さて、今日は色々とボリューミーなお話です笑
友と賞と決断と。ユキオは今日も慌ただしく動き回ります!
それでは第50話、動きます!
【横浜港にて】
今日より数日間、我が学園艦は何やら政治的な集まりで千葉港へと寄港することとなった。
話し合いは東京の文科省庁舎で行われるそうなのだが、学園艦は大きすぎて東京湾へ入れないということで、千葉港から連絡船で行くのだそうだ。
「(そんな面倒なことしなくとも、俺に言ってくれればいいのに)」
そんな事を思いながら、俺もちゃっかり連絡船で東京へ出てきて、霞が関でランニングをしているところだ。
政治的なことはよく分からない。
ただ一つ明らかなのは、プラウダや黒森峰、サンダースなども千葉港へ集まっていることから、戦車道に関する話し合いが行われる予定なのだろう。
?「あ、あの〜...」
皇居で美味しい空気を吸いながら休憩していると、不意に声をかけられた。
?「もしかして、大洗の井波さんですか?」
「そうですよ、僕が井波ユキオその人です」
羅「やっぱり!自分は知波単の、
「ラ、ラバさん!?」
羅「いえ羅馬です」
日本に何世帯いるのか気になる苗字を持つこの男は、なんと俺と同じ航空隊所属なのだそうだ!
同じパイロットとなれば話は早い。我々はすぐに意気投合し、先の全国大会のルール変更の愚痴で盛り上がった。
「そういえば今日の集まりは何のためか知ってる?」
羅「実は私たちも聞かされてないんだよ。西隊長曰く、全国大会で表彰する選手を決めてるんじゃないかって」
「なるほどな!でも航空隊は準決勝からしか参加できないし、少し不公平だよな」
羅「だよな。でもユキオは表彰される可能性あるんじゃない?」
「なんでだ?」
俺が素朴にそう聞き返すと、羅馬は呆れたような表情で懇切丁寧に、連盟の俺に対する評価を説明してくれた。
どうやら俺が撃破した戦車の台数は公式記録で13両であり、至近弾や機銃掃射で擱座させたものを含めるともっと増えちゃうのだそうだ。
それとちゃっかり戦闘機も3機撃墜したことになってるらしい。
「でもそれくらいなら、黒森峰のハルトの方が多いんじゃないか?」
羅「戦車道における航空機ってのは、あくまで直接航空支援が主な評価基準らしい。制空権を取ることよりも、爆弾で戦車をやっつける方が評価が高いってことだね」
「そういうもんなのかなぁ~」
確かに、俺は大洗のみんなを守るために、雪の日も戦闘機がウジャウジャいる日も対空砲が空を睨んでいる日でさへ急降下爆撃を敢行してきた。その点を評価してくれるのは、努力が実った気がして素直に嬉しい。
でも、爆撃機、とりわけシュトゥーカのような旧型機がちゃんと急降下爆撃できるのは、制空権や護衛機があってこそだ。
試合では、制空権を取っただけでは地上の状況は変わらないし、爆撃機だけでは目標地点に着く前に撃ち落される。
お互いがお互いの役割を果たした時にこそ、はじめて勝利を掴みとれるのだ!
「いや、やっぱり納得できないな。もしそんな基準で表彰されるようなことがあったら、その時は記者会見ではっきり言ってやる!」
羅「お、おいおい! そんなことしたら航空隊が出れるのが決勝からになっちゃうって!」
「げっ、羅馬もその話知ってたのか」
羅「今や共通認識だよ!」
ァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「はいもしもし、ユキオです」ピ
羅「(着信もその音なのか)」
杏『あ、井波くん?いまどこにいるのー』
「いまは皇居なうです」
杏『東京にいるならちょうどいいや。あと3時間後に文科省で表彰式があるから、出席よろしく~』
「了解です!」
杏『あ、一応制服でよろしくねん』
制服...つまり飛行服ということだな!チャーミングなあんこうの刺繍もあるので、見栄えもいいに違いない。
「わかりました。それではまた後ほど」ピ
羅「なんだったの?」
「ラバちゃん、君は予言者かい?」
羅「自分の撃破数くらい把握しとけ!」
我々は皇居を後にし、宿舎に荷物を取りに帰った。
どうやら、表彰式にはラバちゃんも付いてきてくれるらしい。これで詳しい戦果を聞かれたときも安心だな!
【文科省 表彰式場】
「みほさん、来てくれたんですね!」
み「うん!あれ、となりの人はお友だち?」
羅「知波単の羅馬乗達です!はじめまして」
み「私は西住みほです、よろしくね」
羅「あ、あなたがあの...軍神西住さんでしたか!」
み「ふえ?」
「こらラバちゃん、みほさんは軍神ではなく女神だぞ。そこを間違えるなよ」
ほどなくして、式場には各校の生徒で満員となった。全員が表彰されるわけではないが、この特別な式典に参加することに意味があるのだろう。
?「~♪」ポロロン
「(ん?いまハープみたいな音がしたような)」
司「え~それではこれより、第63回戦車道大会における成績優秀者の発表をおこないます。名前を呼ばれた生徒はどうぞ壇上へ。それではまず戦車部門から―――――――――――最優秀車長、大洗女子学園 西住みほ。以上です」
「おお!みほさんやりましたね!」
み「えへへ/// ちょっと緊張するけど行ってくるねっ」
壇上には、様々な高校の生徒たちが並んだ。その景色ときたら、これはもう圧巻だ!
こういった、何かの一分野に特化した人間には、それ相応のオーラがあるものだ。
それに比べて、我が隊長のなんと人畜無害なことか!きわめて安心感のある雰囲気だ。
司「戦車部門の皆さん、ありがとうございました。お下がりください。それでは次に航空機部門です。えー.....ち、ちょっとこれ本当に合ってるの?...ならいいけど」
それまでは非常に滑らかな進行をみせていた司会者が、急に裏方を呼んで何やら確認を取っている。
さもありなん、サルも木から落ちることがあるのだ。
司「え、えー失礼いたしました。それでは航空機部門です。最多撃墜、黒森峰女学園 鬱金ハルト。最多撃破、最多出撃、MVP、最優秀パイロット、大洗女子学園 井波ユキオ。以上です」
戦車部門のときと打って変わって、式場の雰囲気が少しざわつき始めた。俺が飛行服なのがそんなにおかしいのだろうか?
しかしハルトも気にしてなさそうだったので、俺もさっさと壇に上がり、2人で賞状と少しばかりの賞金を受け取った。
その後来賓の方々や文科省官僚のお話があったが、その中にひとつ、ゾッとするようなことを話している人がいた。
官「えー、我々文科省としましては現在、1日の飛行時間を2時間までとする新しい規則の策定を検討しています。その目的としましてはですね、やはり墜落事故等などから生徒たちの安全を確保することにありまして―――――」
前で話す官僚が、時折チラチラと俺の顔に目をやる。人を見下したような、我々が安全を守ってやっているのだと言いたげな、お節介で高慢な、石のように冷たいその表情。
官「――――――我々文科省は安全な戦車道の運営を行うため、今後もこのような新しい規則の策定を検討していく所存です。私からは以上でございます」
その言葉でようやく正気に戻ることができた。戦車道で精神力を鍛えてなかったら、この庁舎を爆撃していたに違いない!
羅「...ユキオ、君まさか変なことを考えてないだろうね?」
「これっぽっちも考えてないぞ。ただ、お節介だというのは誰かが伝えないとな」
羅「お、おいユキオ...みほさん!このままだと面倒なことになるかもしれませんよ?」
み「ま、まぁ井波くんは物言いがハッキリしてるのがいい所だから...それに」
羅「それに?」
み「わたしもその規則には賛成できないから、かな」
閉会後、抽選会のときのように記者の人に取り囲まれることになった。
〝名誉ある〟取材だ。
何も恥じることはないし、忖度する必要もない。メディアでは、常に解釈を抜いた事実のみが語られるべきなのだから!
記者A「いや~ユキオくん!ほとんどの賞を総ナメにてしたいまの感想は?」
「悪くないですね。でも、我が校が廃校にならなかったことの方が嬉しいです」
記者B「なるほど、ここはあくまで通過点ですよって感じですか!」
「通過点というか、廃校にならないために頑張ったので、一番の目的が達成できたことが嬉しいという事です」
記者C「謙虚だね~!でもでも、やっぱりハルトくんのことはライバル視してたでしょ!どう?やっぱり勝ててうれしかった?」
「サンダースの次は黒森峰ですか?」
記者C「え、いやぁ...まあ?」
?「はい!私も質問してよろしいでしょうか?」
「あなたは...王大河さん!」
王「へへ、どさくさに紛れてきちゃいました!笑」
「なにやってるんですか...でも、王さんの質問なら喜んで!」
王「ありがとうございます!では早速...文科省の飛行時間制限規則について、どう感じていらっしゃいますか?」
俺はこの時、王さんが世界的なジャーナリストになれることを確信した!
今俺が一番しゃべりたいことを理解してくれていて、それについて聞いてくれたのだ!
俺は王さんのマイクをぎゅっと握りしめ、他でもなく我が大洗女子学園放送部のカメラを見つめる。
「ありえないな。それにしても現場を知らない文科省だ!もし自分が1日の12分の1しか飛行を許されないのなら、この受賞と賞金を即刻ご返却申し上げたい。来年度、澄んだ瞳で空を夢見て入学する後輩が、たった2時間の練習で満足するわけがない。それに、俺の飛行時間を見て規則を検討したのかもしれないが、あれは自分から進んで飛んだものだし、飛ばないと上達しないぞ!」
王「なるほど!一番結果を出している生徒がそういうのですから、間違いないでしょう!以上、放送部の王大河がお送りいたしました!」
王さんとガッチリ握手。メディアとはかくあるべきなのだ!
席の方へ戻るとラバちゃんはなぜか青ざめていた。
しかし安心してほしい。新しい規則が怖いのだろうが、言うべきことは言っておいてやったぞ!
「みほさん、ただいまです」
み「ふふ、おかえり」
「どうしたんですか?」
み「んーん、なんでもないよ。かえろっか!」
「はい!」
無論、俺のこの発言は『戦車道界隈』を賑わせることとなる。
だがそんなことは推して知るべし。賢明な我が同胞なら、俺が言いたいことをきちんと分かってくれるはずだ。
デスクの上でパソコンを打っている連中には分からない。感情的かつ主観的な状況が現場では繰り広げられていることを、彼らは認識するべきなのである。
【翌日】
「あ、そういえば小梅さんからのメール返さないとな」パカッ
件名:いつでも電話してね
本文:
今日の新聞見たよ!嫌がらせとかされてない?
井波くんのことすっごく悪く書かれて、私ちょっとプンプンしちゃった笑
まほ隊長も、井波くんの言ってることには筋が通ってるって言ってるよ。
もちろん私もそう思ってるから、何かあっても1人で抱え込まないで。私はいつでも井波くんの味方です!
あと、いっぱい受賞おめでとー!!
小梅
心強くて泣きそうになる。小梅さんほどいいお嫁さんになれそうな人物を、俺は知らない!
携帯を握る手に力がこもる。
示さねば...断固として示さねば!
飛行時間、つまりより多く空を飛んで練習した者だけが、試合で乙女たちを守ることができるのだと!
下らない机上の空論なんて、圧倒的な結果で黙らせてやろうじゃないか!
件名:やぼーるまいこまんだー!
本文:
小梅さんのおかげでもっと勇気がでました、ありがとうございます!
色んな賞をもらえたことより、小梅さんにそう言ってもらえた事の方がなんなら嬉しいですっ。
そうそう、知波単のパイロットと新しく友達になりました!
名前がめっちゃ可愛いです。みんなで撮った写真おくりますね
ゆきお。
『ユキオは激怒した。』
『必ず、かの邪智暴虐な文科省の考えを、改めねばならぬと決意した。』
『しかし、ユキオには霞が関の常識が分からぬ。』
『ユキオは航空隊パイロットであったのだ。』
『朝起きて麦茶を飲み、空を飛んでは急降下して暮らしていた。』
『しかし、飛行時間制限には人一倍敏感であった。』
『....と、そんな事はどうでもいい。すぐに出撃だ!』
「(俺がメディアを騒がせるたびにアップデートされてくのか...)」
お読みいただきありがとうございました!
なんと、もしガル()が50話を突破いたしました!
みなさんのお気に入りやおもしろいコメントがモチベになったおかげです!
これからもよろしくお願いします(o^―^o)
それでは次回も乞うご期待!