闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜   作:フレラガ

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お待たせしました。
しょうしょう、忙しい日々が続いている為更新は止まっていましたが、徐々に再開していきたいと思います。


幕間3 広まる名声。新たな火種

 酒場はいつものように喧噪に包まれていた。

 しかし、今回の話題に関しては酒場にいる人間すべてが共通していた。

 

「聞いたか? ザミアたちが流れを倒したってよ」

「しかもアレだろ? 優先権を使って、発見したサンドワームをぶち殺したんだろ?」

 

 普段の噂話程度であれば、ここまで話題にならない。

 ――優先権の行使。コレは冒険者たちにとっては大きな意味を持つ。

 

「あんなの使って倒すくらい、実力があって誇り高い……こりゃ金等級だって夢じゃねえな! ま、俺はやると思ってたよ!」

「いやいや、俺の方が先だったぜ!」

「馬鹿、お前だけだと思うなよ? 俺なんて最初に見た時に一味違うって思ったね」

「まあ、そりゃ誰だってひと味違うとは思うだろ」

「違いねえな! あんだけ怖え見た目してるからな!」

 

 そう言って念のために周囲を見てから、ガハハと笑う冒険者たち。

 ザミア達が彼らの使うような酒場には来ないのは良く分かっていた。来るとしてもユーマくらい。そして、そのユーマのことをよく知っている彼らは勘違いされることもないだろうとご機嫌な様子を見せていた。冒険者にとっては酒の席というのは好き勝手を言いながら日々の疲れを癒す場所であり、馬鹿な話や下世話な話でも本人に直接聞かれなければ問題はない、なんて風潮がある。

 なお、本人が運悪く同席して喧嘩になる事も多いのだが……まあ、それも冒険者らしいといえるだろう。

 

「……しかし、渡りのサンドワームなぁ……ここいらも、結構ヤバくなってきたな」

「そうだな。俺たちなら……まあサンドワーム相手なら時間稼ぎくらいは出来るか?」

「お、多少は自信があるのか?」

「いいや、俺が食われて逃げれる時間だな。俺は図体はデカいから食うのに苦労するだろうし、酒浸りで呑んだら酔っちまうだろうからな」

「がはは! 胸を張っていう事かよ!」

 

 サンドワームを真っ向に打ち倒したザミアたちだったが、他の冒険者たちからすれば脅威度で言えばマンドレイクに勝るとも劣らない存在だ。

 その凶暴性は勿論のこと、視界外から強襲する脅威性……そして、体液によって守られた柔軟な皮膚は下手な武器では傷一つ付けられない。

 それこそ、相性次第では一般的な銀等級冒険者でも万が一があるレベルといえるだろう。

 

「んでも、銀等級上位の……ソロウだっけか? あんな奴も来てくれてるなら安心じゃねえか?」

「いやいや! あいつは別件で離れるってさ。まー、仕方ないっちゃ仕方ないんだけどな」

 

 多くの冒険者は自分が適した狩り場に定住する。

 例えばの話だが、魔の森では鳴かず飛ばずの冒険者が太湖では一流の冒険者として名を馳せる……などという事態もよくある。

 己の適正によって、狩り場を決めることも冒険者の資質である。故に、狩りが得意な冒険者が離れると管理区域が後退……時には居住区域を放棄する例すらもある

 

「『鉄の薔薇』はそろそろ遠征から帰ってくるらしいから、そういう意味じゃ安全かもな?」

「あー、『鉄の薔薇』か。結構前に遠征してから随分帰ってきてなかったからなぁ……というか、そうか。ユーマが生き残って帰ってくるちょっと前に遠征に出たんだっけか」

「指名手配の討伐対象だったからなぁ。そんな化け物を倒せるようになったなんて、俺達も鼻が高いな!」

「いや、お前何もしてねえだろ」

 

 笑い話をしながら、そんな風に街を離れている銀等級冒険者の話をしている彼ら。

 遠征にも様々な種類があるが……『鉄の薔薇』というパーティーが遠征に出た理由は直接指名をされての行動だった。

 

「火山地帯を根城にしてるサラマンダーの頭目個体討伐だったよな……まあ、確かに『鉄の薔薇』が適任だろうが、火山の方の冒険者共は自分たちで倒せなかったのかよ?」

「なんでも、冒険者の狩りから何度も逃げ出して適応した個体だったらしいぜ?」

「……マジか。本当にいるんだな。適応個体……噂話かと思ってたぞ。確か、冒険者に狩られかけて逃げた個体が適応して弱点を克服するんだったか」

「ああ。そんで、そうやって生き残ったら魔力が強化されて更に凶悪になるらしいぜ。最近はちらほら、適応個体の話が出てくるようになってるらしいぞ……まー、中途半端に取り逃しちゃダメってコトだな」

「ま、俺らの実力じゃ関係ない話だけどな!」

「違いねえ! まず俺らが適応しろって話だもんな!」

 

 そして話題は徐々に、冒険者の実力の話となってくる。

 ――誰しも、誰が強いかという話題は好むものだ。それこそ、冒険者などという職業であれば尚更だろう。

 

「んで、『夜明けの月』は今んところかなり上位だと思うわけなんだよ」

「いやいや、実績はあるが……『鉄の薔薇』もそうだが、他の『黒渦団』とか『スイレン』とかが居るだろ?」

「あー、そこら辺も確かに強いんだが……歴が長い所を比べるなら、成長性で上回りそうなんだよな」

「あー、確かにな。狩りの実績としても、地道な結果じゃなくて派手な討伐を何度も達成してる『夜明けの月』は将来性抜群だな」

 

 どういう立場からの意見だよ。とツッコむものはここにいない。

 なにせ、底辺冒険者の酒飲み話だ。与太にツッコむ方が無粋というものだろう。

 

「まあ、『スイレン』も『黒渦団』も冒険者としては集団行動に特化してるからな……そういう意味じゃ、ソロで有名な奴と比べる方が良くねえか?」

「まあ、確かにな。とはいえ、『肉切り包丁』とか『大熊』みてえなイカれたソロ冒険者だと比べにくくねえか?」

「まずそいつらはこの街の冒険者じゃねえだろ」

 

 そんなワイワイとした雑談の中で、ふと誰かが酒場へと入ってくる。

 

「ん? 誰だ? こんな時間に冒険帰りってのはお疲れだな! 今はどのチームが強いか議論……で……」

「はー、疲れた。まあ、いいけどさ」

 

 入ってきたのは、小生意気な表情を浮かべた一人の少女。その出で立ちは、不釣り合いなほどに頑強で丈夫な鎧に身を纏っていた。

 ――そして、その背後からは同じように頑強な鎧を身に纏った四人の冒険者たちが続いて酒場へと踏み込む。

 

「『鉄の薔薇』……か、帰ってきたのか!」

「てか、なんでこの酒場に?」

「はー? 決まってんでしょ? ユーマよユーマ!」

 

 と、少女が嬉しそうに言う。

 

「今日こそ、うちのチームに引き抜くんだから! あのデカい奴とひょろい奴、あと泥棒女は? 大抵、この時間にはいるでしょ?」

 

 ……その言葉に酒場の空気は一瞬で冷え込む。その空気を察したのか、挙動不審になった少女。

 

「……は? え? 嘘? まさか……」

「バーラグと、二人は死んだぞ」

「ユーマは!? ユーマは生きてるの!?」

 

 ……多くの冒険者が驚いた。『鉄の薔薇』と言う銀等級冒険者たちが、ここで腐っているような異界人に興味を持っていたこと自体が初耳だったからだ。

 

「あ、ああ。ユーマは生き残ってるぞ」

「良かった……ああ、でもあいつらには冥福を祈るわ」

 

 ……多分、育ちがいいのだろう。そう感じさせる少女……しかし、表情が変わって笑顔になる。

 

「で? ユーマは? 多分、今はパーティーがなくて困ってるわよね! だから、『鉄の薔薇』の皆をやっと説得できたし、枠があるから……」

「ユーマなら、他のチームに入ったぞ?」

「……は?」

 

 キョトンとした少女。

 

「なんなら銀等級冒険者になったぞ?」

「…………は??」

 

 呆気にとられる少女

 

「ちなみに、討伐指定を倒して渡り討伐も成し遂げたから、帝都に呼ばれて出発したぞ」

「はぁああああああああ!?!?」

 

 ――ユーマの知らないところで、新しい騒動の火種が芽生えているのだった。

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