空から地面への急降下では飽き足らず、どん底まで急降下してった生徒がいたそうな。
今回は、そんな命知らずのお話です。
第27話、動きます。
「梓さん、今から走りにいかないか!...って、いないのか。」
業間休みに一緒にランニングをしようと思っていたが、相棒が見当たらない。
...倉庫にいるのだろうか?ちょっと行ってみよう。
【倉庫】
ガラガラガラ...
「梓さーん!」
返事がない。
すべてが静かに、まるで死んだように見える。
?「誰だ...静かにしてくれないか」
「あ、あなたは確か...」
麻「あぁ、そういえばまだ名乗っていなかったな。私は冷泉麻子、あんこうの2年生だ。よろしくな」
はっ!とした。戦車道のPVの時に、うたた寝していた人ではないか!
麻「ふわぁ...」
今度は戦車で眠っていたのか。いや、それ以外にも少しばかり気になる事がある。
あの活発な老婆、冷泉久子さんと苗字が被っている。
「勘違いでしたら申し訳ないんですけど...」
麻「なんだ、おばぁのことか?」
「お、おばぁ!?」
だとすれば、こうも祖母と孫で性格が変わるものだろうか?
幼い頃に大きなショックを受けた場合、性格が変わってしまう事がある。
お節介かもしれないが、不意にそんな考えが頭をよぎった。
キーンコーンカーンコーン
「あ、結局走りに行けなかったな...」
麻「そういえばおばぁから聞いたぞ。病室で筋トレしてたんだってな」
「げっそんな事まで...」
麻「勝つ事は大事だがあまり無理はしない方がいい。西住さんも体当たりの後物凄く心配してた」
「なら気絶しない程度に無理するまでです。それでは俺はこれで!」スタスタ
麻「...まったく、ああいう生徒は私より面倒くさいんだろうな」ボソ
次の教科は戦車道ではなく、カリキュラムに追いつく為に久々の歴史だった。
案の定教科書は家でお留守番だ!
先生にバレないよう、適当な冊子を開いてペンをフル稼働。
もう定期である。
歴・先「それじゃぁ大化の改新の中心人物で、改新後も中大兄皇子の腹心として活躍した人物を...」
「....!」カキカキ!
必死でノートを取っていると、皆がいつの間にか俯いていた。
「(皆眠いのか?梓さんまで...?)」
そんな事よりノートを写さねば。
「(先生、そこ邪魔!もうちょい左によってくれ!)」
先生にどいてもらえるよう、「目」で合図を送る。
バッチリ伝わったかと思いきや
歴・先「それじゃぁ井波くん!答えてください。」
「?」
ホッと一息つく音が周りから次々と聞こえてくる。そうか、これが狙いだったのか?!
「あ、えーっと...」
梓「大化の改新の中心人物を一人答えなさいだって!」
保健委員のなんと頼もしいことか!胸を張ってこう答える。
「はい、中臣のカタマリです!」
歴・先「....」
俺はまた恥をかいた。
何かに熱中している状態において、人が感じる時間の流れは極端に早くなる。
ノートを死ぬ気で写していると、もう昼食の時間だ。
午後からはまた、大好きな戦車道の時間だ。
午前の授業でいくら打ちのめされても、戦車道を行うことによって発散することができる。
ぴ「アリクイさんチーム全員集合...!!」
も「無理しちゃダメゾ?」
「分かってるって!さぁ、今日も行くか!」
ね「っしゃ!」
「「「「えいえいおー!!!」」」」
一回戦で優勝候補を破った大洗女子学園は、非常に活気に満ちていた。
射撃訓練!実戦演習!ランニング!筋トレ!スポーツ!
いつも通りのメニューを、アリクイさんチームの皆と取り組めることが嬉しくて仕方がない。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、もう夕方だ。
「ぬわあぁん、訓練疲れたぁもーん...もっとやりたくなりますよ戦車道...?」
み「ち、ちょっと待ってね!順番に...」
なにやら倉庫ではみほさんが質問攻めにあっていた。人望が厚い人って大変なんだなって...俺も何か質問してみよう。
「みほさん!急降下爆撃のますますの精度向上には何が必要なんでしょうか?」
み「え、えーっと...ってそれは井波くんの専門分野だよ!あわわ!」
今や揉みくちゃだ!
エ「隊長、躍進射撃の射撃時間短縮について!」
あ「先輩!戦車の話をすると男友達が引いちゃうんですぅ!」
優「私は彼氏に逃げられました~!」
お「後半になると少しバテてしまうぜよ...」
丸「....私も。」
もう誰が何を言っているか分からない状態...
まさに、混沌と混沌の間で本当の感情はコントロール不能なようだ!である。
一度言ってみたかった、申し訳ない。
結局、あんこうさんチームの先輩方がそれぞれの得意分野を分担する事になった。
これをチームワークと言わずして、何をチームワークと言うのだろうか!
俺ももっと、梓さんやアリクイさんチームとの親睦を深めるべきだと、みほさんから学んだ。真に尊敬する人を目の前にすると、こうも体が暖まるものなのだろうか?
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【次の日】
今日は更なる戦力増強の為、全員で戦車の捜索を行う。
念のため、生徒会長に航空機は落ちてないか聞いてみたが絶望的、だそうだ。
なるほど、ナイモノネダリはすべきではない。切り替えて探索に出かけるとしよう!
ウサギさんチームと武部さん、それから俺とで学園艦の内部を探索に出かけた。
出かけたのだが....
「なんだ、このスラム街のような荒れた場所は!?」
気づけば逸れてしまい、真っ暗で不衛生な通路を一人で歩いている。
有刺鉄線のバリケードをパスした頃から徐々に雰囲気が変わっていった。
奥へ行けばとんでもない戦車が眠っているかもしれない、そんな期待に任せた行動の結果がこれだ。
そんなことよりも、どうすれば狭い通路で遭難できるのか、未だに理解に苦しんでいる。梓さんは絶対怒ってるぞ...
取り敢えず、あそこで座り込んでいる二人組に上へ続く階段を教えてもらおう。
やけにスカートが長い事と色鮮やかでファンキーな髪型であるのを除けば、彼女も一般生徒なのだから何か知ってるに違いない。
「こんにちわ...って言っても暗いですが、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
?「あぁん?見ねぇ顔だな?どっからきたんだ、あぁ??」
「いやぁ、ちょっと道に迷ったみたいで笑 地上に出られる階段の場所を教えて欲しいんですが...」
?「ヘッ!そりゃぁいい。この道をずーっと真っすぐ行きな。バーがあるからそこで聞いてくりゃいい。」ニタニタ
「この先にバーが?...丁度いい!かなり喉が渇いていたところだ、ご親切にどうも」スタスタ
?「道中でボコられて身ぐるみ剥がれるのがオチだな笑」
?「ちょっと~やりすぎッスよ~笑」
?「こんな場所に来る方がわりぃんだって笑」
「.....」
『障害』を乗り越えながら進んでいく。特に興奮したのが、棒を伝って見えない奈落の底へ降りていく仕掛けである。石を落としてみたところ、ポフッと柔らかい音が聞こえたので、勿論遠慮なく急降下させてもらった。
すると、いよいよ怪しげな光が通路を照らし始めた。
「どん底」というバーで、まさに名が体を表している。
ガチャリ
「こんちわー」
?「......」
「あ、すいません、もう閉めてました?」
?「店に入ったらまず注文しな」
「キンキンの麦茶を一杯」
?「んなモン無いって~」
「それじゃ緑茶を頂きましょうか」
?「....そんなものはウチには無いわ」
「それじゃ一体何があるってんだッ!」
思わず逆ギレしそうになってしまった。飲み物を楽しむバーに、お茶が置いていないとは何事か!仕方なく水道水を振舞ってもらった。
「ゴク...ゴク...びゃあぁぁうまいぃぃ!!」プハァ!
?「あんたここ初めて?だったら無傷なのが不思議だわぁ笑」
「抜かせ、何度も襲われかけたよ。しかし...多少伏せて言えば、鉄拳制裁も生徒同士で許された教育の一環だ」
?「ったく、あんたも荒くれ者だね~。ヒック」
やけにクールで小柄なバーテンダーのカトラスさんと、今時珍しいルーズソックスを履いて酔っぱらっているようなテンションのラムさん。そこで寝てるガタイのいい人がムラカミさん。ステージで歌っているのはフリントさんというらしい。
美しい歌声、それにしても知らない歌だ。
それからもう一人、お銀というリーダー的存在がいるそうだが、今日は珍しく席を外しているそうだ。
「ところで、ここの皆の学科は何なんだ?」
ラ「船舶科だねぇ。ま、あたしらはまともな事してないけど笑 ヒック」
「そういやそんな学科もあったっけな」
カ「普段はこうやってバーで時間を潰してるわ。つい最近新しいカラオケの機械も置いてみたりして」キュッキュッ
ここまで来ればもう普通のバーである。特筆すべきは、道中で全てを失いかねない事くらいだろうか。
カ「フリントがずっとマイクを握ってるから、ずっと使わないままだけど」ハァ
ラ「折角だし、あんたが何か歌ってやんなー?」
「カラオケ...久々にいいかもしれないな!でも、時間的に一曲しか歌えなさそうだ。」
時計は5時を回った。良い子は帰る時間...俺は比較的良い子なのでそろそろ帰らねば。
フ「ほら、ちゃっちゃと歌って帰るんだよ、一年坊や」
金色のマイク...まるで歌謡ショーに出演しているような気分だ!
俺の初ステージ、とくと味わっていただこう!
「それじゃぁ歌います。Dave Rodgersで...
〝DEJA VU〟
DEJA VU! I've just been in this place before! Higher on the street...!
おっと、危うく勢いでドリフトしてしまうところでした!笑
さて、戦車を探すはずが学園艦最深部まで急降下してしまった井波ユキオ。
この頃は案外親切なんですねぇ...一体何であんな感じになったんでしょう()
※因みにDEJA VUはかなりの名曲ユーロビートなので、活力をみなぎらせたい場合は是非!
次回も乞うご期待!