闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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第二話 問題発覚

(……あれから一ヶ月かぁ。早いもんだなぁ……)

 

 あれから俺は彼女たちとの冒険者生活を送っていた。

 

「……どうすればいいんだよ」

 

 宿の一室で頭を抱えながら、とある問題に悩んでいた。

 さて、何故俺がこんなに悩んでいるのか……それはまあ、簡単な理由だった。

 

「このパーティー、連携が取れてねえ……というか、全く交流がねぇ……!」

 

 いやまあ、予想はしてた

 だが、その難易度は俺の想像をはるかに超えていた。

 

(冒険者は確かに過去を問わないから触れづらい……けど、それはそれとして聞けないって! 明らかに村を焼かれてそうなリーダーとか、暗殺者として育てられた過去みたいな子とか、明らかに人嫌いっぽい魔女さんとか! 何かしら裏がありそうな聖職者さんとか! 下手に事情に踏み込めないんだよなぁ! というか、チーム内でもお互いに事情に触れるべきではない不文律ができてるせいで会話があんまりねえし! なんなら、お互いに必要以上に干渉しないから冒険者としての指摘するべきことも指摘できてないし!)

 

 冒険者というのは命がけの仕事だ。そういった鉄火場で戦い抜く仕事である以上は、多少はお互い踏み込む必要はある。

 ……だが、このパーティーに関して言えば、その第一歩の敷居が高すぎる。なにせ、その踏み込まないレベルでいうなら俺が会話を繋いで「今日の依頼は大変そうだから、装備の確認は怠らないようにしよう」という程度の会話を絞り出しただけで、ミライから「こんなにちゃんと話をしたのは久々ですね」とか言われのだ!

 正直、必死に絞り出させた毒にも薬にもならない普通の会話だったんだが!? ……とまあ、そのレベルでコミュニケーションを取れていないパーティーだから、問題が山積みだったのだ。

 

(まず、連携が酷すぎる……お互いに空気を読んで好き勝手にやってるだけだしな……それに、冒険者としての必要なイロハもあんまり知らなそうというか……)

 

 銅級冒険者として考えれば、冒険者組合から聞こえてくる彼女たちの評価は非常に高い。だが、実際は一つ間違えば失敗と隣り合わせの綱渡りなパーティーだった。

 だが、それは逆に言えば普通のパーティーでは解散するか、その前に命を落とすような危うさすらも個人の持っている実力だけで乗り越えて銅級冒険者として名前を上げたということになる。

 

(……もったいないよなぁ)

 

 ……彼女たちが、それぞれ事情を持っていて冒険者以外の目的があるのなら仕方ないかもしれない。それでも、このままでは致命的な失敗が起きてしまうだろう。ならば拾ってもらった俺にできることは……たとえ、自分の身が危険になってもこのパーティーを改善をすることだ。

 だから俺は最低でも揉めて追い出される覚悟をしてからリーダーである彼女を呼んでいた。まるで断頭台に登る前の罪人のような心持ちで待っていると、ノックの音が聞こえる。

 

「どうぞ」

「……失礼する」

 

 大剣を背負ったリーダーのザミア。

 彼女は口数が少なく、多くの言葉を語らない。その雰囲気と合わせて、おそらくは復讐……きっと、簡単に口出しをすることができない過去があるのだろう。しかし、それでもパーティーのことに関しては責任を取る立場なのはリーダーであるザミアなのだ。だから、俺は覚悟を決める。

 まっすぐに見ると、氷よりも冷たい視線が俺を見据える。心折れそう。

 

「ザミア、ごめんな。こんな俺の部屋なんかに呼び出して」

「……構わない。それで、何?」

「――大切な話なんだ……このパーティーについての、相談をしたい。」

 

 その言葉に、視線が更に鋭くなる。今から大剣を手にとって俺を真っ二つにしてくるなじゃないかとすら思う気迫に、漏らしそうだ。

 だが、もう覚悟は決めたのだ。ここで日和ってはいけない。

 

(大丈夫だ、大丈夫……死ぬことはないはず。殺されたりしないはずだ……! 最悪、追い出されて野垂れ死ぬだけ! よし!)

 

 何も良くないが自分を騙して納得させる。

 

「すまない。もしかしたら失礼な事を聞くかもしれない。だけど……冒険者として、このパーティーが失敗しないための準備なんだ。もしも、俺の質問が嫌だったり、無理だってなったら……追い出してくれてもいい。だから、教えてほしい……ザミアの抱えている事情ってやつを」

「……」

「きっと言いにくいだろうけど……ゆっくりでいいから、教えてくれ」

 

 俯いて、じっと考えているザミア。

 沈黙が続く。だが、ここで俺まで黙ったら空気が耐えきれないほどになってしまうと思って言葉を続ける。

 

「ザミアの過去に関しては噂を聞いたよ……自分の生まれ故郷が誰かの手で奪われたとか、大切な人たちを戦争で失った……その大切な人たちの敵討ちのために、冒険者として準備をして情報を集めているだなんて話も聞いている。でも、ちゃんとした情報を教えてほしいんだ。秘密は守る……だから、教えてほしい」

「……本当に、誰にも言わない?」

「ああ。絶対に秘密にする。なんなら、魔法で契約をしたっていい」

 

 この世界の魔法で約束を破れば、罰を受けるようなものもある。

 それすらも許容した俺の覚悟に、ザミアは納得したのかゆっくりと口に開いた。

 

「……ユーマを落胆させるかもしれない」

「落胆? しないから安心してくれ」

 

 わからないが……ザミアが不安を抱えているのなら、俺は答えるだけだ。

 

「拾ってくれたんだ。命を救われたんだ。なら、俺にとっては恩人だ。そんな人に対して何があっても……落胆するようなことになっても、見捨てることは絶対にない。それだけは約束できる」

「……そう言ってくれるのなら、信じる」

 

 そして、覚悟を決めた表情をザミアは告げた。

 

 

「……私には悲しい過去なんて、ない」

 

 

「そうか……悲しい過去はないのか……そうだよな……誰にも悲しい過去があるなんてのは偏見で……ん?」

 

 言葉を脳裏で咀嚼する。

 ……理解して、思わず声が出た。

 

「えっ!?」

 

 そんな俺を貫くかのように睨み付け……いや、待て。

 雰囲気から睨み付けてるように見えていたが、もしかしてこれ……真剣に伝えようとする目なのでは? 彼女の見た目から受ける印象のせいで威圧に見ていただけで……本人としては本気だと伝えたいだけじゃないのか?

 

「えっと……本当、なんだな?」

「……うん。私は昔から見た目で勘違いされやすくて。それに、口下手だから……上手く説明出来ない……」

「じゃ、じゃあ……悲しい過去なんてないのか? てっきり、過去に生まれ故郷とか家族を失ったのかとばかり……だから、その途中で冒険者をやって情報を集めてるんだと……」

「……家族も皆元気だし……よく言われるけど……そういう過去は無い……けど、何故か勘違いされて……知らない噂が流れる」

 

 ……そんなことある?

 思わず口に出そうになった言葉を必死で飲み込んで、ザミアへ俺は色々と聞き取る。

 

「それじゃあ、冒険者になった理由は?」

「……冒険者になったのは……私のスキルが冒険者向きだった事と……夢だったの。冒険者になって……未知の世界に、飛び込んでいくことが……それだけの理由……だから、ごめんなさい……もしかしたら、ガッカリさせた……」

「いやいや!? ガッカリはしてないし、立派な理由だと思うぞ!?」

 

 しかし、色々と疑問が浮かんでいく。

 ……とりあえず聞いてみるか。

 

「口下手なんだよな? ……どうやってこのパーティーを結成したんだ?」

「……最初は他のパーティーに入ってたのだけど……チーム内で喧嘩が起きて……止めたけど、結果的に解散して……私は、止めようとしたけど勘違いされて……復讐のために抜けることになったの……その時の噂が……なんでか、冒険者たちに広まって……気付いたら、どのチームも……方向性が合わないって、入れてくれなくなったの……」

「な、なるほど……」

 

 なんか分かる。冒険者は思い込みが激しい奴が多いし、普通にザミアが仲間にしてほしいと言って勘違いしない理由がない。

 事情を知っている今でも、ザミアが今から命がけの復讐をしに行く途中だと言われたら納得するような雰囲気と表情をしているもん。

 

「……パーティーじゃないと、受けれない依頼もある……それに、私は一人で戦えるような人間じゃない……だから、仲間が欲しくて……勇気を出して、自分の名前で一時的なパーティーメンバーを募集したの……最初は誰も来なかったけど……リズと、リリアと、ミライが入ってくれて……三人が、同じようにパーティーを見つけれずに困っていたから……そこから、正式なパーティーとして……仲間になってもらったの……」

「お、おう……凄い成り行きでパーティー結成されたんだな……」

 

 一時的なパーティーから正式なパーティーになる事は良くある。

 しかし、そんな居場所がないからで余り物みたいな結成は結構珍しい。命懸けだからな、冒険者。

 

「……私は、こんな……人付き合いのできない……がっかりな理由だけど……リズも、リリアも、ミライも……きっと、重たい事情があるから……私も、あの子達に……勘違いされたくないし……説明する機会もないから……誰にも言えなくなったの……」

「ああ、なるほど……確かにそれは納得だ」

「……だから、何を聞けばいいのかも……何を話せばいいのかもわからなくて……」

 

 ……納得した。

 まあ、他のメンバーだってザミアが黙して語らないなら、誰も話すような機会は起きなかったのだろう。それに、ここまで勘違いされてきたザミアが勘違いされない理由もない。

 

「……ユーマを拾ったのも……このままだと……パーティーの空気が重くて……限界で……相談出来る明るい人が……欲しかった……」

「そういう理由だったのか……うん。なるほど……そうかぁ……」

 

 天を仰ぐ。いやまあ、分かるよ? 気持ちは。俺だってさっきまでザミアに殺される覚悟までしてたもん。そんなプレッシャーを普通の女の子だったら耐えられないよね。

 でも、何か思ってた方向性と違う問題が出てきたせいで、俺はどういう感情で立ち向かえば良いのか分からなくなっている。笑えば良いのか?

 

「……私は……駄目なリーダー」

「いや、そんなことは――」

「……でも、冒険者として……頑張りたい気持ちは……ずっと、本気でやってきた……銅級で、止まる気はない……それに、今のみんななら……もっと、上を目指せる……だから、私を……手伝ってほしい……経験を持ってる、ユーマに……」

「っ!」

 

 熱い言葉に、俺を殺すような鋭い視線で見つめるザミア。

 ちょっとその視線の圧にビビったが、彼女の言葉が本気だということはビリビリと伝わってきた。追い出される覚悟までした俺の目的は変わらない。

 

「――ああ、もちろんだ。ザミアに拾ってもらった恩を返すためにも……俺から手伝わせてくれ」

 

 俺自身は大した事の出来ない異界人の冒険者でしかない。

 しかし……彼女たちにはポテンシャルがある。きっと、銅級どころではない。金級……いや、その上すらも目指せるかもしれない。そんな彼女たちの一助になれるのなら、いずれ俺がパーティーから追い出されるとしても……十分だ。

 そして俺の言葉に頷いたザミア。

 

「……ありがとう、ユーマ……頼りにしてる……」

「ああ、とはいえ、経験からのアドバイスとか仲立ちくらいしか出来ないけどな。精一杯頑張らせてもらうよ」

 

 そう笑顔を見せると、ザミアも笑顔を見せる。

 ……う、うん。とても凄い笑顔だ。今からお前を拷問して殺すから覚悟しろとでも良いそうな感じ。怖いんだけど、それでも徐々にザミアの意図は汲み取れてきた。

 

「……それで、まずは……どうすればいい……?」

「そうだな……まずはそれぞれの事情の確認が必要だ。また簡単な依頼を受けてくれるか? そこで俺からみんなの事情を聞いてみるつもりだ」

 

 このパーティーは、まずお互いがどこに住んでいるのかすら知らないのだ。

 俺はザミアから紹介された宿で厄介になっているが、基本的にそれぞれが決まった時間に冒険者ギルドに合流して、何をするのか相談する流れになっている。

 ……よくやってこれたな。このパーティー。

 

(まあ、仕事中なら変な事聞いても、最悪殺されることは無いだろうし……)

「……うん……なら、依頼を明日とってくる……」

「ああ。俺に出来る限りはやるよ」

「……ごめんね……信頼してる……」

 

 すっと差し出された手に、俺は握手をして答える。

 ……その握り返された力が思った以上に強くて折れるんじゃないかと思った。

 その力強さにザミアの期待を感じつつ……力が入るくらいには困ってたんだなぁと思うのだった。

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