激しい音が聞こえた気がして私は目を覚ました。
ボロボロの小屋のテーブルの上で横になっていた。
先程まで負っていた私の身体の怪我は治っており、流石に内側の方はめちゃくちゃにされたからか痛みこそまだあるが外側の怪我は全て治癒されていた。
私は自分の現状をしばらく理解するのに時間が必要だった。
死ぬのは覚悟していた。
焼け焦げて焼死体になるのを覚悟していた。
その未来を、急に現れたあの兵士が打ち壊した。
髪色と瞳の色が変わっていたけど、その兵士を私は知っていた。
処刑前日に祈りを捧げている時に牢屋を掃除しにやってきたあの兵士。
質問されて戸惑ったのを覚えてる。
私自身の考えをそのまま返したら、兵士は思う所があったのか考え込んでいた。
少し意地悪して「助けてくれるのか?」と聞いてしまった。
返ってきた兵士の答えは「無茶を言うな」だった。
別に期待して訳じゃない。
分かりきっていた答えだった。
でも、その兵士が助けに来てくれた。
感謝はある。でも、それよりも困惑の方が大きい。
何故、一兵士に過ぎない彼が命を賭して私を助ける理由が分からない。
小屋を見渡すと彼の姿は無い。
探そうと思って体を起こすと、叫び声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
私を助けてくれたあの兵士の声だ。
急いでテーブルから降りて小屋から出る。
小屋から出た先は廃村だった。
その村の真ん中で二人の男が戦っていた。
一人は私を助けてくれたあの兵士、もう一人はカソックを着た神父風の男。
私を助けてくれた恩人が戦っている。
彼を助けなければと、介入しようとした。
でも二人の戦いは私の経験したどの戦場よりも壮絶だった。
あの兵士は
凄まじい戦いだ。
これほどの戦いを私は見た事がない。
そして、最後に兵士は神父の顔面を右手で掴み、私の知らない何らかの手段で破裂させ殺害した。
「アナタは…」
一体何者なんですか?と続ける事ができなかった。
私がつい声を出してしまった瞬間、あの兵士が此方を向いたからだ。
兵士の顔は目が赤く妖しく光り、顔は人間だが明らかな人外の雰囲気を纏っていた。
あの兵士が私に近づいていく。怖い
動けなかった。怖い
これまで私の人生でこれほどの異形には出会った事は無かった。戦争にもいなかった。
生物としての本能的恐怖が私の身体を縛る。
お前はこれから喰われると、本能が告げていた。
人外のプレッシャーに押し潰されそうになる。
次の瞬間に、自分が喰われる姿をイメージする。
思わず彼から目を背けてしまう。
「もう起きたのか。まだ寝ていてもいいんだぞ」
次に私にかけられたのは捕食でも暴力でもなく、ただただ私を気遣った言葉。
あまりにも意外な言葉が飛んできて、目を見開いてしまう。
彼は何かに耐えてるようだった。
必死に抗って、あの人は私を心配してくれた。
今すぐにでも、人を襲いたい衝動に耐えてるようにも見えた。
まるで腹が減っているのに目の前のご馳走に必死に耐えてるかのように。
「いえ…大丈夫です」
呆気に取られながらも返事をする。
どうして?なんで?と疑問ばかりが頭の中に溢れていく。
「沢山、聞きたい事があります」
アナタは何者なのか?
どうしてそんな化け物じみた能力を持っているのか?
先程戦っていたあの神父は何者なのか?
疑問ばかりが頭を過ぎるが、それらの疑問の何よりも優先して聞きたい事があった。
「なぜ、アナタは私を助けてくれたのですか?」
ただの兵士でしかなかったアナタが
化け物のような力を持つアナタが
たった一度しか会話した事のないアナタが
どうして私を助けに来てくれたのかが分からない。
その疑問が私にとってなによりも重要だった。
「最初に見た時、君が神に祈る姿が美しかった。それを見てつい助けたくなった」
それに…と彼は続けて
「助けて欲しそうにしていたからな」
そう答えた。
ああ…顔が熱い。胸が痛い。体も熱い。
その答えに私はしばらく固まった後、体が熱くなるのを感じながら笑った。
久々に声を上げて、お腹を抱えて笑ってしまう。
なんて人だろう
あんなに犯され精液塗れの体で祈っていたあの時の私の姿を美しいと言ってくれるなんて。
なんて人だろう
確かに心の奥底では思っていた。誰かに助けてほしいとは思っていた。
でもそんな人は現れない。
こんな敵国のど真ん中で、ましてや異端審問で魔女とすら言われた私を助けようとする人なんて誰もいない。
そう思っていたのに、こんな人が私の前に現れてくれたのが嬉しくて、この人に巡り合わせてくれた主に感謝しかなかった。
「…どうした急に?」
突然笑う私にあの人は戸惑っているようだ。
その様子すらも私はおかしくてたまらない。なんだか可愛らしさすら感じる。
「分かりました。色々聞きたい事がありますが、それは後にしましょう」
ではまずは、と続けて、次に知りたい事を告げる。
「アナタの名前は何ですか?」
ずっと気になっていたアナタの名前を尋ねると、彼は自分の片刃の大剣を見て少し考え込んでから答えた。
「
彼は若干恥ずかしそうに告げる。
明らかに偽名だろう。
彼が本名を名乗らない意図は分からない。
どんな理由があるのか、それとも単に名乗りたくないだけなのか。
そんな物は私には分からない。
とにかく私は彼をエンハウンスさんと呼ぶ事にした。
そして、この時に感じた体を焦がす熱の正体を私はまだ知らなかった。
こうして私達の逃避行が幕を開けた。
その道中で彼…エンハウンスさんは教えてくれた。
自分が没落寸前だった貴族である事。
自分は魔術師である事。
自分が
先程戦っていた神父は死徒を始末しに来た聖堂教会から送られてきた代行者と呼ばれる刺客だった事。
私が気になる事を全て彼は答えてくれた。
魔術についてはうっすらとしか分からなかったが、死徒についての方が重要だ。
「死徒とは一体どういった存在なんですか?」
エンハウンスさんはばつが悪そうな表情をしながら答える。
「死徒とは人の血を吸って生きる怪物だ。人の血を糧に生きる人間の敵だ」
その言葉を聞いて、私は納得する。
あの代行者との戦いの後、私を見て、必死に何かに耐えていた彼の姿を思い出す。
きっと彼は私の血を吸うのを耐えていたんだ。
「私を助けたのは、血を吸う為ですか?」
「
即答された。正直知ってた。直感で分かっていた。
彼はきっとそんな理由で動かない。
彼はきっと助けたいから助けたのだ。
誰かの為に損得関係無く動ける善良な者。
私の中でエンハウンスさんという人はそう結論した。
信じられる。信用できる。
敵国の捕虜となってから久しい信頼できる人の存在。
エンハウンスさんの存在が私にとって只々ありがたかった。
「逃げると言っても何処へ逃げるのですか?どこか当てがあるのですか?」
私の質問にエンハウンスさんは恥ずかしそうに答える。
「いや、正直に言って大した計画も無く助けに入ってしまったから当てはない。だから貴女の故郷であるドンレミ村まで連れて行こうと思ってる」
その言葉を聞いて二重に驚いた。
一つ目は大した計画も無く、感情的に私を助けた事。
二つ目は逃亡先がまさか私の故郷が選ばれた事だ。
故郷に行けば、否応なく家族と会う事になるだろう。
家族の静止を振り切って戦場に行ったのは私自身だ。
もう二度と会う事も無いだろうと思っていた。
まさかこの時になって再会する機会が訪れるとは。
「今更…故郷に帰ってどうしようと言うのです?」
今更帰った所で、家族と何を話せば良いのか私には分からない。
ましてや、国に帰っても国がまた私を政治へ関わらせるとは思えない。
そして私の家族はおそらくもう私を村の外へ一生出さないだろう。
そんな確信があった。
「政治であろうがなんだろうが、家族には生きている事くらい伝えたらどうだ?きっと誰よりも貴女を心配しているのはその家族だ。そして、貴女の死に誰よりも悲しむのはやっぱり貴女の家族だ」
そう言われると返す言葉を失う。
誰よりも家族に心配をかけているのは私自身に他ならない。
「……そうですね、共にドンレミ村へ向かいましょう」
渋々と故郷へ向かう事を了承したらエンハウンスさんは笑みを浮かべて共に歩みを進める。
その自然な笑みに少しだけ心を奪われながら
その道のりは決して楽な物ではなかった。
大した準備も無く決行した逃走劇は様々な困難があった。
寝泊まりする場所は当然そんな物は無く、食糧も勿論無い。
そして何よりも国を挙げて行われた私の処刑というイベントを壊され面子を丸潰れにされたイングランドは国の威信をかけて二人に様々な刺客を送ってくるだろう。
数多くの問題が逃亡する私達を襲った。
故にそれらの問題はエンハウンスさんが教わっていた魔術が非常に役に立った。
変化魔術という応用性の高い魔術を得意とするエンハウンスさんは、ある時はただの岩を柔らかいベッドのような物にしたりして寝床にしたり、ある時は泥水を飲める普通の水に変えるなどと大いに役立った。魔術とは本当に便利な物だ。
でも変化魔術も万能ではなく、いくら泥水を普通の水に変える事ができても、無から有は作れない。
食糧という問題が立ち塞がる。
私は別に問題は無い。
森林にあった木の実や食べられる草は知識としてエンハウンスさんにあった。
変化魔術を使えば仮に木の実が潰れて腐っていたとしても新鮮な物へと変化させる事もできるらしい。
それらを全て私に恵んでくれた。
味という点を度外視すれば少なくとも私は飢える事はない。
問題はエンハウンスさんの方にあった。
彼は死徒。
死徒には人の血を欲するという生態がある。
故にエンハウンスさんにとって隣に私がいる事が何よりも辛かったんだろう。
飢えて飢えて仕方ないのに、目の前に餌があるというのに、彼の理性がそれを許さない。
それは一体、どれだけの苦行なのか私には想像できない。
エンハウンスさんは何度も襲ってきている吸血衝動の事は私には一言も明かさなかった。
私が一方的に察しているだけだ。
化け物だと怖がられるのが怖いからだろうか?──彼はそんな人じゃない
私の身体は既に汚れた身、彼になら血を吸われても構わない──彼女はいつだって綺麗だったから
もし私が彼が血を欲しがっている事を察している事を知ればどうなるだろう?当然、彼は私の側を離れてしまうだろう。それが怖くて言い出せなかった。──だから彼女には綺麗でいてほしい
彼なら別に私の血を吸い尽くしても良いのに。どうせなら彼と同じ怪物に成り果ててもいいのに。──俺なんかが汚していい訳がない
もう少し、もう少し、彼と一緒にいる時間を伸ばしたくて。──俺の憧れた彼女のままでいてほしい
エンハウンスさんは耐え続けた。
必死に平気な顔を取り繕って、内なる衝動を抑え込んで、ずっと私を助けてくれた。
そんな生活が、約1ヶ月間続いた。
1ヶ月かけて、私達はドンレミ村の目と鼻の先まで辿り着いた。
「やりましたね、エンハウンスさん!」
正直家族に会うのは少し複雑だけど今は生き残れた事を喜ぼう。その喜びでついエンハウンスさんに抱きついてしまう。
エンハウンスさんは、それを笑みを浮かべて応えてくれた。多分、私の血を吸うのを必死に堪えながら。
ゴールは目の前だ。あとは彼女1人でも大丈夫だろう。
この先の歴史は知らない。きっと、また彼女は何かをやらかして皆んなを驚かせるだろう。
──残念ながら俺にそれを見る事は叶わないが
「家族に会いに行ってやれ」
エンハウンスさんは私にそう言ってくれた。
早く家族に会わせてあげたい。誰にも称賛されない彼を称賛してあげてほしい。
エンハウンスさんがまた吸血衝動に襲われて、私の家族を襲う可能性はあるが、ここまでだって耐えてきたんだ。きっとこれからも耐えられると思う。
「じゃあ、エンハウンスさんも」
私は彼に手を差し出して一緒に村へと誘う。──その手を取りたかった
きっと大丈夫。村の人達は無理でもせめて私の家族に会わせたい。──彼女の家族がどんな人か、自分の目で知りたかった
「いいや、少し疲れた。呼んで来てくれ」
彼はそう言って、近くの木に背を預けて座りこむ。
そうか、ずっと耐えて来たんだ。少しは1人で休む時間も必要だろう。
「はい、待っていてくださいね!」
私は走って久しぶりの故郷へと帰る。さっさと家族の皆を連れて彼に会わせよう。
これが私がエンハウンスさんと交わした最後の言葉だった。
彼と別れて、私は村に入ると村人達に大層驚かれた。
生きていたのか⁉︎と生きていて本当に良かった…と全員似たような事ばかり言う。
そこまで皆んなに心配をさせてしまったのは申し訳ないが、私自身には後悔はない。
私の家族にも会った。
私の帰還を他の人から大急ぎで知らされて私の所まで走ってきた。
抱きつかれ、揉みくちゃにされた。
みんな、私を心配をしてくれた。
この時ほど、生きていて良かったと思った日はない。
ある程度落ち着いた頃、みんなに私を助けてくれたエンハウンスさんの事を教えた。
私を助け、共に旅をした彼の事を。
最初は懐疑的だったけど、村の前で待っている事を伝えると信じてくれた。
私の家族も「ぜひお礼を言わなければ」と私について来てくれた。
家族を一緒に連れてエンハウンスさんの所へ会いに行くと
「───え?」
そこには木に寄りかかってよく眠っているエンハウンスさんと、1人の紳士風の男性がいた。
その男性は髪や瞳の色は違うがどこかエンハウンスさんに似ているような気がした。
「君が噂に聞く聖女ジャンヌ・ダルクだね?息子が世話になった」
男性は私を見つけて話しかけてくる。
とても気になる事を言っていた。
息子?エンハウンスさんが?髪の色は違うがたしかに顔や雰囲気がよく似ている。
「安心してほしい、私は別に君を追ってきた追手でもない。私が此処に来たのはただの後始末だ」
「せっかくだ、身の上話といこう。私達はね…」
そして男性は語った。
自分達が私達の敵国だったイングランドでは没落寸前の貴族だった事。
今は息子の起こした国家反逆の罪で彼もまた逃げ回っている事。
そして息子が国に伝わる魔女を助けた事を聞いて、逃げるならばその魔女の故郷だろうと思い此処に来た事。
「私はどうしても見てみたかった。息子が救おうとした人がどんな人なのか知りたかった」
「先程まで息子と最期の会話をしていてね、本当なら君の事を紹介して欲しかったが、その前に死んでしまってね」
今──とても聞き捨てならない単語が聞こえた。
「──死んだ?」
エンハウンスさんが?
死んだ?眠っているだけでしょ?
どうして?どうして?どうして?
「別に不思議な事ではない。君を助けたあの人外の力、それに何の代償が無いとでも?その代償を払う時が先程きただけの事だ」
だから死んだと?
私を助けたせいで?
気づけば彼の元まで走り出していた。
彼の顔に手を伸ばす。
見慣れた銀色の髪とその端正な顔はとても安らかに眠っていた。
「エンハウンスさん」
呼んでも返事が返ってこない。
体を揺すって起こそうとする。
きっと眠っているだけだ そうに違いない
「エンハウンス?ああ…そうか、息子は君にそう名乗っていたのか」
いくら揺すっても全く起きない
そうだ、叩き起こそう
彼の顔を思いっきりビンタする
彼に反応は無い
もう一度 反応は無い
もう一度 まだ反応は無い
ビンタでは駄目だ もう拳でいこう
1発目 2発目 3発目と殴っても反応が無い
駄目だ 駄目だ 駄目だ
「ジャネット、やめなさい⁉︎」
お母さんが止めてきた
邪魔しないで 私は彼を起こさないといけないのに
いつの間にか村の人達が私を止めにきている
「お母さん邪魔しないで⁉︎起こさないと!起こさないと!」
早く彼を起こさないといけないのにみんなが邪魔してくる
止めようとするみんなの手を振り払えない
ああ──これでは彼を起こせない
「………覚えておいてくれ、聖女ジャンヌ。彼の本当の名はヴィクトル。君を命を賭けて護り通した男の名を、どうか君の記憶に刻んでくれ」
涙が出てきた 力が抜ける
そうか 彼の本当の名はヴィクトルっていうんだ
これまでずっと旅をしてきた私にも教えてくれてもよかったのに
「───ああああああああああああああああァァァァッッ!!!」
気づけば声の限りの絶叫を上げていた
もっと彼と話していたかった
もっと彼と過ごす時間が欲しかった
もっと彼と一緒にいたかった
誰かを失う悲しみなんて 戦場に出た時に慣れた物だと思っていたのに
この喪失感は一体なんだろう?
この悲しみの正体を知らずに 私はただただ叫ぶ事しか出来なかった
あれから声を出し過ぎて気絶していたらしい
起きたら声が出せなくなっていた
お母さんが みんなが悲しそうにしている
ごめんなさい ごめんなさいお母さん
泣かせるつもりはなかったんです
私はただ彼ともう一度だけ話をしたかっただけなんです
彼がいた事をみんなに知ってほしいだけなんです
私が意識を失っていた間に彼が死んで数日が経っていた
その数日の間で彼の父は自分の息子の遺体を村の近くに埋葬し「事後処理をしてくる」と言って何処かへ去っていった
息子が死ぬ原因である私には何も告げずに
罪悪感と後悔ばかりが心を埋め尽くしていく
その中で私が彼に出来る事と言えば 祈る事だけ
彼との時間を思い出し、主へと祈りを捧げながら過ごしていると時間だけが過ぎていく
「お願いジャネット…せめて何か食べて…」
お母さんが料理を持ってきてくれた
ごめんねお母さん 食欲が無いの
「もう何日も食べてないのよ⁉︎せめて水くらいは飲んで⁉︎」
そうだった もう何日も何も口にしていないんだった
でもねお母さん
あの人はずっとこの渇きに耐え続けていたんだよ?
多分 私の旅を始めたあの瞬間からずっと
「もう彼の為に祈るのはやめて⁉︎このままじゃあなたが死んでしまうわ⁉︎」
彼はいつも私の首を見ていた
彼はいつも私の見ていない所で泥水を啜ったりしながら耐えてた そしていつも吐き戻してた
彼はいつもずっと食べるのを我慢してた
それを思うと 喉も胃も それを受け付けなかった
「あなたのそれはただの自殺よ⁉︎彼は死んでもあなたを救い出してあなたを生かしたのに、あなたが死んでは彼の死に何の意味も生まれないじゃない⁉︎」
ごめんなさい ごめんなさい
「……また来るわ、それまでに一口でも食べておきなさい」
母さんはそれだけ言って部屋を出て行った
その通りですねお母さん
でも でも 彼はこの渇きにずっと耐えたんです
私は その苦しみを共有したい
彼の味わった その苦痛を
私のやってるこれは自殺ではないと 思いたい
殉教とも 言えない
ただ──彼が人であろうとした その記憶を
私の中から消したくなかった
ああ…やっと気づいた
私はきっと 彼に恋をしていたんだ
そこまで思い至り 私はすぐ
「主よ…あなたの、御手に……」
この身を──委ねます
久々に声が出た気がする
どうか主よ
私の祈りを聞き届けてください
最後まで抗い続けた彼の高潔な魂に救いがあらん事を
────────────────
ああ───声が聞こえる
「……ジャネット?」
ジャンヌの母、イザベル・ロメが一時間後にジャンヌの部屋に訪れるとそこにジャンヌの姿は無かった。
その後、家族全員でジャンヌの捜索をするも全く見つからない。
更にドンレミ村の村人全員でジャンヌを数ヶ月も捜索するも見つからない。
所謂“神隠し”である。
後の人々は彼女の最期をこう記憶する。
「祈りの果てに彼女は神の元に連れて行かれたのだ」と
なんで先にジャンヌ視点を書いたのかは次回で分かります。多分…
設定でしか知らないですけど月姫2の主人公の1人だったエンハウンスが個人的に好きなんですよね。それっぽい主人公を書いてみたくて今作が出来上がりました。
補足
多分皆さんも気づいてると思いますが、ジャンヌの死因が変わったので彼女の第二宝具の紅蓮の聖女が亡くなって別の物に変わってます。
その変質した第二宝具の詳細はまた後ほど
主人公に爆速で処理された代行者─名前はグレル。ジャンヌが魔女と呼ばれた事で聖堂教会からもしかしたらワンチャンガチで魔女か死徒なのでは?という疑いで派遣された可哀想な一般下っ端代行者。ジャンヌが普通の人間だった事を相方に報告を任せてジャンヌの処刑を見守っていたら、半端者とはいえ死徒が出てきてウッキウキで討伐しに行ったら返り討ちにあった。
主人公の父─名前はヴィクター。FGOのCBCイベで出演したら間違いなく立ち絵がジークフリートになるレベルでジークフリート成分が強い人。奥さんは勿論、大体CV古賀葵のあの人がガワになるタイプの人。奥さんと結婚するために色々とヤンチャしてた過去あり。というか家が没落寸前になったのは殆どこの人のヤンチャのせい。
イザベル・ロメ(ジャンヌの母)─娘が帰ってきたと思ったら自殺紛いの祈りをするわ最終的に行方不明になるわで希望を見せられたと思ったら絶望を送られるという神からのファンサービスをくらった可哀想な人。本編後はなんやかんやで立ち直り、史実通りジャンヌの名誉回復の為に奔走します。
主人公視点は次回で