闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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第二十話 闇深きパーティーとやるべき事

「うおっ!?」

 

 ソロウとの食事のあと、疲れて下手に帰宅しようとしたら部屋の扉の前でザミアが待っていた。

 一瞬、俺のことの命を狙いに来た刺客か何かかと思った。こんだけ長い付き合いでも疲れて一瞬誤認してしまうのは何というか見た目の強さを感じる……じゃなくて。

 

「……ユーマ」

「ザミア、どうしたんだ? もしかして、随分待たせたんじゃないか?」

「……そんなに待っていない」

 

 ……うーん、なんだろうか?

 いつもであれば、ザミアが相談ということで「あの時こうしていれば……」という話をしに来ていた。だが、どこかキリッとした……覚悟を決めた顔だ。だから最初に刺客かと勘違いしたんだろう。

 

「それじゃあ、部屋の中に……」

「聞いて欲しい」

 

 前置きなく、ザミアはそういった。

 周囲に人は居ない。それでも、ザミアが人前でこんな風に俺と話すなんて……

 

「きっと、この短い時間では、足りない」

「……足りない?」

「冒険者としての、私達は未熟だから。きっと、皆に足りない何かを伝えることは難しい。自分だけで手一杯」

 

 ――それは俺がうっすらと考えていたことだ。

 マンドレイクの時とは違う。かつて、酒場で銀等級冒険者に聞いた話だ。

 

『決められた場所に生息してな? 情報の出揃っているモンスターを倒すのは冒険者として見ちゃひよっこなんだよ』

 

 酒を飲むと口が軽くなるので、よく小銭で奢っては話を聞いていた。その人も、他人にこういう知識を教えるのが好きだったからかよく機嫌良く教えてくれていた。

 

『冒険者ってのは、まだ見ぬ何が待ってるのかも分かんねえ場所を切り開いていくんだ。んじゃ、何があっても生き延びる。んで、倒せるなら倒す。そういう判断を常に迫られる職業ってことだ。時には宝物だって落ちてっからな。あ、そういや言ったか? ほれ、前に冒険に行ったときに握ったら柔らけー木だと思ったんだけど、実は……』

 

 ……ちょっと脱線したが、その時に言っていた。

 ただ、指示をされた場所へ倒しに行くなら街の治安を守るために常在している警備兵で十分なのだ。本懐は未知を切り開き、未知に挑み、対応する仕事。だからこそ、あらゆる環境で適応するために斥候が。どのような相手にも対応出来るように魔法使いが。危険な怪我や危機からも生還出来るように聖職者が必要とされている。

 冒険者組合が定めるパーティーの規定は、先人たちが積み重ねてきた血と犠牲から成り立っているテンプレートなのだ。

 

「リーダーとして、私は間違えないために……頑張る。でも、他の皆は違う。ただ任せるだけじゃなくて……誰かに、間違えないように手を引いて欲しい」

 

 きっと、ザミアが見ている天辺は俺と似ているのだ。冒険者というもので成り上がるという目標。それはソロウが指摘したように……俺とザミアが根っからの冒険者なのだ。

 

「リーダーとして……頼みたい。ユーマ、次の優先権を使った討伐のために……フォローをして欲しい」

「……誰のだ?」

「私以外の全員を。四日後、誰も死なないために」

 

 ……ザミアの無茶な要求。でも、なんだろうか? 不思議と、俺は嬉しい気持ちになった。

 俺に弱音を吐いて、相談に乗って貰う事は多かった。だが、それはあくまでも相談相手としての扱いだ。言ってしまえば、俺の役割は別に冒険者として求められているものではない。出来る限りを俺が勝手にやっていただけの話。

 気分的なものといっても間違いではない。なんなら、ただ無茶を言われているだけだ。それでも、ザミアにとっては俺は、無茶を頼むのに値する仲間として認識してくれているという事実。それが多分、嬉しいんだ。

 

「分かった」

「……いいの?」

「ああ、もちろんだ。多少無茶な頼みではあるが……仲間だし、ザミアからこんな風に我儘を言われたことは無かったからな」

「う……ごめん……」

 

 ションボリとした顔をするザミアに俺は笑みを浮かべる。

 

「いいや、気にするな。俺にしか出来ないって思ったんだろ?」

「……そう。ユーマにしか頼めない。ユーマじゃないと……出来ない」

 

 真っ直ぐな目で見据えられる。

 なら、やはり答えは一つだ。

 

「任せろ。絶対に倒そうな」

「……うん。倒そう」

 

 確かに今日はソロウとの話で疲れたが……コレを見れば、明日からも頑張ろうと思える。

 そして……

 

「すいません、ちょっとよろしいですか?」

「え?」

「我々は警備隊のものです。こちらの宿に通報がございまして……」

「……え、あー……」

 

 俺が勘違いしてたくらいだから、多分知らない宿の客から見たら俺が殺される可能性あると勘違いするよなぁ。

 そう思いながら、ザミアと共に職務に忠実にやってきた警備兵の方々へ必死の説明をして取りなすのだった。

 

 

 ――ザミアとの約束から次の日、時間が足りない中で俺が最初に話をするのはリズだ。

 

(斥候は、知識が重要になる……だから、多分俺が関わる重要度は一番高い)

 

 魔法使いや聖職者に比べれば俺の知識が役に立つだろう。

 

「よし、リズを――」

「なに?」

「うおあっ!?」

 

 探そうかと思って外に出たら、既にリズが宿の外で待っていて正直ビビった。

 え? 話聞いてた? いや、聞いてないよな……

 

「リズ……何で宿の前に?」

「護衛」

「……あー、そういえばその話あったな」

 

 ソロウの正体が不明だったのでリズが守ってくれるって話だったよな。

 ……でもリズのその日の気分次第っぽいので、あんまり頼れるって話でもないんだよなぁ。多分、うちのチームで一番自由な子だと思う。

 

「……私に用事?」

「ああ、リズ。四日後に向けてやることがある」

「やること?」

 

 リズは自分から動くタイプじゃない。これは本人の性質みたいなものだろう。

 だから、俺が彼女のために繋ぐのがいい。きっと、リズは仲間のためだったらきっと頑張ってくれるはずだ。

 

「ああ……斥候としての勉強だ」

「……べん、きょう?」

 

 ……あれ? あんまり乗り気じゃない感じ?

 素直なリズに拒否されると驚くくらいに動揺してしまう。俺、もしかしてかなり大変な事を頼んじゃった? って感じの思考になってしまう。

 

「……勉強をするのは嫌か?」

「べんきょう……何やればいいか分からない」

「え? あ、ああー……」

 

 山暮らし……しかも、リズが言うにはお爺ちゃんと二人っきりで暮らしていたリズ。

 多分ちゃんと勉強とかしてない。お爺ちゃんから生きるための知識を教えて貰っていたくらいだろう。そういう意味では勉強という概念はなさそうだ。リズの爺ちゃん、とりあえず教えて覚えたらオッケーというタイプっぽいしな。

 

「あー、まあ簡単に言うと斥候の先輩に話を――」

「難しい。とても」

 

 迷いがなかった。食い気味に断られた。リズ、こんな感じに答えることあったんだな。ちょっと今まで見せてなかった一面でビックリしたぞ。

 

(……お爺ちゃんの遺言で誤魔化されてたけど……リズもザミアに負けないくらいにコミュニケーションに問題があるよな)

 

 俺とは普通に話してるが……ザミアとの違いは、初っぱなのコミュニケーションを拒絶してるところかもしれない。

 うーん、なんとかしなければとは思うが、まあ今は良い。

 

「そういうと思って、用意しておいた……俺が過去に聞いた先輩冒険者からのアドバイスだ!」

「おー?」

 

 取り出した秘密ノートを見せると、パチパチと拍手される。

 ……リズがキョトンとしてるからちょっと恥ずかしい。

 

「俺が五年間で聞いたことを纏めた。まあ、実践できない知識レベルだし、俺には無理だって諦めたのが多いんだけど……リズなら使いこなせるはずだ」

「……」

 

 この五年の知識を書きだしていた。異界人である俺に出来る事を探して色んな冒険者から纏めた知識。コレがいつか役に立つかと思って纏めて書きだしていたのが功をそうしたな。

 ちゃんとこっちの言葉で書いてある。

 

 受け取ったリズは難しい顔をしている。

 

「どうした?」

「……字、読めない」

「……あ」

 

 そういえば教えるって言ってたの忘れてた。

 

「……よし、分かった。ならこの四日、俺が文字を教えながら知識を教えるで問題無いか?」

「ん」

 

 ……まあ、最初の一歩は挫けたがリズの斥候としての実力は他人を見た独学だ。

 山暮らしから来る経験があるとはいえ、斥候としての基礎的な知識や、やり方は色々とあるのだがそういったものを学んでいないのにこれだけ出来るのはとんでもなく優秀だ。

 だが、斥候は間違えたときは全滅の危機もある。だから、俺が知ってる程度の知識などはすぐさま覚えて飛び越えて貰うしかない。

 

「それじゃあ時間を決めて教えるけど……」

「あ」

「ん?」

「大変、お買い物。今日はとても安い」

「んん?」

「日が暮れたら戻ってくる。ユーマ、頑張るね」

 

 そう言って気付いたら目の前から消えていたリズ。

 ……うん、自由だね。あの子。

 

(……まあ、日が暮れたらって言ってたし、その前にアメリアとラミィに会いに行くか)

 

 ちょっとだけ、大丈夫か不安になりながら俺は彼女たちを探しに行くのだった。

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