闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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月曜日更新はキープしたい所存。木曜日~金曜日に2話目は更新


第十八話 闇深きパーティーと雪辱

「リベンジ……か」

 

 冒険者には、発見者が依頼の優先権を貰う事ができる制度がある。

 最初に発見した渡りや強大な魔物。そういった存在を倒す事は名声に繋がる。だが、時には状況に応じてその魔物を見逃す必要があるときは多い。

 だからこそ、もう一度のチャンスを。発見者が雪辱を注ぐ機会を設けられているのだ。

 ――だが、コレにはリスクも当然ながら存在する。

 

(時間の制限……依頼を受けてから一週間以内に討伐が認められなければ、失敗と見なして他の冒険者へと依頼が渡る)

 

 当然の措置ではある。魔物の被害は決して甘く見られるようなものではない。

 あくまでも、これは冒険者に対する公平さの保証でしかない。一週間と言う期間も過去の事例から「優先権を持つ冒険者が犠牲になることで待つ事ができる時間」らしい。

 ……というわけで、そういう話が広まっている冒険者の中では優先権の行使がされることは少ない。一週間という短い期間での時間で準備をした上で、その魔物を倒さなくてはならない。そして、報酬の金額が上がったり、これ自体が評価に繋がる事も無いのだ。

 

(あくまでも冒険者にチャンスの機械を与えるため……)

「……断りたいなら、構わない」

 

 ザミアはそう言って俺達の表情を見る。

 だが、先程の決意からこちらに断る気などない。リズを見る。

 

「…………」

 

 あ、これ多分優先権のシステム自体分かってねえや。見慣れた俺なら分かる。この表情は「よく分からないけども、仲間が良い感じにしてくれるので大丈夫か」の顔だ。

 リズには後から説明するとして、アメリアをみる。

 

「…………」

 

 あ、これは空気を読んで断らないけど「ええ~? 一週間の期限制限受けるの? ダラダラしながら魔法研究しつつ読書の時間取れてないのに~! 折角、あの男が変なこと言ったから特訓と称して優雅な自堕落生活を送る算段があったのに~!」と言う顔だ。

 ……まあいいか。こういう時に譲歩すると多分調子に乗るし……というわけで、ミライを見る。

 

「…………」

 

 ……顔が青くなっている。あ、もしかしてアレか? 教会の方に説明とかしないといけないけど、他の約束とかと重なりそうでこの状況でどうしようと悩んでいるってことか?

 なので、こっそりミライに耳打ちする。

 

(……ラミィの方で、問題あるのか?)

(あ、ユーマさん。は、はい……その、教会で受けなければいけない授業の時間がありまして……それが四日後に……)

(了解)

 

 ……まあ、大丈夫だ。なんとか説得してみよう。

 

「ザミア、多分問題はないと思うが……流石に、今日は色々とありすぎた。整理するのに時間もあるし、五日後から行動開始でどうだ?」

「……時間は大丈夫?」

「手放しに大丈夫とはいえない……地中を動き回るサンドワーム。現地に行って発見して倒せるかどうか……そういう部分まで考えるなら厳しいだろうな」

 

 万全の準備を整えることを考えても、かなり制限は多い。

 冒険者組合の準備した依頼であれば、最初からこちらの実力や状況を把握した上でのスケジュールで渡される。だが、この一週間はあくまでも冒険者側のワガママによるもの。場所も分からない魔物を探して討伐しなければならない。今まで以上にシビアだ。

 

「――それでも。いや、だからこそ準備が必要だ。直ぐに行動するのは大切だが、それじゃ今回と同じ結末になる可能性が高い」 

 

 確かに不意打ちだった。だが、情報は足りず準備も足りない。

 もしも、あのサンドワームに別の手段の能力があれば? サンドワームだけで、他にも魔物が居る場合は? もしも、もしも……そんなことは考えれば無限に湧き出てくる。

 だから、五日。五日目に出発をして創作して見つけて討伐……うん、ギリギリすぎるけどこれがいいだろう。

 

「四日で全員準備をして、五日目に出発だ。それが多分いいんじゃないか?」

 

 俺の言葉に3人は頷いた。

 ……リズはちゃんと準備が出来て、束の間の休息をアメリアは取れる。ミライは授業を受けられるので、これが一番いいだろう。もうちょっと早いほうが余裕はあるんだが……

 

「……ありがとう。ユーマ」

 

 と、何故かザミアは俺に感謝する。

 

「俺、何かやったか?」

「……私は冷静になれない。だから、助かる」

 

 ……ザミアからすれば冷静では居られないだろう。

 仲間が侮辱されてしまった。そして、目の前にはその切っ掛けになった渡りの魔物が待っている。であれば、今すぐにでも行動に移したい。

 だからこそ、彼女はストップという一言をかけたことに感謝したのだろう。

 

「気にしないでくれ。俺の仕事だろ?」

 

 ただ、俺がやるべき仕事をしたまで。

 俺の言葉を聞いて、ザミアは小さく微笑んだ。

 

「……それでも、ありがとう」

 

 そして、全員に告げる。

 

「……五日後。渡りのサンドワームを討伐する。全員、準備を」

 

 その言葉に、全員が応えた。

 

 

 ここで終われば綺麗だったのだが……

 

「――あの……せめて話を通してから……」

「いや、すいません……でも、一応ルール的には大丈夫ですよね?」

「そうなんですが……殆ど今で使われていない規則ですので……その、手続きが……」

 

 ……受付嬢さんと俺は揉めに揉めていた。

 ザミアは先に帰宅して貰った。面倒な手続きは俺がやっておくと言ったのだが、なんとなく嫌な予感がしたのだ。

 

(俺が五年間冒険者やってる時、優先権の行使なんて一回聞いたかどうかだったからなぁ……)

 

 まあ、実際敗走しても生きてれば冒険者は儲けもの。雪辱よりも、明日の冒険のために一日でも長く生き残る事。まあ、そんな訳なのでわざわざ挑む冒険者なんて言うのは少ない。

 つまり……いきなり言い出しても対応出来ないみたいな話になるかもと思ったのだが、予感は当たっていた。

 

「注意点として……冒険者組合としては、こちらの依頼に関する正確な評価が下せません。渡りや冒険者を襲った個体を取り逃して、放置すべきなのかの判断も出来ませんので。そのため、こちらには同行者として我々の組合から調査員が派遣されます」

「……あー、なるほど。そりゃそうか」

「調査員は手を下さず、状況がどうあれ現場で起きた被害や個体の強さ、そして冒険者たちの評価を下して帰還します。例えば、死にそうな怪我をしたとしても調査員は帰還してしまうと言う事は念頭に入れておいてください」

「ああ、分かった」

 

 当然の措置だ。調査員というのは戦闘力を持たない冒険者のようなものだ。

 危険な未開地域へと踏み込み、時には発生した魔物の情報を調べて持ち帰り居住区域の平和を守る存在。エリートであり、情などで動かないことでも有名だ。

 依頼中に死にかけていた冒険者の目の前に調査員がやってきたが、調査員は冒険者が死にかけていた情報を持って一人で帰還し、その後に救助隊がやってきた……なんて逸話もある。

 

「他にも注意点は多くありますが……ですが、『夜明けの月』としての決意は固いんですよね?」

「ああ。多少の理由じゃ諦める事は無い」

「……分かりました。それであれば本日より一週間以内に討伐の優先権が渡されます。この間にこちらの魔物に関する依頼は冒険者組合からは申請されません。また、討伐不能となった場合にはペナルティが課せられます。よろしいですね?」

「ああ。分かってる」

 

 当然ながら、ペナルティは重たい。

 失敗すれば冒険者の等級を下げられた上で被害が起きた総額の賠償義務が生じる。だからこそ、命懸けで戦いに行く。そして、安易に使われないわけだ。

 ……あれ? ザミア達知ってるよな? 後で聞いておこう……まあ、大丈夫だろ。

 

「冒険者組合の受付としては、あまり歓迎する事ではありません。こちらを受けるという事は冒険者さんに、無理に命を賭けて危険に向かわせてしまうことですから」

「……すいません」

「――ですが、『夜明けの月』を担当している人間としては……この選択を間違いとは言いたくはありません。自分自身にプライドを持っている冒険者さんは……とても素敵だと思います」

 

 そう言って微笑んでくれた受付嬢さん……なんというか、一人でも俺達の味方がいるという事実は少しだけ気分が軽くなる。

 間違っているとしても、俺達は認められているのだ。

 

「では、ご健闘を祈ります」

「ありがとう」

 

 そして、帰ろうとして誰かにぶつかる。

 

「っと、すいません」

「あれ? あんたは……」

「……うお」

「姉御と一緒に居た奴じゃないか! いやあ、奇遇だな!」

 

 運が悪いのか何なのか……平和に帰ろうと思っていたら、にこやかにソロウが俺に話しかけてきたのだった。。

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