転生者が生前のジャンヌを火刑から救う話   作:クソ眼鏡3号

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やっと書けたので投稿します。
Apo編は全四話で終わります。どうかお付き合いください。


Apocrypha編
聖杯大戦にて 前編


 

 

私はこの聖杯大戦で裁定者(ルーラー)としてこの世に顕界した。

それもレティシアという現代の少女に憑依する事で顕界化するというかなりイレギュラーな方法で。

私が監督する事になるこの聖杯大戦には何かある。

私はあらゆる手段を使って聖杯大戦が行われるこのトゥリファスに来た。

 

そしたら早速“黒”の陣営のセイバーが脱落するというイレギュラーが早速発生していた。

 

“黒”の陣営の首魁である“黒”のランサー(ヴラド三世)に聞いてみたら、そのセイバーは自決したらしい。

事情を知っている“黒”のライダー(アストルフォ)に聞いてみた所、使い捨てられる筈のホムンクルスが自分の意思で脱出し、そのホムンクルスが脱出する途中に重傷を負い、そのホムンクルスを助ける為に“黒”のセイバー(ジークフリート)は自分の心臓を捧げたらしい。

 

黒のライダーにそのホムンクルスの保護を頼まれた。

私としてもそのホムンクルスを見捨てる事は出来ない。

サーヴァントの心臓を持ったホムンクルスなんて魔術に詳しくない私でも前例が無い事なんて想像がつく。

放っておけば聖杯大戦に参加している魔術師、いや参加していない魔術師でも狙われかねない。

そんな生きる意志あるホムンクルスを護るのは人として当然の事。

 

サーヴァントの心臓を移植されたのならばサーヴァントの気配を追えばいい。

 

だから私は走り、城を去ろうとするホムンクルスを追っていた。

 

気配が近づいていく。

人影を捉える。

漸く見つけた。

 

「よかった…会えま」

 

した…と言葉を続ける事が出来なかった。

何故ならそのホムンクルスの顔を見てしまったから。

その顔に目を奪われて、呼吸すら忘れた。

 

そのホムンクルスの顔は私のよく知るあの人そのものだった。

 

顔だけじゃない、纏う雰囲気も、その魂すらも。

 

何もかもが私を助けてくれたあの人にそっくりだった。

私の頭が、直感が、このホムンクルスを彼だと告げている。

 

「……誰だ?」

 

私を見て、驚く彼は私を警戒しながらそう言った。

しまった呆然としていた。警戒されるのはちょっとなんだかショックだが今はルーラーとしての役目を果たそう。

 

「私はこの聖杯大戦の裁定者として召喚されたジャンヌ・ダルク。“黒”のライダーの頼みにより貴方を保護しに来ました」

 

私の直感が、私の啓示が告げている。

 

彼はきっとあの人の生まれ変わりだ。

何に変えても護ってみせる。

私がどのような事になろうとも。

 

 

そのホムンクルスは自分をジークと名乗った。

自分を助けてくれた英雄を忘れない為にその名にしたらしい。

とてもいい名前だ。

ジーク君を近くに住む善良な現地の方に一旦預けて、私は聖杯大戦へ赴く。

ジーク君は残した同朋達を助けてたがっていたが、それは私がホムンクルス達に聞いて助かりたい者は私が助けると約束した。

 

大戦が終わったらもう一度会いに行こう。

今度こそ彼には平和な時を過ごしてほしい。

彼に戦場なんて似合わない。

 

決意を新たに聖杯大戦の最中に私は乗り込む。

 

とかそんな事を思っていたらジーク君が勝手に聖杯大戦に乗り込んでどういう訳かジークフリートに変身するという奇跡まで起こしてまた死にかけるという始末。

 

彼には大人しくしているという発想がないのだろうか?

だとしても無茶し過ぎにも程がある。後で説教が必要だ。

 

 

 

“黒”のキャスター(アヴィケブロン)が暴走した。

彼の操るゴーレムを撃退する為にまたもジーク君はジークフリートに変身して貢献してくれた。

私の持つ令呪を譲渡してジークフリートに変身する回数を増やしたが正直もう変身しないでほしい。

というか彼にはもう戦場に出ないでほしい。

 

変身する度に彼はジークフリートに存在を乗っ取られ、その内から人間やホムンクルスではない人外のモノへと変質していく。

 

また彼を人外にしてしまうのだけは避けなくてはならない。

 

今度こそ彼を死なせはしない。

彼が私が護ってくれた時のように、今度は私が護ってみせる。

 

黒の陣営は首魁を失い、赤の陣営は首魁が天草四郎時貞というサーヴァントだった。

 

黒と赤の聖杯大戦の決着は次の機会に持ち越しとなった。

 

 

 

 

その合間に街で暴走している“黒”のアサシン(ジャック・ザ・リッパー)を誘き出す為にジーク君と街を歩く事になった。

その街で立ち寄ったカフェでジーク君にこんな事を言われた。

 

「俺は貴女の祈りを美しいと思った。貴女の微笑みを美しいと思った。魅力という言葉が心を奪われる様を意味するならば間違いなく貴女は魅力的だと思う」

 

ああ…顔が熱い、落ち着け私。

生前に似たような事を言われた気がする。

それはきっと生前に出会った彼ではない彼だ。

私の直感がそう言っている。

汚れた格好で主へ祈りを捧げていた私を見て「美しい」なんて言ったのは彼しかない。

 

私のそんな心境を知らずジーク君は近くの親と子どもの様子を観察している。

 

「ところでふと思ったんたが、貴女は妊娠できるのか?」

 

ジーク君は何を思ったのか急にとんでもない爆弾を投下された。

子どもは天からの授かり物。聖杯戦争の最中にそんな破廉恥極まる事をするつもりだろうか?

相手は誰と?私か、私しかいないか。

いや待て、実はなんでもないように見えてジーク君はムッツリスケベなのかもしれない。黒のライダーとは寝る時にすら一緒にいるのはその性欲を黒のライダーで発散させてる可能性も捨てきれない。

いや待て、そもそもホムンクルスに生殖機能はあるのだろうか?生前に嫌というほど見た男性のアレをジーク君も起こせるのかどうかすら疑わしい。

いや待て、彼はかの大英雄ジークフリートの心臓を受け継いだ存在。本来ならホムンクルスに必要無い機能も心臓を受け継いだ影響で獲得した可能性は高い。

いや待て、仮にそうなら彼は私の知らない間に己の性欲に振り回されてる可能性が高い。暴走してあの理性の無い獣に手を出す前に私が処理する必要があるかもしれない。

よし、覚悟は準備は出来た。

すみませんレティシア、ちょっとその貞操をこの聖杯戦争に勝つ為に使わせて頂きます。

 

「……はい、今の現代の者に憑依している状態の私なら可能だと思います」

 

なんとか声を絞り出せた。

行為中は私がリードしてあげねば、経験人数だけは豊富な生前の記憶を叩き起こし、なんとか彼を発散させてあげないと。

 

そうだ、その前に確認をしないと

 

「ジーク君は、私を妊娠させたいんですか?」

 

私の確認にジーク君は飲んでいたコーヒーを吹き出して慌てていた。

ジーク君の普段は見せないその慌てた様子が可愛いくて癒されるが、どうやら私はとんでもない思い違いをしていたらしい。

 

なんか…凄くガッカリした

 

 

 

 

 

黒のアサシンを討伐する際にジーク君は彼女の出した幻覚に酷く精神的なダメージを負った。

黒のアサシンは討伐できたが、“赤”のアーチャー(アタランテ)の恨みを買ってしまったらしい。

そんな事はどうでもいい。赤のアーチャーが来るならば返り討ちにすればいいだけの話だ。

 

それよりも心配なのはジーク君の精神状態だ。

今まで英霊と接している事が多かったせいで人間の良い面ばかり見ていたせいか“人間は素晴らしい生き物”という認識が出来てしまっていたらしい。

その中でロンドンで行われた人間の醜い面を一気に見せられたせいで酷く困惑した様子だった。

 

いっそジーク君が人間を嫌い、この聖杯大戦から離脱してくれれば私としては助かったかもしれないが、彼はまだ人間という生き物に希望を見出しそれを捨てきれずにいる。

その結果に私は少しだけ安堵する。

人間そのものを嫌いになっては彼は人間を好きになれない。

彼が私の事を好いてくれる可能性すら潰えるのは、私自身が耐えられそうにない。

 

ああ…もし私がまた彼を失うような事が有った場合、私は、私のままでいられるだろうか?

 

 

黒と赤の最後の決戦が始まった。

 

それぞれが各々の因縁の相手と戦っている。

私はなんとか赤のアーチャーをやり過ごし、“赤”のキャスター(シェイクスピア)に遭遇した。

 

「さあ、我が宝具の幕開けだ!席に座れ!タバコはやめろ!写真撮影お断り!野卑な罵声は真っ平御免!世界は我が手、我が舞台!」

 

開演を此処に───万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)!」

 

赤のキャスターの宝具、『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)

 

その宝具は対象に物語を強制させる対心宝具。

私の精神を追い詰め、崩壊させる腹詰まりだろうが、そうはいかない。

例え、母に悲しまれようと

例え、私の扇動によって殺してしまった人達に責められようと

例え、シャルル7世陛下に問答しようと

例え、私を裁いた司教に会おうと

 

例え、かつて共に戦場を駆けた戦友でもあったジル・ド・レイの狂気を見せられようとも

 

私の心は揺らがない。

 

「ジャンヌ、お目にかけたい物があります。私は今まで色々な子供達の首を切り、その度に絶頂していましたが」

 

赤のキャスターによってサーヴァントとして召喚されたジルが手元にもつ布に包まった1つの何かを布を取って見せてきた。

 

「見てくださいこの極上の素材を!」

 

それは人の生首だった。

 

「やめて…やめなさいジル⁉︎」

 

その首はジーク君だった。

 

「美しいでしょう⁉︎この整いながらも可愛らしい顔、美しい赤の瞳、滑らかな頭髪。まさに芸術です!」

 

目を覆う。

彼の死体は見た事あるけど、生首だけの姿なんて見たくなかった。

 

「お願い…そんなものを…見せないで…!」

 

その人だけは駄目。

あの人の首なんか私に見せないで。

 

「何故目を逸らすのですジャンヌ?貴女にかの者以外の例外など無い筈です。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんなの貴女も分かっている筈」

 

違います。

ジーク君は彼です。

私の魂が、私の本能がそう告げている。

 

「貴女は聖女だ。貴女がどう否定しようとそれは変わりない事実だ。貴女はどんな人間であれ等しく接し、等しく裁く。私であろうとあの忌々しいピエール・コーションもまた例外ではない。誰であっても誠実であろうとする」

 

ジルは先ほどまでの興奮が突然消え失せて、私を冷めた目で見つめてくる。

 

「しかしたった1人だけ例外がある。その例外は貴女を救い、貴女と共に旅をし、最期まで貴女に尽くした彼に、貴女は聖女にあるまじき情熱を向けていた」

 

否定できない。

確かに私は彼と共に過ごす中で私は彼に恋をした。

それは私にとって変え難い事実だ。

 

「でも貴女はこのホムンクルスにも同じ情熱を向けていた。()()()()()()()

 

「あの例外との恋を忘れずに、その情熱に身を任せる為に、生まれ変わりなどという理由を付けて」

 

違う。違う。違う。

ジーク君は紛れもなく彼の生まれ変わりだ。

 

「違いませんとも。貴女も分かっている筈、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

でも私がレティシアに憑依したイレギュラーがあったように、彼もまたイレギュラーで転生した可能性も。

 

「でなければ、想い人であるこのホムンクルスを利用したりはしない筈です。この聖杯大戦において我々に対抗するのに必要な駒である彼を聖杯大戦などに巻き込んだりはしない筈だ!」

 

赤のキャスターが叫ぶ。

 

「違い…ます!そんな訳がない!そんな…わけ」

 

必死に否定しようとしても身体が震えてくる。

心が、赤のキャスターの宝具によって解体される。

 

「では何故、無理矢理にでも彼を止めなかった⁉︎今度こそかの兵士を死なせないと思うならばあのホムンクルスの手足の一つや二つを千切ってどこかへ監禁するなりしてそれを防ぐ事が出来た筈だ!」

 

ジルが私を責め立てるように叫ぶ。

彼の事を思うなら、それくらいはすべきだった

彼を死なせない為に取れる行動は幾らでもあった筈だ

 

「でも貴女はそれをしなかった。…知っていましたね、ジャンヌ。いや、知らない振りをしていた。貴女の啓示はこの聖杯大戦にホムンクルスを連れてくるように命じていた。そうしなければ彼に幸福は訪れない。あのホムンクルスはこの聖杯大戦で死ぬ為に生まれたのだから」

 

「そう!どう足掻こうとも彼は令呪を使い果たし死に至る運命にある!」

 

そんな訳ない

そんな残酷な事が真実な訳ない

 

「貴女があのホムンクルスに抱くその情熱に嘘は無い。だがそれはそれ!として利用していたのだ!」

 

違います だってジーク君は

 

「想い人であろうと等しく利用する貴女は正しく聖女だ。だが罪悪感が無い訳ではなかったんでしょう?その罪悪感をホムンクルスをかの兵士の生まれ変わりと信じ込む事で塗り潰していた!」

 

違う 違う 違う

 

反論しなければ 

目の前の論理を砕かなければ 

私が崩れてしまう

 

その時、私のルーラーとしての探知能力が知覚する

 

赤のランサー 消滅確認

 

黒のセイバー 消滅確認

 

「……え?」

 

死んだ?

ジーク君が死んだ?

 

突然の事に頭が追いつかない

 

さあ!ここでスペシャルゲストのご壇上だ!

 

赤のキャスターがうるさく叫ぶとジルの隣から見た事のある人が出てきた

 

「久しぶりだな」

 

それは 私のよく知るあの人だった

エンハウンスさん

本当の名前はヴィクトル

私を救い 私の心に深い傷を残した人

そして私にとって初恋の人

 

「そんなに自分を責めるな、君はただあのホムンクルスに恋をしただけなんだから」

 

一番会いたくて 一番会いたくなかった人が目の前にいる

今の私の気持ちを 一番知られたくない人に知られてしまった

 

「────

 

自覚してしまったジーク君への恋

彼への愛を忘れ ジーク君へ愛を向けてしまった事実

そして 何よりも

 

「貴女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

赤のキャスターが私の思考の代わりにその事実を告げた

あれだけ私を助け 尽くしてくれた騎士を私は裏切った

彼の想いを私は裏切ってしまった

 

「ああ──あああああああああああああああああああああああ!!!」

 

その事実が私を絶叫させる

なんて軽い私の心 なんて移りやすい私の恋

なんて醜い私という生物

ジーク君に恋をして その事実から目を逸らす為にジーク君を彼の生まれ変わりと思い込み その挙句にジーク君を大戦の駒として消費した

何から何まで酷い女だ 

私を尽くしてくれた彼を裏切り 私を慕ってくれたジーク君を裏切り 私は最後まで利用するだけ利用して彼らに何一つ報いる事が出来なかった

 

なんて 残酷な生き物

なんて 醜悪な生き物

これが 皆が聖女と呼ぶ生き物

こんな生き物を聖女とは呼ばない

私はただ、想い人を都合良く利用しただけのただの女だ

 

「さあ、この舞台のジャンルが決まったぞ!喜劇(コメディ)だ!聖女よ!貴女は紛れもなく女だ!自分を慕う男を自分の利の為に利用し消費する悪女であり、ただ小娘にしか過ぎなかった!」

 

慟哭する私に赤のキャスターは告げる

その真実を私は受け止める事しか出来なくて

 

ごめんなさい ごめんなさい

 

私が消費してしまった彼等への謝罪しか口にするしか出来なかった

 

 

 

「いや、謝る必要はないだろ。俺が勝手にやった事だ、君が責任を感じる事はない。むしろ嬉しいくらいだ。君があのホムンクルスに恋をしてくれた事で漸く俺は報われた」

 

「なにせ君が恋をしたあのホムンクルスは、もう1人の俺なんだからな」

 

その声と共にいつの間にか手にしていた紅い片刃の大剣が振るわれた。

その大剣は近くにいたジルを胴体から両断し、その衝撃波で赤のキャスターを壁に吹き飛ばし串刺しにする。

 

「……どういう事です?」

 

赤のキャスターは冷や汗をかきながらも彼に問いかける。

私もまた彼の突然の行動と先ほどの言葉に動けずにいた。

 

私がジーク君に恋をする事で報われたとはどういう事だろう?

もう1人の俺?英霊は転生なんてできない筈…一体どういう事?

 

「演劇の為に劇場ではサーヴァントをも召喚してキャストを完璧に再現する宝具の完璧さが仇になったな、シェイクスピア。お前の宝具で再現された偽物でも、それが完璧に再現されたのが俺ならばこの結果は当然の結果だろう」

 

吐血し、苦悶の表情を浮かべる赤のキャスターに彼は告げた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが俺という英霊の存在意義だ」

 

登場人物(キャスト)への理解が不足している。悪いがこの脚本はボツだ、全部1から書き直して出直して来い」

 

そのまま彼は大剣を一閃し、赤のキャスターを両断し、赤のキャスターは最後の台詞を喋る事なく脱落した。

 

世界が歪む。

赤のキャスターが討伐された事による影響だろう。

彼はこちらを振り向いて私に向き合う。

 

「色々事情を聞きたいだろうが、そんな時間は無いようだ。とりあえず君の好いたジークはもう1人の俺という事だけは分かってくれ。同一存在と言っていい、何せ俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

言ってる訳が分からない。

言葉の意味が分からない。

理解が追いつかない。

 

「君が分からないのも無理もない。話が複雑で俺でも整理するのも一苦労だ。今はただ目の前の脅威を倒す事だけを考えてくれ」

 

「そろそろ君の()()()()を開張する時だ」

 

彼はそう言って、私の腰に差してある剣に指を指して消えていった。

第二宝具?と疑問ばかりが頭を過ぎる。

 

彼が消えた事による悲しみは無かった。

不自然な程に。

むしろまた会えるという確信が私の中にある。

 

シェイクスピアの宝具が作った世界が消え、目の前には大聖杯がある。

 

そして大聖杯の中からこの聖杯大戦の黒幕であり赤の陣営の頭目、天草四郎時貞が出てきた。

大聖杯から出てきたという事、それは天草四郎が大聖杯を掌握した事を意味する。

 

危機的状況だ。

今の私だけでは彼には勝てないだろう。

天草四郎時貞の攻撃を防ぐ手段はあろうと、攻める手段が無い。

手詰まりだ。

 

だというのに私の心は落ち着いていた。

本能的に腰の剣に手をかける。

生前に一度も抜いた事の無いこの剣。

その剣にどんな神秘が宿っているのかは私は知らなかった。

否、知らないようにプロテクトをかけられていたのだ。

 

漸く、彼の言った言葉の意味を理解する。

 

私の第二宝具。

私の剣。

私の最大の武器。

 

私が危機的状況に陥る事によって初めて真名解放が可能になる私の第二宝具。

 

「『聖女の騎士(ヴィクトル)』!」

 

その真名を叫んで剣を抜く。

すると抜いたその剣から術式が展開され、召喚式が敷かれる。

私の右手に痛みが走る。その手の甲には令呪が刻まれていた。

 

「馬鹿な…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと⁉︎」

 

天草四郎時貞の驚きの声が聞こえる。

召喚式が光を放ち、英霊が召喚される。

 

「サーヴァント・セイバー。召喚に応じ参上した」

 

ああ…涙が出てくる。ずっと焦がれていた声が聞こえる。

 

「事情は君を通じて概ね理解している、またあの時みたいに君の敵を倒せばいいだけだ」

 

その英霊は、私のよく知る彼だった

 

「さあ、人類の敵(ラスボス)の登場だ」

 

 




宝具

【聖女の騎士】

ランク A

種別 召喚宝具
レンジ 1人
最大捕捉 1人

生前にジャンヌを救った兵士を召喚するサーヴァントを召喚する召喚宝具。
召喚されたヴィクトルにはステータス補正が大幅にかかり、生前以上の能力を発揮する。
その逸話から真名解放にはジャンヌ自身が危機的状況に陥る必要があり、ジャンヌ自身もこの宝具の情報に知らないという情報プロテクトがかかり気軽に使えないという欠陥を抱えている。
召喚されたヴィクトルはジャンヌと知識が共有される為、大抵はどんな状況でも対応できる。
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