闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜 作:フレラガ
今週も忙しいため、少し怪しいですが頑張ります。
『GYUOOOOOOOOOOOOOO!!』
飛び上がってきたサンドワームは同じように、石を吐き出して俺達に降り注がせていく。
――直撃すれば無事では済まないであろう、重力を使った攻撃。
「うぐおおおおお!」
――ならば、俺が壁を作ればいい。
とはいえ、俺自身が肉の壁になるのは無理だ。強度が足りない。
アメリアとミライを守りながらも強度のある壁となるもの。それがどこにあるのか?
(お……もすぎだろ……!)
――食いちぎられたジャイアントベアーの腕の残骸。
そう、ジャイアントベアーは地面に飲み込まれる途中で攻撃によって体の一部を散らしていた。
俺は近くに落ちていた、ジャイアントベアーの腕を見つけ――それを盾にすることに決めた。
(だが! 強度もある! 衝撃も肉だから多少は吸収される!)
「せまい~!」
「我慢してくれ!」
「が、頑張ってください!」
「二人も、頼んだ!」
……まあ、流石に守れる範囲が小さいのでアメリアとミライが俺と密着する形になるのだが。
上から降り注ぐ石の衝撃は俺に伝わってきて、今にも潰れてしまいそうだ。それでも、無理矢理自分の体の痛みを我慢しながら彼女たちの傘になる。
多少、衝撃は感じているかもしれないが……それでも彼女たちは魔法に集中出来ているようだ。
「――そこ」
そして、上空から降り注ぐ石を回避しながらリズはナイフを投げる。
落下地点を予想したマーキングを見て、ミライは呪文を唱えた。
「【壁よ、壁よ。我らを守り給え】!」
そうして、落下地点に壁が張られた……斜めに向けて。
「滑り台の、要領です!」
ミライの言葉に、理解する。確かに自由落下をするサンドワームを正面から受け止めればミライの消耗は激しい。更に、硬い障壁にぶち当たったところで強大な魔物を多少は怯ませることは出来ても決め手になることはない。
――だが、斜めに設置した坂が存在した場合に、物理法則に従って落下するサンドワームはその坂に沿って滑り落ちるしかない。
『GIIIIIIIIIII!!』
障壁にぶち当たり……そのままのたうち回りながらも重力に従って滑り台を滑っていく。
「あぐっ……くう……!」
苦しそうな表情でも、壁を途切れさせることはない。
「――座標は終着点! そこまで誘導をお願い!」
アメリアはそう言って集中し、壁の終わりを見据えて詠唱を始める。
――だが、サンドワームも俺達が終点を攻撃地点にしようと考えていることは、分かっていたのだろう。本能的に体をくねらせて横に逃げようとする。
しかし、それを許さない一人の冒険者が壁を駆け下りながら弾き飛ばす。
「――あとは、任せて」
ザミアは、リズに先導して貰い壁を登って駆け下りていた。
それは、サンドワームを逃がさないようにするため。
「……逃がさない」
障壁による坂を駆け下りながら、サンドワームが逃げようとすれば攻撃で弾き飛ばしていく。
「そっちはダメ」
リズは気付けば、サンドワームの体の上に乗って頭を動かす方向を無理矢理制御している。
恐らく、魔力を込めたナイフによる誘導なのだろう。そして、気付けばあっさりと目標地点近くにまでサンドワームは近づいていた。
その時には一歩前に出たアメリアが、魔法の準備を終えている。
「二人とも! 回避!」
「わかった!」
「ん!」
アメリアの言葉に咄嗟に二人は障壁の上から飛び降りる。
「ミライ! 障壁を消して!」
「は、はい!」
そうして、ミライは障壁を消した。
――勢いを殺されたサンドワームは急に足場を失ってしまい、アメリアの狙う目標地点へと落下するだけとなる。
「【焦点・風脈】、【焦点・風切】、【燃焼】」
今までよりも、長く多い単語を繋げた呪文。
サンドワームの落下地点。風が目標地点への道を作り、そこに向けて風の刃が通っていく。
――それを追うかのように、炎による熱が空気を焼き焦がしてサンドワームに向けて放たれる。
『GIGYUUUUUUUU!!』
悲鳴を上げながらも、耐えきるサンドワーム。
まさか、これでも火力が足りていないのか? そう考えた俺の前でアメリアはどこか興奮したような表情を浮かべて、杖を掲げながら言葉を紡ぐ。
「熱量確認、風向調整、条件達成。目標地点補足。魔力充電。充電。充電――」
魔力を感じられない俺にですら分かる。
アメリアの周囲の空気が歪んで、熱を発している。もはや、太陽を直接呼び出しているのではないか? そう考えてしまう程の熱量。
そして、杖の先をサンドワームに向けた。
「――【灰炎・光熱】」
そうして、言葉と共に――閃光が走った。
目が潰れそうな程の光に、思わず目を閉じて……次に目を開けると、そこには倒れたアメリアと……目標地点で、焼け死んだサンドワームの姿があった。
……いや、焼け死んだというのは適当ではないかもしれない。何故なら、胴体に巨大な穴が生えて蒸発していたからだ。
「……って、アメリア! 大丈夫か!?」
慌てて起こすと、鼻から血を流して目を回していた。
「うぎゅう……」
「……気絶してるのか」
「えっと、魔力を沢山消費すると……なんて言ったらいいんでしょうか? 凄く長い距離を走るみたいな疲れ方をするんです。それでも無理をすると、体が悲鳴を上げて色々と不具合が出ちゃうんです」
ミライが説明をしてくれる。
……なるほど、なんとなく理解した。魔力は体力のようなものなのか。多い程有利なのも納得した。
「特に魔法という形で使う場合にはスキルのような形で消費するのとは違って、消耗が激しいんです」
「短距離を全力疾走をするか、普通に歩くかみたいな違いか?」
「あ、そうです! そんなイメージです!」
詳しく言えば違うのだろうが、魔力の無い俺に分かりやすい説明をしてくれたのだろう。
ザミアとリズもこちらへ戻ってくる。
「……お疲れ」
「お疲れ様」
「二人とも、ありがとうな……コレでサンドワームは倒せたか?」
ちょっとだけ、フラグっぽいなと思いながらも聞いてみる。
「……ん、多分大丈夫。死んでる。ああいう生き物を見たことがないから判断が付かない」
少しだけ困ったようにいうリズ。
……確かに、サンドワームに似ている生物なんているかと言われると難しい。異世界にやってきて思い出せる、近しい生き物はムカデみたいな生物ばかりだ。
「ユーマさん、大丈夫ですか? 先程、無理矢理持ち上げていましたけども……」
「あー、多分筋肉痛になるだろうけど……まあこのくらいはな」
正直めっちゃ重かった。だが、火事場の馬鹿力と言う奴だろう。
冒険者として長くやってきたのだ。魔力持ちのこっちの世界の人間ならもっと楽に出来るんだろうが……まあ、それでも守れたのなら十分だ。
「……しかし、まさかつがいだったとはなぁ」
本来であれば一匹を相手に、楽に倒せるとばかり思っていたが……まあ、そういうトラブルも冒険者にとっては付きものだ。
そうして、視界を死んでいるであろうサンドワームたちに向け……
「……ん?」
のたうち回っていたはずの、両断されたサンドワームがいたはずの場所を見ると……そこには、不格好な大穴が空いていた。
「あのサンドワームは……?」
その言葉に、全員が気を取られ――
『GYUGOOOOOOOOOOO!!』
地面を割って、ミライと俺の背後から半分だけの体になったサンドワームが飛びかかってきた。
咄嗟の瞬間の出来事に、誰も反応できず……いや、たった一人だけ、反応していた。
「……っ!!」
ザミアは、俺とミライを突き飛ばし――サンドワームからの攻撃を庇う。
「ザミア!」
前回は武器で無理矢理,飲み込まれるのを防いでいた。
だが、今回は俺とミライを守るために準備を一切出来ていない。そうして、そのまま彼女はサンドワームに飲み込まれ――
「……あれ?」
……その瞬間に、ぐしゃりと言う音と共にサンドワームの頭部が弾け飛んだ。
そして、サンドワームは完全に絶命し……そこには、ザミアを姉御と呼ぶあの冒険者。ソロウが立っていた。