シラベは掛け布団を巻き込むようにして丸まり、外界との接触を一切遮断していた。布団を頭から被り、息苦しさを無視した籠城体勢。その薄膜の外からにゃおにゃおと、聞き慣れた鳴き声が繰り返し届いてくる。
大穴だ。布団の裾から潜り込もうとしては閉ざされた隙間に阻まれ、布団の布地を前足で撫でては反応がないことを確認し、また鳴く。
シラベは微動だにしなかった。
拗ねている自覚はあった。二十五歳の成人男性が猫に対して拗ねているという、客観的に見れば救いようがないほど情けない光景だが、当のシラベにとっては断固たる決意の表れだった。
昼間のことだ。いつものようにシラベの右肩を定位置としていた大穴だが、来店したキリメの姿を認めた瞬間に肩から真っ直ぐに、キリメの胸元へと飛び込んでいったのだ。
それだけなら許容範囲だ。キリメの撫で方が上手いのは認めているし、猫が居心地の良い場所を求めるのは仕方がない。それに、いざとなればまたさきいかをぶら下げれば戻ってくるだろう。シラベはそう高をくくっていた。
だが今日のキリメは用意周到だった。有言実行とばかりに持ち込んだ猫用おやつとキリメの指技の組み合わせは、大穴は完全にキリメの虜と化したのだ。キリメの膝の上で喉を鳴らし、差し出される液状のおやつにしゃぶりつき、キリメの指を舐め、挙句の果てにはスカジャンの中に潜り込んで出てこなくなった。
そのまま大穴は閉店までの数時間、一度もシラベの元に戻ってこなかった。
一方のシラベは躁鬱ならぬ躁と劣情が激しくなりつつあるヒナタの被害を受けるミトラからの救難信号に応じ続ける必要があり、それに加えて店舗での一般業務もこなさなければならなかった。慌ただしい中では大穴を奪還するどころか一撫でしにいく暇すらない。
暴走したヒナタを羽交い絞めにして何故か小学生から睨まれる理不尽を受けつつもシラベは閉店まで走り抜け、そして大穴への見当違いな恨みを結実させた。
少しばかり忙しかろうが、肩にさえいれば手を出せばあの柔らかな毛並みで逆立った精神を癒す事が出来ていた。時折押し付けてくる冷たい鼻も、休憩の合図を考えれば悪くない。
それを奪われたと恨むのであれば、キリメに恨み言をぶつけてやればいい。いやそれもだいぶみっともないが、大穴を冷遇する意味は無い筈。理屈を立てようと思えば不細工であろうがそういう形になるはずだと分かっているのに、シラベは意固地になり続けた。
布団の中で歯噛みするシラベの耳に、にゃおぅ、と一段甘えた鳴き声が届く。帰る場所を用意してくれる人間に対してだけ見せる、甘え切った声だった。
布団の中に籠城するシラベの頭上で、カリカリと爪が布地を引っ掻く音がした。
「にゃあ」
今度は遠慮がちに鳴き声を上げている。普段なら布団の隙間を見つけて強引に滑り込んでくるところだが、今夜はシラベが入念に端という端を体の下に折り込んで封鎖しているため、侵入経路が見つからないらしい。
「にゃうん」
さらに布団の上をもぞもぞと移動する気配がして、シラベの頭があるあたりを小さな前足でちょんちょんと叩いてくる。
許しを請うような仕草にシラベは奥歯を噛み締めた。ここで折れるわけにはいかない。折れたらこの猫は学習する。キリメのところで遊んだ後でも甘えれば許してもらえると。そんな舐めた学習をさせるわけにはいかない。
「うぅるるぅ」
鳴き声のトーンが一段上がった。懇願のようだ。シラベの心の壁にヒビが入る。しかし布団を開けない。男のプライドがかかっている。猫に対して。
そんな不毛な攻防がしばらく続いた後、部屋の扉が開く気配がした。
「あらあら」
鈴を転がすような声。カルメリエルだ。
「これは、また幼稚なことをなさっていますわね」
シラベは返事をしなかった。
カルメリエルの足音が近づき、大穴の鳴き声がぴたりと止む。抱え上げられたのだろう。布団の外からは、大穴の小さな抗議の鳴き声と、それをあやすカルメリエルの柔らかい声だけが聞こえた。
「今はそっとしておきましょうね。シラベ様はお疲れなのですから」
「なぅ」
大穴の不満げな鳴き声が、カルメリエルの腕の中でくぐもった。
「おやすみなさいませ、シラベ様」
返事はしなかった。布団の中で丸まったまま、パチンと消灯される電気の音と、戸が閉まる微かな音だけを聞いた。
足音が遠ざかっていく。二階の廊下を歩く気配が──しかし、途中で止まった。
寝袋に入る音がしない。それどころか、足音は廊下を通り過ぎ、階段を下っていく方向へと消えていった。
シラベが疑問に思ったのは一瞬だけだった。あの聖女が夜中に何をしようが、もう知ったことではない。今の彼に必要なのは、裏切り者の黒猫がいない冷たい布団で自尊心を修復することだけだった。
シラベは布団の中で深く息を吐いた。ガキくせえな、と自分に向けて呟いたが、不機嫌はすぐには解けなかった。そのまま悶々としているうちに、疲労が思考を追い越し、シラベの意識は泥の底へと沈んでいった。
最後に浮かんだのは、キリメの膝の上で仰向けになり、腹を見せてゴロゴロと喉を鳴らしていた大穴の姿だった。
一方。暗い廊下に出た大穴は、カルメリエルの腕の中で短く欠伸をした。
シラベの布団という特等席を失ったのは残念だったが、自分を抱きかかえるこの女の胸元も十分な質量と柔らかさを備えている。布地越しに伝わる体温も悪くない。異様な静けさにだけ我慢すればいい。
仕方ない、今日はこのご飯係の胸を寝床にしてやるか。そう判断し、大穴は目を閉じて身を丸くしようとした。
しかし、カルメリエルの足取りは二階の寝袋が敷かれたスペースへは向かわなかった。彼女は音もなく階段を下り、一階の暗い店舗部分へと降りていく。
大穴が訝しげに目を開けると、カルメリエルはバックヤードの一区画、彼女が個人的に占有している作業スペースへと足を踏み入れた。
非常灯のみが照らす空間で、カルメリエルは腕の中の大穴を見下ろし、糸目を更に細めて艶やかに微笑んだ。
「少しだけ、実験に付き合ってくださいますか?」
*
翌朝。意識が浮上する前に、シラベの体は重さを訴えていた。
目の前が暗い。布団を頭から被ったまま寝落ちしていたらしい。夜中のどこかで寝返りを打ったのか、シラベは仰向けの姿勢になっていた。
そして仰向けの体に、何かがのしかかっている。
まだぼんやりとした頭で、シラベは重みの正体を推測した。
ミトラではない。ミトラの体重はせいぜい三十キロ台だ。今シラベの胸から腹にかけてのしかかっている質量は、それよりも明らかに重い。全身で圧し掛かってきている感覚からして、かなりの体格の持ち主だ。
大穴でもない。猫はこんな面積で体重を分散しない。
ということはレヴェローズか。確かに柔らかい感触がある。だが、あのポンコツが人の布団に潜り込んできた時は必ず自己申告がうるさい。今は何も聞こえない。のしかかっている存在は静かだった。不気味なほど規則正しい呼吸だけが布団越しに伝わってくる。
消去法で残る選択肢は一つしかなかった。
おそるおそる、シラベは布団の端を持ち上げ、顔だけを外に出した。
冬の朝の冷気が頬を撫でる。白みかけた天井が視界に入り、それから視線を下に向ける。
シラベの予想通り。体の上でうつ伏せに横たわっていたのは、カルメリエル・ドゥブランコだった。
パジャマ姿のカルメリエルは目を閉じ、シラベの胸板に頬を預けて穏やかな寝息を立てている。シスター服ではないため普段は見えない鎖骨や、パジャマに包まれようが柔らかさを失わない肢体がシラベの肋骨を静かに圧迫していた。
ここまでは、百歩譲って想定の範囲内だ。この店の住人たちは俺を暖房器具と思っている節があると、シラベは諦観していた。
だが。シラベの視線は、カルメリエルの頭頂部に釘付けになった。ピンク色の長い髪の間から、二つの三角形の突起が生えている。
尖った形状。ふわりとした産毛に覆われた表面。
カルメリエルの髪色と全く同じ、ピンク色の猫耳だった。
「あ?」
シラベは瞬きを繰り返した。寝ぼけているのかと思い頬をつねる。痛い。夢ではない。
目の前で規則正しく上下するカルメリエルの背中と、その頭に生えた猫耳。猫耳はピンク色の毛に覆われ、時折ぴくりと微細な動きを見せている。まるで風の方向を探るアンテナのように。
シラベの身動きが布団を揺らしたらしい。カルメリエルの長い睫毛がぴくりと震え、ゆっくりと持ち上がった。
僅かにぼんやりとした目覚めたばかりの瞳が、シラベを見上げる。
「おはようございます、シラベ様」
のしかかったまま、悪びれもなく微笑む。いつもの穏やかで底知れない笑顔だ。パジャマの前がはだけかけているのも、シラベの体の上にいるという状況も、頭に生えている異物の存在も、全てを当然のこととして受け入れているかのような泰然自若さ。
シラベは口を開いた。声が出なかった。閉じた。もう一度開いた。
「…………」
言葉が見つからない。ツッコミの語彙が底をつくという体験を、シラベは今まさに初めて味わっていた。
カルメリエルはシラベの反応を楽しむように首を傾げる。
「どうかなさいましたか?」
わざとらしく、頭頂部の猫耳がぴくぴくと動いた。
左右の耳が交互に傾き、くるりと回転し、それからシラベの顔のすぐ近くまでゆっくりと下ろされる。猫耳の先端がシラベの頬を、羽根で撫でるように掠めていった。
柔らかい。毛の質感は大穴のそれに近いが、もっと繊細で、しなやかだった。
シラベは反射的に目で追ってしまう。ピンク色の耳が視界の中で揺れるたびに、視線が吸い寄せられる。
「……なんだ、これ」
ようやく声が出た。掠れていた。
カルメリエルは嬉しそうに口元を緩めた。
「シラベ様が大穴に度重なる裏切りを受けていらっしゃるのを見て、日々心を痛めておりましたの」
シラベの上に体を預けたまま、カルメリエルは語り出す。その声はいつもの丁寧語だが、耳元で囁くような距離感のせいで、普段以上に甘い響きを帯びている。
「大穴はどうしても猫としての本能に従ってしまいますし、キリメ様の技術には抗えないご様子。ですので、シラベ様の心の穴を埋められるよう、少しばかり工夫してみましたの」
カルメリエルは猫耳をぴこぴこと動かしながら、わざとらしく小首を傾げた。
「大穴を丸呑みでもしたのか」
「そんな野蛮なことは致しません。これも伝結晶技術のちょっとした応用ですわ」
伝結晶技術。ドゥブランコ帝国の根幹を成すらしいテクノロジー。ともすると現実の常識を書き換えかねない未知の技術をこんなことに使うのかこの女は。
「そんなことより、シラベ様。こちらの耳が気になっていらっしゃるようですわね」
カルメリエルは弁明を切り上げるように、話題をすり替えた。
追求してやりたい思いはあるものの、気になっているというのは図星だった。
ピンク色の猫耳が、再びシラベの視界の中で揺れる。今度はゆっくりと、焦らすような動きで。耳の先端がシラベの頬骨の上を、ふわりと撫でていく。産毛の一本一本が肌の上を滑る、くすぐったいような、それでいて心地よいような感触。
「よろしければ、触っていただいても構いませんわよ」
カルメリエルの糸目がわずかに細まる。
「私は大穴のように、誰彼構わず触らせたりしませんもの。シラベ様にだけ、許しますわ」
罠だ。シラベの理性が警鐘を鳴らす。カルメリエルがわざわざ「シラベ様にだけ」などとわざとらしくプレミア感を煽ろうとしている。絶対に裏がある。
だが。
猫耳がぴくりと動く。ピンク色の毛並みが朝の薄い光を受けて、柔らかな輝きを帯びている。
シラベの手が動いていた。
指先がカルメリエルの猫耳に触れる。
温かい。毛の下には大穴の耳と同じような、しかしもう少し厚みのある軟骨質の弾力がある。指の腹で耳の外側をそっと撫でると、カルメリエルの体がぴくんと微かに反応した。
顔をうつ伏せに埋めたカルメリエルが、掛け布団の上で小さく身じろぎする。
シラベは無言で撫で続けた。
猫耳の付け根から先端に向かって、毛並みの流れに沿って指を滑らせる。大穴を撫でる時と同じ要領だが、人間の頭に生えている分サイズが大きく、指先の感覚がより鮮明だ。耳の裏側に親指を回し、表と裏を挟むようにして軽く揉む。カルメリエルの肩がぴくりと震えた。
認めたくはないが、これは良い。
大穴の場合は猫のサイズ故に撫でられる面積が限られるし、なかなかじっとしていない。すぐに気まぐれに体勢を変えたり、気に入らない場合は別の部位を押し付けて撫でを要求してくる。
しかしカルメリエルは動かない。のしかかったまま、布団に顔を埋め、シラベの手を黙って受け入れている。手触りは猫そのもの。だがそこに従順さが加わっている。自分だけに許された、自分だけの猫耳。
カルメリエルの猫耳にはどう考えても裏がある。あまりにも突拍子が無さ過ぎだ。実験の結果を確認するついでに、これを餌にシラベを縛ろうとしているのかもしれない。
だが今この瞬間、指先に伝わるふわふわとした感触と、触れるたびにぴくぴくと反応する耳の動きが、シラベの警戒心を着実に削り取っていた。この状況に抗える人間がいるとすれば、そいつは猫を飼ったことのない不幸な人間だけだ。
指先が耳の付け根を親指の腹でくるりと撫でた時、カルメリエルの喉の奥から、ほとんど聞き取れないような小さな音が漏れた。
ふと、シラベの指が猫耳の根元に触れた時、すぐ下にカルメリエル本来の人間の耳があることに気づく。ピンクの髪に半ば隠れた、普通の耳だ。
猫耳は、人間の耳より数センチ上の頭頂部寄りから生えていた。
つまりこれは、カルメリエルの本来の耳とは完全に別個の器官として存在している。伝結晶技術の応用と言っていたが、一体どういう構造でこれが成立しているのか。根元はどう接続されている。内部はどうなっている。
知的好奇心が、シラベの指を猫耳の外側から内側へと移動させた。
「ぁっ────」
耳の縁に沿って指先を滑り込ませる。普通の猫であれば嫌がりそうな場所だが、これは猫ではない。本物ではないのだから構造を確認したところで問題はあるまい。
内側の毛は外側よりも細く、密度が高かった。指先が毛の層を押し分けるようにして、耳の奥へと進んでいく。
驚いたことに、猫耳の内部は思った以上に深かった。猫のサイズであれば指一本で底に届くはずだが、これは人間の頭に合わせて再現されているためか、指がどんどん奥へと入っていく。内壁の質感は滑らかで、微かに温もりがある。毛の密度は奥へ行くほど減り、代わりに柔らかい膜のような感触へと変わっていった。
好奇心に駆られるまま、シラベは指を進めた。第一関節、第二関節。内部の構造はどこで終わるのか。謎の存在が謎の技術によって形成されたこの器官は、どの深さまで実体を持って──
不意に、視界の隅で何かが動いた。
部屋の入り口が開いている。そこに立っている人影。
金色の髪。寝間着姿。その腕に抱かれた、夜空の色をした黒い毛玉。
レヴェローズと、大穴だった。
レヴェローズの紫の瞳は見開かれ、口は半開きのまま凍りついている。その顔が、首から耳の先に至るまで、沸騰した薬缶のように真っ赤に染まっていくのが、スローモーションのように見えた。
大穴はくわっと欠伸をする程度でいつも通りのきょとんとした顔だ。もしかしたらカルメリエルが大穴の毛を刈って使ったのではないかとシラベは思っていたら、もこもことした様子は昨日と変わらない。
「……なんと破廉恥な」
レヴェローズの声が震えていた。怒りと羞恥と困惑がない交ぜになった、およそ言語化しきれない感情の塊が凝縮されている。
時間が止まったような静寂の中で、シラベは自分の状況を客観的に把握しようと試みた。
仰向けに寝ているシラベの上に、パジャマ姿のカルメリエルがうつ伏せで覆い被さっている。シラベの右手はカルメリエルの頭頂部に伸び、指はピンクの猫耳の内部に深々と挿し込まれたままだ。
そして、カルメリエルの顔。布団に埋めていたものが、いつの間にか横を向いていた。
いつもの糸目はうっすらと開かれている。その奥にはいつもの冷静さも、計算高さも、慇懃無礼な微笑みもない。頬は上気し、唇はわずかに開き、息は乱れている。
シラベが指を動かすたびに、彼女の体がぴくんぴくんと小刻みに痙攣していた。
顔に浮かんでいるのは、端的に言えば、恍惚だった。
まずい。シラベの全身に冷水を浴びせたような覚醒が走った。
「いや待て。違──」
シラベが弁解の第一声を発するより早く、レヴェローズは踵を返して廊下へ飛び出していた。
「店長ぉぉぉ!! 契約者が姉様の穴に指を突っ込んでるぅぅぅ!!」
「言い方ァ!!」
絶叫が二階の廊下を突き抜け、ボトムレスピット全体に轟いた。
シラベは布団とカルメリエルの下から這い出してレヴェローズを追った。そのまま朝のボトムレスピットに複数の怒号が響き渡る。
取り残された六畳間のせんべい布団の上では、カルメリエルがうつ伏せのまま微動だにしていなかった。
ピンク色の猫耳が力なく傾き、パジャマの背中は荒い呼吸に合わせて上下している。
「……想定以上、でしたわ」
掠れた呟きと共に、カルメリエルは背に備わっているケーブル接続用の端子穴に指を添える。自身へ作用している変化を直すよう指先を通じて指示を出すと、彼女の頭にあった耳がゆっくりと消えていく。
「拡張機能で機械以外を用いるのは、要調整ですわね」
感覚の源が消えたせいか、カルメリエルの頬を染めていた火照りが薄らいでいく。
シラベの興味をどの程度引けるか確認する程度の気持ちだったが、思いのほか彼の手つきが容赦なく、想定以上の快感を受信してしまった。
最後はレヴェローズに邪魔されてしまったが、わずかでもシラベのガードを緩めさせたなら第一段階の目標は達成できたと言える。
だが、あの男の警戒心を解くには、まだ手札が足りない。
カルメリエルは、自身の主である少女の姿を思い浮かべた。
シラベはミトラには甘い。彼女の理不尽な命令にも文句を言いながら従い、その小さな背を守ろうとする。
「ふふっ」
カルメリエルはシラベの温もりが残る布団を白魚のような指で優しく撫でながら、妖しく微笑んだ。
「次は、若返りの機能でも付与してみましょうか」
静かな部屋に、毒薬のように甘い独り言が溶けていった。