闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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幕話1 恐ろしきパーティーの噂

「おい、聞いたか? ザミア達のチームに新しい仲間が入ったんだと」

「嘘だろ!? 今度はどんなヤバい奴が入ったんだ!?」

「おいおい、ヤバいやつとは限らねえだろ?」

「そうはいうがな……あの見た目に、この速度での銅級昇格だぞ? 相当な過去を持ってねえとおかしいだろ」

 

 多くの冒険者たちが仕事の終わりに酒を飲み、日々の疲れを癒す酒場でそんな声が聞こえてくる。

 話しているのは、酔っぱらった太った男と痩せた男、二人の冒険者だった。そんな彼らの話題が興味深かったのか近くの席に座っている冒険者たちも聞き耳を立てている。

 

「確かになぁ……噂で聞いたが、ザミアはかつて生まれ育った村にいた人間を皆殺しにされて、奴隷にされて売られたらしい。最後には、その奴隷商の親玉の首を獲ってから、復讐のために敵を追っているらしいぜ?」

「マジかよ……」

「こっちだとそうでもないが、もうちょい魔物生息圏から遠い内地だと人間同士での争いとか犯罪者が多いらしいからな。そういう話もよくあるらしいぜ。んで、同じパーティーの仲間はザミアの実力と苛烈さに冒険者の現実を知って引退したんだと」

「なるほどなぁ……実力の差を知って引退か。よくある話ってもんだな」

 

 そう言ってうんうんと頷く痩せた男。恐らくはその実力の差を知ってしまったという部分で何か思うところがあったのだろう。

 なお、現実は別の事情で組んだパーティーが解散することになっただけなのだが……ザミアの口下手と勘違いされやすさは当時からであり、当時のパーティーの仲間からも重たい事情があると勘違いされていたのが発端である。

 最初は、事情持ちの彼女だけが冒険者を続けている。そう思われただけの話が尾ひれがついていく中で、どんどんと盛られていき、気づけばザミアは故郷を滅ぼされて元奴隷にされていた。更にはその全員を実力でたたきのめして復讐のために冒険者をしながら仇敵を探していることになっていたのだった。

 なお、本人にはこの噂が届くこともなく……届いたとしても訂正する能力はないため、噂が消えるどころかドンドン尾ひれが付いて広まっていくことは確定している。

 

「それに従うリズは、どこぞで暗殺技術を学ぶための教団で育てられた生粋の暗殺者って話だ。アメリアは生まれた家を追われた元貴族……まあ、魔法使いなんてそんなもんだが、その際に邪法に手を染めてるなんて噂もある。そんで、ミライ……あいつが一番ヤベえかもしれねえ。事情通の冒険者ですら、神官だってのに知らねえんだぞ?」

「マジかよ!? 流れの神官には見えねえし、回復魔法を唱えてるのを見た事はあるが、下手な教会の神官よりも詠唱が上手かったし綺麗に治ってたぜ?」

「だから怖いんだ……噂じゃ、教会のお偉いさんの隠し子だって噂もあるし……教会内の政治に負けて再起を図っている説もある。分かってるのは、協会に表向きミライは属してないってことだ」

「……つまりは、触れると教会の裏に触れるかもしれねえのか……あの笑顔の裏、何考えてるか分かんねえからな。納得だぜ」

 

 リズやアメリアにも尾ひれがついていたが、ミライに関しては彼女の能力のせいで最早、教会という組織の暗部と関わりがあると勘違いされていた。

 ちなみにミライがこの話を聞けば真っ青になって訂正をするだろう。しかし、問題は彼女は未成年で真面目な神官なので酒場に来ることがないのでその機会は恐らく何かの奇跡が起きなければ訪れないであろう。

 

「ああ……それに、噂だけじゃねえって分かる話もあるからな。あいつらがパーティーを結成した時に、ちょっかいをかけたバカ共が居たの覚えてるか?」

「ああ、そういや居たな。女好きの奴らだろ?」

 

 そんな風に思い出すのは、冒険者でもタチの悪かった女好きの集団だった。

 冒険者でも見習いや初心者の立場の悪い女の子を見れば近づき、何かと迷惑をかける集団であり悪い噂も多かった……そう、過去形である。

 

「あいつらがリズにカモだと思ったのか話しかけて、ちょっと体に触ろうとしたんだよな? そん時に……目にも止まらねえ速度で指が全部叩き折られたんだっけか?」

「ああ、最初は何の音かと思ったよ……そんで、悲鳴を上げて倒れて、それを見てキレた兄貴分がリズに詰め寄ろうとしたら、ザミアが止めたんだよな」

「ああ、あの時は近くに居た俺も肝が冷えたぜ……辞めろって地獄の底から聞こえるような声で、血を見るかと思ったんだよな」

 

 そうやって思い出す太った男は、ブルりと体を震わせる。周囲のザミアを知る人間も、彼女が本気で怒ったときの様子を想像したのか青い顔を浮かべていた。

 

「んで、兄貴分の奴がビビって破れかぶれになってザミアに食ってかかったんだよな?」

「ああ、でもザミアは軽く突き飛ばして……そしたら、あいつ冒険者組合の外までぶっ飛ばされたろ? あれを見た時には、流石にちょっと笑っちまったよな」

「今考えりゃ、殺されないだけ有情だったんだろ。さっきの噂を考えられたら肉片にされてもおかしくねえぜ?」

 

 ――さて、事実はというとリズはお爺ちゃんの言葉に従って、勝手に触れようとする男の指を叩き折っただけである。そして、ザミアはなけなしの勇気を振り絞って仲裁をしようとしたが、食ってかかられて驚いたことで、能力を全開にして突き飛ばしたせいで大惨事になってしまっただけである。

 

「まだ、アメリアとミライが合流する前だったから良かったけど、全員揃ってたらあいつらどうなってたのかね?」

「……まあ、この街じゃ二度と見なかったかもな。いや、それは今も変わんねえか」

「はは! んじゃ、あいつらどっちにしても終わってたってことか!」

 

 その冒険者達は、5人パーティーだったが……指を一瞬で全て叩き折られて悲鳴を上げる仲間に、一瞬で店の外まで突き飛ばされたリーダーを見て戦意喪失してしまった。

 そして、危険も分からない愚かなパーティーという風評がついて回り、真っ当に冒険者も出来なくなった彼らはこの街を後にしたのだった。

 

「そんで、あいつらは余所でもまだ冒険者を続けてるらしいが……聞いた話だと、かなり大人しくなったんだと。なんなら、指を叩き折られた奴なんて女が通りがかるだけで指を隠すようになったらしいぜ?」

「まあ、あいつらのせいでこの街を去った冒険者達も居たからな……ま、でもどっちにせよ女だからって理性すら失うなら遅かれはやかれってもんだろ」

「全くだ。危険に飛び込む仕事なんだからな。何がヤバくてヤバくないか。それも見極められねえなら、死ぬしかねえよ」

 

 太った男はそう言って酒をグイっと飲み、そこで本来の話題を思い出す。

 

「って、そうだ。それで仲間が増えたんだろ? どんなヤベえ奴なんだ?」

「覚えてるか? 異界人のユーマって奴」

「ああ、覚えてるぜ。確か……前に死んだバーラグのところに居た奴だろ?」

 

 それを聞いて痩せた男は、何とも言えない表情を浮かべている。

 それは面倒くさいが、死んでも何とも思わない相手じゃない……と言う複雑な心境を浮かばせていた。

 

「バーラグかぁ。まあ、なんつーか……ウザい奴だったよ」

「まあ、出来ねえのに他人に説教ばかりしてたしな」

「新人にはすぐに絡むし、自慢話がうるさかったぜ」

「あと仲間の盗賊のガキとメガネ野郎も何かとトラブルを起こしてたし、癖が強かった記憶があるな」

「結局、居場所のねえハズレを集めてなんとかチームを組んでた三流冒険者ってところだな」

 

 総評は変わらない。デリカシーもなく、あまり良い人間とは言えなかった。大雑把であり、仲間に対してはあまり拘りもない。だからこそ、そこに集まったのも弾かれものばかりだった。

 ……だからこそ、異界人であるユーマをパーティーに入れていたわけだが。

 

「……んで、なんでザミア達はその異界人を仲間にしたんだ? 異界人なんて、入れるだけ邪魔になるだろ」

 

 それはこの世界の常識である。

 異界人はスキルの恩恵を受けれない。そして、魔力そのものを扱えない。それは、肉体的にも弱く、すぐに死ぬ可能性が高いということである。

 

「多分だけどよ……ザミア達は信用してねえんだろうさ」

「信用してない……?」

「それぞれが事情を持ってんだ。普通の奴なんていうのに不信感を持っててもおかしくねえ。そこでやってきたのは、こっちの世界とは縁もゆかりもない異界人だぜ? それに、バーラグのところとはいえ、今まで生き延びて来たんだ。すぐに死なねえ実績もある」

「なるほどな。そりゃ納得だ……そういや、俺も異界人に酒を奢って貰ったな。アレがユーマだったか」

 

 拾われた実際はもっとしょうもない、ザミアが気まずいパーティーに限界を感じたのとユーマが放っておけないからという理由ではあったりする。

 しかし、勘違いを訂正するメンバーはここに誰もおらず……

 

「んじゃ、異界人って仲間を手に入れた事であいつを窓口に色々と動きやすくなるんだろうな」

「だな……ここから復讐とか始まるかも知れねえし、冒険者としての実績を積んでコネを作るかもしれねえ」

「んじゃ、仕事がなくなるじゃねえか! そりゃ、明日に備えて酒はあと二本くらいにしとくか!」

「馬鹿野郎! 普段より飲んでんじゃねえかよ!」

 

 そう言って冒険者たちは笑い合う。そうして、ここで聞いた二人の話は更なる尾ひれがついて他の冒険者達が広めていき……それは街にも広がっていく。

 こうして、様々な誤解と噂話が広まっていくのであった

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