泣いても笑っても今日で最後なら、笑って終われれば何と幸せなことか!
それでは決勝戦、動きます...
目覚まし時計が、素晴らしい朝の訪れを知らせる。
———起床!
時刻は午前6時。昨日食べたカツの消化は既に済んでおり、恐ろしい程身体が軽い。若さとは強さだ!
さっと飛行服に着替え、学校へ登校する。
?「今日決勝戦なんだって?がんばってね~!」
?「下剋上だ、黒森峰をギャフンと言わせてきてくれ!」
?「ボク大きくなったら大洗で戦車道するー!」
?「ケガなさらないよう気を付けてくださいね。応援しています」
道中で様々な人から差し入れや励ましを頂いた。学園艦という存在は、そこに学校がある事によって成り立っていて、住人達にとって廃校の有無は決して他人事ではない。艦と学校、そしてそこに住まう人達は運命共同体なのだ!しかし彼らの言動は、まだその事に気づいていなように感じられる...
だが、今更それを気にしたところで特に意味はない。要は勝てばいいのだ。
おばあさんから貰ったキンキンに冷えた優しい麦茶の一本を飲み干して、自律神経を整える。
学校へ到着すると、皆が真剣な面持ちで作業に取り掛かっていた。
我々は機をグラウンドへ出し、発進の準備を行う。
「全員揃ってますか?」
ぴ・ね・も「「「集合完了!欠員無し!」」」
「よし、東富士へ向かうぞ!!」
グラウンドから発進し、静岡県御殿場市にある共用の飛行場へ向かった。空はよく澄み渡っており、地上の様子もよく見える。この間とは打って変わって素晴らしい急降下日和だ。
着陸した後、周りに沢山の屋台が出ていることに気づいた。
「おっ、大洗航空隊のデカールが付いてるプラモデルまであるのか!こっちにはチハまで展示されてるぞ!」
ぴ「あんまり時間食ってると怒られるぴよー」
「少しくらいなら大丈夫だ!あ、そこの方!よければ写真をお願いしたいんですけど!」
?「あぁ、構わないよ。それじゃ...ハイ、チーズ!これでどうかな?」パシャッ
「どうもありがとうございました」
?「あれ?君ってもしかして大洗の井波ユキオくんかい?」
「えぇ、そうですが...」
富「こんなところで会えるとは思ってなかったよ!僕は富竹、フリーのカメラマンで今日は撮影に来てるんだ。また会ったら写真を撮らせてくれないかい?」
「全然いいですよ。好きなだけ撮ってってください」
富「ありがとう!あ、それじゃそろそろ行くよ。試合頑張ってね!」
やけにガタイのいい富竹と名乗る男は、連れの女性に呼び戻され、人ごみの中へ消えていった。
屋台を一通り見終わり、大洗の戦車整備所へ来た。
復活して1年目、しかも決勝まで這いあがってきた無名校の生徒を一目見ようと、倉庫の周りには他校生たちが集まっている。
体操とランニングに丁度良い広場を見つけたので、ぴよたんさんと2人でウォーミングアップを行う。
走り終わっていつも通り優しい麦茶を飲んでいると、他校の先輩方が話しかけてきた。
ダ「相変わらずですわね。ユキオさん」
ケ「ここまで自分のルーティンを貫いてる子は見たことないかなぁ...笑」
ア「お腹すいてないか?パスタあるぞ?」
「大洗の戦車が太刀打ちできない敵戦車も、急降下爆撃ならまとめて一網打尽にできますからね。いつも通りのことを、可能な限り実行するまでです。いただきます!」
ノ「ユキオさんが毎日体操しているのを見て、カチューシャもラジオ体操を始めたそうですよ」
「それはいい!朝一で体を動かせば、身長も早く伸びますからね!」
ダ「ふふ、あなたってホント前向きね。他の人には無い何かを持ってる気がするわ」
「あ、ありがとうございます。でも俺には特別な才能もなければセンスもありません。そんなに褒めてもらえるようなことでは...」
ノ「ユキオさん、戦車道に...いえ、人として生きる上で才能やセンスの有無は関係ありません。大事なのは、自分を信じて常に前へ進めるかです」
ケ「そうよね!根拠なんて後付けで構わないから、とりあえず自信を持つ事よ!」
ダ「ええ、そんなあなたにこの言葉を送りますわ」
『自らを価値無きと思う者のみが、真に価値無き人間である。』
ダ「ノンナやケイの言う通り、要は自分次第よ。あなたの持ってる何かを生かすか殺すかも一緒。それでは、健闘を祈りますわ」
ぴ「井波くん、そろそろ集合...ってなんかあったぴよ?」
「いえ、ちょっと考え事してただけです。行きましょう!」
選手入場の声と共に、我々と黒森峰の生徒たちが入場する。観客席からは黄色い声援と歓喜の声。
後ろで歩いている梓さんが俺にそっと話しかける。
梓「井波くんのご両親って見に来てるの?」
「今日試合なのも知らないと思うし、実家が四国だから多分来ないと思う...」
梓「て、テレビで中継されててよかったね...笑」
入場が終わり、お互いに整列する。目を少し先にやると、黒い制服を身にまとった生徒たちが微動だにせず、真剣な顔つきでこちらを見ている。威圧感を軽く通り越し、恐怖すら感じる。当然だ、黒森峰は今日という日に全てを懸けていることを俺は知っている。改めて思う、黒森峰の全国大会に対する闘志は凄まじいと。
しかしその中に、微笑ましげにこちらを見つめる女性が一人いた。
俺はその人に、白いマフラーを振って見せる。
言わずもがな、赤星小梅さんだ。
蝶「両チーム各隊長、副隊長は前へ!」
航空隊に副隊長はいないので、取り敢えずぴよたんさんを引っ張っていく。審判長は蝶野さんだ。恐らくあの号泣持久走以来だろう。
チラっと黒森峰の航空隊のメンバーを覗いてみる。ん?少し減っている。しかも、かつて所属していた急降下爆撃隊はメンツの総入れ替えがされており、もはや誰がどこの所属かも分からない。
流石は実力主義の黒森峰。まさにストイックを地でいっている!
エ「ふっ、お久しぶり」
ま「...」
み「...」ペコ
エ「弱小チームだと、あなたでも隊長になれるのね」
み「....」
「エリカさんってば、みほさんの後釜で副隊長になれたのが嬉しいんですよ」ボソッ
エ「そこ、何か言った?」
「いえ、次は隊長目指して頑張って下さいね」
エ「アンタねぇ!」
エリカさんが皮肉を言うのは、何も今日に限った事ではない。いつもその裏には、何かしらの優しさが隠れているのだと俺は知っている。
ま「よせ、エリカ」
エ「わ、分かりました...」
蝶「両校、挨拶!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
すぐに飛行場へ向けて走り出す。指示がでたその時には、すでに我々は発進できる状態でなければならない!
み「井波くん!」
「なんです?」
み「.....航空隊の健闘を祈ります!」
「みほさんたちも健闘を!これからもずっと、試合前挨拶は一緒にいきましょうね!」タタタッ
みほさんの元に、小梅さんが駆け寄ってきたのが見えた。なにを話しているのだろう、二人の間には、特別な友情があるのかもしれないな!
せっかくの旧友の再会に水をさしてはならない、よい後輩とはここで去るものだ!
そして我々は現在、森を抜けて近道をしようとする黒森峰戦車部隊の上空4000mを飛んでいる。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回でこの小説も40話を迎えることができました!ここまで更新意欲が湧いたのも、日ごろから読んでくださっている皆さん、そしてお気に入り登録してくれた皆さんのおかげです(o*。_。)oペコッ
これからも「もしガルパンに航空機があったら()」をよろしくお願いしますっ
それでは、次回も乞うご期待!