第39話、動きます!
ああ、大空の黒鷲よ!
持ちうる全ての爆弾を投下し、追っ手の半分以上を吹き飛ばすことに成功した!
「ふぅ、ホントに間に合ってよかった...」
ぴ『まったくぴよ。で、これからの予定は?』
「そうだな...フラッグ車の上空もそろそろ心配だ、この辺を哨戒飛行しましょう」
最悪の事態は免れた。しかし、まだ地上の残党と、空の脅威が依然として残っている。
アヒルさんチームはちょっとした常緑樹の林に身を隠し、俺は少し離れた場所を飛行する。
ね『あんこうとカバさん、カメさんが、敵フラッグ車を追い詰めつつあるらしいにゃー。あと少し、気合い入れていくよ!』
よっしゃ!あともうひと踏ん張りだ!
目を皿にして戦車がいないか確認を行う。勝利はすぐそこだ、ここでヘマをしてしまえば、生徒会に合わせる顔が無い!
ぴ『......!!後方5時の方向から敵戦闘機が1機、突進してくるぴよ!』
「攻撃機を護衛してきたのかもしれないな...一応アヒルさんチームにもそう伝えておいてください!」
ぴ『了解!』
右に旋回しつつ、敵機の情報を探る。
「ももがーさん!まだ到着には時間かかりますか?」
も『今飛行場を出たところだから、あと10分はかかるもも...』
俺は空中戦という名の逃避行をする羽目になった。
しかしこいつは、何をやっても俺の後ろにぴたりと付いている。シュゥーカの巡航速度に合わせられるよう、フラップを下げているからだ。
「苦肉の策だが、ツリートップレベルを飛ぶぞ!」
ぴ『!?』
ツリートップレベルとは、その名の通り木のてっぺんくらいを飛行する事である。俗にいう超低空飛行だ。
「...よし、高度は15m!撃てるもんなら撃ってみろ!」
しかし、容赦なく曳光弾が翼の下をかすめていく。
普通のパイロットなら、木や地面との衝突を避けて射撃はしない。今ここで撃たれているということは、後ろのLaGGが極めて優秀なパイロットか、我を忘れた命知らずかの二択だ!
頭を回して後ろを見てみると、顔のこわばった一人の女子生徒と目が合った。中々の美人、試合が終わったら声をかけてみるぞ!
すると後部機銃が急に撃ち止んだ。よりにもよってこんな時に機銃が装弾不良を起こしたのだ!
また、曳光弾が翼をかすめていく。
ぴ『旋回半径をもっと詰めるぴよ!!』
「無理言うな!これでも操縦桿を腹いっぱいまで引いてるんだッ!!」
それにしても後ろのアイツは、どうやったらこちらの旋回についてこられるのだろう?高度10~15mで極小半径旋回を行っているというのに!本来LaGGという戦闘機は、この種の飛行を得意としないはずだ。
1つの雑木林を越えたところで、回収車に運ばれているウサギさんチームを発見した。彼女たちははち切れんほどの笑顔で手をふっているが、こちらの状況が分かっていないようだ!
勝たねば...この空中戦に勝たなければ!恥ずかしいところは見せられない。腹いっぱいを通り越し、腹にめりこむのではと思うほど操縦桿を引っ張った。
すると、ぴよたんさんから大きな歓声が上がる。
ぴ『LaGGがバランスを崩して落ちていくぴよ!』
低速域で性能以上の旋回を求めたがゆえにバランスを崩したのか、それともシュトゥーカの凄まじい旋回により生じた空気流でバランスを崩したのか。それは重要ではない。
?『う、嘘だッ!!ナターリヤさん!!』
?『無事ですか?!お怪我はありませんか?!』
?『あの野郎!姉さんをやりやがって...!』
プラウダ諸君、公共の周波数で叫ばないでくれ!ヘッドフォンから様々な声が聞こえる。何かプラウダの航空隊にとって、尋常ならざる事が起きたようだ。しかし、彼女には仕合後に声をかけてみようと思っているので、さほど重要ではないように感じられた。
その後はIL-2の10機編隊に、合流した零戦と突っ込んで〝防空戦闘〟をおこなった。一つ驚いたのがIL-2の頑丈さで、2cm機関砲を胴体下のラジエータに正確に撃ち込まない限り永遠に弾薬を浪費することに気づいた。
そして15時45分。ねこにゃーさんから、敵フラッグ車が撃破されたとの無線が入った。撃破したのは生徒会チームらしい。
ほっとする。この瞬間、大洗女子学園の明日が保障されたのだから!
再び皆が集合する。生徒会が我々のところへやってきて、全員と固い握手をする。あの時の感謝と、この勝利の重要さを伝えにきたのだ。小山さんは、すでにポロポロと涙をこぼしている。
杏「ありがとうね。どんな時も駆けつけてくれて」ギュッ
「そ、それが俺達の仕事ですから...///」
どうしたらいいか分からなかったので、直立不動で応えてしまった。恥ずかしい...!
カ「折角包囲の一部を薄くして、そこに引き付けてぶっ叩くつもりだったのに。まさか包囲網の正面を突破できるとは思わなかったわ」
み「私もです」
カ「えっ?」
み「あそこで一気に攻撃されてたら、負けてたかも...」
カ「それはどうかしら。私たちはあの時、全車両を向かわせてたわ」
み「えっ?」
カ「まったくこの試合は謎が多いわ!誰がJS-2を撃破して、町の東側を固めてた小隊を全滅させて、その上うちのエースまで撃墜したのかしら」プンプン
「キリッ(←飛びまくってスッキリした顔)」
カ「な、なによッ!言っとくけど悔しくなんてないんだから!....ノンナ」
ノ「はい」スッ
ノンナさんの肩車から降り、カチューシャは初めて対等な立場での握手をした。
カ「決勝戦、見に行くわ。カチューシャをガッカリさせないでよ」グッ
さて、試合後の挨拶も終わったので、俺は”なたーりや”というパイロットを探しに行くことにした。
「それじゃ、ちょっと俺は用事があるので」
ノ「あ、あの...」
振り返ると、少しだけ申し訳なさそうな表情のノンナさんが立っていた。
ノ「今まで騙していてごめんなさい」ペコッ
「...?」
騙していた?そんな事あったっけ...あ、あの時の事か!
しかし勝負事の常だ、多少の騙しあいは仕方がない。
「もう気にしてませんよ。それに...」
ノ「それに?」
「ノンナさんがあの時言ってた妹って、きっとカチューシャの事でしょ!姉妹そろって戦車道してるなんていいじゃないですかー!」
ノ「い、いえ...実は...」
俺はノンナさんから真実を伝えられた。なんと二人は同じ学年で、血もまったくつながっていないというのだ。信じられない、絶対姉妹だゾ。
因みに俺が付いていたHe100のエースパイロットの嘘もとっくにバレていた。自分をエースだというのが恥ずかしかったからと説明すると、ノンナさんの顔が初めてほころんだ。雪も解けそうな、いい笑顔。
沙「井波くーん、何かプラウダの人が会いに来てくれてるよー?」
ナ「どうも、あなたがあの時のJu87のパイロットかしら。私はナターリヤ・シェスタコフ。LaGGのパイロットよ」
「あぁ、これはどうも!井波ユキオです」
色白で金髪ショート。整った目鼻立ちで、温厚そうな雰囲気の人だった。ナターリヤとじっくり10分ほどお互いの空戦技法について語り合った。彼女はとても聞き上手で、その程は丸山紗紀さんに勝るとも劣らない。非常に有意義な時間だった。もちろん、連絡先も交換した。
『今日一緒に飛ばない?』と、梓さんと間違えて送信してしまったのはまた別のお話だ!
そして帰り道。会場を出る直前に、ある1人の貴婦人に声をかけられた。今日はよく声を掛けられるな。
?「井波ユキオさんで間違いないかしら?」
「ええ、そうです」
?「私、あなたの大ファンですの。いつも楽しく見させて頂いておりますわ。是非あなたのサインを頂戴したいのだけれど...」
「ええ、構いませんよ」
サインなんて練習してなかったので、申し訳程度の筆記体で書いた。それにしても俺のファンがいたとは。これからもますます頑張らないといけないな!
ふふっ、サイン...貰っちゃった♪
さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?見事プラウダを倒し、決勝戦を控えた大洗女子学園。ナターリアとも友達になり、誤送信がきっかけでたまに会ってるそうですよ!
それでは次回も乞うご期待!