転生モブ、ディストピア世界で指揮官になる   作:模範的アーク市民

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「……ありえないだろ」

 

 目の前にあるのは、もはや生物ではない。

 アークの建築技術で作られた研究所ドームを、まるでリュックサックのように背負った、動く山脈。

 蒸気を噴き上げる四本の重機のような脚。

 甲羅――いや、装甲の至る所から展開されるミサイルポッド。

 そして、生物的な捕食本能を感じさせる、複数の不気味な複眼。

 

「……な、なにこれぇぇぇ!? 建物が歩いてるんですけどぉぉ!?」

 

 アニスの絶叫が、全員の心境を代弁していた。

 だが、こちらの抱く絶望は、彼女たちのそれとは質が違う。

 視界(UI)が、赤色のアラートで埋め尽くされていたからだ。

 

『WARNING: TYRANT CLASS DETECTED』

 

「……タイラント、級」

 

 呻くように呟く。

 この威圧感。視界を染める絶望的な警告色。

 かつて死闘を繰り広げたブラックスミスや、発電所で撃破したグレイブディガーと同じ、災害指定クラスの怪物だ。

 だが、コイツは次元が違う。

 過去に戦った奴らが猛獣だとするなら、目の前のタイラント級は動く要塞。

 物理的な質量が桁違いすぎる。

 

「……逃げるぞ! 全員、雪上車へ戻れ!!」

 

 即座に判断を下した。

 戦う? 無理だ。

 今の装備は、屋内戦を想定した軽武装にすぎない。

 ブラックスミスやグレイブディガー相手なら、ギミックを突いてコアを撃ち抜けば勝機はあった。

 だが、あんな分厚い装甲とバリアを纏った要塞相手にアサルトライフルで挑むなど、戦車に石を投げるようなものだ。

 

「む、無理です先輩! エンジンが凍結して動きません!」

「なっ!?」

 

 イヴの悲鳴に近い報告。

 見れば、排気口から放たれる冷却ガスが、周囲の気温を絶対零度近くまで下げている。

 ズズズンッ……!

 巨体が身震いをした。

 背負った研究所の側面が展開し、巨大な主砲がこちらを向く。

 UI上に、極太の赤いレーザーのような予測線――即死攻撃予測線(キル・ライン)が、全員を貫くように表示された。

 

(……詰んだ)

 

 避けられない。防げない。

 完璧だったはずの計画も、過去の経験も、この圧倒的な質量の前では紙屑同然。

 砲門に光が集束する。

 死を予感し、イヴを庇おうと身を投げ出した、その瞬間だった。

 

 ――ズドンッ!!

 遥か彼方、吹雪の向こう側から放たれた一条のピンク色のビームが、発射寸前の砲身を直撃した。

 空中で爆発が起き、黒煙が広がる。巨体が大きく傾く。

 

「……あ?」

 

 何が起きた?

 呆然とする俺たちの前に、吹雪を割って二つの人影が悠然と現れた。

 

「――私の庭で、随分と騒がしい客ね」

 

 凛とした、氷のように冷たく、それでいて王者の風格を漂わせる美しい声。

 現れたのは、貴族のような純白の軍服を纏った女性と、ピンク色のボディスーツを着た少女だった。

 先頭に立つ女性は、不遜な瞳で巨体を見上げている。

 

「マナーを知らぬ鉄屑には、(しつけ)が必要ね。……アリス」

「はーい! 女王様! うさぎさんパンチ、いっくよー!」

 

 アリスと呼ばれたピンク髪の少女が、自身の体ほどもある巨大なライフルを構え、楽しげに引き金を引いた。

 

 ドォォォンッ!!

 

 着弾。巨体の重厚な脚部装甲が紙のように砕け散る。

 凄まじい威力だ。ラピやネオンの火力を遥かに凌駕している。

 

(……誰だ? 救援要請は出してない。この雪原をうろつく野良のニケか?)

 

 だが、今は考察している場合じゃない。

 助かるチャンスだ。

 

「……あら、そこの貧相な男」

 

 不意に、白い軍服の女性がこちらを流し見た。

 まるで路傍の石を見るような、だが奇妙な威圧感を持つ瞳。

 

「貴方、ただ逃げ回るだけのネズミなのかしら? それとも、少しは役に立つ下僕?」

 

 試されている。

 この極限状況で、値踏みされているのだ。

 震える足に力を込め、彼女を見返す。

 

「……ネズミだが、あいつの()()()なら知ってる」

 

 ハッタリではない。

 視界には今、無数の赤いマーカー――弱点部位が鮮明に浮かび上がっていたからだ。

 

「総員、戦闘態勢! あの正体不明の二人に合わせろ!」

「りょ、了解です!」

 

 叫ぶ。本来なら知り得ない情報を、UIが教えてくれる正解を言葉にする。

 

「そこの狙撃手(スナイパー)! 敵の右足、排熱ダクトが開くぞ! 3、2、1……今だ!」

「わぁっ! お兄さんすごい! あたりー!」

 

 カウントに合わせて放たれたピンク髪の少女の狙撃が、露出したコアを正確に貫く。

 悲鳴のような駆動音を上げて体勢を崩した。

 

「ユニ、ミハラ! 左舷のミサイルポッドが開くぞ! ユニはランチャーで面制圧! ミハラは漏れた弾頭を撃ち落とせ!」

「……指図しないでよ、お兄ちゃん! でも、あいつムカつくから壊してやる!」

「了解。……ふふ、この寒さ、ゾクゾクするわね」

 

 ドガガガガッ!!

 ユニの放ったグレネード弾が放物線を描き、展開したばかりのミサイルポッドを誘爆させる。

 爆風を抜けて飛来した数発のミサイルも、ミハラの正確な射撃によって空中で撃ち落とされた。

 

「ラピ、ネオン! 敵が咆哮したら全方位衝撃波が来る! カウント3で岩陰へ退避!」

「了解!」

「火力で相殺……は無理ですね! 退避します!」

 

 的確すぎる指示。

 まるで未来を見ているかのような指揮に、白い軍服の女性が片眉を上げた。

 

「……へえ」

 

 戦況は拮抗した。

 だが、決定打がない。

 あいつは背中の研究所からエネルギー供給を受け、無限に再生し、強力なバリアを張り続けている。

 

「……チッ、硬すぎる」

 

 このままではジリ貧だ。こちらの弾切れか、体温低下で全滅するのが先か。

 必死に思考を巡らせる。

 死ぬほど見た図面。送電記録。

 あいつは背中の研究所とケーブルで直結している。つまり、研究所の予備電源を吸って動いている。

 

(……なら、元の電源(ブレーカー)を落とせばいい)

 

 単純だが、確実な方法。

 問題は、電源を落とすための接続ポートが、遥か頭上――巨体の背中(屋上)にあるということだ。

 

「……あの、女王様! 頼みがある!」

 

 白い軍服の女性に向かって叫んだ。

 

「あいつの背中まで、俺を運んでくれ! あそこに鍵がある!」

「……あら。私に指図とは。面白いわね」

 

 女王様はフッと笑った。

 

「いいでしょう。アリス、運んで差し上げなさい」

 

 交渉成立だ。通信機を握りしめ、叫ぶ。

 

「イヴ! 聞いてるか!」

『は、はい! 先輩、何を……!?』

「俺はあいつの脳天へ行って、電源を落としてくる。戻るまでの間、指揮はお前が執れ!」

『え……? わ、私がですか!? 無理です!』

「無理じゃない! お前は指揮官だろ!」

 

 イヴを見る。

 怯えている。震えている。

 だが、その瞳の奥には、まだ消えていない光があった。

 

「敵の注意を俺に向けるな! 全力でヘイトを稼いで引きつけろ! ……俺たちの命、お前に預けたぞ!」

『~~ッ!』

 

 イヴが息を呑む音が聞こえた。

 

「はーい! お兄さん、しっかり捕まっててね!」

「え?」

 

 振り返ると、アリスが背中を向けて屈んでいた。

 まさか、おんぶか?

 

「早く早く! うさぎさん特急、発車しちゃうよー!」

 

 迷っている暇はない。ピンク色のボディスーツに包まれた背中にしがみついた。

 その体は華奢で、とても成人男性一人を背負えるようには見えない。だが――

 

「いっくよー! ぴょーん!」

 

 ドォンッ!!

 雪煙を上げ、アリスが跳躍した。

 人間離れした加速Gが全身を押し潰す。

 

「うわぁぁぁぁぁッ!?」

 

 視界が高速で流れる。

 アリスは巨大な脚部を足場にし、垂直に近い装甲を駆け上がっていく。

 重力を無視したパルクール。

 振り落とされないよう、必死に彼女の首に腕を回す。

 風切り音の中、目に入ったのは――背中にある対空砲塔が、接近するこちらに照準を合わせようとしている光景。

 

(しまっ……撃ち落とされる!?)

 

 UIが真っ赤に染まる。回避不能。

 だが、その瞬間だった。無線から、凛とした声が響き渡る。

 

『総員、上部砲塔を狙ってください! 先輩を撃たせないで!!』

 

 イヴの声だ。

 迷いも、恐怖も振り切った、指揮官としての命令。

 

『ラピ、アニス、ネオン! 斉射で視界を奪って! アリスさんはそのまま突っ込んで! ミハラさん、ユニさん、女王様も、援護をお願いします!』

「……あら。私に指図とは。面白いわね」

 

 ドォォォンッ!!

 地上からの集中砲火が、こちらを狙っていた対空砲塔を吹き飛ばした。

 女王の援護射撃が、残った迎撃システムを凍りつかせ、沈黙させる。

 

(……やるじゃねえか、主人公様!)

 

 ダンッ!!

 アリスが巨体の甲羅――かつての研究所の屋上へと着地する。

 衝撃で胃の中身が逆流しそうになりながら、雪の上へ転がり落ちた。

 

「とうちゃーく!」

 

 アリスはケロリとしているが、こっちは三半規管が限界だ。

 だが、休んでいる暇はない。這いずって顔を上げると、目の前に凍りついた外部接続ポートが見えた。

 そこはラプチャーの触手のような生体ケーブルに覆われ、埋もれている。

 

「クソッ、塞がってる!」

 

 焦燥に駆られ、振り返る。

 そこには、興味深そうにポートを突っつこうとしているアリスがいた。

 

「アリス! 頼みがある! こいつを吹き飛ばしてくれ!」

 

 凍りついた触手の塊を指差した。

 

「中身まで壊すなよ!? 表面の氷とゴミだけだ!」

「ん? ここをどかせばいいの?」

 

 アリスはコクリと頷くと、愛用の巨大ライフルを至近距離で構えた。

 

「お任せあれー! うさぎさんビーム、弱火でいくよー!」

 

 キュイィィン……ッ!

 銃口に、弱火というにはあまりに凶悪な、ピンク色の高エネルギーが収束していく。

 

「弱火で頼むぞ!? 本当に弱火でな!?」

「えいっ!」

 

 ズドンッ!!

 閃光と熱波。

 弱火とは名ばかりの、極太のビームが目の前を掠めた。

 衝撃波で吹き飛ばされ、雪の上を転がる。

 

「熱っ!? うわ熱っ!!」

 

 顔が焼けるかと思った。だが、効果は劇的だ。

 分厚い氷と触手が瞬時に蒸発し、焼け焦げたポートの接続口が露出している。

 

「……今だッ!!」

 

 懐から強制解錠デバイスを取り出し、ポートへ全力で突き立てた。

 本来は電子ロックを解除するためのハッキングツールだ。だが今は、用途が違う。

 ゴミ山から見つけた緊急停止コードを、事前にこのデバイスへ叩き込んでいた。

 

「ミシリス特製、解錠(シャットダウン)プログラムだ!! 腹いっぱい食らいやがれ!!」

 

 かじかむ指でエンターキーを叩き込む。

 

 『SYSTEM: EMERGENCY SHUTDOWN』

 

 その文字がデバイスに表示された、次の瞬間。

 研究所の照明が一斉に落ちた。

 

 ギィィィィィン……!!

 供給路を断たれたやつが、断末魔のような機械音を上げる。

 支えを失った巨体が痙攣し、膝から崩れ落ちた。

 地響きと共に、動く要塞が沈黙する。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 大の字になって、冷たい屋上に転がった。

 勝った。

 物理攻撃と電子攻撃、そして他人の力(正体不明のニケたち)をフル活用した、薄氷の勝利。

 プシューッ。

 足元で、研究所の入り口ロックが解除され、扉が開いた。

 

 下から、女王が上がってくる。

 白い軍服の女性は機能停止した巨体を見下ろし、満足げに頷いた。

 

「見事な手際ね。……名前は?」

「ア、アダム指揮官だ……」

 

 体を起こし、敬礼する。

 相手が何者かは知らない。だが、この貫禄と強さ。間違いなく、この雪原を統べる主のような存在だ。

 

「アダム、ね。……私はルドミラ。こちらはアリスよ」

「うさぎさん、見つけたー!」

 

 アリスがイヴに抱きついている。イヴも「私はうさぎさん2号です!」と謎の自己紹介をしている。

 カオスだ。頭が痛い。

 

「さて、アダム。貴方の目的はこの研究所のデータ……そうでしょ?」

「あ、はい。……調査させていただければ、すぐに撤収します」

「いいでしょう。私が案内してあげるわ。ついて来なさい」

 

 ルドミラは踵を返し、開いたばかりのゲートへと歩き出した。

 慌ててその後を追う。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 研究所の最深部、サーバー室は奇跡的に無事だった。

 だが、ここからが本番だ。

 端末を取り出し、シュエンから渡された解析ツールを、メインサーバーのポートに接続する。

 画面にプログレスバーが表示され、データの吸い出しが始まる。

 

(頼む……! 早く終わってくれ!)

 

『データ抽出完了。解析を開始しますか? 所要時間:推定72時間』

 

「……は?」

 

 画面に表示された数字に、思わず声が出た。

 72時間。丸三日だ。

 このツールは高性能だが、詳細な声紋解析やノイズ除去を現地で行うには、マシンスペックも時間も足りないらしい。

 こんな極寒の廃墟で、いつ襲ってくるか分からないラプチャーに怯えながら、三日も待機しろというのか?

 だが、データ自体は手元にある。

 ならば、ここからデータをアークへ送信して、向こうのスパコンで解析させればいい。

 俺は即座にデータ送信のコマンドを叩いた。

 

『現在、指定帯域外への通信は制限されています』

 

「……あ」

 

 無慈悲なエラーメッセージ。

 情報漏洩を防ぐための措置が、今まさに任務の足を引っ張り、俺たちの首を絞めている。

 なんという皮肉だ。傑作すぎて笑いも出ない。

 だが、これで腹は決まった。

 送信できないなら、このままデータを持ち帰り、アークにあるミシリス本社のスーパーコンピューターにかければいい。

 物理的に持ち帰る。それが唯一の解だ。

 何も、ここで馬鹿正直に待つ必要はない。

 通信できないから、解析結果を待たずに撤収しました。

 完璧な言い訳だ。文句は言わせない。

 

(よし、撤収だ。帰って暖かいシャワーを浴びて、アークでゆっくり解析すればいい)

 

 ツールを引き抜き、端末を懐にしまう。

 これで任務完了だ。

 俺は晴れやかな顔で振り返った。

 

「調査完了です!データは持ち帰って解析します!」

 

 額の汗を拭い、努めて明るく報告する。

 命あっての物種だ。

 あとは雪上車に戻り、アークへ帰るだけ。

 意気揚々と出口へ向かう背中に、ルドミラが冷ややかな声をかける。

 

「どこへ行くつもりかしら?」

「え? いえ、任務は終わったので帰還を……」

「外をご覧なさい」

 

 指差された先。

 エントランスのガラス越しに見える景色は、先ほどとは一変していた。

 視界ゼロのホワイトアウト。気温はマイナス数十度を下回っているだろう。

 雪上車すら埋め尽くすほどの、猛烈なブリザードが吹き荒れている。

 

「……ま、マジかよ」

「見ての通りの雪よ。視界も通信も遮断されている。アークからの回収部隊も近づけないでしょうね」

 

 窓に張り付き、絶望する。

 これでは一歩も動けない。

 

「近くに私が管理する湯治場があるのだけれど……この天候では、そこへ戻るのも自殺行為ね」

 

 ルドミラが困ったように眉をひそめた。

 だが、すぐにその表情を引き締め、向き直る。

 

「仕方ないわね。天候が回復するまで、この研究所で一夜を明かすとしましょう」

「えっ? ここで、ですか?」

 

 聞き返すと、彼女は淡々と頷いた。

 

「ええ、そうよ。ようやく不届き者から取り返した、私の家よ。貴方がメイン電源を落としたけれど、居住区画の予備電力はまだ生きている。暖房も、備蓄食料もあるはずよ」

 

 そう言うと、ルドミラは顎で壁のパネルをしゃくった。

 

「アリス。暖房を」

「はーい! ポチッとなー!」

 

 アリスが跳ねるように近づき、パネルを操作する。

 ブウン、と低い音がして、空調が稼働し始める。

 

「わぁ! あったかい!」

 

 アリスが歓声を上げ、ネオンが「文明の利器です!」と目を輝かせた。

 

「簡易シャワー室と仮眠室もある。……外で野垂れ死にするよりはマシでしょう?」

 

 ルドミラが口元を緩める。

 確かに、最悪の事態は回避できた。

 食料も、暖房も、安全な寝床もある。この極寒の地で、これ以上の贅沢はないはずだ。

 

「さあ、案内するわ。まずは温かいスープでも振る舞ってあげる」

 

 女王様が、先ほどまでの威圧感が嘘のように、少し楽しげに歩き出す。

 

「やったー! ご飯だー!」

 

 無邪気に喜ぶアリスとイヴ。

 

「仕方ありませんね。お供します」

 

 ラピも満更ではなさそうに続く。

 

「……はぁ。温かいスープか。悪くないわね」

 

 アニスも肩をすくめた。

 

「……寒い。最悪。早く温まりたい」

 

 ユニがガタガタと震えながら毒づく。

 

「あらあら。じゃあ私が温めてあげましょうか?」

 

 ミハラが妖艶に微笑む。

 

 楽しげな女性陣の声が、冷え切った廊下に響く。

 一人、その後ろ姿を見送った。

 外は絶対零度の死の世界。

 内は最強の美女たちが集う楽園。

 だが、ふと周囲を見渡し、背筋に冷たいものを感じる。

 

(……待てよ。男、俺だけか?)

 

 女王様、無邪気なうさぎ、カウンターズ、ワードレス、そして天然主人公。

 全員、女性だ。そして主人公以外は、こちらより遥かに強いニケだ。

 この閉鎖空間で、生身の男は一人だけ。

 

「……なんか、すげぇ居心地悪いんだけど」

 

 誰にも聞こえない独り言が、空調の音に吸い込まれていく。

 小さく溜息をつくと、彼女たちの後を重い足取りで追った。

 




【追記】
いただいたご意見を参考に、ルドミラのセリフ回しを修正しました。
原作準拠の「高貴な上から目線(ノブレス・オブリージュ)」を意識して調整しています。
ご指摘ありがとうございました。
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