2026年1月1日、午前0時0分。
日本列島は、新年を迎える喧騒の中にあった。
東京では年越し番組のカウントダウンが終わり、歓声が上がる。
地方都市では人々がコートの襟を立て、初詣へと向かっていた。
日本海、太平洋、そしてオホーツク海では、日本国防軍の艦艇が年越し警戒の任に就いている。
世界は、いつも通りに回っている――
少なくとも、その瞬間までは。
新年を告げる時刻と、完全に重なって。
日本列島全域が、淡く発光した。
雷ではなかった。
爆発音も、揺れも、熱もない。
山間部では地表そのものが白く浮かび上がり、
都市部ではビルや家屋の輪郭が、まるで光に縁取られたかのように浮かび上がる。
夜の海では、穏やかな水面が静かに光を返していた。
それは数秒ほどの、短い現象だった。
光が消えた後、街は何事もなかったかのように動き続ける。
人々は顔を見合わせ、首を傾げる。
だが誰もが、深刻には受け取らなかった。
破壊はなく、警報も鳴らない。
新年の高揚感が、違和感を押し流してしまったのだ。
異変に最初に気づいたのは、専門家たちだった。
気象庁では、観測データの不整合が次々と報告される。
気圧配置が、既存のモデルと一致しない。
人工衛星からのデータリンクが、不安定になっている。
航空機の操縦席では、パイロットが眉をひそめていた。
慣れ親しんだはずの航路に、説明のつかないズレがある。
海上では、哨戒中の艦艇から報告が入る。
「――地平線が、いつもと違います」
午前一時過ぎ。
内閣官房に緊急連絡が入った。
国防軍統合幕僚監部は即座に状況を共有し、警戒態勢を引き上げる。
領空・領海の監視強化。
偵察機と哨戒艦の出動。
通信・宇宙関連システムの総点検。
全国各地で観測された発光現象は、時刻・波長・持続時間がほぼ一致していた。
自然現象の可能性は、急速に否定されていく。
そして、決定的な報告が届く。
未明、偵察飛行に出ていた航空機が、見慣れない大陸線を確認した。
衛星画像を確認しようにも、衛星との通信ができなくなっている。
さらに、天文台からの報告。
「星座が……一致しません」
その言葉で、場の空気が変わった。
日本政府と国防軍の中枢は、静かに理解する。
自分たちが立っている場所が、もはや地球ではないことを。
早朝
太平洋上を航行していた哨戒艦の乗員が、双眼鏡を握りしめた。
水平線の向こうに、帆が見える。
鋼鉄ではない、木造の船団。
その背後には、石造りの建物が立ち並ぶ港町。
あり得ない光景だった。
無線は沈黙を保つ。
接触命令は出ていない。
ただ、記録することだけが許可されていた。
同じ頃、官邸では簡潔な方針が確認される。
――事実確認を最優先。
――不要な接触は禁止。
――国民の安全を、何よりも優先する。
世界が変わっても、やるべきことは変わらない。
日本は、日本として行動する
日本は日本として行動するとは言ってますが、この日本の憲法9条が国防軍を持てるようになっているため、日本の秩序として異世界で行動するという意味です