敵包囲網を突破し、形勢逆転を狙う『ところてん作戦』が実行され、遂に試合が動き出しました。「普通ならこうするんじゃないか?」という部分は、原作とはすこし異なるようにしています。
それでは第38話、動きます!
ふと、壁掛けの時計に目をやる。
「...そろそろ出撃の時間だな。」
ね「ほ、ほんとにこんな事しても大丈夫なのだろうか...」
「こうでもしないと勝てませんから」
全員が乗機に飛び乗り、各々に準備を進める。
「.....行くぞ!」
我々は決戦の地へ飛び立った。
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?「西住さんからの返答を持って参りました」
ノ「......」
?「『降伏はしない、最後まで戦う』、だそうです」
ノ「分かりました。あなたもそろそろ準備をしなさい」
?「分かりました」タッタッタッ
同志カチューシャに大洗の返答を伝え、戦車搭乗。さて、彼女たちはどのような戦術でこの状況を打破するのでしょうか。少し楽しみです。
しかし、カチューシャも早くお家に帰りたがっているので、時間をかけている余裕はありません。
唯一の不安材料の航空支援も、IL-2が全機発進すれば、全滅も時間の問題でしょう。
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み「....本当にいいんですか?」
河「あぁ」
柚「任せて!」
み「で、でも....」
杏「さぁ、行くよー!!」
み「はい...」
杏「....西住ちゃん」
み「?」
杏「私らをここまで連れて来てくれて、ありがとね」
角谷さんの言葉に、何か別の意味があるかもと思ったけれど、私に分からなかった。
時計の針が、15:00丁度を指す。
み「それではこれから、敵包囲網を一気に突破する、『ところてん作戦』を開始します。パンツァー・フォー!」
杏「小山、行くぞ」
柚「はい!」
キャラキャラキャラ.....
杏「突撃...!」
私たちは、決戦の地へ走り出した。
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カ「ふふっ、予想通りね。流石わたし♪」
悦に入っていると、大洗の戦車部隊が急に進路を左に執り、最も分厚い場所へと一直線に向かってきた。
カ「こ、こっち?!馬鹿じゃないのッ?!あえて分厚いとこ来るなんて...!!」
怯むことも減速する事もなく、先頭の38tが4両のT-34-85の群れへ突っ込んでいく。1両が車体と砲塔の付け根を狙われ撃破、第1列目が突破された。
カ「やったなぁー!!後続全車両を向かわせて!何が何でも阻止するわよッ!!」
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それから数分後、前方を4両、後方をそれ以外の全車両に取られ、このままでは全滅させられる恐れがあるとの無線が入った。
これを何としてでも阻止するため、生徒会チームの38tが前方の4両に単身で突撃した。残りは10時の方向に旋回して交戦を免れたのだそう。
しかし、プラウダの配置から考えるに、その4両の内訳は
・T-34-85 x2
・T-34-76
・スターリン重戦車
...仮にこの中に飛び込んだとして、運よく1両を撃破できたとしても、そこから生還できる確率は限りなくゼロに近い。
では今我々が行うべき事はなんだろうか?
無論、それが『この作戦』の主任務じゃないか。
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杏「やっぱり38tの主砲じゃ厳しいよねぇ~...それでもゼロ距離なら何とか...!」
雪原をドリフトしつつ砲弾を躱して接近、でも中々決定打にならない。今は足回りを壊して時間を稼いでいるけど、それじゃやっぱ根本の解決にならないからなー...
河「会長!新しいT-34-76が1両追加です!」
杏「くっ...小山ッ!もっと運転を激しく!当たれば終わりだよ!」
柚「は、はいぃ!」グイッ!
砲塔と車体の付け根を狙えば、何とか撃破できる。発射、撃破。発射、跳弾。発射、撃破。跳弾、跳弾、跳弾...撃っても撃っても致命打にならないのは、ほんと疲れるねぇ。
み『カメさんチーム、そちらの状況はどうですか?』
杏「2両は倒したけど、もうそろそろキツイかも...ごめんね、西住ちゃん」
雪の溝にはまってしまい立往生する。だめだよ、こんなとこで止まっちゃ...
ゆっくりと、スターリンの122mm砲がこちらを向く。
杏「うーん、もうちょっと戦っていたかったかな...」
その時だった。
「これより、『カムバック作戦』を開始する。会長、お待たせしました」
杏「...えっ?」
思わずキューポラから顔を出し、空を見上げる。
すると分厚い雲から、勢いよく1機の航空機が飛び出してきた。そして、それは迷うことなくスターリンの元へ急降下していく。
無骨なシルエット、白いカモフラージュ、いつも生徒会室から聞いていた懐かしいあの音...
杏「シュトゥーカだ...この音は間違いなく井波くん達だっ!!」
放り投げられた3つの爆弾が、プラウダの3両のもとへ降り注ぐ!
全車両撃破!夢みてるのかなぁ
河「か、会長.....!!」
杏「よし!いまのうちに合流するよ!」
河・柚「「はいっ!!」」
カメさんチームは本隊への合流を急ぐことにした。
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ももがーさんのスツーカも、狙撃を企む1両のT-34-85を目掛けて急降下したが、撃破にはいたらなかった。なにせ初めての爆撃だ、目下の状況で出撃すること自体が勲章ものだ!
も『んー、やっぱり試合だと緊張するもも!』
例え被害はなくとも、この雪原で補足されているという意識とジェリコのラッパによってとてもよい牽制となった。
「雪の中視界も悪いのに、降下引き起こしできただけでも十分です。さ、見つからないうちに早く飛行場へ戻って、戦闘機で出撃を!」
85mmは持ち前の機動性で、敵本隊に追いつこうとしているようだ。今すぐにでも攻撃したいが、2cm機関砲では牽制にもならない...我々は、まっすぐ帰投することにした。
さて、プラウダの生徒たちは今頃驚いているだろう。なぜ、こうも早く主戦場へ到着する事ができたのか。
タネ明かしをしよう。
プラウダの伝令係が我々に伝えたのは、「タイムリミットまでは攻撃禁止」なのであって、「タイムリミットまで飛行禁止」ではないからだ。我々はタイムリミットの30分ほど前からここの上空で待機している。
偵察機であるIL-2Mもいない今、好都合な事この上ない!
...しかし不思議なのは、未だにプラウダ高校がIL-2などの攻撃機を、地上支援に出撃させていない事だ。
これまで見てきたのはすべて戦闘機。俺がもしその立場なら、教会ごと吹っ飛ばしに攻撃機で出撃するんだが...
「(ノンナさんたちの考えることはよく分からないな)」
俺は飛行場でランニングをしながら、そんなことを考えていた。
ね『集落南西地点B71にて、多数のプラウダ車両から追撃を受けているらしい!航空隊の援護を要請するにゃー!』
「南西地点B71...うちのフラッグ車の護衛チームじゃないか!分かった、急行すると伝えてください!」
ね『了解!あとそろそろ戦闘機とも会敵する時間だから、十分に気を付けてね』
「了解です!」
ここからB71までは約10分だ!皆の為にも急がねば!
梓『ウサギチーム走行不能!カモさん、アヒルさんをお願いしますッ!!』
....なに?
ヘッドフォンを通して聞こえてきたのは、普段俺が何かと気を使わせてしまっている梓さんの声であった。
梓さん達が撃破されてしまったのは悲しい。しかしこういった経験が、確実に人を強くする。
胸にはみなぎる闘志を抱き、我が愛機には計1tの爆弾を抱かせ、現在は目標地点の上空1300mだ!
園『カモチーム撃破されました!アヒルさんチームのみんな、健闘を祈る!』
「くっ、また1両やられたか...ねこにゃーさん!まだ敵フラッグ車は見つかってないんですか?」
ね『うーんと...あっ、秋山さんがさっきの集落でフラッグ車を見つけたらしい!!』
「な、何だって?!」
俺は焦りと怒りに打ち震えた。急がなければ、フラッグ車を撃破されてしまう焦り。そしてなぜあの時念入りにプラウダのフラッグ車を探さなかったのかという、自分に対する怒り。しかしこの2つの感情は、確実に爆弾の命中精度を下げてしまう。
深呼吸をして、自分を落ち着かせるんだ。大丈夫、大丈夫だ。自分を決して見放すな...
「すぅーはぁー...よし、昨日と今日でそう急に変わってたまるか!」
操縦桿を目いっぱい押し倒し、ダイブブレーキを開く。
磯『井波くん、早く来て...お願い!!』
「.....!」
ミスは許されない。今、俺は皆の期待、そしてこれからの未来を背負っている。
速度が350km/hを突破し、シュトゥーカの叫び声が辺り一面に木霊する。
「我が意気は天を衝き、我がサイレンは敵を衝く。梓の仇だ、プラウダ諸君」
吊り下げた爆弾の狙いは、すでに澄み切っている。
ここまで読んでくださりありがとうございます
時間との戦い...早く敵フラッグ車を撃破しなければ、八九式が後続とIL-2に袋叩きにされてしまいます!ユキオは、最後までアヒルさんチームを守ることができるのでしょうか?
それでは次回も乞うご期待!