闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜 作:フレラガ
『グオオオオオオオオオオオ!!』
『GIAAAAAAAA!!』
襲われたジャイアントベアーだったが、食事で油断をしていたとしても魔の森の生態系においては上位の捕食者に位置している。
奇襲を仕掛けてきたサンドワームに対して、宙空でグルンと回転しながら体勢を立て直す。
「どうするの、ザミア? あたしが今横から魔法を打ち込んでも良いけど」
「……ダメだ。このタイミングは、むしろ私達が危険になる」
「分かったわ。なら、タイミングは待っておくわね」
食らいつこうとする、まるで巨大な穴のような口にジャイアントベアーは己の剛腕を打ち付けて抵抗する。だが、その際に食いちぎられて振るった腕を失ってしまう。
衝撃に上体を揺らしながら方向転換をして地面に潜る。そのまま地面へと落下したジャイアントベアーだが、ダメージを受けた様子はない。
――すかさず、地中から強襲され、ジャイアントベアーは逃げるのは無理だと判断し、残った前腕を振るって抵抗をする。
(……怪獣大決戦だな)
俺が近寄れば粉微塵になるだろう戦い。
恐らく腕さえ残っていれば良い勝負だっただろうが……最初の強襲で失った差は大きい。そして、サンドワームによる三度目の突撃によってそのまま回避出来ずに直撃したジャイアントベアーは地中の中へ引きずり込まれていく。
「――アメリア!」
「了解!」
――その瞬間に、アメリアは高速で詠唱を唱える。
「【焦点・風脈】」
初めて聞いた詠唱。
その唱えた詠唱のあと、アメリアの杖から一筋の疾風が吹きサンドワームの体に吹き付ける。
……だが、それだけだ。風の威力が足りていない。サンドワームの体を撫でるだけだ。
「重ねて、『炎天』!」
瞬間、風を通るかのように光が真っ直ぐに突き進み――
『GYUAAAAAAA!?』
その光が、サンドワームの体を貫いた。
光線によってサンドワームの体の一部は欠損して悶えるように地面へと潜っていく。
「ぜぇ、ぜぇ……せい、こう……!」
「アメリア、何やったんだ!?」
「別属性の……魔法で道作って……熱の光を……通したの……」
……おい、なんかぐったりしているんだが。
「いや、大丈夫か!?」
「流石に、疲れる……魔力の消費……すご……」
(……微妙に素が出てないか?)
どうやら魔力の消費が多いらしく、乱発は出来ないだろう。だが、それでも十分だ。
「――好機だ!」
ザミアの言葉に、リズとザミアは飛び出していく。
地面を揺らしながら地上へと上がってくるサンドワーム。振動を感じながら、リズはナイフを地面に投げ付ける。だが、これは攻撃では無い。単なるマーキングだ。
「そこ」
「了解!」
地面が割れる。一寸の狂いもなくナイフを中心にサンドワームが地上へと飛び上がる。
(……こりゃ、凄いな)
リズは俺の教えた知識を吸収して自分なりに応用している。
今回のジャイアントベアーを囮にしたときのように、魔力を使うことを覚えたリズがやっているのは敵を操る行為だ。
(あのナイフに魔力を込めて投げてるから、勘違いさせている……上手く成功したな)
魔力を感知しているのなら、魔力の込めた何かを投げれば攪乱できるんじゃないか? そういったアイデアをリズに少し話した。
だが、実践が出来るのか分からずあくまでも可能だったら幅が広がる程度の話だったが……ちゃんと覚えて実践してくれたらしい。
「……喰らえ!」
そして、出撃地点が分かれば……横っ面をまるでバッドでボールを打つかのように、ザミアの大剣が横薙ぎにして切り裂く。
『GYUGUUUUUUUUUUUU!!!』
不快な音をさせながら身を捩らせてザミアの大剣から逃げていく。体液を流しながら、地面へと潜ろうとするがアメリアの初撃と、ザミアによる斬撃をまともに受けたサンドワームは上手く潜ることが出来ずに地上をのたうちまわる。
「凄いです! ザミアさんたちで、あのサンドワームを倒して……」
「……おかしい」
「妙」
だが、ザミアとリズは警戒を解かず……むしろ、警戒心を強くしている。
「……簡単すぎる」
「アメリア、大丈夫?」
「なんとか、調子は戻ってきたわ。あたしも、変だと思う」
初撃でサンドワームに致命的な一撃を与えたアメリア自身も違和感を持っているようだ。
「あの一撃で、ダメージが入りすぎてたわ」
「……つまり、これは狙いの個体じゃない?」
彼女たちの話を聞きながら、俺は脳裏で思考を回す。
(渡りだとして……移動をする理由。餌が無くなったことだが……なんで、魔の森を選んだ?)
サンドワームの成体に詳しいわけでは無いが……火山地帯や荒原地帯。どちらかがサンドワームに適した環境だ。太湖は難しいにしても、わざわざ適しているとは言い切れない森林地帯にやってきたのは……本当に、餌を求めただけか?
(考えろ……考えろ。俺の仕事は、それだ。思考を回せ)
想定以上に弱い個体……ジャイアントベアーと戦っていたが、考えて見れば先に攻撃を仕掛けて良い勝負になったというのはおかしいのではないか?
つまり……サンドワームは弱い個体だ。だが、負けたからここまで流れてきたでは適応しきれない魔の森を選ぶ理由にならない。何よりも、奇襲を仕掛けてきたあの賢さを考えれば弱すぎる。
「――つがいだ!」
俺は、可能性を叫ぶ。
「もう一匹いる可能性がある! リズ!」
「……確かに、いる」
森の奥を見る。未だ叫ぶジャイアントワームの耳障りな絶叫。
だが……これは、仲間を……自分のつがいを呼ぶための呼び声だとしたら?
「ミライ!」
「はい! こちらへ!」
全員がミライの元へ集まり、ミライは詠唱をする。
「【壁よ、壁よ。我らを守り給え】!」
――壁へと直撃する。
見れば分かる。先程のサンドワームよりも強靱な肉体をした……俺達に襲いかかり、喰らおうとしたサンドワーム。
『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!』
――つまりは、先程までは前哨戦であり……これから、目の前のサンドワーム徒の戦いこそが本当のリベンジマッチとなるわけだ。
「……いこう」
ザミアの一言で、戦いの火蓋は切られるのだった。