闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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週二ペース更新となります。なんとか守りました(疲労困憊)


第十七話 闇深きパーティーと報告

 ――帰還した俺達は、まずは冒険者組合への報告を急いだ。

 

「わ、渡りですか!? サンドワーム……了解です! 今すぐに報告と調査を進めます! ありがとうございます! それでは、審査などがありますので少々お待ちください!」

 

 いつもの受付嬢さんが慌ただしく奥へ走って冒険者組合に何かを伝えていると、後ろから司書さんがやってきて、小首をかしげて疑問を告げる。

 

「……よくご無事でしたねー? 渡りの奇襲を喰らったのに、殆ど被害無しというのは予想外ですー」

「……ソロウが乱入した」

「ああ、なるほど。他の冒険者さんの介在があったんですねー。であれば納得しましたー」

「この質問、どういう意図があるの? ハズレ依頼でしょ? 私達の評価に今回の結果が関係するの?」

 

 そう言って何かを書き留める司書さんに、アメリアが疑問を浮かべた表情で質問をする……まあ、端から見れば他人のミスを糾弾するようにも見えるが。

 しかし、俺も気になる。司書さんの言葉は場合によっては俺達が死にかけていないのがおかしいといわんばかりの、悪意とも取れる言葉だからだ。

 

「あー、申し訳ございません-。甘く見た発言というよりも、実績から考えた際の被害の少なさにこちらの見立てが外れていたのかと少し疑問になったものでしてー」

「見立て?」

「そうですねー、冒険者さんの実力を職員はある程度、見立てて予想しているのですよー。そうでないと、例えば冒険者さんに不釣り合いに難易度の高い依頼を渡してしまったり、嘘を吐いている兆候を見逃したりしてしましますからねー」

 

 その言葉を聞いてミライが頷く。

 

「聞いたことがあります。実績を誤魔化していた冒険者の話と、その悲劇を」

「ええ、ご存じであれば助かりますー。今では子供向けの教訓話扱いなんですが、実際に起きた事件ですのでー。居住区域が未開区域になってしまう悲劇を繰り返さないための措置なのですよー」

「……なるほど」

 

 確かに言われれば納得ではある。

 冒険者と言えどもピンキリだろう。中には、得意不得意もある。実績があっても、その実力や実績に関してはズレてしまっているかもしれない。まあ、それをあんまり見せて欲しくはなかったが……多分、取り繕えないくらいに驚きだったんだろうな。

 

「先輩、だからそういうのは言っちゃダメですって-!」

「別に大丈夫じゃないかなー。コレを聞いたからって、別に依頼を任せないって話でも無いしね~。それに、私が失礼しちゃったから説明義務はちゃんと果たさないとダメだもの-」

「うう、そう言われると……」

 

 ……何か丸め込まれているが、司書さんも何だかんだ信頼出来る人なのだろう。

 

「と、いうわけでしてー。銀等級冒険者に上がったばかりのザミアさん達が、この状況で無傷である場合に判断に困るのですよー。管理区域から未開区域を経験した事で、目的がすり替わってしまうような方もいらっしゃいますので-」

 

 それが、先程も言っていた嘘を吐いていた冒険者のことだろう。

 銀等級としての称賛や権利を手放したくないもの。命の危機を前にして、安全に如何にして生き残るかしか考えられなくなったもの。

 多分そういう積み重ねが、先程の見立てというわけか。

 

「それで、今回の件ですが……ソロウさんは他の場所でもこういった手助けなどをするらしいんですよねー。別にこういう行為自体はいいのですが……冒険者組合に報告をしてくれないので困るのですよねー」

「報告をしてない?」

「そうですねー。未開区域で他の冒険者が苦戦していたり、何があった場合に救助へ駆けつける報告がよく上がってくるのですよー」

「良い事じゃないのですか?」

「まあ、確かに善行ではありますけどもねー。これが今回のような調査依頼ではない正式な依頼で、勝手に手を出してしまわれると正当な評価が出来なくなってしまいますー。そして、ソロウさん本人が何も言わないので、こちらとしても判断しかねるのですよねー」

 

 ……ただ、助けるだけなら良い事だ。だが、実力や実績によって任せられる仕事の難易度が上がっていく冒険者という職業のことを考えれば、良い側面だけではない。

 つまりは身の丈に合わない難易度を受けることになり、失敗の機会を奪われる可能性があるという事だ。これが、冒険者組合の適正な難易度であれば逃げ帰れるかもしれないだろうが……という話だろう。本人が手助けをしたと言えば、冒険者ギルドもそれを加味出来る。しかし、本人が否定をしてしまえば正確な判断が下しづらい。

 

「とまあ、そういうわけでしてー。長話に付き合わせて申し訳ございませんー」

「……いや、構わない」

「そう言ってくださると助かります~。ですが、無事に帰って来れたのは我々も嬉しい限りですので、ゆっくり休んで依頼を受けてくださいねー」

 

 そう言ってから司書さんは奥へと引っ込んでいく。

 ……慌ただしい報告を終えて席に着いた。そして、最初に考えることは……この後、どうするかだ。

 

(依頼自体は達成した。渡りの報告自体は間違いなく、冒険者組合が求めている成果ではあるが……あの言葉がなぁ)

 

 ソロウに言われた言葉。それは、己たちの未熟。

 事実無根で的外れな指摘であれば、気にすることはなかっただろうが……それぞれの自覚している言葉を使われたのだ。気にしない方が難しいだろう。

 

「……まず、聞きたい」

 

 そうして、最初に口火を切ったのはザミアだ。

 

「……このパーティーを、抜けたい者は……」

 

 ……あまりにも、不器用すぎる。

 思わず天を仰いだ。言葉が少なすぎるザミアが、「抜けたい者は抜けろ」というとあのソロウの言葉を肯定する形になってしまう。でも、ザミアとしては「私のせいで迷惑が掛かった。もしも、傷ついてしまったのなら離れてもいい」と言うくらいの言葉をかける……と思う。

 だから、俺がどうフォローするべきか。頭をフル回転させて……

 

「……いるかもしれない。でも、我儘かもしれないが……言わせて欲しい」

 

 ……ん、あれ?

 

「……私は、この『夜明けの月』が好きだ……ここは、私の居場所で……私のパーティーだ。だから、あの言葉を受けて傷ついたとしても……私を信じて、付いてきて欲しい……」

 

 ザミアの精一杯の喋り。まだたどたどしい。知らない人間が見れば、今から皆殺しにしてそのまま永遠に一緒だと言わんばかりの形相だ。それでも、仲間として過ごした時間の長さから分かっている。

 これは……他人を考えて自己主張をしないリーダーが、初めて俺達にワガママを言っているのだと。

 

「私は気にしてない」

 

 そして、最初に答えるのはリズ。

 

「事実は事実。見返す」

 

 ……以外とカチンときていたのかもしれない。言葉では気にしてないと言っていたが、ちゃんと気にしている。

 

「……あたしも、このパーティーを抜けるつもりはないわ」

 

 そして、アメリアも続く。

 

「まあ、確かに納得出来る部分もあったけど……まあ、それはそれ。これはこれ。実力行使されるわけでもないなら、ああいう言葉に従う義理なんていうのはないわ。このパーティーの居心地が良いのは同意。私を受け入れてくれているここを守るためなら、まあ多少は努力しても良いけど」

 

 ……おお、人を寄せ付けない魔女が心動かされたように見える発言だ。でも俺には見えてしまう。アメリアのキャラ作り発言の翻訳をするとだ。

 

『結構色々言われたけど、実家で何か言われた時を考えたら強制的に何かされるわけじゃないし……まあ、居心地がいいし、ここでちょっと頑張ってまだまだあたしのノンビリライフを過ごしたいなぁ』

 

 って感じだろう。後で答え合わせ聞きに行くか。

 そして、ミライも頷く。

 

「はい。あの言葉は厳しいものでした……ですが、彼のザミアさんを思う気持ちが強い言葉を使わせたのでしょう」

 

 それは誰よりも優しいミライだから出せる、伝えた相手すらも思った言葉だ。

 ……まあ、事実は相手が勘違いしてると言う根底があるんだけども。ザミアも複雑な表情をしている。

 

「ですが、わたしはザミアさん達と共に歩んできた短くとも濃密な時間があります。それは、決して他人から否定されるものではありません。ですから、そのように我儘なんて言わないでください。わたしは、ザミアさん達と共にまだ居たいから一緒に歩むのです」

 

 一番しっかりした意思を伝えたミライに思わず感動しそうだ。

 そして、全員の視線が俺に向かう……え? 俺も?

 

「……いや、俺は最初から『夜明けの月』から抜ける気は無いぞ?」

 

 ザミアへ救って貰った恩も返せていない。

 ――ザミアがこうして、自分の意思で彼女たちに自分の想いを告げることが出来た。その成長は俺が想像していたよりも早く……俺自身が置いて行かれないようにするのが必要なくらいだ。

 だから、俺はこんなところで悩む時間は無い。彼女たちの横で、助けられるまでは必死に追いつくだけだ。

 

「……ありがとう、皆」

 

 ザミアはそういって、決意に満ちた目で全員に伝える。

 

「……あのサンドワームに、リベンジをしたい」

 

 それは、冒険者として……己の誇りをかけた戦いを宣言する言葉だった。

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