闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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第十九話 闇深きパーティーと人違い

「いやあ、他人と飯を食うなんて久々だなぁ。こっちは知り合いが居ないからさ。ユーマだったよな? ここは奢りで良いぜ。先輩冒険者だから、このくらいはしておかないとな」

 

 あの後、俺は親しげに話しかけるソロウに社交スイッチが入ってしまって色々と話をしてしまった。

 まあ、情報収集のためによく冒険者の中に飛び込んでいくことが多かったのだが、何やら気に入られてしまい気付いたら酒場に連れてこられてしまった。しかも、俺が昔使っていた安い居酒屋ではない。高級なレストランのような店だ。正直に言って据わりが悪い。

 

「……あー、ソロウだっけか? こんな店に連れてきてくれてありがとうな」

「ああ、別に気にしなくて良いぜ。銀等級冒険者でも店に関しては人によるからなぁ……中には稼いでても安宿で酒を飲むのが好きって奴もいるから、むしろユーマがこういう店が嫌いって言われたほうが困ってたところだ」

 

 そう言ってカラカラと笑うソロウ。

 ……なんというか、冒険者の中でも付き合いやすいタイプだ。

 

(銅級以下は純粋に性格悪い奴らが多かったけど、俺が今まで出会ってきた銀等級冒険者っていうのは別の意味で大変な一癖も二癖もある人が多かったからな……)

 

 コインの裏表で話すかどうかを決めるような冒険者だったり、冒険者組合の受付さんで誰が好みか聞いてくるような冒険者だったり……それでも取っつきやすい一部なのだから終わってるな。

 

「……で、俺となんで飯を?」

「ん? 姉御と一緒のパーティーに居る奴なんだろ? そりゃ、見極めなきゃダメだろ」

 

 ……うーん、やっぱり前言撤回していいか?

 そうだ、別に表面上は良くても付き合いやすいとかじゃなかった。常人では計り知れない物差しで行動するタイプだったわ。

 

「俺の仲間には、好き勝手言ってたのに俺には見極めが居るのか?」

「そりゃそうだろ。あいつらは足りなさすぎる。まあ、足りないだけなら補えばいい。それも出来ねえ奴ならさっさと冒険者なんて辞めた方がマシだ」

「……それはそうだな」

 

 冷たいようだが、それは否定出来ない。

 冒険者とは、上澄みになれば確かに他人に誇ることの出来る職業だ。だが、裏を返せば銅級冒険者として一生を過ごすものも少なくはない。

 そして、多くの若者がどこかで見切りを付けて冒険者を引退していく。スキルを活かすことの出来る職業につくものもいれば、己の興味がある分野で働くものもいる。決して人生は冒険者だけではないのだ。

 

(まあ、異界人は冒険者くらいしかないけどな。わはは)

 

 言ってて悲しくなってきた。

 

「んで、ユーマよ。あんた異界人だろ?」

「えっ? 知ってたのか?」

「いや、俺も初めて見るし聞いたことはなかった。だけど、なんとなく特徴に当てはまるのがそのくらいしかなかったからな」

 

 それは初めての感想だった。異界人だと言われないと気付かれない事は多かったんだが……

 

「なんつーか、魔力がねーだろ? すっげえ気味悪いんだよ。でも分かりやすい違いじゃねーから、分かりづらいって感じで」

「どんな感じなんだ? 魔力なんて言うのが生まれたときからなかった俺からするとピンとこないんだよな」

「両方の手が右手だとか、まばたきを一切してねーだとか、物音が一切聞こえねーだとか……分かりやすい言い方だと、限りなく人っぽい何かが人のフリしてるみたいな感じだな」

「……そりゃ気味悪いな」

 

 ちょっとショックだが、ソロウの説明は分かりやすい。

 確かに俺たち異界人にとって魔力は生まれつき存在しないが、こっちの世界であれば持って当然のものだ。それは人間としては目に見えない何かが欠落してるように見えるんだろう。

 

(あー、なるほど。それで納得した)

 

 異界人として冒険者になったばっかりの時、裏路地でその日暮らしをしていたとき……そういう時に、よく感じていたのだ。目立たないようにしていても、何故か俺は良く絡まれていたのだが……異界人だから異質だという感覚が原因だったのか。

 謎が解けてスッキリした。いやまあ、それだけなんだが。

 

「まー、それだけじゃ無いんだが」

「……? それって……」

「お待たせしましたー」

「お、料理が来た。食おうぜ」

 

 気になり、聞いてみようかと思ったタイミングで料理がやってくる。

 目の前に来た美味そうなメニューを前に俺の気になる疑問など小さいものだった。

 

 

 ――そして、美味い飯は気分を良くする。

 

「はぁ……美味かった」

「確かにまあまあ良い飯だったな」

 

 良いレストランだった。

 コースメニューは食い終わり、後は飲み物を飲みながらゆっくりと話す時間だけだ。

 ……って、すっかり飯食って満喫したな。俺。

 

「んで、聞きたいんだけどさ」

「ん?」

 

 逆にソロウから質問をされた。

 いや、そりゃそうか。呼ばれたのは何か聞きたい事があるからだ。うーん、飯に釣られたせいかボケてるな。

 

「何でお前、冒険者やってんの?」

「……そういえば、聞かれたな」

 

 苦い記憶……と言うにはちょっと早いか?

 だが、それでも俺達にとっては記憶に新しい。この男に言われた言葉は間違いなく俺達のパーティーの欠点を……問題を指摘していた。

 

「だから、俺が冒険者しか……」

「んなわけねーじゃん」

 

 ――バッサリと。

 ソロウは、俺の欺瞞をぶった切った。

 

「立場が必要? 今のアンタには必要ねーじゃん。元でも銀等級冒険者名乗りゃ、それだけで社会的な信用はバッチリだ。いや、そんなのだってどうでも良いな。銅級冒険者として五年も働いてた? そりゃ立派だ。逃げずにそんだけ生き残って戦い続けてきた? 俺だったらビビるね。スキル持ちでも一年生き延びて続けてりゃ、マシだってくらいなのに?」

「…………」

「しかも、アンタ。仲間一回くらいは失ってるだろ?」

「……それも、分かるのか?」

「目を見りゃ分かるよ。何か失ったら、そんな目になるんだよ」

 

 そう言ってカラカラと笑いながらも、ソロウの目は笑っていない。

 この男は、俺よりも深いところで戦い続けてきたのだろう。だから、俺は自分が薄っぺらくなったような錯覚さえ覚える。

 

「なあ、聞かせてくれよ。なんで、スキルも無い。命をかけ続ける? 仲間を失って、命がこの食ってた肉よりもあっさりと消えちまうって知ってるのに冒険者続けてるんだ?」

「…………」

「姉御のパーティーで、アンタだけは違った。いや、アンタと姉御だけだ。アンタに俺は興味がある。なあ、なんでだ?」

「俺は……」

 

 逃げられない。ソロウの表情に迷いはない。

 ――こんな店に、知り合いがいるわけもない。だから……だから、俺の持っていた本心が出てくる。

 この男を前にして隠せない。この、俺を見透かした狂った男を前に。

 

「――夢が、見れたんだ」

「夢?」

「俺が何かになれる。そんな夢が」

 

 命を賭けてきた。

 道を解き明かしてきた。

 知らない世界を見てきた。

 積み重ねてきた。

 

「俺は――ただ、冒険者だったんだ。死にかけて、自分で死のうとしても……夢を追いかけられるなら、それでいいってくらいに。冒険者としての未来がなけりゃ、死んでも良いってくらいに」

 

 俺の仲間はうだつの上がらない底辺冒険者だった。それでも、俺はあいつらと夢を見れた。

 ――未来があった。それは、可能性が低くても……俺が見ることが出来た夢だった。冒険者として、何かを成し遂げる。そして……いつか、帰る。

 

「だから、このパーティーは一蓮托生だ。俺の夢を。冒険者として、成し遂げて……いつか、俺の世界に帰る。それは、夢だ」

 

 誰にも言わなかった夢。

 冒険者じゃないと叶えられない。そんな夢を。

 

「……は、はは。すげえな。大抵は諦めるもんだぜ?」

「一回は俺も諦めたよ。でも、拾われて出会ったんだ。もう一回夢を見ても良いだろ」

 

 じっとソロウを見る。

 ソロウはにんまりと笑った。

 

「ああ、なるほど。分かった。姉御とアンタだけだよ。冒険者に狂ってたのは! ああ、最高の出会いだ! はは、不合格なカスばっかりかと思ったが……姉御の側に、こんな面白い奴が居てくれて嬉しいよ!」

 

 狂人の目をした男がそう言って俺の目を見つめる。

 その目は同胞を見つけたと言わんばかりの顔だった。

 

「安心したぜ! あんたがいれば、姉御は安心だ! なあ、ユーマ!」

「……あ、いや」

 

 まず姉御ってのが勘違い……

 

「んじゃ、ここは奢りだ。期待してるぜ? だって、優先権使うんだろ? 楽しみに見てるからな!」

 

 そう言って上機嫌に帰っていくソロウ。

 ……取り残された俺は天を仰いだ。

 

(……摂取したカロリー、全部消費したわ)

 

 隠す本心まで曝け出して、ヤベ-奴の相手をする羽目になるなんてなぁ。

 

「……帰るか」

 

 折角のご馳走だったのに、帰り道では味が思い出せなくなっていた。

 ……しかし、ザミアに対する勘違いをどこかで訂正すりゃ良かったなぁ。

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