって?でもあの人怒りっぽいから気にしちゃダメだからねー?」
裏表のない人と初めて会った。サンダース大付属にもこのような人物がいる事に感動しつつ、ある程度知られてしまったかと思うと少し恥ずかしい。
「...教育されたのは俺の方ですね。少々心に余裕が無かったかもしれない」
ケ「えっ?何か言った?」
鈍感系主人公にはもってこいの人材だと思う。振り回されるのはごめんだが。
我が生徒会長が相手方と固い握手をするのを見届け、勢いよくキューポラへ飛び込む。我々は戦闘準備万端だ。
今回はフラッグ戦であり、全車両を撃破しなくとも勝てるのは非常にありがたいが、その反面、簡単に負けてしまうことも考えられる。要するに諸刃の剣という訳だ。
み『————常に動き続けて敵を分散させて、三突の前に引きずり込んでください。』
みほさんも戦力の差を把握しているようで、それに準じた作戦を伝える。
「聞いたか皆!我々は練習試合も参加できずに今日が初陣となってしまったが...訓練時間だけは群を抜いている!各員自信をもってこの試合に臨むぞ!」
「「「おおー!!」」」
試合開始の合図と共に無限軌道を回す。今、俺の戦車道が始まったのだ!
雑木林に身を潜めつつ、偵察を2両逆方向に展開させる。
我々アリクイさんチームはあんこう・カバさんチームと共に、フラッグ車の生徒会チームを守りつつ前進するとの無線が入る。
エ『まるで山本五十六の乗った一式陸攻を、零戦で護衛するに近い気分だな。』
左『
「今度こそ俺たちで守って見せましょうよ!」
しかし、空での話はいきなり地上へと引き戻された。
なんと、B085S地点にてうさぎさんチーム...愛すべき同期達の乗る戦車がが6両のシャーマンに包囲されたとの連絡が入ったのである!
いてもたってもいられない、我々も急行すべきだ!
みほさんに進言し、南西からの援軍として現地へ向かう!これでは優勢火力ドクトリンではなく只のリンチではないか!しかし、何故こうも早く包囲網が完成しつつあるのかが不思議でならない。やはり経験の差だろうか?
その時、四号戦車と三式中戦車との間に砲弾が突き刺さる。これは...
み『更に3両...囲まれた...!?』
「だとすれば10両中9両もこの森に投入しているのか?!山張りもいいとこ!」
み『分からない...そうだとしても、こんなピンポイントで包囲網が作られるのは少しおかしい...』
みほさんに分からない事は、俺にも分かりはしない。
今重要なのは、我々の後ろから3両、前方北東方面からウサギさんチームと6両が迫っているという事実のみだ!
「挟み撃ちという言葉がこんなにも似合うのも珍しいな...みほさん、合流するのもハチの巣にされるのも時間の問題です、何か手を打たないと!」
み『...分かりました!うさぎさんチームは、あんこうと合流したら南東へ進んでください!3両で一緒に脱出します!』
梓『分かりました!』
間もなくして我々は合流し、目も当てられない程惨々たる”鬼ごっこ”を一抜けすべく南東へ切り返す。M4シャーマンの群れも、逃がすまいと各々に砲撃しながら追跡してくる。すごい量...ひぃ、ふぅ、みぃ、よ....妙だ!数両は確実にいなくなっている!!
「みほさん!挟み撃ちを仕掛けてきた9両から何両かいなくなっています!」
み『諦めたとは考えにくい...側面の警戒を厳としてください!』
麻『...!?』
受け入れ難い現実が更に追い討ちを掛ける...なんと我々の前より、離脱したと思われるシャーマン中戦車が2両回り込み、おいでおいでと待っているのだ!
「おいでなすったかベストセラー!」
み『全速力で前進してください!敵戦車と混ざって!!!』
も「そマッ!?」
「マだ!全速前進、このまま突っ切るぞ!」
砲弾を避けるためにキューポラに身を隠す。数秒後、金属同士の擦れ合う、何とも形容しがたい音が車内に響いて、突破を確認した。
まったく、死ぬかと思ったぞ!
「ったく、もうこんな鬼ごっこはごめんだな!!」
ぴ「でも、さっきシャーマンに
ぴよさんのちょっとしたジョークにすら反応できないほど、先程の戦闘で神経をすり減らしてしまった。
こうして地上勤務になって改めて感じる。ああ、
「あ~...空からスツーカとか降ってこないですかね~...」
ぽけ〜っと澄み渡った空を眺める。
み『空からかぁ...あっ...!』ガバッ
みほさんが急に、何かを思い出したように空を睨む。
えっスツーカ降ってきたの?
み『...』クイックイッ
「おっ?」
無言で手招きされ、されるがままに戦車を横に付ける。無線ではだめなのだろうか?
み「通信傍受機が打ち上げてあるの」
「え、ええーっ!?それなら今すぐ俺が迎撃kムグッ?!」
み「しーっ!」
「わ、わかりました...兎に角一旦身を隠して話し合いましょうか...」
み「....」コクッ
秋「確かにルールブックには傍受機を打ち上げてはいけない、なんて書いてないですね」
沙「ひっどーい!!」
華「抗議しましょう!」
「そうだー(野党議員風)それは許せないと思いますコレ!」
み「うーん...それじゃ、こういうのはどうかな?」
「「「「!!!!」」」」
無線機を手に取り声高らかにこう叫ぶ。
『全車両、0985の道路を南進!ジャンクションへ急行せよ!サンダースの車両はそこを通過するであろうから、その後左右からの奇襲をもってこれを速やかに撃退すべし!各車奮闘努力せよ!大洗は我々と共にあるッ!!』
「...こんなもんでどうでしょう?」フゥ
秋「か、かっこいいでありますっ!!」ビシッ
沙「意外と様になっちゃうから困るよね~」
華「殿方が言うと、迫力ありますからね」
み「それじゃぁそろそろ行こっか!」
「はい!」
今のアリクイさんチームに似合う言葉————強いて言えば切り込み隊長だろうか。
も「おでましももね...!」
ね「井波氏、向かう地点に印入れといたにゃー」
「ありがとナス!」
我々は今、9両に包囲されかけている状況にある。客観的に見て、先程より絶望的である事に間違いはない。
しかし精神面においては、いくらか平常を保てている。その所為か、自然と軽口をたたく。
「そういやさっきはシャーマンにタッチされたんだっけか」
ぴ「...」コクッ
ね「...」コクッ
も「...」コクッ
「つまり今度の鬼ごっこは....」
————彼女らが逃げる番って訳だ。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
えー何すか!?無線傍受機...それは許せないと思います、コレ...!
という訳で、サンダース戦のターニングポイントに来ましたが、これからどうなる事やら...是非とも〝鬼ごっこ〟の行方を見守ってあげて下さい(*^^*)
次回も乞うご期待!