もしガルパンに航空機があったら()   作:田舎の異音

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どもども、田舎の異音です!
燃料を切らして落ちていくシュトゥーカ、包囲された仲間たち、訪れたプラウダの伝令...

いつもとは違う戦車道がそこには待っていました。


それでは第36話、動きます


『約束』

我が愛しのシュトゥーカが燃料切れを起こしてしまった!

現在地は飛行場北の15km地点、とてもこんな状態で飛べる距離ではない。

 

ぴ『あそこに平地があるから、そこに一旦降ろすぴよ』

 

「わ、わかった!」

 

ぴよたんさんは、この危機的状況に対して依然として冷静だ。どうしてそんなに落ち着き払っていられるのか...彼女が後部機銃手という、操縦をしなくてもよい立場だからだろうか?いや、もし俺が操縦を誤ればケガする可能性があるのだから、それはないだろう。

素朴な疑問をぶつけてみる。

 

「なぁぴよたんさん、どうしてそんな冷静なんですか?」

 

ぴ『....』

 

しばらくの沈黙。

 

ぴ『それは井波くんの操縦を信頼してるから。いつも一緒に飛んでたし、冷や汗をかいた事もあったけど、離着陸を失敗した事は一度も無かったよね』

 

なるほど...俺は誰よりも訓練して、ずっと空を飛んできた。

つまるところ、俺は誰よりも離着陸をしたということである。

 

「ありがとう、絶対にケガはさせないから安心してください」グッ

 

ぴ『....信じてる』

 

 

 

ゆっくり...ゆっくりと地面が近づいてくる。出力を絞る、高度が少し下がる。

フラップを下げて、着陸の際に前転しないようにする...

 

 

 

しばらくして、ギュッと雪を踏む音がする。今この瞬間、我々は確かに着陸した。

 

 

 

 

 

 

コックピットから降り、白くふわふわとした雪の上にぴよたんさんと寝転がる。

お互いに口は開かない。緊張で火照った身体が冷えていき、5分ほどで落ち着きを取り戻した。

俺はガバッと勢いよく起き上がり

 

「ぴよたんさん、飛行場に戻って再出撃しませんか?」

 

笑顔で頷くぴよたんさん。実を言うと、俺は乗機を零戦・Ju87B,Dの3つで登録している為、事実上の再出撃が可能なのである。この制度は、創設間もない航空科の活動を活発にし、世間への認知度を上げる目的があると俺は考えている。

 

話がまとまり、飛行場へ走り出そうとしたところ、無人のコックピットに無線が入った。

 

ね『さっきプラウダの航空機が飛行場にやってきたにゃ...』

 

「相手飛行場への直接の攻撃は禁止されている筈じゃなかったのか!?」

 

ね『その人は伝令係だった。私たちに今後2時間は一切のプラウダ戦車に対する攻撃を禁止するよう通達していったにゃ...しかもそれはみほさん達も同意したんだとか』

 

俺は頭がどうにかなりそうだった。みほさん達が...?まさか...

ねこにゃーさんがより詳しく話してくれたが、どうも腑に落ちない。

プラウダの仕掛けた謀略活動だとすれば話は早いが、真偽は定かではない。もし、これすらもみほさんの作戦の一環ならば、我々がその歯車を狂わせかねない事態だ。

 

「分かりました。俺たちが盆地の教会へ出向いて、状況を確認してきます」

 

ね『き、気を付けてね...』

 

 

 

 

15分ほど走り、例の場所へ到着した。

 

「静かだ...」

 

まるで何もなく、まるで何もなかったような静けさは、集落に足を踏みいれた瞬間に崩れ去る。

我々は焚火をして騒いでいるプラウダ生徒に見つからないよう、常に気を配りながら教会を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏「....冷えるねぇ~」

 

河「どうぞ、毛布です」

 

杏「サンキューかーしま。それじゃ三人で温まろっか」

 

柚「.....」

 

 

梓「井波くん達、撃墜されちゃったのかなぁ...」

 

山「そういや、まだ連絡ついてないんだっけ?」

 

梓「うん...二回目の爆撃の後、プラウダの戦闘機と戦ってそれっきり...」

 

山「そうなんだ...でも泣きながら100周走り切れるんだし、きっと大丈夫だよ!」

 

「そうそう、俺は戦闘機に撃墜されたんじゃなくて、燃料切れで着陸したんだよ」

 

一同「!?!?!?」

 

み「い、井波くん?!なんでここに?!」

 

「みほさんが急に出撃しちゃダメだって言うもんですから、プラウダに何かされたんじゃないかって思いまして」

 

梓「い、井波くんだ...うぅっ...」グス

 

山「ほら、ムギオはやっぱり帰ってきたじゃん!...ここ敵のど真ん中だけど」

 

杏「やっぱりしぶといねぇ~...でも無事でよかったよ、ホント」

 

「そう簡単には諦めませんよ。この後も飛行場に帰って出撃する予定です」

 

梓「あっ....」

 

柚「い、いきなりで申し訳ないんだけどね、井波くん...」

 

み「......」

 

教会の雰囲気が急にどっと重くなるやいなや、皆が何やら神妙な顔つきになる。すると河嶋さんが開口一番

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———この試合に負ければ、我が校は廃校になる。

 

 

 

 

「......はい?」

 

河「実感は沸かないかもしれんが、本当の話だ...」

 

河嶋さんは、うっすらと目に涙を浮かべながら俺に事のいきさつを語ってくれた。

親愛なる生徒会長も、尊敬するみほさんも、よきパートナーの梓さんでさえ...誰もこの話を否定しようとしない。事実だというのだろうか?そんな馬鹿な!昨日まで普通だったじゃないか!!あまりにも唐突だ!!!

 

み「飲み込めない気持ちはよく分かります!...でも、これは本当なんです....」

 

「!!」

 

そうか、そうか...本当に無くなってしまうんだな...毎日走ったグラウンドも、恥をかいたあの教室も、皆で笑いあったあの倉庫も....

知らぬ間に、俺は涙を流して泣いていた。情けない、しかし情け容赦なく溢れてくる。

悔しくて、拳を目につめこみたくなる!

 

杏「ほら、なに泣いてんの、さっさとこれで拭きなよー...」

 

白いハンカチで涙を拭き、はっと思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

井波さんは色々な事を私にも教えてくれたよ...!あの時だって、制空権も無いのに来てくれて....本当に嬉しかった.....!

 

 

あの先生にも意見を言った時だってそう!みんな、凄くあなたが頼もしかった....

 

 

 

 

 

俺はある約束を思い出した。この白いマフラーを編んでくれた、とても大切な人との約束だ。

 

梓「だ、大丈夫?」

 

身体の奥深く、一転して心から何か大きな力が湧き上がってくるのを感じる。

 

「ああ、もう平気だ。ありがとう」

 

俺は精一杯笑って見せた。周りの皆も、何か吹っ切れたような顔をしている。やれやれ、また遅れをとってしまったな!

 

み「私たちは諦めないし、降伏もしません。最後まで戦います!」

 

杏「うんうん、そうこなくっちゃ!...それじゃぁ、井波くんはこれからどうするよ~?」ニヤニヤ

 

生徒会長が、俺に何かを求めるような目つきで問いかける。はは、そんな事とっくに分かり切っているだろうに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は飛行場へかえります!ただ一つ大事なことは、この大洗の危急存亡の時に際して、俺が出撃できないことです!」

 




さていよいよ後半戦。何もかもが一筋縄ではいかない状態となって参りました。
プラウダ航空隊...とりわけナターリヤ・シェスタコフは、ユキオに対して並々ならぬ闘志をみなぎらせています。
小さな暴君とミホーシャ、トップ・エースとスツーカ大佐...

後半戦が始まります。

それでは、次回も乞うご期待!
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