闇の華は偽りに咲く 〜見た目ラスボスの美少女たちは、俺の前でだけポンコツに戻る〜 作:フレラガ
「アメリアさん、ユーマさん、大丈夫でしたか?」
「ああ……アメリアが、どうも魔物に遭遇したらしくてな。ほら、これが証拠だ」
「魔物が……!?」
俺が持つ魔物の一部を見て、ミライが驚いた反応をする。
「アメリアさんは大丈夫でしたか!?」
「心配しないで。はぐれ程度なら何とかなるから」
「そう、ですか……すいません」
スッと引き下がるミライ。
……なんとなく気になる反応だ。魔物に対して、普段の余裕とは違うどこか切迫した反応。なんだろうか?
「……なら、早く戻ろう」
「うん」
ザミアとリズの言葉に加えてノルマ分の薬草を集めて戻ってきたこともあり、そのまま足早に全員で街へと帰還した。
俺達の報告を受けた冒険者組合では、まるで蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
「す、すいません! 折角戻ってきてくださったのに騒がしくなってしまいまして……薬草の取れる浅い場所で、魔物が出るのは予想外の出来事でして……!」
ザミアやリズ、アメリア達の視線を受けて怯えながら必死に説明をしている受付嬢。
まあ、今回の場合は依頼で安全が保証されていた場所での魔物との遭遇なのだ。場合によっては死者が出ていたかもしれない。そうすれば、冒険者協会という組織の信用にも関わるので仕方なくはある。
「私はいい。それよりも、依頼は?」
被害者であるアメリアが気にせずそう聞いたことで、受付嬢は呼吸を整えて報告する。
「はい! 薬草の検品でお時間を頂きます。特に、今は協会全体が慌ただしい状態ですので……報酬は明日の支払いになりますが、問題はないでしょうか? もしも、急ぎでしたら品質による評価無しの即日払いもありますが……」
「……なら、明日でいい」
即金で欲しがる冒険者も多いからこその措置なのだろう。
まあ、俺達は評価の方が欲しいから、検品を頼るが。
「分かりました、本日はお疲れ様でした! それでは、失礼致します!」
最初に受けたときよりも角度と勢いの良い礼をしてから奥へと走っていく。
それだけ魔物の出現した情報は重大ということだ。協会だけではない。冒険者達もザワザワと騒がしく、掲示板を見たり依頼の再確認を進めたりしている。
そんな周囲を尻目に、ザミアは宣言する。
「……今日は疲れただろう。解散だ。明日、また昼頃に集合で」
「分かった」
「ええ、了解」
「はい。それではお疲れ様でした。今日は失礼致しますね」
そうして、ミライは頭を下げてそのまま協会を出て行く。そうして、それぞれのタイミングで教会から出て行って解散となる。
……さて、協会から出て一人になった俺は頭を悩ませる。
(……しかし、マジでどいつもこいつも思ってるような重たい事情を持ってないんだよな)
ザミアは純粋に日常でのコミュニケーション能力に難があるだけで、別に復讐者とか悲しき過去など影も形もなかった。そんな彼女だが、リーダーとしての判断力や戦闘で前線を任せられる安心感はその欠点を補って余りあるものだろう。
リズは世間知らずで、独自のルールを持っているだけだ。別に暗殺者というわけでもなんでもない。しかし、その才能はぶっ飛んでいる。それこそ、成長を続ければ他の誰よりも冒険者としての才能によって活躍する事だろう。
アメリアは……まあ、普段こそ怜悧な魔女というイメージだが中身が社会不適合者なダメ人間であるだけだ。魔法使いとしての実力を考えればその欠点が可愛く思える程度には優秀である。
……うん。闇はないけど事情自体は面倒じゃないか? というか、これを全員に伝えたところで改善する可能性が皆無なのだ。むしろ、本性を知ってしまったことでお互いの距離感を間違えて壊滅する未来しか見えない。
(……しかし、こうなるとミライも事情があるんだろうけど……俺が思ってるような事情じゃないんだろうなぁ)
二度あることは三度ある。三度あったら四度目なんて確定だろ。
……とはいえ、ミライの場合は全く予想が出来ない。というのも、普段から怪しいからだ。
(まあ、なんというか……色々と裏を感じるんだよな。他に比べてなんか一見すると普通に見えるんだけど……)
笑顔で優しい彼女。普段から礼儀正しく他人を思いやり気遣いを忘れない。俺が加入してからの一ヶ月見て居た感想で彼女だけがチームの交流をフォローしていた。だが……そんな彼女だが、何か秘密を隠しているような素振りがあるのだ。こうして依頼などが終わった後には、余程の事情などが無ければミライは一番に帰っていく。
そして、受け答えも思い返すとこんな感じだ。
『今日ですか? ……すいません、ちょっと用事がありまして……』
『食事……ですか。先約がありますので、申し訳ありませんが遠慮しますね』
『明日……に関しては、ちょっと申し訳ありませんが……』
どこで何をしているのか? それが一切分からない。そうして、それを相談することは決してない。
冒険者をする魔法使いや聖職者というのはパターンが限られる。冒険者としての実績を積むことで地位や権力を手に入れる目的。純粋に冒険を好む根っからの冒険者。そして……事情があり困窮していたり、何かしらの事情があって元あった立場を追い出された犯罪者崩れ。
まあ、そういう意味では彼女は後ろ暗い理由の方だと邪推はしてしまうが……
「……いやまあ、考えても仕方ないか」
秘密があるにせよ、それがどんな事情であるとしても聖職者として優秀なミライは必要なメンバーなのだ。俺がフォローするしかないだろう。
(ミライって名前だから、俺の同郷だったりするか? ……いや、ないな。魔力使えてるし。発音違うしなぁ)
そんな風に思考を回しながら、この後の予定に意識を移す。
(……依頼料は入ってないんだよなぁ)
財布事情に関しては改善されたが、未だに金欠は続いている。まあ、この前まで死にかけていたのだ。金欠程度で収まっているなら御の字だろう。
散財をするわけにも行かず、腹も減っていない。帰っても寝るにはまだ早い。どうするか悩んだ俺はふと思いつく。
(そうだ、墓参りに行くか)
以前のパーティーメンバーは共同墓地に埋葬されているはずだ。
……長いこと一緒に行動してきた。まあ、色々とあったが……俺と共に冒険者を続けてきた仲間だったのだ。お供え出来るようなものもなく、俺俺に墓参りをされても嬉しくはないだろうが……それでも、良い機会だろう。
(教会は……街の丘の上か。まあ、少し歩くけど問題無いだろう。)
町の中央から丘の上にある教会は少しだけ距離がある。
ノンビリと街を歩いて行く。
「……ん?」
と、偶然ではあるが……道中でミライらしい姿を見かける。
教会とは違う離れた路地に入っていった。
(何であんな場所に?)
まず、ミライは教会に所属していないといっていた。教会に所属する司祭は、相応の立場を持っていて情報も知られている。だが、ミライに関してはそういった情報は一切出回っていない。
(……偽聖職者の可能性もあるか?)
巡礼や冒険などの道中で死んだ聖職者の立場を奪う犯罪行為だってある。
偽物だとしても、彼女の実力や今までの働きが否定されるわけではない。本当に偽聖職者だとしても……俺にできるのは、彼女をサポートすることだけだ。
冒険者は過去は問わない。その原則に従うべきだろう。
「……よし」
そして、路地裏にゆっくりと踏み込んでいき……突然、誰かが俺の足にぶつかる。
「きゃっ!?」
(子供……?)
路地裏から出てきたのは、簡素な衣装に身を包んでいる少女だった。
幼い顔立ちに、純粋そうな顔は強ばっている。
「すまない。大丈夫か?」
「あっ、えっ、あ、う……」
視線を彷徨わせながら、周囲を見ている……参ったな、警戒されているらしい。
まあ、それも仕方ないか。路地裏に出入りするのは危険な人間が多いのだ。少女が迷い込んで抜け出したのなら、安心していたところだろう。そこで俺みたいな大人に出会ったら動揺しても仕方ない。
「すまない。人を探していたんだ……まあ、いないみたいだが」
「そ、そうなんですか……」
「それで、君はどうしてここに? 裏路地なんて危ないぞ?」
「えっ! え、えっと……ま、迷い込んじゃって……」
……ふーむ、ちょっとした違和感を感じる。何かを隠している様な喋り方だ。
「なるほど……」
「っ!?」
「あれだな……こっそり家を出てきたんだな? 禁止されてる裏路地が気になったんだろ」
「……は、はい! そうです!」
なるほど。俺の勘もたまには当たるようだ。この年頃だと言いつけを破って入っちゃ行けない場所にはいることはよくあるからな。
もしや、子供なりの冒険なんかをしていたのだろうか? 将来有望かもしれないな。
「それなら、外まで案内するよ。一応、俺は冒険者だから安心してくれ」
「あ、は、はい……」
「まあ、人攫いに見えても大丈夫だ。俺は異界人だから貧弱だからな。マジで弱いぞ? なにせ、子供にも負けるくらいだからな」
魔力を持たざる人間の悲哀だな。わはは……はぁ。
「……え、えっと……教会に……戻るつもりで……」
「教会……まさか、孤児院の子か?」
「あ、は、はい」
「おおう……それは凄いやる気だな。」
教会には孤児院が併設されている。治安が決して良い世界というわけではなく、魔物と言う外敵がいる世界。突然、両親を失ったりすることだってある。
そんな子供の受け皿も教会なのだ。ルール違反をして外に出た事がバレたら大説教だろう。下手な家よりもそういう時には厳しくされるだろうし……
「まあ、その年なら冒険だってしたくなるよな」
「え、えっと……」
「教会まで俺も行く用事があるんだ。一緒に行こう。ちゃんと事情は説明するし、隠れて抜け出してきたなら隠してやるからな」
「その、いいんですか?」
少女に聞かれて頷く。
「俺も同じくらいの年は同じように悪さをしてたから、気持ちは分かるよ」
懐かしいな……元いた世界だと、結構危ないことしてたもんな。
「悪さ……ですか?」
「家をこっそり抜け出して遊んだり、イタズラを仕掛けたりしてるもんだ……」
「その……孤児院の子で、イタズラをする子がいるんですけど……どうすればいいか、分かりますか?」
と、少しだけ気を許してくれたのかそんな相談をされる。
まあ、そういうイタズラなんていうのは怒ってしまうのが早いが……基本的に退屈で構いたがっているだけだから、構ってやるか他の手段で興味を逸らせば良いなんてアドバイスをしながら歩き始める。
少女は意外と話し始めると、特に気負った様子も無く俺とスムーズに会話を始める。最初にビビっていたのが嘘みたいだ。
「――って感じで、尻から川に落ちてな……」
「ふふふ、それは……ちょっと、うっかりさんですね……えっと。その、お兄さんにちょっと聞いても良いですか?」
「ん? どうした?」
「その、教会にどのようなご用事があるのかなって」
そういえばそうだ。俺が行く理由を説明していなかった。そりゃ警戒もするだろう。
「ああ、墓参りなんだ」
「えっ? お墓参り……ですか?」
「前のパーティーで一緒だった奴らが死んでな。まあ、良い思い出もそこまでないけど……それでも、長い付き合いだった仲間だからさ。せめて俺くらいはちゃんと墓参りをしてやらないとなって思ったんだ」
「……ええっと、昔の話……聞いても良いですか?」
「あんまり面白くないけど、それくらいならいいぞ」
そうして話題は俺のトークから過去のパーティーでの話に変わる。まあ退屈な話だ。余り腕が良いとは言えないメンバーたちと一緒に、鉄にならないために必死に銅級を維持しようと頑張っていた冒険譚だ。
銅級の底にいるような依頼ですら、失敗寸前になる。余裕がなく、お互いに落ち度を探して糾弾を始める。成功しても取り分は不均衡な分け方。今のチームと比べれば大違いだが、それも当然だ。身元も知れない役立たずの異界人を入れるパーティーというのは、それだけ切羽詰まっているという事だからな。
なんとか日々の稼ぎが支出を上回り、真っ当に生きていける……と思った矢先の俺を残して全滅という目に合った。そんな話を重くなりすぎないように冒険者なんかに憧れるんじゃ無いぞ? という意味を込めて語り続けた。
「……ってわけだ。まあ、冒険者って言うのは活躍出来るなら華々しいけど、俺らみたいな場合もあるんだ。もしも教会から職業を斡旋して貰えるならそっちの方が――」
「そう、なん……ですね……ぐすっ……」
「えっ」
気付いたら横の子がボロボロと泣いていた。
「ちょ、ちょっとどうしたんだ!?」
「す、すいません……ユーマさん……苦労してるって知って……思わず……」
「いや、そんな苦労だなんて……」
いや、おい。ちょっと待て。
「……俺、名前を君に言ったか?」
「えっ、あ、えっと、さっき……い、言いましたよ……?」
「いや、まず俺は基本的に名前を教えないんだよ。異界人だって分かるからさ……それで、なんで知ってるんだ?」
異界人と知られると色々と不都合なことが多い。だから俺は相手が誰であろうと、求められない限りは自分から名乗らないようにしている。
そして改めて少女をじっと見る。少女は追い詰められた表情でどうするべきか周囲を見渡し……ん?
(目元に……黒子があるな。ミライと同じ)
なんとなく印象に残っていたから覚えている特徴だった。
……いや、まさかな?
「まさか……ミライ?」
「っ!?」
その名前を呼ぶと、明らかに反応した。しかも動揺してるのか冷や汗を流している。
そして、走り出して逃げてしまった。いや、動揺してるのだろうが行き先同じだぞ?
「いや、まってくれ! ミラ――」
「ラミィから! 離れなさい!」
「えっ」
丘の上にある教会から声が聞こえて、そちらを見ようとして……何かが激突する。
「ユーマさん!?」
(ナイスピッチ……)
そりゃ、一見したら少女を追いかけている光景だもんな。
そんな、他人事の様な感想を思いながら俺の意識は刈り取られるのだった。
……そして教会のベッドで目が覚めた俺は、シスターの女性から全力で謝罪されるという、人生でもそうそう遭遇する事が少ない状況になっていた。
「ほんっとうに申し訳ありません! まさか、ラミィを送ってくれていた方だなんて……!」
「いや、俺も勘違いされる様なことをしたのが悪かったですから」
「お墓参りだなんて殊勝な事をする方になんてことを……このお詫びはなんとすれば……」
「いや、だからいいですって」
「シスター! お仕事がありますよね! 私が看病しますから戻らないと!」
「ああ、そうね……それじゃあゆっくり休んでくださいね」
そう言ってシスターは部屋から出て行く。
……そしてラミィと呼ばれた少女……恐らくは、ミライなのだろう彼女と二人っきりになった俺は口を開いた。
「ミライ、なんだよな?」
「……はい」
いつも見ているミライは二十歳前の女性と言った見た目だ。
しかし、今のラミィの見た目はどう見ても十を超えたくらいだろう。いや、何がどうなっているんだ。
「……事情、聞かせてくれるか?」
「分かりました」
覚悟を決めたように、ミライは話し始める。
「……私は祝福者なんです」
「祝福者っていうと……スキルと魔法を使える特殊な存在だったよな?」
「はい」
アメリアのように魔法を覚えて使うとスキルは発現しなくなる。逆にリズのようにスキルが発現してしまえば魔法を使う事は出来ない。
しかし、時折存在するのだ。魔法を覚えてからスキルが発現する特異体質の持ち主が。それが祝福者といわれて貴重な存在として扱われる。
「私は神聖魔法とスキルが使えるんです」
「魔法は……普段使っている回復だったり、守護の魔法だよな? そうすると……スキルって言うのはどんなのだ?」
「はい。私のスキルは……そうですね。名前で言うなら『成長』っていうスキルです」
「『成長』……?」
「はい。私が名付けたんですけど……こうやって……」
そういうと、目の前が強い魔力光によって視線が遮られる。そして、気付けば目の前にいたラミィは普段から見ているミライの姿になっていた……いや、服がキツそうで視線のやり場に困るな。
「大人の姿になれるんです」
「……未発見スキルか」
前例のないスキルは未発見スキルと称されている。凶悪な未発見スキルともなれば対策の出来ない初見殺しとも言える恐ろしいスキルだ。
……とはいえ、未発見スキルという大仰な名前ではあるが意外とありふれてはいるらしい。既存のスキルに当てはめられないスキルは全て未発見スキルと呼ばれることになっているためピンキリなのだ。
とはいえ……
「大人の姿に出来るのは、自分だけなのか?」
「はい。鍛えたら変わるかも知れませんけど……自分の意思で体を成長させて戻す事が出来るスキルみたいです。あんまり強くは無いんですけども……」
そういうと、光と共に体を子供のサイズに戻した……いや、凄い能力だぞ?
戻す事が出来るのであれば潜入や偽装がやりたい放題だぞ。俺ですら見せられただけで何通りも使い方が思いつくのだから、本気で使い道を考えれば幾らでも悪用が出来るだろう。
「それで、冒険者になった理由なんですけども……私は捨て子だったところをシスターに拾われて、この教会で育ったんです」
「さっきのシスターか。思い切りが良くて良い人そうだったな」
「あはは……ちょっとうっかり屋さんなんですけどね」
苦笑するが、それでも嬉しそうにしているミライ。彼女にとってはシスターは大切な家族なのだろう。
「それで……この教会は、今とても大変な事になっているんです」
「大変っていうと?」
「教会の偉い人が、今の教会を取り壊す計画を立てているらしいんです……他の土地があるので、丘の上よりもそちらに建てればいいじゃないかって……それ自体は仕方ないと思います。でも、新しい神父様を呼ぶ事になるそうなんです。そうしたら、今のシスターはこの教会から離れて別の土地に行くことになりますし……何よりも、ここは生まれ育った場所ですから……どうしても、存続させたいんです」
「……それで、どうして冒険者を?」
「有名な冒険者の言葉だったら、教会の取り壊しは止められますから。教会は、土地を切り開いて魔物を倒す冒険者のことはとても大切に思っていますから」
……ふむ。
この世界の宗教は冒険者との関係が深く根付いている。なので、冒険者の存在を保証しているのは利益がある国だけではなく、この世界に根付いた宗教そのものが肯定しているのだ。
それを考えれば、名前の通っている冒険者が名指しで教会を擁護するとなれば無碍には出来ないだろう。
「だから偽名を名乗って、スキルを使って冒険者をしているのか」
「は、はい……とても悪いことです……でも、私に出来る事がなかったんです。シスターには冒険者見習いとしてお手伝いをしているって言ってます。でも、本当に見習いをするだけだったら教会が無くなるまでの時間は稼げません……だから、こうして……スキルを使って、有名な冒険者に自分がなってしまえば良いって思ったんです」
罪悪感を感じている、辛そうな表情を浮かべて告白するミライ。
……なるほど。
「つまり、ミライは冒険者としての名声を高めてこの教会を守りたいんだな?」
「は、はい。そうです」
……目の前の罪を懺悔するような表情を浮かべる少女に言う事があるだろうか? というか言えないよ。
彼女のやっている事は……冒険者組合ではグレーゾーンだ。冒険者の中には才能のある見習いを普通に冒険に同行させてる奴いるし。まあ、それでも有名な冒険者として名乗りを上げるなら成人をしている必要はあるか。
「……私は、困っていたとはいえザミアさん達を騙して、この立場になりました。困っているザミアさん達を助ける事で……ちょっとでも、良い人になりたかったんです」
罪を告白するようにいうラミィ。暗い過去を持っているように見えるザミア達を助ける事で、多少でも自分の罪悪感を紛らわしたいと。
……可愛いもんだけどなぁ。もっとクズ多いよ? 冒険者?
「ザミアさんにリズさん。アメリアさんはきっと私には考えつかない様な経験をしたはずです……この生まれ育った教会を守りたいからとはいえ、そんな悲しき過去を持つ人達を騙している私は、きっと神様もお許しになりません……」
「……」
いや、温度差で風邪を引いてしまいそうだ。
コミュ障と田舎少女。あとは引きこもりのパーティーなのだ。子供だけど真面目で普通なラミィは真っ当な方じゃないか? ……いや、まあ罪の度合いで言うなら一番大きいのが複雑な話ではあるが。
「……そんな私が、本当に許されるのでしょうか?」
本当に泣きそうな顔でそういうミライ。だが、そんな事は無い。誰だって言えない秘密はあるもんだ。
……と言うかこの年齢の子に求めることじゃねえんだよな。
「ミライ」
「は、はい」
「気にしなくて良い。冒険者なんて秘密があるもんだ。自分から言わないなら踏み込む必要もない。言えるときが来たらきっと伝えてくれる」
「そ、そうですか?」
「そういうもんだ。誰だって秘密はある。そして、それによって傷つけるつもりなのか?」
「い、いえ! そんなことは!」
「なら、いいさ。嘘だって時には誰かを助けてくれるんだ」
多少の詭弁は混じっているが、子供に重い荷物は背負わせられない。
まあ、それに戦闘面では俺よりも百倍役立ってるしなぁ……言ってて悲しくなってきた。
「もしも、嘘を吐くことに耐えられないときは……俺を頼ってくれた良いさ。ちょっとくらいは、一緒に罪を背負ってやるからさ。それくらいしか俺には出来ないってのもあるけどな」
「ユーマさん……ありがとう、ございます」
少しだけ涙ぐんだような声で、震えながらゆっくりと頭を下げるラミィ。
……まあ、こんな純真な子が偽名なのって事情を隠して冒険者をやってるなら、そりゃあんな裏がありそうにもなるよな……憂いのある表情とか自分の事情を隠すのも納得した。
「……それと、内緒で過去の話を聞いてごめんなさい」
「ん? あー……」
そういえば喋ったな。
「別に隠してないから気にしなくて良いさ……って、墓参りしないとだな」
「それなら、私も良いですか? ユーマさんのお仲間だった人に挨拶をしたいんです」
「ミライも? ……まあいいけど」
まあ、あいつらの事だと……いや、まあ辞めておこう。死んだ人間は喋らないし反応しない。それに、ミライの善意を断る理由はならない。
「えっと、それと……この姿の時は、今後もラミィって呼んでください。そっちが本名ですから! 普段はミライでいいですからね!」
「わかった。それじゃあラミイ。これからもよろしくな」
「はい!」
笑顔で言う彼女。
これで、多少は彼女の重荷を一緒に背負えるだろう。
「……そういえば、ミライって名前はどうして付けたんだ?」
「えっと、ラミィから組み替えて名付けたんですけど……どうされました?」
「いや、気にしなくて大丈夫だ」
当然ながら同郷とか、俺の元の世界に関係があるわけじゃなくて普通に偽名で偶然だったようだ。