闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜 作:フレラガ
『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
――サンドワームは、先程の弱い個体でジャイアントベアーを食おうとしたことで分かる。大食漢で燃費の悪い魔物だ。そんな魔物がつがいとなった。渡りとなったのは子供を作るため。
己だけ生きる分では足りずに、豊富な餌を求めて火山や荒原ではなく潤沢な生態系をした森林へとやってきた……なるほど、それであれば説明は付く。
(……とはいえ、さっきみたいな簡単な話じゃない)
俺達を襲ったサンドワームは、ソロウに一撃を食らって撤退をしていた。本来は先程のように奇襲をして狩りをする生態の魔物だ。だから正面からの戦いは得意ではないだろう。
……しかし、それは空腹であればの話だ。
(間違いなく、あの個体は奥からやってきた。つまり……捕食して魔力を潤沢に蓄えている可能性が高い)
魔物は魔力を糧に生きる。そして、それは個体の強さや生命力に直接的に影響を与える。
俺達を襲ったときのような罠は、少ない魔力で狩りをして餌を食うためだろう。逆に言えば、このようにつがいの声を聞いて正面からやってきたという事は、それだけ潤沢な魔力を喰らって最高のコンディションになっている可能性が高い。
『GOAAAAAA!!!』
ミライの障壁は破るのは困難と見れば、尻尾を振るって俺達の足場を崩そうとする。
「……陽動に出る」
「手伝う」
ザミアとリズが障壁から飛び出る。ミライの魔力は無限ではない事に加えて、サンドワームは大地を荒らすことで自分の得意な状況に持ち込もうとしていた。
こちらから打って出なければ、不味い状況だった。
「……っ!」
『GUOOOOOOOOO!!!』
サンドワームは地面に潜らずに、まるで特急列車のように真っ正面から挽き潰そうと真っ直ぐに襲いかかる。
ザミアは正面から受け止め、その進行を押しとどめた。
「ぐっ……!」
しかし、当然ながら体格の違う魔物の衝突を受けて無事では済まない。
――しかし、俺達にはミライがいる。
「【我らと歩みし大いなる力よ。かの者に力を与えたまえ】!」
詠唱をすると、魔法によって押されていたザミアが拮抗し始める。
「――はぁ、はぁ」
(ミライの強化魔法って奴か……!)
肉体を硬くするだけではない。魔力に酔って肉体の補佐をして更なる力を出したりすることも可能らしい。
……欠点は、他人に魔力を送り続けているミライは動けず、更に常に魔力を消費し続けていることだ。
『GIGUUUUUUUUUU!!』
消耗を避けて、諦めて一度地面へと潜るサンドワーム。
ミライは魔法を切り上げ、息を上げる。
「……硬い」
「多分、餌を食べてきてる」
リズの指摘通り、やはり魔力を十分に補給してきたようだ。
……だからこそ、渡りは恐ろしいのだ。餌を豊富に食べて成長した魔物は、一騎当千とも言うべき力を持っている。それこそ、徒党を組んだ冒険者でもあっさりと蹴散らす程に。
「ん」
リズは地面へ向けて何度もナイフを投げる。
……しかし、何かが違うのか首をかしげる。
「ゴメン。警戒された」
「……了解」
リズの言葉に、ザミアは一言返して構える。
先程のサンドワームと違い、完全に魔力を覚えられたのだろう。常にザミア達を狙い続け……こちらも危険な可能性がある。
「はぁ、はぁ……よし、魔法使えるようになったわ!」
先程まで消耗でへばっていたアメリアが声を挙げる。
「……どうすればいい?」
「座標を固定して!」
「……分かった」
たった一つ。しかし、何よりも難しいオーダーを受けてもザミアは一言そう答える。
地面から飛び上がったサンドワーム。しかし、その位置は本来の想定とズレが……
「うおおっ!?」
「っ!? 【壁よ、壁よ。我らを守り給え】!」
ミライが唱えると、俺達を守るように頭上に壁が発生する。
……そこに、まるで雨あられのように岩が降り注いだ。
(岩を噛み砕いて、石の雨を降らせるとか……賢すぎるだろ……!)
ザミアは大剣で受け、リズは素直に回避している。
しかし、それは防御でこちらから攻勢に出られない事を示している。
「また潜った」
リズの言葉の通り、サンドワームはまたしても地面へと潜っていく。
……消耗戦を仕掛ける事を選んだのか。
(……どうする?)
このままでは、ひたすらに岩を振らせ続け消耗を待たれるだろう。
なんなら、突然方向を変えて俺達を狙うかもしれない。
――奴を倒すためには、発想を考えなければいけない。
(まず、あいつは飛び上がって地面へ潜る行動を繰り返している)
水を泳ぐ魚のように、地中へ潜っては自分の位置を隠してこちらを狙い続けている。
魔力を十分に取り込んだことで、肉体の強度も跳ね上がっている。ただ、一撃を当てればいいわけじゃない。
(地中からの襲撃を予想するのは不可能……いや、待てよ?)
ふと、脳裏に浮かぶ。リズは回避していた。つまり……
「リズ!」
こちらに視線を向けた彼女に、伝える。
「次のタイミングで! 落下地点を、マーキングできるか!?」
「出来る」
ならば、俺が浮かんだ戦略を伝える。
「落下地点で、迎え撃とう!」
「……流石に、あの巨体を迎え撃つのは厳しい」
ザミアの言葉。戦略は計画倒れになりそうかと思ったが、ミライが叫んだ。
「――いえ、出来ます! 方法が、あります!」
「……なら、やろう」
ミライの言葉に全幅の信頼を置いて、ザミアは答えて剣を構える。
「でも、壁が……」
「……む」
それは、自衛が出来ないということだ。
降り注ぐ石。あれを防げなければミライもアメリアも魔法に集中出来ないだろう。
(……降り注ぐ石の雨をどうするべきだ?)
上空からひたすらに落下する石つぶて。
それを防げなければ、ミライもアメリアも魔法を中断されてしまうだろう。
(何か使えるものは……あっ)
――そこに転がっているソレ。
アレを使えば、石の雨を防げるかもしれない。
「俺がなんとかする!」
「……信じる」
その言葉に、ザミアはそう答えて走り出し……地面から飛び上がってきたサンドワームを追い詰める戦略を決行するのだった。