この話にて第1章は終了です。
ティアンの死亡が出てきますので苦手な方はブラウザバックをお願いします。
【
エンブリオが孵っても孵る前と状況が変わらない。
彼らに出来る事はもう。
「ヒッヒッヒ、ありがとうね。マスターさん、おかげで安心して逝けるよ」
オババ様の弱々しい声が聞こえる。
ボウのそんなボロボロな身体でどうやって握り締めているのか必死の想いが伝わる。
俺のエンブリオは答えてくれなかった。
なら、今の俺に出来る事は。
【剣冠賢勲 ゴブキネル】の【
《
所詮、遊戯だ。
誰かが言っていた。
彼らはNPCだと、足りなくなったら運営が補充すると。
それは、正しいのかもしれない。
この後のために彼らを見殺しにするのが賢いのかもしれない。
それでも、そんなのは
「《魔法範囲拡大》、《魔法威力拡張》、《魔法発動加速》、《
スキルを羅列し、《詠唱》にてMPを更に込める。
暖かな穏やかな光が辺りに満ちる。
アーチと呼ばれたボロボロの人も、傷ついていた狩人たちも回復していく。
使ってしまった。
だが後悔はない。
【遊星】は【栄冠】の就職条件を満たしたタイミングで同時に就職条件を満たしていた道化師系統派生複合超級職だ。
スキルは、そのベースになった下級職4種の複合上級職【
そして超級職により得た《切り札》という奥義。
効果はレベルを代償にどんなスキルでも再現する。
これまで《聖別の銀光》《グランドクロス》を獲得するために使用した。
上級職のこの2つスキルの再現で消費したレベルは200。
超級職のスキルの再現にはどれほどのレベルが対価となるのか、あるいは足りない可能性もあった。
治っていく人たちを見て、この光景が見たかったのだと思う。
「あれ、ここは?ウチはモンスターにやられたんじゃ?」
鈴の音を転がすような少女の声が響いた。
「アーチっ!」
俺に縋り付いていたボウが弾けるように少女に近づいた。
「ああ、良かった。ホントに良かった」
「わ、誰っ!?ボウなの?」
包帯だらけで分からなかったのかアーチは驚いた声を上げたが、すぐにボウだと気づいたようだった。
ひとしきり喜びを分かちあった後にボウはコチラに向き直り礼を言ってきた。
「ありがとう、心から感謝する。私に出来ることが、ぐぅッ!」
ボウは急に胸を抑え苦しむようにひざまずく。
「ヒッヒッ、やはり秘薬の副作用は強烈だね。その包帯のお陰で死にはしないそうだが、治るまで時間がかかりそうだね」
オババ様がゆっくりと喋ってきた。
「【魔女の秘薬】、大昔の【
オババ様はゆっくりゆっくりと少しずつ小さくなる声で語りかけてくる。
「「「オババ様ッ!」」」
オババ様の命が消えていくのを感じたのかボウが、アーチが、狩人たちが集まっていく。
「何か、何か」
縋るような目でボウがコチラを見てくる。
俺はチラリと左手に着けた頭蓋骨の数珠を見た。
「やめな、ボウ。これ以上、マスターさんを困らせるんじゃないよ」
蚊の鳴くような声でオババ様が言う。
「でも、しかし」
「ヒッヒッヒ、寿命さ。永く生きたさね」
喚こうとするボウをオババ様は弱い声で窘める。
「だが、マスターさん。アンタまだ何か隠しているね」
ふとコチラにオババ様が話かけてきた。
ドキリと鼓動が跳ねた。
「なにっ!ホントか。ぐぅッ!オババ様を何とか頼むッ!」
ボウがコチラに向いて苦しみながら頼み込んでくる。
周りの狩人たちも同調するように頼んできた。
だが、コレは期待されてるような効果はない。
いや、むしろ。
「【数取頭蓋 ラクシャス】のスキルは1つだ。アンタたちの期待するような物ではない。むしろ嫌悪するかもしれない」
俺が突き放すように隠していた事実を告げた。
「続けてくれないかい」
俺の発した言葉に静かになった間隙にオババ様が小さな声で訊いてきた。
使わなければいいだけだ、教えても良いだろう。
「《
「なっ!」
告げたスキルに辺りが静寂に包まれた。
「ヒッヒッヒ、それは良い。マスターさん、名前は?」
「え?レンだ」
「幼い頃から外の世界に憧れていたのさ。なあレンさん良かったらこの老いぼれもアンタの旅に連れて行ってくれないかい?」
オババ様がシワだらけの顔でコチラを見てニッコリと笑った。
そしてそのまま全身から力が抜けたようにゆっくりと息を引き取った。
「埋葬は、そちらで頼む。俺はもう行く」
逃げ出したい、ここから。
そんな思いで言い切って踵を返す。
速く、少しでも遠くへ。
「待ってくれッ!」
鋭いボウの声が俺の背に刺さる。
振り返るな、立ち去れ。
そんな思いと裏腹にゆっくりとそちらを向く。
「オババ様も連れて行ってくれませんか?」
泣きそうな笑顔でアーチが続く。
少しずつ、口々に狩人たちもお願いしてくる。
「なんで、どうして。コレが良いものかわからない。もしかしたら死者に苦痛を与えるかもしれないんだぞッ!」
俺が強く言う。
「それでもです。オババ様の最後の頼みを聞いてもらえませんか?お願いします」
アーチが頭を下げるのともに周りの狩人たちも合わせて頭を下げる。
「オババ様は空を見上げて言っていたんです。あの鳥のように自由に世界を見てみたい、と」
頭を下げたまま、アーチが続ける。
「旅に出たい」
声が聞こえた気がした。
ゆっくりと足が導かれるように近づいて行く。
シワだらけの笑顔の前に手をかざす。
「《死して屍、拾う者あり》」
オババ様は光の粒子となって頭蓋骨の数珠に吸い込まれて行く。
「ありがとうございます」
大粒の涙を地面に零しながら震える声でアーチは御礼を言ってきた。
返事もせずに立ち上がり、集落から離れようとする。
「ちょっと待ってくれ」
行く手を阻むようにボウが立ち塞がってきた。
「なんだ?」
短く滲む視界の中、答える。
「コレを」
ボウはそう言うと弓と矢筒、そして小瓶を渡してきた。
「この集落最高の弓矢と【魔女の秘薬】だ。今回の御礼には到底、足りないが今はコレくらいしか渡せない」
「わかった」
ボウから報酬を受け取り、集落を去る。
もう振り返らない。
《隠潜》を使用してしばらく歩く。
日が落ち、辺りは暗くなった。
【
「見つけた」
もらった弓に矢を番え、引き絞る。
「《リーダーアロー》」
闇夜を斬り裂くように地上を流星が駆る。
【<UBM>【禁断紫宝 アダバイン】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【レン・クロウ】がMVPに選出されました】
【【レン・クロウ】にMVP特典【禁断奉血 アダバイン】を贈与します】
「コレで集落も安心だな。オババ様」
あの時に確認していたUBMを狙撃にて討伐をした。
モンスターを強化し操る能力があったようだった。
「さて、旅を続けよう」
頭蓋骨の目が僅かに嬉しそうに光ったように感じた。
0)>この遊星を隠すためにスティーレルのアナウンスはカットしました
0)<カット理由は多分、順番的にUBM特典獲得アナウンスが最後になりそうだったからです
0)>あと聖者の慈悲はまた切り札を使わないと使えないです
0)<聖別の銀光、グランドクロスは大罪狩にそのスキルを受ける受け皿(賞金首がアンデッドでも倒せるように)があったため残りました。
0)>デンドロにはジョブを消しても対応するジョブがあればスキルが残る仕様がありますので、それを満たした感じです
0)<次回は閑話として主人公以外にスポットを当てたお話の予定
0)>そして一章の登場人物紹介を入れて二章に続く予定です
0)<ではまた