闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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更新ペースですが、多分平日はなるべく更新して土日は書き溜める感じになるかもしれません。これも書き溜めがなく忙しすぎる弊害ってやつですね。


第十二話 闇深きパーティーと謎の男

 声をかけてきたあの男のことをザミアは知らなかった……いや、そんなことある?

 過去の話に繋がるのかと思いきや、別にそんなことはなかったらしい。

 

「……過去の仲間の顔を頑張って思い返したけど……よく考えたら、あの人みたいな感じの人は居なかったし……成長して変わったのかなって思って、思い出してみたけど……全員成人してたから、成長するもなにもなかったの……」

「な、なるほどな? でも、なんで気付くのに時間が掛かったんだ?」

「……その、昔のパーティーだと打ち解けられなくて……顔を見る時間があんまりなくて……」

「そんなことある?」

 

 そんなことある?

 あ、声に出てしまった。いやまあ、でも実際気持ちとしてはこれしか無いだろ。

 

「……あんなに嬉しそうに声をかけられて、知り合いかと思って……ずっと考えてたけど思い当たらないし……忘れてるだけかと思って……ずっと考えてたけど……知らなくて……うう、どうしよう」

「……いやまあ、確かにそうだな。完全にザミアが姉御って人だと思って話しかけてきたもんな。そりゃ確かに勘違いしても仕方ないか」

 

 話を聞いてみれば確かにザミアが悪いところはない。いや、本当に。これが何かしら自分に全く関係ないものだったら足を止めないだろうが、冒険者の過去がある以上はザミアも切り捨てれないだろう。

 ……あー、でも念のために聞いておくか。

 

「でも、前のパーティーの関係者とかじゃないんだよな? 喧嘩別れって言ってたろ? ザミアの知らないところで、勘違いされてたって可能性もあるんじゃないか?」

「……うん。それはないと思う。喧嘩の内容も、活動場所を変えたいって話だったから……」

 

 あー、なるほど。冒険者組合がある街自体を変えることはよくある。しかし、活動場所を変えて上手く行くとは限らない。別の街の冒険者組合に移籍するとなればそちらに腰を落ち着かせる必要もある。よくあるパーティー解散の理由だ。

 なるほど、それならば姉御を呼ぶ男が関連している可能性は低そうだな……よし。

 

「それなら答えは簡単だ。なるべく話しかけないように気にしないでおこう」

「……えっ」

 

 ビックリしてるザミア。まあ、ああいうのに絡まれた経験がないとビックリするよな。

 俺は絡まれた経験は数え切れない程あるのだ。なにせ異界人で冒険者だ。一人で行動してたらビックリするくらい絡まれる。冒険者組合が存在する街は基本的には外部の人間には寛容なのだが、それでも異質さを感じるらしい。最初の一年は当然ながら、三年目くらいになっても時折絡まれては……まあそれはそれとして、好奇にせよ何にせよ、そういう場合の対処は無視がいい。

 

「……いいの?」

「まあ気になるかもしれないが,何もしてないときからわざわざ絡んでいく必要はないと思うぞ。あー、でもザミアは拒否することに慣れた方が良いと思うが……出来るか?」

「……ごめんなさい、無理かも……」

「まあ、それならいいんだよ。それにあんだけ喋れてザミアを気にしない奴だと、言葉を挟み込む事も出来ないだろうし何なら記憶喪失だとか言われる可能性もあるんじゃないか?」

「……確かに」

 

 そう、冒険者と言うのは大抵思い込みが強くてノリと勢いで生きている奴が多いので割と難しい話なのだ。こういう時に落ち着いて対処出来るような奴はあんまり冒険者にならない。

 まあ、不安なのは不安だ。それでも、こちらから何かをする必要はないと思う。むしろ逆上するとか勘違いからトラブルになる事を考えると何もしない方が良いだろう。先送りともいうが、困るのは先の俺だ。恨むなら今の俺を恨んでくれ。

 

「まあ、それよりも銀等級になってやることが増えただろ? そっちの方が忙しくなるからな……冒険者組合の手続きもそうだし、今後に備えて前の報奨金を使って装備の新調もする必要があるだろうし予定を合わせるのも大切だ。」

「……あわわ……や、やることが多すぎる気がする……」

「それが銀等級になるってコトなんだろうさ。まあ、だから一旦はどっしり止まって良いと思うぞ? 問題が起きるなら……まあ、その時はその時だ。」

「……うん、そうだね。私がリーダーだから……頑張る」

「ああ、頑張るとしよう。俺も仲間だからちゃんと助けるからな」

「うん……頼りにしてる、ユーマ」

 

 ザミアはそういうと誰か一人殺したようなスッキリした表情を浮かべて俺の部屋から出て行った。

 そして俺は息を吐く。いや、ああはいったが怖いなぁ。ザミアのそっくりさんが居ることもそうだが、自分の元パーティーメンバーか、それとも先輩冒険者か仲間か……どういう立ち位置か分からないが親しい人間だと思い込んでいるのなら、パーティー感でのトラブルになる可能性は十二分にある。

 

(いやまあ、仕方ないか。ザミア……と言うかうちのチームメンバーは勘違いされやすい見た目をしてるからな……有名税みたいなもんだと思うしかないか。いや、それにしてもそっくりさんは違う気はするけどさ)

 

 と、ボヤきながらも無事に方向性も決まった。このまま悩んでいても仕方ないので、明日は買い物でも行こうかと予定を脳裏で組み立てる。

 

(銀等級になったら色々と入り用だろうからな……そのために色々と揃えて……あと、金)

 

 まあ、取りあえず必要なのは俺の今後に対する準備だろう。

 と言うわけで、最初に買い物をするために一番必要な覚えの悪い俺のような人間の友である、紙とペンを買いに行くことにするのだった。

 

 

「えーっと……この道を真っ直ぐ……うわ、本当にこの店に入れんの?」

 

 目の前には俺がこの街に来てから五年、一度として立ち入ったことのない場所。

 魔法道具店だった。

 

「……緊張するな」

 

 何故緊張しているのか? 過去に門前払いをされたことがあるからだ。まあ、そりゃそうだろう。魔法道具というのは、この世界では高級なものだ。

 そんな者を扱っているのに身分が不確かな者が入れるわけが無い。なにせ、街に住んでいる住人ですら入れるかどうかは怪しいのだ。

 

「いらっしゃいませ、ユーマ様」

「ああ、どうも……」

「何かご不便があれば、お申し付けください」

 

 ――そしてそんな俺は銀等級冒険者ということで、ちゃんとした客として扱われていた。

 いやもう感動した。ちょっと待遇が良すぎて怖いくらいだ。

 

(しかし……扱いにも感動したが、中もこりゃ凄いな……)

 

 所狭しと並んだ魔道具や高級な日用品。

 元の世界の高級百貨店などを思い出すような世界だ。周囲に居る客も、様々だが目に見えてガラの悪い客は存在しない。

 実力を感じる冒険者、身なりの良い町人、魔法使いらしき人間、挙動の怪しいアメリア……

 

(……見なかったことにしよう)

「あ……」

「あ」

 

 バレた。目が合った。

 その瞬間、普段と違う驚きの速度で俺の近くに迫ってきた。怖いよ。

 

「ユーマ、どうしたの?」

「……道具を買いに来たんだが……アメリアは何してんだ?」

「私も買い物」

 

 と、堂々とした態度で俺と会話をするアメリア。

 傍目から見ればアメリアは、この魔法道具店の品定めをしているようにしか見えないだろう。しかし、付き合いの長くなってきた俺には分かる。コイツはなんか困っている。小声で聞いてみる。

 

(で、何を困ってるんだ?)

(……しょ、商品が分からないんだけど)

(いや、店員を呼んで聞けよ)

(呼ぶのはちょっと怖い……)

 

 一瞬、怖いのはアメリアの見た目の方だよとか言いそうになったが冷静になる。泣きそうな表情なんだろうが、邪悪な魔女が気に入らない店を破壊しようと企んでいるようにしか見えないぞ。

 ……まあ、それでもアメリアが困っているのは事実なのだ。仲間として助けるべきだろう。

 

「じゃあ、俺も商品を探してるから店員を呼ぶ。その時に一緒に聞けば良いか?」

 

 頷いたアメリア。いや、自分で聞いて欲しいのは聞いて欲しいんだがなぁ……

 そんな風に思いながら店員に声をかける。

 

「すいません」

「はい、如何なされましたか?」

 

 うおっ!? 気配もなく一瞬でやってきたので驚いた。

 

「メモとペンを買いたいんですけど」

「なるほど……それでは魔道具と通常の品がありますが、どちらになされますか?」

「違いはなんですか?」

「魔道具であれば、燃えずメモの内容もペンに付属する特性のマーカーによって簡単に消せます。更にインクは魔力を補充することで常に満ちた状態となります。とはいえ、こちらは価値が高くメモの枚数も少なくなっております。また、魔力の補充がなければ少々取り扱いが面倒ではございますね。逆に魔道具の通常品は破れず水を弾きますので丈夫さは保証されています」

「なるほど……」

 

 聞いてみると、どちらにもメリットがあるように思える。

 こういう時は……そうだな、魔法道具に関する知識のある人間に聞くのが良いだろう。

 

「アメリア、メモはどっちが良いと思う?」

「っ!?」

 

 俺を見る。多分内心では、かなりビビって挙動不審になっているのだろう。

 だが、まあ俺に頼んだのだから少しは手伝って貰うぞ。

 

「……そうね」

 

 気を取り直したように店員が持ってきた手帳を見るアメリア。店員さんはガチガチに体を硬くして緊張している。見た感じは怖いもんね、アメリア。

 

「ユーマに向いているかって言うと、どっちも向いてないわね」

「えっ、そうなのか?」

 

 結構良いと思ったんだけど。

 

「まず、丈夫なメモは調査員向け。現地で魔物を相手にしながら情報を残すために作られた丈夫さ特化したものよ。逆に言えば、調査員みたいに危険な場所に単身乗り込んで最悪水に沈めたり埋めて後にやってきた人に託す為に丈夫に作られているわ。そういう目的だとユーマには必要ないでしょ?」

「……あー、確かに」

「で、魔道具は魔法使い向けね。これは基本的に魔力量が多い人が使う用のメモだし、燃えないのも魔力による実験の失敗の影響で燃えないことを重要視されているわね」

「なるほどなぁ」

「そういう意味ではユーマには不相応な商品ね」

 

 と、そこで青い顔をした店員が謝罪を申し出る。それこそ、汗を流して足が震えている。

 

「……大変申し訳ございません。このような不手際を……」

「あー、気にしなくて良いですよ」

「いいの?」

 

 と、アメリアがそんな風に聞いてくる。

 

「ああ、異界人のことなんて詳しくないだろうからな。誠実に対応してくれるならそれでいいと思うぞ」

「ふーん、そう」

「――ありがとう、ございます。ユーマ様向けの条件であれば、こちらは如何でしょうか? 決して高級ではない一般商品ですが、非常に取り回しが良く丈夫です」

 

 と、店員は失点を取り返すと言わんばかりに張り切ってメモとペンを取ってくる。

 色々と聞いて、アメリアも頷いて納得する商品に決めた。

 

「助かったよ。ありがとうな、アメリア」

「このくらい、パーティーだし気にしなくていいわ」

 

 と、人目がまだあるかもしれないので余所行きモードだが嬉しそうなのが見て分かる。

 ……って、忘れてた。

 

「それで、アメリアは何が見たいんだ?」

「あ……そうだった……ええっと、私が見たいのは魔法薬ね」

「魔法薬……ああ、俺が使った奴か」

「商品の取り扱いが難しいから、こういう専門店しか扱ってくれないのよ。色々と使われて在庫が不安だし」

 

 そう言って恨みがましい視線を向けられる。仕方ないじゃん、緊急事態だったんだから。

 

「じゃあ、すいません。アメリアに魔法薬を案内して貰えます? この店にそこまで詳しくないらしいんで」

「左様でございますか。右手にある扉の向こう側に商品が展示してあります。魔法薬の担当の者が受付いたしますので、お気軽に声をお掛けください」

「ええ、じゃあねユーマ」

 

 と、魔法薬を見に行くアメリア。

 ……そういえばちょっと気になって隣に立つ店員さんへ聞いてみる。

 

「魔法薬ってどのくらいするものなんですか?」

「……そうですね。一般的な値段ですと――」

 

 と、そう言って耳打ちしてくれた値段を聞いて俺は天を仰いだ。

 ……アメリアへの賠償、本気で請求されたら一体どれだけ死線を越えれば稼げるんだろうか? そんな絶望的な気分を味わってしまう。貯金しようと心で決めていると、店員さんが何故か俺に頭を下げた。

 

「……先程はアメリア様ヘの取りなし、ありがとうございました」

「え?」

「アメリア様のお眼鏡に叶う商品を出せず、我々の店が潰れるかも知れぬ瀬戸際でしたが……あのように、助け船を出していただき、更にはアメリア様への魔法薬商品の案内までして頂けた事に感謝いたします」

 

 と、頭を下げる店員さん。

 何のことかと思い……アメリアのような貴族のツテのある人間に、店員さんが満足なサービスを提供できていない店という印象を与えてしまったかもしれないという事かと気付いた。

 だが、俺が口を出した事でアメリアの不機嫌や不満を取りなしたように見えた……ということだろう。

 

「流石はユーマ様。噂に違わぬ人物ですね」

「……ん? え? 俺って噂になってるんですか?」

「ええ、噂になっておりますよ。過去に事情を持つ彼女たちを取りなし、パーティーを支えている存在だと。流石に市井の住人からの知名度は低いですが、同業の冒険者からは注目の的です。我々の耳にも入ってきておりますよ。まさに今、我々でも満足のいくサービスを提供出来なかったアメリア様の意図を汲み取り、取りなしをして頂けましたので……このご恩は決して忘れません」

「……………………ソウデスカ」

 

 色々と否定したかったけど、否定しても良い事が無かったのでグッと言葉を飲み込んだ。

 ……噂、気になるけど知りたくねえなぁ。

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